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24庁房第91号
平成24年6月27日

関係団体各位

文部科学副大臣
高井 美穂
(印影印刷)

著作権法の一部を改正する法律について(通知)

 「著作権法の一部を改正する法律」が第180回国会(常会)において成立し、平成24年6月27日に平成24年法律第43号として公布されました。
 今回の法律改正の主な項目は以下の5点であり、そのうち、1から4については、平成23年1月に文化審議会著作権分科会において取りまとめられた「文化審議会著作権分科会報告書」等を踏まえ、著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するために行ったものです。また、5については、国会の審議の過程において、著作権法第30条第1項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行うこと(以下「違法ダウンロード」という。)により、著作権等を侵害した者に刑事罰を科すこと(以下「違法ダウンロードの刑事罰化」という。)とするための規定の整備を内容とする修正案が提出され、可決、成立したものです。

  1. いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備
  2. 国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備
  3. 公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備
  4. 著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備
  5. 違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

 このうち、1及び2については平成25年1月1日から、3から5については平成24年10月1日から施行し、さらに、違法ダウンロードの刑事罰化に関して、国民に対する啓発等や関係事業者の措置等を定めた附則の規定については、公布の日(平成24年6月27日)から施行することとしております。

 「著作権法の一部を改正する法律」等の概要及び留意事項は下記のとおりですので、御了知いただくようお願いします。

1.いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備

 いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備については、著作権者等の利益を不当に害しないような著作物等の利用であっても形式的には違法となるものについて、著作権等の侵害とならないことを明確にするため、利用目的や要件を一定程度包括的に定めた、以下の(1)から(4)の権利制限規定を設けるものである(著作隣接権については、第102条により準用)。

(1)付随対象著作物の利用(第30条の2関係)

 写真の撮影等の方法によって著作物を創作するに当たって、当該著作物(写真等著作物)に係る写真の撮影等の対象とする事物等から分離することが困難であるため付随して対象となる事物等に係るほかの著作物(付随対象著作物)は、当該創作に伴って複製又は翻案することができることとしたこと。(第1項)
 また、複製又は翻案された付随対象著作物は、写真等著作物の利用に伴って利用することができることとしたこと。(第2項)

 具体的に、例えば、

  • 街角の風景をビデオを収録したところ、本来意図した収録対象だけではなく、看板やポスター等に描かれている絵画等や流れていた音楽がたまたま録り込まれること(第1項)
  • 看板やポスター等に描かれている絵画等や流れていた音楽が録り込まれた映像を、放送やインターネット送信すること(第2項)

などがこれに該当すること。

(2)検討の過程における利用(第30条の3関係)

 著作権者の許諾を得て、又は裁定を受けて著作物を利用しようとする者は、これらの利用についての検討の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができることとしたこと。
 具体的には、例えば、企業がキャラクター商品を企画するに当たり、当該キャラクターの著作権者の許諾を得る前に、企画書等にキャラクターを利用(複製)することなどがこれに該当すること。

(3)技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(第30条の4関係)

 公表された著作物を、著作物の録音、録画等の技術の開発又は実用化のための試験のように供する場合には、その必要と認められる限度において、利用することができることとしたこと。
 具体的には、例えば、企業が録画機器の開発をするに当たり、録画の精度を確認するため、実際に映画を素材として試験的に録画することなどがこれに該当すること。

(4)情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用(第47条の9関係)

 著作物を、情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合であって、当該提供を円滑かつ効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うときは、その必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案を行うことなどがこれに該当すること。
 具体的には、例えば、クラウドサービス等の各種インターネットサービスにおいて、データの処理速度を速めるために、インターネット上のサーバ内でデータを大量複製することができることとしたこと。

 なお、(1)から(4)については、今後、これらについて解説した資料を作成し、文部科学省HP (http://www.mext.go.jp)・文化庁HP (http://www.bunka.go.jp)に掲載等する予定であることから、当該資料についてもHP等により内容を確認していただき、活用いただきたい。

2.国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備(第31条第3項関係)

 国立国会図書館は、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料について、図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には、記録媒体に記録された著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができることとしたこと。
 また、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができることとしたこと。

3.公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備

(1)永久保存のための規定の整備(第42条の3第1項関係)

 国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長は、公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号。以下「公文書管理法」という。)第15条第1項の規定又は公文書管理条例の規定により歴史公文書等を永久保存することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、当該歴史公文書等を複製することができることとしたこと。

 ここでいう「公文書管理条例」は、地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する歴史公文書等の適切な保存及び利用について定める当該地方公共団体の条例をいう。また、「地方公文書館等」は、歴史公文書等の適切な保存及び利用を図る施設として公文書管理条例が定める施設をいい、「地方公文書館等の長」は、地方公文書館等が地方公共団体の施設である場合にあってはその属する地方公共団体の長をいい、地方公文書館等が地方独立行政法人の施設である場合にあってはその施設を設置した地方独立行政法人をいう。

(2)利用請求に係る規定の整備(第42条の3第2項関係)

