音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

DAISY for Allによる南アフリカのDAISYワークショップの参加者からのフィードバック

DAISY for All - 南アフリカワークショップ

Musa Mashinini(ムサ・マシニーニ)

Shakila(シャキーラ)様

南アフリカのすべての障害者のためにDAISY for Allワークショップを企画していただき、また、私どもの組織、南アフリカ盲人協会(SANCB)が、この刺激的な技術体験に参加できるよう、ご配慮いただきましたことをお礼申し上げます。

以下に、ワークショップ参加者としての私の体験に関するフィードバックをいくつかあげさせていただきます。

1.成果

ここでの私のコメントは、ワークショップから得られた私の個人的な利益と、私どもの組織、およびその利用者の利益に関する内容です。

個人的利益

私は、肉声によるライブ録音、DAISYおよびMP3フォーマットへのインポートおよび変換という新技術を体験することによって、個人的に利益を得ました。

この体験は、さらにAMIS、TAB、Pipeline、 Sigtuna、My Studio PC、Validator、Regeneratorなどの、DAISYの技術を使用したプレイヤーおよびソフトウェアの利用へと広がっていくでしょう。

また、.docx、.xml、HTMLおよびノートパッドのJavaスクリプト版など、さまざまなタイプのファイルに関するコンピュータースキルも向上しました。

組織の利益

南アフリカ盲人協会(SANCB)によって提供される製品およびサービスは、視覚障害者コミュニティにかかわるすべての範囲を網羅しています。これらのサービスは、南アフリカに限らず、多くのアフリカ諸国にも提供されています。一般に、私たちは就学前(幼稚園)のレベルと小学校から高校のレベル、高等教育レベルの各機関、政府・非政府機関、個人、関係機関および企業を対象としています。

読みと学習は、点字、拡大印刷、カセットテープおよびコンピュータの使用によって促進されます。にもかかわらず、すべての視覚障害者が、プリンターおよび/あるいはスキャナーを備えたコンピュータであるPerkins Brailler(パーキンス点字タイプライター)を買える余裕があるとは限りません。視覚障害者のコミュニティを対象とした、SANCBによるDAISYの製作と配布は、下の2で言及されている課題の代替解決策と考えられます。SANCBが高く評価する最大の利益は、DAISYのインストールおよび製作のための無料のソフトウェアとライセンスの提供です。

利用者の利益

ここでいうSANCBの利用者とは、一般の個人、オプティマカレッジの学生、公共機関および民間企業、政府および非政府機関です。これらの利用者は、SANCBがDAISYフォーマットで製作した情報やスキルを得ることができます。製作物は、トレーニングマニュアルや評価書類、雑誌(スポーツ、イベント、ドラマや物語)、経営および管理関係書類、製品およびサービス、そして図書館やアーカイブ用の資料など、さまざまな分野にわたっています。

DAISY製品のフォーマット、製作および配布は、SANCBが実施できますが、対象となる受益者は、DAISY製品にアクセスできるのでしょうか?

2.課題

以下の3例のように、DAISY図書の製作と配布、学習者の研修では、財源や機器、場所やインストラクターが課題となる場合があります。

2.1 DAISYプレイヤーを購入する資金が支払えるかどうかが、DAISY図書への移行を選択する者にとって課題となる可能性がある。

2.2 肉声による録音の際、録音機器と防音室にお金がかかる。また、ボランティアで正確な朗読ができる人を、見つけたり利用したりするのが難しい可能性がある。

2.3 学習者の研修のために必要なマイク付きコンピュータやヘッドフォンにお金がかかる可能性があり、またインストラクターに報酬を出す必要もある。

3.改善のための行動

前述の課題を改善するためには、DAISYプレイヤーの購入に対する補助金という形での資金提供の提案が、効果を発揮するかもしれません。政府の通信省、民間企業、そして個人寄贈者に、研修や製作、配布およびDAISYプレイヤーの購入のための資金援助を求めて、アプローチしていくことになるでしょう。

4.まとめ

DAISY for Allワークショップに、個人や組織としては何も料金を負担せずに参加し、研修を受けられたことは、本当に、非常に楽しく素晴らしい経験でした。私だけでなく、組織(SANCB)とその利用者も、ワークショップから得るものがありました。DAISY図書の製作と配布には課題がありますが、適切な計画と運営によって大量生産が可能になり、対象となるすべての関係者に利益をもたらすでしょう。私はSANCBがDAISY図書およびプレイヤーの製作と配布を行う機関を設立することを楽しみにしています。

DAISY研修プログラム

Chris Lewies(クリス・ルイス)

講習会の様子

DAISYという名称の方がよく知られているデジタルアクセシブル情報システムは、さまざまな障害を抱える人々による読み物へのアクセスを可能にする、マルチメディア同期化技術の標準規格である。このたび、さまざまな障害者グループを対象にDAISY図書の製作を指導するために、5月5日から11日まで、ヨハネスブルグのサザンサンガーデンコートと、プレトリアのオプティマカレッジで、DAISY研修プログラムが実施された。この研修は、日本財団から資金援助を受け、DAISY For ALLプロジェクトを通じて実施され、プログラムは大成功に終わった。

