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意見交換会

モデレータ:河村宏(DAISYコンソーシアム会長)
話題提供者:
ディペンドラ・マノシャ (DAISYコンソーシアム開発途上国担当)
モンティエン・ブンタン (DFAアシスタント・マネージャー、 タイ盲人協会会長、上院議員)
石川准 (静岡県立大学国際関係学部教授)
ウィレム・ファン・デル・ヴァルト (メラカ・インスティテュート/南アフリカ科学産業研究協議会)

河村:それでは、パネルディスカッションを始めます。パネリストが壇上にいまして、私がモデレータを務めさせていただきます。DAISYコンソーシアム会長を務めさせていただいています河村宏です。よろしくお願いします。

先ほどの講演を受け、オープンソースというのは、大変広い範囲でソフトウェア開発戦略として使われています。本日は、オープンスタンダードであるDAISYに関わるソフトウェアの開発に的を絞って、オープンソース戦略について、これからパネルディスカッションを行いたいと思います。

最初に、パネリストを紹介をいたします。皆さんの向かって右側から石川准さん。右から2人目が、南アフリカから急に来ていただいたのでプログラムに載っていません。大変急なお願いで、絶対来てほしいとお願いしたら、快くパスポートを翌日発行してもらって駆けつけてくれたという、熱心な開発者で、ウィレム・ファン・デル・ヴァルトさんです。その次、右から3人目は、モンティエン・ブンタンさん。タイの盲人協会の会長で、さらに上院議員に当選されました。その隣が私が座っておりまして、私の、皆さんから見て向かって左に、ディペンドラ・マノシャさん。インドから来ていただいています。ナショナル・アソシエーション・フォー・ザ・ブラインドというニューデリーのオフィスから来ていただいています。大変進んだ視覚障害者のサポートを行っている団体から来ていただいています。ディペンドラ・マノシャさんのお隣に座っていますのが、ディペンドラさんの右腕、プラシャンさんです。今日はデモンストレーションを行いますが、そのときの助手を務めていただきます。

さらに詳しいことについては、配布したプロフィールをご覧ください。時間がありませんので、石川さんは有名な方ですから紹介を省きました。最初に、ディペンドラ・マノシャさんから、新しくオープンソースで開発を進めておりますObi(オビ)のデモンストレーションと、それに続いて口火を切る議論をしていただきます。その後、それぞれパネリストから最初に5分間ずつコメントをしていただき、それが終わった時点で、ジョージ・カーシャーさん、マリッサ・デメリオさんを含めて、短い意見の何回も行き来する交換をしたいと思っています。では、ディペンドラさんのデモンストレーションをお願いします。

ディペンドラ・マノシャ:河村さん、ご紹介ありがとうございます。皆様、こんばんは。私は、DAISYコンソーシアムのオープンソース・ソフトウェア戦略から得られたすばらしい成果についてお話しします。このようなソフトウェアを皆様方にご紹介できることをうれしく思います。このソフトウェアは、この国と非常に密接に関連しています。浦河プロジェクトの一部として開発されました。浦河という名前は、非常に日本の方たちになじみがあると思います。浦河プロジェクトという名前が付けられたのは、浦河という町で、このプロジェクトが行われたからです。Obiという名前も、日本人にはわかりやすいと思います。というのもObiも日本語からきているからです。Obiとは、いわゆる腰に巻く帯ですね。これは正しい情報だと思っていますが。このオープンソースのソフトウェアのObiは、DAISYデジタル録音図書を作るためのソフトウェアです。

録音図書の再生プレイヤー、AMISのデモンストレーションが先ほど行われました。こうしたDAISY録音図書を、オープンソース・ソフトウェアを使ってどのように製作できるかを見ていきたいと思います。このソフトウェアにはいろいろな特徴があって、まずその特徴をご紹介したいと思います。そして実際にソフトウェアのデモンストレーションをしたいと思います。どれだけすばらしい機能かというのを言葉ではなく、デモンストレーションで実際に示しながら皆さんに紹介したいと思います。これはオープンソースのソフトウェアなので、非常に多くの意味を持っています。

Windows XPでも、Windows Vistaでもこのソフトウェアを動かすことができます。Vistaではうまくいかないものが結構あります。ですから、Vistaの環境でもできるようなものをと思ったわけです。そうすればWindows XPにダウングレードしなくても済むと思ったわけです。Obiの明白な特徴ですが、まず完全にすべての人たちにアクセシブルということです。障害者、全盲の方、また弱視者の方も使うことができます。というのは、このアーキテクチャーのデザイン、ユーザーインタフェイスが、すべてのスクリーンリーダーをシームレスに活用できるようにしています。例えば、スクリプティングのような高度なフィーチャーですけれども、普通はソフトウェアでも非常に高いものでないとできないんですが、NVDA、サファのようなオープンソースのスクリーンリーダーにも対応し、弱視者、全盲者も無料で使えるようになっています。

