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マラケシュ条約、カナダの加入により発効へ

出典:
Canada’s Accession to Marrakesh Treaty Brings Treaty into Forcep
http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2016/article_0007.html


カナダは本日、視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)にとって極めて重要な20番目の加入国となり、これにより同条約は、3ヵ後の2016年9月30日に発効することとなった。

動画:WIPO事務局長からのメッセージ (英語)

「これは視覚障害のある人々、そして、多国間知的所有権制度にとって、素晴らしいニュースです。マラケシュ条約が世界各地で広く採択されれば、視覚障害のある人がこれまでよりはるかに平等かつインクルーシブな方法で文献へのアクセスを享受するための枠組みが生み出されます」とフランシス・ガリWIPO事務局長は述べた。そして「広く世界各地でこの条約の恩恵が受けられるように、できるだけ多くの国に、この条約を批准するよう強く求めます」と付け加えた。

「カナダがマラケシュ条約の国際的な発効の実現に協力している国々の1つに数えられることを、光栄に思います。私たちは、障害を持ちながら生きている人々のために、よりアクセシブルな世界をともに築いているのです」と、カナダのナヴディープ・ベインズ革新・科学・経済開発大臣は語った。そして、「条約発効は、プリントディスアビリティのある人や視覚障害のある人が、今以上に完全かつ積極的に社会に参加し、自らの可能性を最大限発揮することができる、よりインクルーシブなグローバルコミュニティに向けた長い旅の、最後の一歩となるでしょう」と続けた。

「今日はカナダにとって歴史的な日です。なぜなら、カナダはマラケシュ条約の20番目の加入国となり、その結果、条約が発効するからです。我が国の政府が、障害のあるカナダ人のために立ち上がり、プリントディスアビリティのある人に代替形式による出版物へのより平等なアクセスを提供していることを、誇りに思います」とカナダのカーラ・クワルトロースポーツ・障害者大臣は述べた。さらに、「この条約の発効実現に伴い、カナダ人は、地域社会や職場におけるより充実したアクセシビリティと機会から恩恵を受けるでしょう」と付け加えた。

カナダの加入は、その前日のエクアドルとグアテマラに続くものであった。ガリ氏は、これまでの批准国の半数を構成するラテンアメリカ地域の国々に対し、感謝の意を伝えた。

 

インドは2014年6月30日に批准した最初の国であった。「インドは、20カ国による批准が達成され、マラケシュ条約の発効が認められたことを喜んでいます」と、在ジュネーブ国際連合及びその他の国際機関のインド政府常駐代表アジット・クマール大使は語った。そして、さらに多くの国に早急に加わってほしいという希望を表明し、「今後、私たちは、世界の視覚障害のある人のコミュニティにもたらされる具体的な利益を目にするようになるでしょう」と続けた。

これまでに、75を超えるWIPO加盟国が、WIPOが企画、モロッコ王国が主催して、2013年6月27日にマラケシュで開催された外交会議で採択された条約に署名している。条約発効には、20カ国による批准または加入が必要とされている。

最初に批准または加入した20カ国は、インド、エルサルバドル、アラブ首長国連邦、マリ、ウルグアイ、パラグアイ、シンガポール、アルゼンチン、メキシコ、モンゴル、大韓民国、オーストラリア、ブラジル、ペルー、朝鮮民主主義人民共和国、イスラエル、チリ、エクアドル、グアテマラおよびカナダであった。

2016年6月30日は、アクセシブル・ブック・コンソーシアム(ABC)の2周年記念日でもある。ABCは、視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)の目的実施を、開発途上国及び後発開発途上国におけるアクセシブルな形式による書籍の作成と頒布のための技術的スキルの共有、インクルーシブな出版の促進、国際的なデータベースの構築とアクセシブルな書籍の交換という3つの分野における活動を通じて、実践段階で支援するために設立された。

マラケシュ条約―「本の飢餓」の終結

マラケシュ条約は、締約国に対し、著作権者の権利の制限や例外を通じて、点字などのアクセシブルな形式で出版物を複製し、頒布し、利用できるようにすることを許諾する国内法の規定を採択するよう義務付け、「本の飢餓」の解決に取り組んでいる。

また、視覚障害やプリントディスアビリティのある人にサービスを提供している組織による、これらのアクセシブルな形式の著作物の国境を越えた交換についても定めている。これらの組織が国境を越えて活動できるように、制限や例外の調和が図られる。

このようにアクセシブルな形式の著作物を共有することにより、重複がなくなり、効率が上がるため、全体として利用可能な著作物の数が増える。たとえば、同一著作物のアクセシブル版を5カ国で作成するかわりに、異なる著作物のアクセシブル版を5カ国でそれぞれ作成することが可能となり、それらを互いに共有できるようになる。

マラケシュ条約は、また、著作者と出版社に対し、このシステムが彼らの出版物を、悪用や対象となる受益者以外の者への頒布という危険に曝すものではないと保証することも目的としている。同条約では、制限や例外に基づいて作成された著作物の国境を越えた共有は、当該著作物の通常の利用を妨げず、また、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定されなければならないという要件が、繰り返し述べられている。

解説

世界保健機関によれば、世界には視覚障害のある人が約2億8500万人おり、そのうちの90パーセントが開発途上国で暮らしている。2006年のWIPO調査からは、著作権で保護されたテキストの点字版、大活字版またはデジタル音声版などに関する、視覚障害のある人のための特別な規定を設けた制限及び例外条項が著作権法に定められているのは、60カ国にも満たないことがわかった。

世界盲人連合によれば、毎年世界で出版されている約100万の書籍のうち、視覚障害のある人がアクセシブルな形式で利用できるのは、10パーセント未満である。

WIPOについて

世界知的所有権機関(WIPO)は知的所有権関連の政策、サービス、情報及び協力のためのグローバルフォーラムである。国際連合の専門機関であるWIPOは、188の加盟国による、社会の進化しつつあるニーズに合った、バランスのよい国際的な知的所有権(IP)の法的枠組みの開発を支援する。そして、複数の国における知的所有権の獲得と紛争解決のためのビジネスサービスを提供している。また、開発途上国がIPの利用により利益を得られるよう支援する、能力構築プログラムを実施している。さらに、IPに関する情報を集めた独自の知識バンクへの無料アクセスも提供している。

さらに詳しい情報は、WIPOメディア広報セクションにお問合わせください。
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