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南アフリカ:DAISY製作ワークショップ -「DAISYの使徒」誕生-

DAISY Planet 2008年5月号より

南アフリカDAISY for All プロジェクトコーディネーターのShakila Maharaj(シャキーラ・マハラジ)氏は、南アフリカのヨハネスブルグで5月5日から9日まで開催されたDAISYワークショップは「驚異の研修体験」であったと、熱意あふれる報告を寄せた。参加者は当初、コンピュータに関する豊富な知識や経験があるにもかかわらず、DAISYを扱うことに対していくらかおじけづいている様子で、心構えもできていなかった。しかし研修が進むにつれて、その気持ちは急速に、熱意と、興奮と、すべての障害者のためのDAISYに対する心からの関心へと変わっていった。そして今では、参加者は自分たちのことを「DAISYの使徒」と呼び、DAISYに関して学んだ知識を普及し、スキルを共有することにすべてをささげている。参加者は皆、研修をうまくこなし、中にはすでにインストラクターとしての素質を示す優秀な者もいた。

南アフリカの障害者コミュニティでは、DAISYに対する強い関心が大いに高まっており、27名がこのワークショップに参加した。河村宏氏と、インド、スイスおよび日本からの6名のDAISY専門家がワークショップを実施し、5日間研修とサポートに当たった。南アフリカ全土から集まった参加者は、ディスレクシア、自閉症、知的障害、精神障害や視覚障害を抱える人々のコミュニティ、南アフリカ四肢まひ者協会、南アフリカ聴覚障害者協会など、20の障害者団体の代表であった。参加者のうち6名はスクリーンリーダーのユーザーであり、2名は介助者を伴っていた。また、大学、支援技術産業界、国際労働機関(ILO)からも、5日間にわたるこの集中的なDAISY製作ワークショップに代表が参加した。ワークショップではMicrosoft(マイクロソフト社)のSave As DAISY XMLとDAISY Pipelineの使用に関する研修も行われた。

ワークショップで直面したいくつかの課題は、参加者が使用するために持ち込んだラップトップや、それに搭載されているソフトウェアの種類や設定が原因となっていた。これらの課題は、その場にいたDAISY専門家、Sonata(ソナタ・ソフトウェア社)、および南アフリカのスタッフのサポートによって解決された。

ワークショップで製作するサンプルとして選ばれたテキストは、南アフリカDPI(DPSA)が編集した、HIV/AIDSトレーニングマニュアルであった。DAISYコンソーシアムとDPSAの間で、このマニュアルを南アフリカの10の公用語に翻訳することが決められていた。(英語版はすでに利用できる。)11の言語によるマニュアルがDAISYフォーマットで製作され、南アフリカでのAIDS予防および治療トレーニングに使用されることになる。DAISYフォーマットによる多言語マニュアルの配布は、DAISYコンソーシアムとDPSAによって共同で実施される。この共同作業は、南アフリカにおけるすべての障害者コミュニティをはじめ、さらに広く地域社会に貢献するであろう。

講習会の様子

以下にワークショップ参加者のコメントをいくつか紹介する。

「DAISYが自閉症の学習者の教育にどれだけよい影響を与えるか、すぐにわかる。」(南アフリカ自閉症協会代表)

「素晴らしい。これを仕事にしたい。いろいろな障害を抱えた子供たちを教えているが、DAISYはその全員に役立つだろう。」(全国身体障害者協議会代表)

「私はDAISYのスキルをさらに磨き、国際インストラクターになりたい。絶対に、聴覚障害者の役に立つに違いない。」(南アフリカ聴覚障害者協会(前南アフリカ全国聴覚障害者協議会)代表)

「うちのコンピュータスクールのコンピュータトレーニングマニュアルを、すぐにDAISYフォーマットに変換するつもりだ。」(南アフリカ四肢まひ者協会代表)

「製作は難しくなく、私たちでも扱えるし、利益は無限大である。」( 南アフリカ大学障害ユニット視覚障害セクター代表)

「DAISYは、ディスレクシアの人々にとって、絶対に役立つに違いない。読むことへの、マルチメディアを利用したアプローチによって、ディスレクシアのコミュニティに斬新な発展がもたらされるだろう。」(南アフリカディスレクシア協会代表)

DAISYワークショップは、DAISY コンソーシアムの主催で、日本財団から資金提供を受け、SIDA(スウェーデン国際開発協力機構)およびTPB(スウェーデン国立録音点字図書館)の後援により実施された。またMicrosoft(マイクロソフト社)は、惜しみなく技術支援を提供してくれた。同社ヨハネスブルグ代表のPaulo Ferreira(パウロ・フェレイラ)氏、アフリカ・中東地域技術オフィサーのMichael thatcher(マイケル・サッチャー)氏には、このような支援をいただいたことを感謝している。また南アフリカの障害セクターは、この画期的なイベントを支援してくださった日本財団の善意に深く感謝している。

南アフリカのメディアは、このイベントにひときわ注目しており、ラジオやテレビ、新聞の取材を受けた。インストラクターと参加者にとって、DTVのカメラマンとインタビュアーが録画や取材をしている時の様子を見られたのは、興味深い経験であった。南アフリカのDTVは、聴覚障害者向けのテレビで、テレビ局の取材班とインタビュアーは全員聴覚障害者であり、手話でコミュニケーションを図っていたのだ。

Shakila Maharaj(シャキーラ・マハラジ)は、次のように語った。「それぞれの障害者グループが参加する多数のプロジェクトが、確実に開始され、実施されるように、そしてこの活動が続いていくように、ゆくゆくは正式なDAISY フォーラムが設立されるでしょう。」

「私たちは南アフリカで『ヒロシ・マジック』に本当に心を動かされました。河村宏氏は、南アフリカで "DAISY For All" を実現することに成功したのです。」


「南アフリカ:DAISY製作ワークショップ-「DAISYの使徒」誕生-」は、DAISY Consortiumのニュースレター"DAISY Planet"2008年5月号に掲載されている"South Africa: DAISY Production Workshop -DAISY Disciples "Spawned-"の翻訳です。
http://www.daisy.org/news/newsletters/planet-2008-05.shtml