このソフトウェアでデジタル録音図書の製作ができます。例えばレコーディングもできますし、スピーカーやマイクのボリュームの調整機能もついています。スプリットとかカット、コペー&ペーストや新しいセクションを作ることもできます。 しかしこのような標準仕様だけではなく、ユニークな特徴があり、それをご紹介したいと思います。それは途上国でデジタル録音図書を製作する経験をもとにしたものです。そしてその特徴の一つは、ドキュメントのセーブができる能力です。ということは、レコーディングしているときに望まない変更がなされたときには、それを破棄することができるわけです。 また、レコーディングしているときに間違えたという場合、その場所をマーキングしておくわけです。戻ってあとでやり直すことができます。

また、フレーズ検知も改善されています。かつては探すのにとても長い時間がかかって編集には膨大な時間がかかっていましたが。また、構造を作ることができます。そしてボタンを押すだけで新しいページをスタートできます。ですからですからレコーディングを中断する必要がないんです。 また、言語サポートも非常に優れています。 そして、多くの途上国において困った問題があります。目次を表示することができない、地元の言語で表示することができない、それでなかなか大きな問題になってしまうということがあるわけです。でも、すべての言語でそれが表示されるので大変便利になりました。 また、このソフトウェアは、浦河ソフトウェア開発キットというのがベースになっているのですが、将来においては恐らく、DAISY規格にのっとった、最も独自性のあるDAISY図書を作ることができるようになると思います。 ということで私の話はこのくらいにしまして、この後、プラシャンさんにデモンストレーションをお願いします。その後でまた特徴について解説をしたいと思います。

プラシャン:今、Obiを開きました。スクリーンに映っていると思いますが、ちょっとこれで操作してみましょう。

ご覧のように、ナビゲーションは簡単です。1つのスクリーンしかないので単純な構造になっています。レコーディングもエディティングも全部同じスクリーンですることができます。

1つのセクションをつかってどのようにレコーディングするのかやってみます。 別のセクションをここに作りましたので、ちょっとレコーディングしてみましょう。

プラシャンの声:これはDAISY録音図書です。

ディペンドラ:新しいセクションができました。1つのシングルキーを押すだけでいいんです。そうすると新しいセクションが作れます。USBマイクを使ってレコーディングができます。ただ、スピーカーからはアウトプットは出てきません。 ショートカットキーが全ての部分に備わっています。

プラシャン:レコーディングしましたが、マイクロフォンの調子があまりよくありませんでした。でもレコーディングにおいてはフレーズをマーキングすることができますし、セクションもマーキングすることができます。 編集上のフィーチャーも非常に早くできます。フレーズをスプリットできますし、適切でないというのであれば、すぐ元に戻ることができます。

新しい編集方法なんですが、セクションの初めと後ろをマーキングすることができます。フレーズの境界をマーキングすることができるわけです。オーディオのどの部分でもそこで止めて、選んだところの最初の部分をマーキングすることができるわけです。

ご覧のようにページ上のナビゲーションは非常に簡単にできます。フレーズのマーキングも非常に簡単にできます。プロパティスクリーンにそのフレーズを入れることによってでできます。 ページの数、あるいはその他のもののマーキングをしておくことができます。 そしてフラッグを付与するためには、フラッグを入れるだけでなく、リーダーに対してフラッグを付与することもできます。 また、キーボードコマンドを使って、次、または前の部分に飛ぶこともできます。 それをやりつつ、どこで間違えたのかを聞きながら、その箇所を見つけることができるという、新しいフィーチャーが付与されました。これでデモンストレーションを終わります。

河村:ありがとうございました。なかなか短い時間でのデモというのは難しく、香りをちょっとかいでいただいたぐらいで申し訳ないんですが、大いに期待を持っていただいていいと思います。
それではこれから、1人5分ずつと言いましたが、大分切り縮めざるを得なくなりました。

石川さんから順に、DAISYに関するオープンソースについて、もう少し広げて。必ずしもObiについてだけでなくて結構ですから、4分ぐらいで最初のコメントをお願いします。

