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世界知的所有権機関(WIPO)
著作権及び著作隣接権に関する常設委員会(SCCR)
第22回セッション
結論(抄訳)

2011年6月15日~24日 ジュネーブ

出典:
World Intellectual Property Organization (WIPO)
Standing Committee on Copyright and Related Rights (SCCR)
Twenty-Second Session
Geneva, June 15 to 24, 2011
Conclusions
http://www.wipo.int/edocs/mdocs/copyright/en/sccr_22/sccr_22_ref_conclusions.pdf (英語)


議題

1. 委員会は、議題の順番の変更と、各開発アジェンダ関連提案の実施に対するSCCRの貢献についての新たな項目を含めることに合意した。一部の代表が、後者を含めることは、総会に先立ち、今回のセッションにおいてのみ一時的に行われるものとし、前例を作るべきではないと述べた。

権利の制限および例外規定:印刷物を読むことに障害がある人々およびその他の読みの障害を抱えている人々

2. 委員会は、2つの新たな文書に注目した。事務局によって作成された、『視覚障害のある人々およびその他の印刷物を読むことに障害のある人々のための著作権の制限および例外規定に関する提案の比較リスト(the comparative List of Proposals Related to Copyright Limitations and Exceptions for the Visually Impaired Persons and Other Persons with Print Disabilities)』(SCCR/22/8)と、SCCR/20/11で示された前提案を改訂したアフリカグループによる提案、『障害のある人々、教育・研究機関、図書館ならびに文書館のための例外規定と制限に関するWIPO条約草案(the Draft WIPO Treaty on Exceptions and Limitation for the Persons with Disabilities, Educational and Research Institutions, Libraries and Archives)』(SCCR/22/12)である。

3. 委員会は、4件の正式提案すべてについて、提案者に対し、共通点と一致の可能性を模索する非公式協議で有意義な討議に真摯に取り組んだことへの感謝の意を伝えた。非公式協議参加者の中には、後に一部の加盟国によって『印刷物を読むことに障害がある人々のための制限および例外規定に関する国際法についての合意文書(Consensus document on an international instrument on limitations and exceptions for persons with print disabilities)』(SCCR/22/15)として提出された文書を「非公式文書」として発表する者もあった。参加者は意見を述べ、予備的な質問をした。多くの参加者がこの文書を承認し、これを支持することに関心を示した。上記の提案をもとに、また参加者からのさまざまな示唆を取り入れて、『印刷物を読むことに障害がある人々のための制限および例外規定に関する国際法についての提案(Proposal on an international instrument on limitations and exceptions for persons with print disabilities)』(SCCR/22/15 改訂版1)が多数の国によって提出された。

4. さらなる討議に続き、委員会は議長に対し、印刷物を読むことに障害がある人々のための制限および例外規定に関する国際法の議長テキスト(SCCR/22/16)の作成を求めた。これは、今後第23回セッションにおいて委員会が進めるテキストベースの作業のたたき台となる。

5. 委員会は、SCCR第21回セッションで採択された予定表に従い、委員会のメンバーがSCCR第23回セッションにおいて、印刷物を読むことに障害がある人々のための著作権の制限および例外規定に関する国際法についての提案に同意し、これを完成させるために議長文書SCCR/22/16に関する討議を継続することを、WIPO総会に勧告することで合意した。

6. 委員会は関係者に対し、ステークホルダー・プラットフォームの活動を継続するよう促した。

権利の制限および例外規定

7. 委員会は、アフリカグループによる提案、『障害のある人々、教育・研究機関、図書館ならびに文書館のための例外規定と制限に関するWIPO条約草案』(SCCR/22/12)の提出に注目した。

8. 委員会は、権利の制限および例外規定の項目を、引き続きSCCR第23回セッションの議題とすることで合意した。

視聴覚的実演の保護

9. 委員会は事務局に対し、加盟国からの新たな提案の検討という使命をおびて、視聴覚的実演の保護に関するオープンエンドな協議を、2011年4月13日および14日にジュネーブで開催したことへの感謝の意を表した。また、同協議において議長を務めたナイジェリアのオシタディンマ・アナエドゥ(Ositadinma Anaedu)氏にも謝意を表明した。同協議の報告書がナイジェリア代表から提出された。

10. 委員会は、(a)既存の合意事項を含む、暫定的に採択されている19の条文、(b)セッションSCCR/22において合意が得られた新たな第12条、および(c)加盟国が提起した具体的な懸念を解決するために、第1条、第2条および第15条に関して作成された3つの追加合意事項からなる条約の本文を完成させなければならないことを総会が理解したうえで、中断されている2000年外交会議を再開するよう、総会に対し勧告すべきであるという点で合意した。ベネズエラ代表はこの決定に同意したが、2011年のWIPO総会開催中、この項目に関する同国の決定を見直す権利を留保した。

