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第3回国連防災世界会議報告

情報センター 野村美佐子

第3回国連防災世界会議が2015年3月14日から18日にかけて2011年3月の東日本大震災地である仙台で開催された。国際連合国際防災戦略事務局(UNISDR)によれば、6500人の参加者があり、そのうち187カ国から2800人の政府関係者が含まれている。この登録が必要となる本体の会議と違って、一般参加も可能な350にものぼるパブリックフォーラムには、143,000人が参加したしたとのことだ。日本での国連の会議としては最も大きかった。
またこの会議には、200人の障害者が参加したとのことだ。彼らが会議に積極的な参加をするために物理的および情報のアクセシビリティは、重要である。そのため、本会議場においては、車いすの人たちのために低床バスやリフト付きの車が用意された。また英語と日本語による字幕が政府間のセグメントにおいては提供された。また手話通訳が様々なセッションにおいて要望に応じて提供された。さらに資料については、DAISYやワード形式での提供があり、視覚障害者や盲ろう者のためにKGS企業のご厚意により、点字で読むことができる支援機器の貸し出しがされた。このような大きな会議でのアクセシビリティの配慮は初めてのことで、ISDR、日本財団、日本政府、仙台市実行委員会そして実際にアクセシビリティのサービスを行う支援技術開発機構によって実現した。このような状況の中で障害者の参加はどのような意味があったのであろうか?本会議を中心に障害の視点から報告をする。

3月13日
3月14日の前日は、プレコム3が開催され、仙台防災枠組み2015-30の最終案が決定された。この文書をもとに、会議期間中において採択に向けた交渉が本会議の中で行われていった。また障害コーカスの本会議参加者のミーティング14:00から開催され、残念ながら私は、17:00頃、会議場に入ったので全てを聞くことができなかったが、会議に向けたオリエンテーションや意見交換が行われているところであった。「インクルジョンはレジリアンスの鍵となる。」というバッジをもらい、当事者の意見に耳を傾けた。盲ろう者の福田あき子さんは「排除することは、インクルージョンよりコストがかかる」と述べた。タイの盲人で国会議員のモンティエンブンタンさんは、「アクセシビリティがあってレジリアンスが可能となる。」と述べた。今回の会議におけるアクセシビリティも、障害のある参加者の関心事であった。

3月14日
開会式は、天皇・皇后の臨席のもと国連事務総長、安倍首相、仙台市市長の挨拶などが行われ、本会議の議長として山谷えりこ内閣府特命担当大臣(防災)が選任された。この正式な会場に入れない人のための会場があり、スクリーンでその様子を見ていたが、国際手話通訳が行われていた。その後、各国の公式声明が発表されていったが、初めに安倍首相が日本を代表して公式声明を述べた。東日本大震災後の各国の支援に感謝するとともに「仙台防災協力イニシアティブ」という開発途上国などの防災・減災対策の支援のため、2015年から4年間における総額40億ドルの資金提供と、4万人の防災や災害後の復興を担う人材育成の計画を発表した。
また午後に開催されたDRRにおける女性のリーダシップのセッションにおいても、安倍首相が基調講演を行い、防災および災害後の女性が脆弱であるとして配慮しなければいけないが、女性は、家族を守るための知恵と知識があると述べ、防災において女性のリーダシップが不可欠であると述べた。そのためにはどうするのかという議論がされた。

3月15日
東北大学で国連社会経済局(DESA)が主催し、外務省、JDF, 日本財団、東北大学、UNESCAP, 国連大学国際グローバルヘルス研究所、ワールドバンクの協力とUNISDR, 陸前高田市, 国際リハビリテーション協会、障害コーカスの後援により、「障害者を含む『インクルーシブ』な国際防災枠組みとその実施に向けた行動」をテーマとするフォーラム(10時から17時)が開催された。ここでは多くの障害のある当事者が登壇し、障害者のDRRに積極的な参加を感じた。