石川准/4分ということですので、1分1点で4つコメントさせていただきます。今日は私、DAISYを進める立場から、DAISYのために建設的な批判をするよう求められて参加しましたので、そのような観点からのみコメントいたします。

4点ありまして、まず第1点です。DAISYによるオープンソースプロジェクトで今後解決していくべき問題です。例えばAMISを例にとって言うと、新しいコンセプトを提示することを優先するのか、それともユーザビリティ、安定性、完成度を高めて無償で、例えば開発途上国のユーザーに使ってもらう、普及することを重視するのか。あるいは両方やるのか。これをはっきりさせた方がよいと思います。現時点ではどうなっているかというと、コンセプト提示に実際的には重きを置かれていると私は考えています。それが意図どおりであればそれはそれでいいし、皆が誤解なく、そのようなものとして受け止めればいいけれども、そうではなく行き違いがあるとよくないかもしれない。

2点目は、もともとDAISYとは、録音図書をデジタル化するところから出発しているので、マルチメディアDAISYという新しいコンセプト、新しい局面を迎えています。それにもかかわらず、ナビゲーションはやはり音声中心を脱却できていないのではないかと感じます。マルチメディアDAISYのナビゲーションというのはまた別にあり得る。 音声とは、現時点でも常にペースメーカーの役割を果たしていて、例えば拡大を中心として読書をしたい人とか、点字で読みたい人は、ペースメーカーが画面表示だったり、テキスト、点字であるべきかもしれない。少なくとも選択できるべきではないかと思います。 音をいつも流しながらでないと点字で表示できないというのはAMISだけではなく、ghプレイヤーもそうですが、これは従来型の考え方がまだそのまま残っているのではないかという感じがします。

それからテキストDAISYでは、もっといろいろなナビゲーションが考えられるべきです。例えばパソコンでテキストを読むときは、段落ごとに読んだり、連続読みすることができますが、DAISYでは、原則で連続読みです。だけど例えばテーブルや数式を読みたいとか、あるいは細かく慎重に読みたいというときには、段落単位で読むなど、プレーヤーによってはそうした機能を実装しているものもありますが、でも根本の発想は連続読みですので、これを少し考えてもいいかなと思います。

3番目なんですが、Save as DAISYは素晴らしい一歩だと、高く評価したいと思います。しかし、先ほどジョージ・カーシャーさんの話にもあったように、ベータ段階でリリースしてしまったことは、関係者にとっては痛かったんですけれども。しかし、短期的には痛手ではあったけれども、実は長期的には良かったかもしれない。なぜかというと、オープンソースであっても、またオープンソースだからこそ、動作テストがとても重要だということを皆が痛感したということだと思います。あるいは、ユーザー参加の重要性、みんなで作るオープンソース、ということの重要性を改めて確認できたことは、長期的にはよいことだったのではないかと受け止めていいんじゃないかと思います。

最後4点目ですが、また、テキストDAISYについてです。教科書を作成するということでいうと、まだやはり仕様上、足りない機能がいろいろあるのではないかと思います。具体的には、例えば正しい読みをTTSエンジンに教えるマークアップは、まだないです。例えば、W3Cでいうと、SSMLが使えるかもしれないし、あるいは厳密に言えば流用だと思いますがルビ機能を実装することによっても、ある程度実現できるかもしれません。音声図書の自動製作と、正しく校正された音声図書の製作は両方重要だと思います。Pipelineがアドインに組み込まれるという話がありまして、非常に便利になると思います。しかし、まだ編集・校正機能は提供できないわけです。例えばWordのルビ機能を使って編集できるようになると解決できるかもしれません。そういう意味では、テキストDAISYのオーサリングツールに、私としては期待したいと思います。4分以上、かかったかもしれませんが、以上です。

河村:どうもありがとうございました。大変適切な指摘だと思います。
では、次に、南アフリカの国を挙げて作った研究開発機関、CSIRという、大きなメインストリームの研究機関ですが、その中に、メラカ・インスティチュート、MERAKAと書きますが、メラカという研究所があります。その中に、障害者のアクセスを中心にした二十数人の研究チームがあります。その中で活躍しておられる、ウィレム・ファン・デル・ヴァルトさんにコメントしていただきます。

ウィレム・ファン・デル・ヴァルト:まず、河村宏さん、それからDFAのプロジェクトの感謝したいと思います。
DFAは、DAISYやオープンソースの重要性を非常に認識していて、このオープンソースはDAISYにとって非常に有益だと考えます。こういったことを考えて、いくつかのポイントについてお話ししたいと思います。

