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「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」に伴う著作権法改正について

1. はじめに
 「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(以下「教科用特定図書等普及促進法」という。)が議員立法により第169回国会において成立し,平成20年6月18日に公布され,平成20年9月17日に施行されました。法律の詳細は以下の通りです。

2. 「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」について  教科用特定図書等普及促進法は,教育の機会均等の趣旨にのっとり,障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等(※)の発行の促進を図るとともに,その使用の支援について必要な措置を講ずること等により,教科用特定図書等の普及の促進等を図り,もって障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進に資することを目的としています(第1条)。

※ 教科用特定図書等とは,教科用拡大図書,教科用点字図書その他障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため作成した教材であって検定教科用図書等に代えて使用し得るものをいうものとされています(第2条第1項)。

 同法では,教科用特定図書等の供給等に関する国及び教科用図書発行者等の責務の他,教科用図書のデジタルデータの提供に関すること等について定められており,これに伴い,著作権法についても必要な改正が行われています(附則第4条)。詳細については,3.を参照。

3. 著作権法の一部改正について
 教科用特定図書等普及促進法による著作権法の主な改正点は以下のとおりです。

① 教科用拡大図書等の作成について(著作権法第33条の2第1項関係)
 教科用特定図書等普及促進法では、視覚障害のある児童及び生徒のための拡大教科書や点字教科書のほか、音声教科書や、発達障害のある児童及び生徒のための拡大教科書なども含めて教科用特定図書等として普及を促進することとしています。これに伴い、著作権法の拡大教科書の作成のための権利制限規定について所要の規定の整備が行われています。

(i) 対象の拡大
 従来,著作権法第33条の2第1項では弱視の児童・生徒のための複製のみが権利制限の対象となっていましたが,今回の改正で,弱視を含む視覚障害を有する児童・生徒に加え,発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童・生徒のための複製も対象となりました。

(ⅱ) 複製方式の多様化
 従来,著作権法第33条の2第1項では教科用図書に用いられている文字,図形等を拡大して複製することについてのみが規定されておりましたが,今回の改正で,拡大の他,児童・生徒が使用するために必要な方式での複製も権利制限の対象となりました。これにより,例えば,録音図書やマルチメディアデイジー図書等の作成についても,児童・生徒の必要に応じて,この規定の対象となることが考えられます。

②教科書のデジタルデータの提供について(著作権法第33条の2第4項関係)
 教科用特定図書等普及促進法第五条により,教科用図書の発行者から,文部科学大臣又は文部科学大臣が指定する者を通じて,教科用特定図書等の発行をする者に対して,教科書のデジタルデータを提供する仕組みが設けられました。この規定に基づくデータ提供に必要と認められる限度で行われる著作物の利用については,今回の著作権法の改正(第33条の2第4項)により,権利侵害とならないことが明確化されています。なお,このデータ提供は,障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律施行規則により,光ディスクで行うこととされています(第1条)。

③目的外使用等に関する規定の整備について(著作権法第47条の4,第49条関係)
 第33条の2第4項により作成された教科書のデジタルデータの複製物を,同項に定める目的外の目的で頒布等を行った場合は,権利侵害となる旨を規定しています。

(参考資料)


本コンテンツは、文化庁長官官房著作権課の許諾を得て、下記より全文を転載しています。

「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」に伴う著作権法改正について
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/tokuteitosyo_fukyu.html