 国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長は、公文書管理法第16条第1項の規定又は公文書管理条例の規定により著作物を公衆に提供し、又は提示することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、当該著作物を利用すること(例えば、写しの交付等)ができることとしたこと。

(3)著作者人格権に係る規定の整備(第18条第3項等関係)

 第18条第3項において、著作者が行政機関、独立行政法人等、地方公共団体若しくは地方独立行政法人に提供した未公表著作物に係る歴史公文書等が国立公文書館若しくは地方公文書館等に移管された場合、又は著作者が未公表著作物を国立公文書館等若しくは地方公文書館等に提供した場合には、国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示することについて著作者は同意したものとみなすこととしたこと。

 また、同条第4項において、国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が、以下に掲げる情報に係る未公表著作物を、公文書管理法等の規定により公衆に提供し、又は提示するときは、著作物の公表権を及ぼさないこととしたこと。

  • 個人情報のうち生命、財産等を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
  • 個人情報のうち公務員等の職務の遂行に係る情報で、当該公務員等の職務及び当該職務遂行の内容に係る情報
  • 法人等に関する情報のうち人の生命、財産等を保護するため公にすることが必要であると認められる情報

 この他、第19条第4項第3号及び第90条の2第4項第3号において、国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が著作物又は実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物又は実演につき既にその著作者又は実演家が表示しているところに従って著作者名又は実演家名を表示するときは、著作者又は実演家の氏名表示権を及ぼさないこととしたこと。

4.著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備(第2条第1項第20号等関係)

 第2条第1項第20号において、技術的保護手段の対象に、著作物等の利用に用いられる機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、又は送信する方式(暗号方式)を加えることとしたこと。

 また、第30条第1項第2号において、技術的保護手段の回避に係る定義に、特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元を加えることとしたこと。
 このことにより、私的使用目的であっても、暗号形式による技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合には、民事上違法となることとしたこと。

 この他、第120条の2第1号において、「専ら」を削除し、装置又はプログラムが技術的保護手段の回避機能以外の機能を併せて有する場合には、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段により可能とする用途に供するために行うものに限ることとしたこと。
 これは、暗号方式には、視聴等の著作権等の対象外となる行為を制限する機能もあるため、改正前のように「技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする」と規定すると、暗号方式が対象とならないおそれがあるためである。
 このことにより、暗号方式による技術的保護手段の回避を可能とする装置又はプログラムの譲渡等が刑事罰の対象となることとしたこと。

 なお、暗号方式による技術的保護手段は、具体的には、現在DVDに用いられているCSSやBlu-rayに用いられているAACS等が該当する。

5.違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

(1)違法ダウンロードの刑事罰化(第119条第3項関係)

 私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとしたこと。
 「有償著作物等」とは、録音され、又は録画された著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。
 また、「その事実」とは、「有償著作物等」であること及び「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信」であることを指し、「その事実を知りながら」という要件を満たさない場合には、著作権又は著作隣接権の侵害に問われることはない。
 なお、第119条第3項は親告罪とされており、著作権者からの告訴がなければ公訴は提起されないこととしている(第123条第1項)。

(2)国民に対する啓発等(附則第7条関係)

 国及び地方公共団体は、国民が違法ダウンロードを行うことにより著作権又は著作隣接権を侵害する行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、当該行為の防止に関する啓発その他の必要な措置を講じなければならないこととしたこと。(第1項)
 また、国及び地方公共団体は、あらゆる機会を通じて未成年者が違法ダウンロードを行うことにより著作権又は著作隣接権を侵害する行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、学校その他の様々な場を通じて当該行為の防止に関する教育の充実を図らなければならないこととしたこと。
 文部科学省においても、今後、違法ダウンロードの刑事罰化についての解説を文部科学省HP・文化庁HP等において掲載する予定であるほか、資料の配布も予定していることから、当該HPや関係権利者団体の行う広報等についても内容を確認いただき、活用いただきたい。

(3)関係事業者の措置(附則第8条関係)

 有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、違法ダウンロードを行うことにより著作権又は著作隣接権を侵害する行為を防止するための措置を講じるよう努めなければならないこととしたこと。

(4)運用上の配慮(附則第9条関係)

 法第119条第3項の規定の運用に当たっては、インターネットによる情報の収集その他のインターネットを利用して行う行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととしたこと。

6.施行期日及び経過措置

 この法律は、平成25年1月1日から施行することとしたこと。ただし、

  1. 違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備のうち、国民に対する啓発等及び関係事業者の措置に係る規定については公布の日(平成24年6月27日)から
  2. 公文書管理法等に基づく利用に係る規定の整備、技術的保護手段に係る規定の整備並びに違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備(国民に対する啓発等及び関係事業者の措置に係る規定を除く。)については平成24年10月1日から

施行することとしたこと

 この他、所要の経過措置について規定した。(附則第2条から第5条関係)

担当 文化庁長官官房著作権課法規係
電話 03-5253-4111(内線2775)