まず、クロスプラットフォームの能力が、DAISYのソフトウェアの開発のために使われていますが、これは重要だと思います。プラットフォームというのは、情報テクノロジーの世界では非常によく使われていますが、それが何であるかはよく知られていません。ただプラットフォームとよく言われますが。 私はこのソフトウェアが、携帯電話であっても、10トンのトラックであっても、とにかく何でもその上で動いてほしいと思っています。 しかし、このソフトウェアをいろいろなところで動けるように、操作できるようにするには、多くの作業が必要になると思います。

2番目のポイントですが、私たちが確実にやらなければならないのは、オープンソースで行われる開発は、すべて調整されなければならないということです。ジョージ・カーシャーさんは最近、フォーラムをお作りになりました。そのフォーラムに、他のプロジェクトの方も参加できると聞いています。DAISYを普及させていくには、このような話し合いがなければなりません。いろいろな問題を抱える人びとがいますが、その問題は、別のオープンソースのソフトウェアで解決することができるかもしれません。例えば現地語版の、あまり話す人が少ない言語でもDAISYが作られています。DTB(デジタル録音図書)メーカーによって作られています。しかしこのツールがあるということを、多くの人は知りません。

この技術は非常に偉大な技術だと思うんです。 なぜオラーリを開発し、SMILエンジンを再開発しているのかなと思うんです。これらがあるのに。あることはみんな知ってるでしょう? なぜ、LinuxでDAISYが走っていて、MacintoshでDAISYが走らないのか。オープンソースなんですから、簡単にポートできるはずなんです。

それから、もう一つ言いたいのは、建設的な批判と受け取っていただきたいのですが、決して開発者を批判しているわけでもありませんし、皆さん素晴らしい仕事をされていると思うんですが。よく聞かれることなんですが、どのようなプログラム言語が一番よいかということです。皆さん、答えはご存じだと思いますが。だからこのようなランゲージで書いてるんだと思います。要するに、使われている言語が一番だとみんなが思っているということです。特に、少数言語のスピーチを合成する場合には、オープンソースが一番いい結果を生むと思います。

私はアフリカ語でのスピーチを作っているんです。これはマルチリンガルな合成装置を使っていて、障害者のために使っているんですけれども。何が起こったかというと、これはLinuxで走っているんですが、Windowsにポートされました。というのは、スピーチ障害のある人たちは、SAPI5の合成装置があれば他の言語の人と話をすることができるんです。ですからこれは重要なことだと思うんです。アフリカ語を話す人たちはそのあたりのことをあまりよくしていなかったんです。私はそのとき、他のことに関わっていました。このスピーチがWindowsにポーティングされて、他の人たちが乗り出してきました。それでスピーチルールを作り始めましたんです。そして正しい発音などを調整するようになったわけです。それで今、ほとんどの支援技術で、Windowsで走っているものがあるんですが、Windowsためのオープンソースのスクリーンリーダーを作るということになりますと、それぞれのスピーチがそれに乗らなければいけないんですけれども、例えばアフリカ言語の音素を変えなければならないんです。これはLinuxで改良されましたが大変大きな貢献がありました。そしてそれがWindowsに移されて、今、フィードバックが来るようになりました。このような展開から、よくわかりませんけれども、多分、こういうようなものが将来的にも開発できる可能性があると思うんです。

アフリカにとって、また途上国の他の国でも一番安いコンピュータというのは携帯電話なんです。ですから私たちが何をしようと、無料のDAISYプレーヤーというのが必要ですし、また他のツールも欲しいんです。それを使ってテキストと、少なくともオーディオが使えるようにしたいんです。

最後に申し上げたいのは、メラカの研究所には、たくさんのエンジニアもいますしスキルもあります。いろんな言語対応のプログラムがあります。また携帯電話の開発もしていますが、資金提供者がいればさらに開発ができると思っています。どうもありがとうございました。

河村:ありがとうございました。ちょっとオーバーランしたんですがはるばるアフリカから24時間かけてきてくれたので、皆さん、どうぞご容赦ください。 その都合でモンティエンさんに渡す時間が少し短くなりました。3分くらいでお願いしたいと思います。