盲ろう者福田あき子さんが発言をしている様子

盲ろう者福田あき子さんが発言をしている様子

3月16日
防災における教育のセッションとローカルリスクに取り組むコミュニティに関するワーキングセッションに参加した。教育のセッションでは、兵庫県知事が、そしてコミュニティのセッションでは、岩手県知事がそれぞれ有効事例を発表した。コミュニティにおける伝統的な知見の重要性について発表したチリの事例は、日本でも防災についての古くからの言い伝えがあるのでとても興味深かった。

3月17日
「すべての人にとってインクルーシブなDRRにおける障害者の積極的な参加」と題するワーキングセッションが行われた。ここでもさまざまな障害を持つ当事者と防災専門家による意見、提言があった。そのなかで、自治体との連携で行う北海道浦河町の精神障害者のコミュニティ、「べてるの家」によるDRRの取り組みの発表があった。べてるの家では10年前から避難訓練やそのためのDAISYを活用したマニュアル作成など積極的に取り組んできており、東日本大震災において落ち着いて全員無事に避難ができた。今回、べてるの家のメンバーによるその様子を再現した寸劇がおこなわれ、事前に正しい知識と情報を知り、何度も避難訓練することの重要性を教えてくれ、参加者にとても好評であった。

情報提供ツールとしてDAISYを使用

情報提供ツールとしてDAISYを使用

寸劇の出演者

寸劇の出演者

3月18日
今回の成果文書、「防災仙台枠組2015-2030」の交渉がずれ込み、採択をしたのが夜10時20分頃であった。先進国と途上国とで技術移転と国際協力について意見が割れてしまったことが原因であったようだ。そのため、閉会式が始まったのは、大半の参加者が帰ってしまった11時30分からであった。成果文書とともに仙台宣言も採択された。障害者に言及したところが5か所ほどあり、マルチステークホルダーの役割において、「障害者および障害者団体は、災害リスクの分析において、またユニバーサルデザインの原理を考慮に入れながら、特別な要件に合わせた計画をデザインし実施することにおいて重要である。」として障害者の防災リスク軽減における貢献者になるという文言が採択されている。

成果文書について交渉を傍聴していた障害グループのメンバー

成果文書について交渉を傍聴していた障害グループのメンバー

今回の会議について国連国際防災戦略 (UNISDR)のトップであるマルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表が、マルチステークホルダーの会議であったこと、障害者に言及して、たくさんの障害者の積極的な参加が目立ったことを述べた。そして物理的、および情報のアクセシビリティに配慮されたアクセシブルな会議の1つであり、今後の会議に向けたアクセシビリティの標準(Standard)が定められたとコメントした。さらに防災に関連した会議に多くの障害者の参加を願って、そのためのアクセシビリティの向上とサービスに期待したい
また障害グループは市民社会のメージャーグループ1)に入っていなかったが、今回の会議においては、その他のグループとしての参加が認められた。今後、国連のポスト2015開発アジェンダ等の会議の場においてもメージャーグループの1つとして参加の場を提供されることを期待したい。

ワールストロム氏の発表の様子

ワールストロム氏の発表の様子

今回、国連事務総長は、開会の挨拶で「レジリエンスとは、地震に耐えられる強固な建物の問題だけではなく、真のレジリエンスは、国家間、コミュニティ間の強い絆から生まれる」と述べているが、障害者を含む参加者それぞれが防災について認識を新たにすることで、強いきずなを築く一歩となったのではないかと思う。

1)メ-―ジャーグループについて:2012年6月20日~22日にかけて,ブラジルのリオデジャネイロ(において,「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催された。この会議は1992年に「地球サミット」がリオデジャネイロで開催され、「「環境と開発に関するリオ宣言」やそれを具体化するための「アジェンダ21」が採択された。その時から20周年を迎える機会に,同会議のフォローアップ会合として行われた。その会議でアジェンダ21により国連における持続可能開発交渉のコンテキストにおいて9つのメージャーグループとして市民社会を理解することが同意された。このメージャーグループとは、Women, Children and Youth, Farmers, Indigenous Peoples, NGOs, Trade Unions, Local Authorities, Science and Technology, Business and Industryであった。障害者のグループは入っていない。このメージャーグループ問題については、河村氏のインタビューが詳しい。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/world/2015dp/kawamura1410.html