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トレクヴィスタ校(スウェーデン)のDAISY

エケローにあるトレクヴィスタ校はアクセシブルなデジタル情報システム(以下DAISY)の使用が進んでおり、全てのコンピューターにたくさんの録音図書、プレーヤー、読み取りプログラムが入っています。これらの設備は経営側の支援および図書館と教員の密なる協働によって実現したものです。

文・写真:マリア キンベリ

青く澄み渡った一月の朝、トレクヴィスタの校庭では男子生徒がサッカーボールで遊んでいました。休み時間が終わると4Bで学ぶエリックは、黄色いレンガの校舎に入り図書館へ向かいます。彼は読書の際、録音図書を利用する生徒のひとりです。彼に写真撮影の許可を求めると、大好きなラーシュ&ウーバンの本を読んでいる様子を写して欲しいとリクエストがありました。
「DAISYの効果は、エリックを見れば分かる。」とディスレクシィ専門のイボンヌ アンダションは言います。以前は読書をまったく拒否していたエリックが、今や熱心に本をよみふけるまでになったのです。彼は今日もDAISYプレーヤーとヘッドフォンそして本を携えて教室の中心に座っています。

図書館で読書をするエリック マルムグレンの写真
図書館で読書をするエリック マルムグレン

魅力的な環境

トレクヴィスタは50人の教職員と幼稚園児から9年生まで450人の生徒で構成される公立校です。1階の正面玄関すぐ脇にある図書館は明るく開放的かつ温かい雰囲気で、学校環境と学校生活に配慮されていることがはっきりと見て取れます。図書館の中には作業用と休息用のスペースがあり、読書用の特別な肘掛け椅子には「そうして彼らは幸せに暮らしましたとさ・・」と書かれたクッションが置いてあります。チェスは箱の中で出番を待っています。本棚に並ぶほとんどが新書で、それらは表紙を見せて配置されています。
昨年、この図書館は16,000冊を貸し出しました。平均すると生徒一人あたり35冊です。この学校では週に33時間、図書館司書が居て様々なサービスをします。「図書館はとても人気があり、いつも生徒で溢れ返っています。」と6年生から9年生を担当する特別教員のリッタ ウォルフェは言います。

休息スペースの写真作業スペースの写真
新書が表紙を見せて配置されているデイジー図書の写真
作業と休息、両方のスペースがある図書館。

目的意識をもった協働

図書館がこのように上手く機能する理由のひとつに、明確な目的意識を持った3人の協働が挙げられます。図書館司書のリンダ スポレーン, ディスレクシア専門のイボンヌ アンダション, 特別教員のリッタ ウォルフェです。イボンヌとリッタは読むことに支障のあるディスレクシア症状を持つ生徒を把握し、彼らと共に図書館へ行ってリンダの助言を受けながら本を選びます。「一般的にディスレクシアの子供は図書館に来たがりません。彼らにとってはとても苦痛なことですから。私ひとりの力では生徒と今のような良い関係を築くことはできなかったでしょう。」とリンダ言います。一方イボンヌとリッタは、リンダの豊富な本の知識と生徒への関わり方こそが彼女たちの活動を可能にしていると指摘します。
「学校の重要な役割は、生徒が読書に挑戦するきっかけを作り出すことです。関係する研究結果を参考にしながら各生徒が自分のレベルに合せて挑戦する本を選びます。私たち教員の図書知識はまだまだ足りませんけれど。」とイボンヌは言います。

何かを変える本

リンダ は「良い本」を見つけ出す確かな知識を持っています。彼女は毎週10~12のクラスに読み聞かせを行い、たくさん本を読んでたくさんの生徒と触れ合っています。 「関わり合い、協働、経営サイドのサポートによって、私たちの活動は順調に進んでいます。イボンヌとリッタと私は皆、この活動が重要で進化し続けていると信じています。」「生徒たちを深く知ること、そして何度も読み返したくなるような本を探すことは楽しいですよ。」とリンダは言います。

本を選ぶリッタ ウォルフェ, リンダ スポレーン、イボンヌ アンダションの写真
(中央写真の説明)本を選ぶリッタ ウォルフェ, リンダ スポレーン、イボンヌ アンダション

参考情報

プレーヤー:トレクヴィスタはDAISYプレーヤー10台とMP3プレーヤー10台の購入を決めた。図書館で初めてDAISYプレーヤーを購入したのは3年前。その後も数台のプレーヤーがプロジェクト資金により購入された。各プレーヤーは図書館または特別教員のもとで貸出し可能。図書館にはヘッドフォンが余分に用意してあり、コンピューターで複数の生徒が録音図書を聞くことができるようになっている。
録音図書用の読み取りプログラム:すべてのコンピューターには読み取りプログラム「TPBリーダー」がインストールされている。このTPBリーダーはスウェーデン国立録音点字図書館(以下TPB)のウェブサイトから無料でダウンロードまたは注文が可能。
DAISY+本:図書館には約150冊のDAISY図書が準備されている。プラスチックケースに入ったデジタル図書が本とセットで置いてある。セットで貸出し可能。
ダウンロード:図書館には、リンダが表紙に金の星マークをつけた本ばかりが並ぶ特別な棚がある。この金の星はTPBのデジタル図書館から録音図書としてダウンロードできることを意味する。この棚に行けば録音図書を探すことができるので、教員にとっても生徒にとっても便利。エケローの学校図書館は公立図書館と同じ組織に所属するので、公立図書館と同レベルの権利をもってTPBのデジタル図書館から録音図書をダウンロードすることができる。
教材:6年生から9年生を担当する教員が新しい教材を選ぶ場合は、録音図書があるものを選ばなければならない。録音図書を探すのが難しい数学に関しては例外を認めている。5年生以下向けのDAISY図書は少ないが、トレクヴィスタ校は彼らの為の録音図書の購入も進めている。

特別教員の為のDAISY教育:5人の特別教員のうちほとんどが業者のもとでDAISYプレーヤーの使い方に関する教育を受けている。

教員へのトレーニング:ストックホルム教育大学の読解研究者マッツ ミールベリが学校教職員全員に向けて講義をおこなった。

両親対象のDAISY説明会:両親を対象としたDAISY説明会を検討中。

cThe Swedish Library of Talking Books and Braille, TPB

Bibliotek for alla 1・2007(みんなの図書館1・2007)

原本書誌情報
Maria Kimberg. DAISY overallt pa Trakvista. Bibliotek for alla 2007-Nr1.TPB, 2007, p.4-p.5,
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/BFA_nr1_2007.pdf (accessed 2010-03-04)