モンティエン・ブンタン:私は議員でもあるので効果的に話すことに最近は慣れています。2つに絞って話をしたいと思います。

最初はDAISYについて。特にDAISY for All。これはオープンネスを体現する1つの例だと思っています。まさにオープンソース・ディベロップメントにぴったりだと思います。オープンソース開発というのは個人的に、表現の自由というコンセプトに呼応するものだと思います。それが世界人権宣言にうたわれているものを表していると思います。非常にはっきりと、つまり障害者の人権を守るために、完全な、そして効果的な人権を守るために必要なものだと思っています。つまり情報へのアクセスや表現の自由というものはすべての人に保障されなくてはならないと思います。それをまず言いたい。それからオープンソースということですが、これははっきりと、ユニバーサルデザイン、そして支援技術のコンセプトをはっきりうたわなければいけないと思います。それは条約においても、世界情報社会サミットにおいてもうたわれていることです。

2番目のポイントですが、DAISY for Allを、All for DAISYということで訴えていきたいと思います。それこそが唯一の方法だと思うんです。つまり、民主主義の原則だと思います。すべての人、すべての社会にオープンでなければならない。すべての人たちがオープンに参加できる環境を作っていかなければいけないということです。

西側の先進国においては、もちろんそこでDAISYが生まれたんですが、確かに視覚障害者が一つのきっかけになっていったわけです。初期のDAISYの開発を促したのは音声開発でした。つまり、音声で聞けるテキストの開発ということでした。しかしながら、特別なサービスを支えるために、西側諸国ではたくさんの助成金が出ました。その状態は変わっていないわけです。しかし一方で途上国においては、視覚障害者のためのそういう特別なサービスを提供するための助成金を確保するのは難しいんです。 ですからDAISYは是非、すべての社会に認識してほしいと思うわけです。つまり、DAISYはもちろん障害者のコミュニティのための特別なサービスを確保しなければならないけれども、それだけではなく、例えば聴覚障害者ことを考えると、まだDAISYは不十分だと思います。例えばビデオサポートや動画というのは不十分だと思います。

例えばマリッサから聞きましたが、こういうプレーバックはAMISが開発を進めていると聞きました。、次の世代のDAISY仕様についてはビデオサポートは絶対必要です。本当にすべての人のためのDAISYを実現するならば、それが必要です。すべての人のニーズに応えるのであれば、動画のサポートがなければなりません。つまりそれをDAISYの中に組み込むことができれば、恐らくもっと多くの人たちに歓迎されると思います。そして障害者のためのサービスというものはそのまま確保できると思うんです。これこそが唯一の方法ではないのでしょうか。これしかないんです。DAISYがすべての人のためのものになるためには。オープンソースの開発を通じて以外ないと思います。

河村:建設的な批判がたくさん出されました。これまでの開発の成果は十分認めた上でということでした。
ここで、カーシャーさんと、マリッサさんに、それらの建設的な批判にどのように答えるか、ぜひコメントを聞いてみたいと思います。最初に、ジョージ・カーシャーさんにコメントをお願いして、次にマリッサさんにこれまでのコメントに対しての意見をお願いたいと思います。

カーシャー:SSMLのコメントなんですけれども、このコメントは非常に素晴らしいものだったと思います。既にDAISYのPipelineには組み込まれていますので、発音の間違いを修正することができます。この制作のプロセスの中で、間違えた場合にはです。

SSMLが標準に含まれるかどうかと石川先生がおっしゃいました。TTSエンジンがもっと正しく発音できるようにするためということですが、私たち、今のリクエストをぜひ心に留めたいと思います。今、標準版の修正版を見ていますので、これをぜひ、入れたいと思います。私たちも既に、その問題を認識しておりました。

浦河プロジェクトで行ったことですが、ドッドネットのフレームワークの中でエンジンを作ったときには、DAISY Pipelineほどクロスプラットフォーム対応ではない。JAVAベースではないのです。Linuxは、MacやWindowsで使われますけれども、クロスプラットフォームの互換性を実現したいと私たちは思っています。

またさらに、今、私たちが入手できるプロジェクトの資金で、どのようにやろうかと検討しています。人々は、もっと早くツールを手に入れたいと言っています。ですから難しい選択を迫られています。資金面の制限があります。もちろん理想的にはクロスプラットフォームの開発が望ましいと言えます。すべてのプラットフォームに同時に開発していくのが望ましいのですが、やはり資金の問題があります。資金が現状のままでは理想の実現はなかなか難しいと言えます。マリッサさん、お願いします。

デメリオ:私の方からも付け加えるとすれば、非常に要望は多いわけです。しかし、資金は限られています。でもお互いのプロジェクトの中で何が必要とされるのか、お互いのプロジェクトいろいろと研究して、情報交換する必要があります。また、重複して行われていることがあるかもしれません。コードライブラリを利用するという手もあります。ですので、本当のニーズは何か、どのような形で使いたいのか、また既に開発されたもので再利用できるものはないかということに関して、いろいろなプロジェクトの間で情報交換をすべきでしょう。そうすることによって同じような成果物をたくさんのプロジェクトが開発するというような無駄が省けると思います。

