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出版物へのプリントディスアビリティのある人々によるアクセスを促進する条約に向けてWIPOが前進、 モロッコが外交会議主催を申し出る

2012年12月18日 ジュネーブ
PR/2012/727
出典:WIPO Advances Toward Treaty to Facilitate Access to Published Works by Persons with Print Disabilities, Morocco Offers to Host Diplomatic Conference
http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2012/article_0026.html

WIPO総会はこの日、特別会議を開催し、視覚障害またはプリントディスアビリティのある世界中の多くの人々のために著作権保護作品へのアクセスを改善する条約に関する交渉を終結させるため、2013年に外交会議を開催するという画期的な決定を下した。総会はまた、同外交会議の主催を申し出たモロッコに対し、感謝の意を表した。

フランシス・ガリ(Francis Gurry)WIPO事務局長は、この取り組みに参加する加盟国の建設的な精神と、国際条約の規定について合意を得るために、2013年に外交会議を開催するという決定を歓迎した。「加盟国は今日、著作権保護作品への視覚障害のある人々及びプリントディスアビリティのある人々によるアクセス促進に向けた共同の取り組みにおいて、重要な決定を下したのです」と、ガリ氏は語った。そして、「今後条約は、世界中の何百万もの人々のために、出版物へのアクセスを改善することになるでしょう」と付け加えた。事務局長は、モロッコの国連ジュネーブ常駐代表オマール・ヒラル(Omar Hilale)大使に向けて、外交会議を主催するという同国の寛大な申し出に対する感謝の意を伝えた。

視覚障害のある人々及びプリントディスアビリティのある人々による著作権保護作品の利用について、国内法で制限と例外規定を設けている国もあるが、国際レベルでは、法の不在状態にあると言える。2004年以降、WIPO著作権及び著作隣接権に関する常設委員会(SCCR)は、特定の制限及び例外規定を国際的に統一するべきか否かを検討してきた。この日のWIPO総会では、視覚障害のある人々とプリントディスアビリティのある人々の利益になる将来の条約に関する議論を十分に進め、外交会議の開催へと成熟させていくことが決定された。外交会議の開催は、条約交渉が最終段階に入ったことを示している。

世界中で約3億人の全盲の人々あるいは視覚障害のある人々が、最新技術の現状に即して改正された、より柔軟な著作権制度の恩恵を受けることになる。読むことに障害のある人々は、支援技術を使用し、点字や大活字、音声、電子フォーマット及びその他のフォーマットに、情報を変換しなければならないことが多い。世界各地で出版されている本のうち、視覚障害のある人々がアクセシブルなフォーマットで利用できるものは、ごくわずかしかない。

総会ではさらに、2013年6月に開催予定の外交会議に先立ち、条約草案テキストに関する作業を進めるため、2013年2月にSCCR特別会議を開催することも決定された。2月末のSCCRで加盟国は、「2013年6月の会議を成功させるため、追加作業が必要であるか否か」を決定する。

現在の条約草案テキストは、加盟国の重要な合意事項を反映しているが、一部相違点が残されている。加盟国の合意を得る必要がある問題の中には、商業利用の可能性に関する問題がある。つまり、あるタイトルがアクセシブルなフォーマットで市販されている場所ではどうなるのか、そして、国家間でのアクセシブルな作品の国境を越えた移動はどのように行われるのか、という問題である。さらに加盟国は、国内法における制限及び例外規定に関する従来の定式化(いわゆるスリー・ステップ・テスト)を、条約草案テキストの中でどのように扱うかについても、合意を得なければならない。

総会の最後に加盟国は、出版物への視覚障害のある人々及びプリントディスアビリティのある人々によるアクセスを促進する条約の締結に向けた外交会議の準備委員会を開催し、外交会議の開催地と手続きを検討した。

以下は総会決議の全文である。

特別総会決議本文

本会議は、
1. 視覚障害のある人々/プリントディスアビリティのある人々のための制限及び例外規定に関する外交会議を、2013年6月に開催することを決定する。この会議の任務は、(SCCR/25/2の草案テキストに従い)視覚障害のある人々/プリントディスアビリティのある人々のための制限及び例外規定に関する条約の交渉を行い、これを採択することである。

2. 外交会議に必要な手順を確立するため、2012年12月18日に準備委員会を開催する。準備委員会はこの時、外交会議での採択に向けて提出される手続き関連規則の草案、会議出席依頼者のリスト、出席依頼状の文案及びその他の文書、または外交会議に関する組織的な問題を検討する。準備委員会は、条約の管理規定と最終規定に関する基本草案も承認する。

3. モロッコ王国による2013年6月の外交会議開催の申し出を、感謝をもって歓迎する。

4. SCCRに対し、2013年2月に5日間の特別会議を開催し、テキストについて十分なレベルの合意に達するために、文書SCCR/25/2に関するテキストベースの作業をさらに進めることを命じ、準備委員会に対し、2013年6月の会議を成功させるため、追加作業が必要であるか否かを決定するため、必要に応じて2月末にSCCR会議を開催することを命じる。当然のことながら、準備委員会は、オブザーバー代表団とオブザーバーを招待する。

5. 視覚障害のある人々/プリントディスアビリティのある人々のための制限及び例外規定に関する国際合意/条約の草案テキストである文書SCCR/25/2が、外交会議に向けた基本草案の実質的な条文を構成することに同意する。準備委員会は、いかなる加盟国及び欧州連合特別代表も、外交会議において提案できることを理解し、上記(4)項に従い達成されたSCCRのさらなる合意事項を、基本草案に盛り込まなければならない。