11. これらの合意事項は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の原則、目的および競争政策に対する加盟国のコミットメントを再確認し、WIPO実演・レコード条約(WPPT)とこの条約との関係を明らかにし、この条約で保護される演者をより的確に述べ、第13条と第15条の関係を明確にすることを目的としている。

12. 委員会はさらに、条約の前文に、開発アジェンダの重要性を認める追加条項を一点含めることで合意した。

13. 加盟国は、かかる合意事項と前文への追加条項の本文に関する討議および協議に全力を傾けた。さらに、かかる合意事項および条項は、外交会議再開の6か月前から1か月前までの間に提出されなければならないということで合意が得られた。

放送機関の保護 

14. 委員会は事務局に対し、放送機関の保護に関する非公式協議を、2011年4月14日および15日にジュネーブで開催したことへの感謝の意を表し、議長を務めたスイスのアレクサンドラ・グラツィオリ(Alexandra Grazioli)氏に、報告書提出への謝意を示した。委員会は非公式協議議長から提出された『放送機関の保護に関する条約草案の要素(Elements for a Draft Treaty on the Protection of Broadcasting Organizations)』(SCCR/22/11)を検討し、意見を述べた。これは、議論を進めるための条約草案の要素を明確に提示したものである。

15. 委員会は、南アフリカ、カナダおよび日本の代表から提出された新たな条約草案(それぞれ、SCCR/22/5、SCCR/22/6およびSCCR22/7)に注目した。

16. 委員会はまた、2011年6月6日および7日に南アフリカのヨハネスブルグで南アフリカ政府により開催された、アフリカ諸国を対象とした地域放送信号の著作権侵害に関するセミナーの結論(SCCR22/14)にも注目した。

17. 委員会は、2007年の総会で義務付けられたシグナルベースアプローチにもとづき、伝統的な放送機関および有線放送機関の保護を更新する国際条約の策定に向けて作業を継続するというコミットメントを再確認した。

18. 委員会は、本結論書の付録に記載されている、議長による作業計画を承認した。

19. 放送機関の保護は、引き続きSCCR第23回セッションの議題とされる。

各開発アジェンダ関連提案の実施に対するSCCRの貢献

20. 議長は、各開発アジェンダ関連提案の実施に対するSCCRの貢献にかかわるすべての発言は、2010年WIPO総会による開発アジェンダ調整メカニズムに関する決定に従い、SCCR第22回セッション報告書に記録され、WIPO総会に送付されると述べた。

(以下付録)

付録

放送機関の保護

議長による作業計画

1. 伝統的な放送機関・有線放送機関の保護に関する条約草案策定への機運を維持するために、委員会は2007年の総会で義務付けられたシグナルベースアプローチにもとづき議論を継続することに合意した。
2. 以下の作業計画が提案されている。
2.1 放送機関・有線放送機関の保護に関する2日間の非公式協議を、SCCR/23セッションと併せて開催する。正確な日程はWIPO事務局によって決定される。協議の成果はSCCR/23セッションに報告される。その後の活動の手順は、SCCR/23セッションで合意を得るものとする。
2.2 この協議の目的は、2012年のWIPO総会で外交会議の予定について勧告を行うために、条約草案に関する作業を進めることである。
2.3 討議には、SCCRのすべてのメンバーおよびオブザーバーが参加できる。
3. 以下の文書をもとに討議が行われる。
3.1 放送機関の保護に関するWIPO条約基本草案改訂版(SCCR/15/2)
3.2 放送機関の保護に関する条約草案についての提案:南アフリカ代表による提案(SCCR/22/5)
3.3 放送機関の保護に関する条約草案についての提案:カナダ代表による提案(SCCR/22/6)
3.4 放送機関の保護に関する条約草案についてのコメント:日本代表による提案(SCCR/22/7)
3.5 2011年4月14日および15日にジュネーブにて開催された、放送機関の保護に関する非公式協議の議長によって作成された、放送機関の保護に関する条約草案の要素(SCCR/22/11)
3.6 委員会に提出されたその他の文書
4. 開発途上国からの参加者は、WIPOの慣行に従い、財政援助を受けることができる。

(以上)


掲載者追記:
提出された各文書はWIPOウェブサイトに掲載。
http://www.wipo.int/meetings/en/details.jsp?meeting_id=22169

障害者関連の文書