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第186回国会閣法第73号 附帯決議

著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 我が国の「知の再生産」や「日本文化の創造と伝搬」に貢献してきた日本の多様で豊かな出版・活字文化を、グローバル化やデジタル化が進展する新しい時代においても一層発展させ、著作者の権利を保護しつつ、多様な著作物を多様な出版形態でより多くの国内外の利用者に届けていくことが重要であることに鑑み、真に実効性ある海賊版対策の実施など、本法により拡充された出版権制度の更なる利用促進に向けて必要な対策を講ずること。

二 我が国が世界に誇る出版・活字文化は、著作者と出版を引き受ける者との間の信頼関係に基づく企画から編集、制作、宣伝、販売という一連のプロセスからなる出版事業がその基盤にあることを踏まえ、本法によって設定可能となる電子出版に係る出版権の下でも従前の出版事業が尊重されるよう、その具体的な契約及び運用の在り方を示して関係者に周知するとともに、その実務上の効果について一定期間後に具体的な検証を行い、必要に応じた見直しを検討すること。

三 電子出版の流通の促進を図るためには、契約当事者間で適切な出版権設定を行いつつ、関係者の協力によって有効な海賊版対策を行うことが必要不可欠であることから、これまで出版権設定が進んでこなかった雑誌等、複数の著作物によって構成される著作物などについても出版権設定が可能であることについて周知に努めるとともに、具体的な契約モデルの構築について関係者に対する支援を行うこと。また、物権的に細分化された出版権が設定された場合に、当該出版権が及ばない形態の海賊版が流通した場合には効果的な海賊版対策を行うことができないため、効果的な海賊版対策を講ずる観点から適切な出版権が設定されるよう推奨すること。

四 効果的な海賊版対策を講ずる観点からは、著作者が契約締結時において電子書籍を出版する意志や計画がない場合であっても、紙媒体の出版と電子出版等を合わせて一体的な出版権の設定がなされることが推奨されるが、その後、電子書籍の出版を希望するに至った場合において、著作者の意図に反して出版が行われず放置されるといったいわゆる塩漬け問題が生ずることのないよう、適切な対策を講ずること。

五 電子的な海賊版については、ひとたびインターネット等で公衆送信が行われればもはや完全に差し止めることは困難であり、甚大な被害が生じてしまうことから、電子出版に係る出版権しか持たない出版者においても、違法配信目的で複製がなされた場合には、第百十二条第一項の「出版権を侵害するおそれがある場合」としてその段階で差止請求を行うことができることを出版者に対し周知すること。

六 出版権者及び著作権者による海賊版対策の取組の状況を踏まえ、紙媒体の出版についてのみ出版権の設定を受けている出版権者であっても、インターネット上の海賊版又はDVD等の記録媒体等による海賊版に対し差止請求を行うことができる契約慣行の改善や「みなし侵害規定」等の制度的対応など効果的な海賊版対策について検討すること。

七 海賊版については、日本国外での被害が圧倒的多数であることから、その対策強化を図るための国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通取締対策に積極的に取り組むとともに、出版物の正規版の海外流通の促進に向けて官民挙げた取組を推進すること。

八 本法によって、多様な形態の出版権設定が行われる可能性があることから、著作物における出版権設定の詳細を明らかにするため、将来的な利活用の促進も視野に入れつつ、出版権の登録・管理制度等を早急に整備するため、具体的な検討に着手すること。また、当事者間の契約上の紛争予防及び紛争が発生した際の円満な解決の促進を目指し、出版契約における裁判外紛争解決手段(ADR)を創設すべく、必要な措置を講ずること。

九 教科用拡大図書や副教材の拡大写本を始め、弱視者のための録音図書等の作成においてボランティアが果たしてきた役割の重要性に鑑み、障害者のための著作物利用の促進と円滑化に向け、著作権法の適切な見直しを検討すること。特に、障害者の情報アクセス権を保障し、情報格差を是正していく観点から、障害者権利条約をはじめとする国際条約や関係団体等の意見を十分に考慮しつつ、障害の種類にかかわらず全ての障害者がそれぞれの障害に応じた形態の出版物を容易に入手できるよう、第三十七条第三項の改正に向け、速やかに結論を得ること。

十 視聴覚的実演に関する北京条約や関係団体等の意見を十分に考慮しつつ、俳優、舞踊家などの視聴覚的実演家の権利に関し、契約及び運用の在り方や法制上の在り方も含め検討を行うこと。


「著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第73号)」は、平成26年4月4日の第10回衆議院文部科学委員会にて全会一致で原案のとおりに可決された。また、全会一致で附帯決議を付した。

出典

衆議院.第186回国会閣法第73号 附帯決議:著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議.
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/monka994CD59BF86D1E8C49257CB4002483AD.htm

衆議院.第186回国会4月4日文部科学委員会ニュース.
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/News/monka18620140404010_m.htm

文部科学省.著作権法の一部を改正する法律案(第186回国会における文部科学省提出法律案(平成26年1月24日~).
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1345237.htm