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WIPO事務局長、マラケシュ条約発効に際し、視覚障害のある人と国際社会に向けて成功を祝福

ジュネーブ 2016年9月30日
PR/2016/794

フランシス・ガリWIPO事務局長は、世界中の視覚障害及びその他のプリントディスアビリティのある人に役立つ、特別に改良されたテキストの数の増加を今後可能にする、マラケシュ条約の発効を歓迎した。

この「視覚障害のある人のための書籍」に関する条約は、必要とされていたWIPO加盟国20カ国による批准または加入を得てから3ヵ月後となる2016年9月30日に発効された。

動画:事務局長からのメッセージ-You Tubeで視聴(英語)

「これは、世界中の視覚障害のある人にとって、すばらしい日です。今日から、彼らが使用できるように特別に作成されたテキストの数が増え、その恩恵を受けられるようになるからです」とフランシス・ガリWIPO事務局長は語った。「また、これは多国間協調主義と国際社会にとっても重要な勝利であり、一致団結して世界中の人々の生活を向上させ、世界各地の視覚障害のある人に読み書きの力と読み書きの機会をもたらすことができるということを見せつけたのです。」

視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)(*訳注1)は、世界保健機関が全世界で2億8500万人と推定する視覚障害のある人と、それ以外の数百万人のプリントディスアビリティのある人が使用できるように、点字版または大活字版など特別に改良された書籍の作成とそれらの国境を越えた移動を促進するものである。

マラケシュ条約の発効を記念し、WIPOは音声フォーマットによるアクセシブルな書籍をWIPOのABCブックサービスを利用してカナダからオーストラリアに転送するという象徴的な企画を打ち立てた。カナダ国立盲人協会からビジョン・オーストラリアへの書籍の転送は、ビジョン・オーストラリアが書籍自体の複製をする必要がないこと、そのため、1冊につき約2000米ドルの経費を節約できることを意味している。

マラケシュ条約―「本の飢餓」の終結

マラケシュ条約は、締約国に対し、著作権者の権利の制限や例外を通じて、アクセシブルな形式で出版物を複製し、頒布し、利用できるようにすることを許諾する国内法の規定を採択するよう義務付け、「本の飢餓」の解決に取り組んでいる。

また、視覚障害やプリントディスアビリティのある人にサービスを提供している組織による、これらのアクセシブルな形式の著作物の国境を越えた交換についても定めている。これらの組織が国境を越えて活動できるように、制限や例外の調和が図られる。

このようにアクセシブルな形式の著作物を共有することにより、重複がなくなり、効率が上がるため、全体として利用可能な著作物の数が増える。たとえば、同一著作物のアクセシブル版を5カ国で作成するかわりに、異なる著作物のアクセシブル版を5カ国でそれぞれ作成することが可能となり、それらを互いに共有できるようになる。

マラケシュ条約は、また、著作者と出版社に対し、このシステムが彼らの出版物を、悪用や対象となる受益者以外の者への頒布という危険に曝すものではないと保証することも目的としている。同条約では、制限や例外に基づいて作成された著作物の国境を越えた共有は、当該著作物の通常の利用を妨げず、また、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定されなければならないという要件が、繰り返し述べられている。

WIPOが企画し、モロッコ王国が主催して、2013年6月27日にマラケシュで開催された外交会議で採択された条約には、75を超えるWIPO加盟国が署名している。同条約の発効には、20カ国による批准または加入が必要であった。これまでに22カ国が同条約に加入した。

WIPOは、加盟国が可能な限り最大限マラケシュ条約を利用できるよう支援することを約束している。WIPOはアクセシブル・ブック・コンソーシアム(ABC)のリーダーであり、ABCは、開発途上国及び後発開発途上国におけるアクセシブルな形式による書籍の作成と頒布のための技術的スキルの共有、インクルーシブな出版の促進、国際的なデータベースの構築とアクセシブルな書籍の交換という3つの分野におけるマラケシュ条約の目的実施を支援するために設立された。

解説

世界保健機関によれば、世界には視覚障害のある人が約2億8500万人おり、そのうちの90パーセントが開発途上国で暮らしている。2006年のWIPO調査からは、著作権で保護されたテキストの点字版、大活字版またはデジタル音声版などに関する、視覚障害のある人のための特別な規定を設けた制限及び例外条項が著作権法に定められているのは、60カ国にも満たないことがわかった。

世界盲人連合によれば、毎年世界で出版されている約100万の書籍のうち、視覚障害のある人がアクセシブルな形式で利用できるのは、10パーセント未満である。

関連リンク

WIPOについて

世界知的所有権機関(WIPO)は知的所有権関連の政策、サービス、情報及び協力のためのグローバルフォーラムである。国際連合の専門機関であるWIPOは、189の加盟国による、社会の進化しつつあるニーズに合った、バランスのよい国際的な知的所有権(IP)の法的枠組みの開発を支援する。そして、複数の国における知的所有権の獲得と紛争解決のためのビジネスサービスを提供している。また、開発途上国がIPの利用により利益を得られるよう支援する、能力構築プログラムを実施している。さらに、IPに関する情報を集めた独自の知識バンクへの無料アクセスも提供している。

さらに詳しい情報は、WIPOメディア広報セクションにお問合わせください。
電話番号:(+41 22) – 338 81 61 / 338 72 24
ファックス番号:(+41 22) – 338 81 40
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<訳注>

訳注1:文化庁ウェブサイトの参考和訳より引用 
"視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)". 文化庁
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h26_02/pdf/sanko_2.pdf (cited 2016-11-21)


日本障害者リハビリテーション協会 仮訳

原典:"WIPO Director General Hails a Success for Visually Impaired People and International Community as Marrakesh Treaty Enters Into Force". WIPO
http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2016/article_0009.html (cited 2016-11-21)