DAISYは視覚障害者に多くの可能性を開いてきた。今では視覚障害者コミュニティにとって、読み物や教材は完全にアクセシブルになっている。DAISYはアクセシビリティを促進するために多数のツールを利用しているため、DAISYによるドキュメントの製作は、フルタイムの仕事であると考えられる。また、非常に多くのツールを利用するということは、そのシステムを使用する人々が、その多彩なアプリケーションに精通するために、日ごろからDAISY製作用ソフトウェアの使用方法を練習する必要があるということも意味する。DAISYによるドキュメントの製作に使用されるさまざまなツールには、Pipeline、Sigtuna、My Studio PC、ValidatorおよびGeneratorなどがある。

ほとんどすべての電子文書は、DAISYによるドキュメントに変換することができ、変換後は、DAISYリーダーやDAISY読み上げ用ソフトウェアを備えたコンピュータ、一般のMP3あるいはDVDプレイヤーでアクセスすることができる。DAISYによるドキュメントでは、章から章へ、ページからページへ、パラグラフからパラグラフへ、文から文へ、見出しから見出しへと検索することができ、これによってドキュメントのアクセシビリティが向上している。

DAISY図書には、テキストを合成音声で読み上げる(TTS)図書、テキストを肉声で読み上げる図書、および音声のみの図書の3種類がある。DAISYリーダーは、TTS図書用のDAISYソフトウェアに、SAPIのバージョン3を組み込んでいる。SAPIによる合成音声はDAISYによるドキュメントに統合され、「通常の」テキストが作成される。ドキュメント中で箇条書きの前につけられた黒丸の点や振られた番号も、DAISYで読み上げられるので、非常に便利であり、ユーザーがアクセシビリティの向上のためにこのような機能を削除する手間が省ける。

テキストを肉声で読み上げる図書は、TTS図書と非常によく似ているが、TTS図書がSAPIというシンセサイザを使用しているのに対し、これは人間の声で録音しなければならない。音声のみの図書もまた、肉声による録音を利用している。音声のみの図書は、マイクにノートパッドをつなぎ、会議やワークショップのすべての内容を録音し、あとでDAISYによるドキュメントを作成することができるので役に立つ。一度ノートパッドからDAISYフォーマットへと情報が変換されれば、それをDAISYプレイヤーやDAISYソフトウェアを備えたコンピュータ、MP3あるいはDVDプレイヤーで聴くことができる。ドキュメントには必要な見出しがすべて入っており、前後にスクロールして簡単に情報を探すことができる。

DAISYによるドキュメントは、ナビゲートしやすく、読みやすく、そして出来上がったドキュメントの質はテープに比べてはるかに優れているので、間違いなく、アクセシビリティ技術に関わる前進をもたらす方法だといえる。DAISYは視覚障害者のコミュニティにとって、カセットテープなどの過去のアクセシビリティ技術に代わる未来である。しかし、この革新的な技術は極めて高価であり、最も安価なDAISYプレイヤーでさえも100ドル、およそ800ランドである。DAISYプレイヤーの中には400ドルを超える高価なものもある。今日の社会に技術がおよぼす影響が増大していることを考えれば、DAISYの技術が今後広まっていくことは必然であろう。DAISYの技術への需要が高まれば、眼が見える者と視覚障害者の両方にとって、たとえばタイピングや編集、DAISYの研修などのような、数多くの新たな仕事の機会が広がるであろう。

DAISYの研修期間中、私たちは厳しい実践的なプログラムをこなしていった。それは速いペースで、短時間で確実に、できる限り多くの情報を得られるよう計画されたプログラムであった。遅れがあれば、予定されていたセッションの後で、終わらなかった作業をすべてこなし、追いつくよう求められた。実際遅れが出たときには、幸運にもインストラクターたちが助けてくれた。研修参加者を支援してくれたDAISYのインストラクター-Olaf(オラフ)、Prashant (プラシャント)、Mayu((濱田)麻邑)およびDAISY会長のHiroshi((河村)宏)-は、大変有能で知識が豊富であり、非常に役立つ一対一の指導を行ってくれた。

インストラクターは、26人の研修生一人一人が、研修プログラムの一つ一つをすべて確実に理解し、実施できるように取り計らってくれた。その素晴らしい指導技術は期待の成果を上げ、7日間の研修ワークショップを終えた今、DAISY図書の製作を自ら他の人々に指導するために必要な技術が身についた。このように高い能力を持つインストラクターによる総合研修を今回受けられたことは、大変光栄であり、またプログラムを無事終了することができ、とても誇りに思っている。

さらに、立派な宿泊施設、絶品の食事、そして非常に有能なスタッフによる素晴らしいサービスを常に提供してくれたイサンドのガーデンコートホテルにも、感謝の意を伝えたい。滞在は快適であった。

忘れられない一週間を、すべての方に感謝しつつ。

DAISYに関するさらに詳しい情報は、DAISY For All プロジェクト南アフリカコーディネーターのShakila Maharaj(シャキーラ・マハラジ)、あるいはDAISYのウェブサイト(http://www.daisy.org/)まで。