河村:ありがとうございました。最初に申し上げましたように今日のセッションは、3日間ある会議の中の一部です。DAISY for Allの総括会議の一部です。この後さらに明日、明後日、場所はここをお借りしてさらに議論を深めていく予定です。今日は午前中からずっと、カントリーレポートといって、それぞれの国で、DAISY拠点がどういう活動をしてきたか、総括をしています。明日は、タイ、インド、南アフリカ、フィリピンの総括の議論をやります。その中にも、今日の議論がたくさん出てくるはずです。

そうした形でやりますので、実は明日、明後日は、英語でやるんですね。今日は、日本語で通訳をしてもらっていますが、実際に、明日からは英語の会議になります。ただ、同時通訳者の方も、明日、明後日来ていただきますし、要約筆記者の方々にも来ていただきます。今日参加された方、あるいは参加できなかった方で、さらにこの議論の先、あるいは具体的にそれぞれの国の中でどのようにやっているのか、ご関心を持たれた方は、ぜひ私どもにその旨をおっしゃっていただければ、今日と同じような形で、皆さんに向かって話すのではないですが、仲間内でやっている感じのところにオブザーバーとして参加していただくことが可能です。

今日は時間がオーバーしそうで、主催者の野村さんが気が気でないと思うので、そういう続きの議論をしますとお約束しまして、私どもはDAISYコンソーシアムのWebサイトに、いろいろな情報を公開しています。その中に、今日の議論の結果も公表していく予定です。www.daisy.orgをご覧いただければ、アップデートされると思います。

最後に、パネリストの方々に1分ずつ、本当に申し訳ないんですけれども1分ずつコメントをしてもらって締めくくりにしたいと思います。ディペンドラ・マノシャさんから1分間のスピーチをお願いします。

マノーチャ:河村さん、ありがとうございます。
オープンソース戦略に関して言えば、いろいろなコメントがされましたが、私から申し上げたいのは、オープンソースのツールというのは非常に大きな役割を果たしています。2つか3つの異なるレベルで大きな役割を果たしています。例えばDAISYコンソーシアムは、多くの労力を割いてソフトウェア開発ツールを作っています。また、他の商業、非商業プロジェクトが、このようなプロジェクトの成果を利用してエンドユーザーに成果物を届けていくことを可能にしています。

多くのユーザーがいます。様々なユーザーがこのソフトウェア開発ツールを使っています。DAISYオーサリングツールや再生ツールを使っています。しかも、その元にあるのは、多くのライブラリです。たとえ商業用のソフトウェアであっても、制作コストが下がります。非常に手頃な価格でソフトウェアが入手できるようになります。また、いろいろな人たちが開発に参加できるというのも、オープンソースのよいところです。多くの人が参加することによって、よりよいツールができ、各国語版に対応することができると思います。

ブンタン:繰り返しになりますが、オープンで参加型のプロセスなんです。それによって、民主主義が進められると思います。ユニバーサルデザイン、支援技術があってこそ、すべての人のアクセシビリティを確保できるんだと思います。だからこそDAISYにとっては、もっと頑張って、オープンソース環境を整えていくということがよい考えであり、かつ、やらなければいけないことです。そうすることですべての人のためのDAISYが実現できるんだと思います。そして、その目的も叶えられるのではないでしょうか。いま、オープンクロスプラットフォームの話が出ましたが、私も賛同いたします。恐らく途上国がオープンソース開発に参加できるようなリンクが生まれるのではないかと思います。恐らく南アフリカ、タイとは協力できる可能性があると思います。それから動画も将来、大変楽しみなところです。そういう面でももっともっとオープンソースの開発を願います。

ウィレム:まず最初に、非常に実り大きいセッションだったと思います。ぜひ、今あるソフトウェアを他のプラットフォームから使えないかということを見たいなと思っています。とにかくそれが最大に活用できるようにする必要があるのではないでしょうか。その方が、もう一度今あるものを一から書きなおすよりいいと思います。ぜひやってみたらどうかと提案したいと思います。

第2に、どなたかDAISYを進めたいと思う人となら誰とでも一緒に協力したいと思います。
そして最後に、すべての人達に参加していただいて、オープンソース環境でアクセシビリティーを提供できるような開発に携わっている人たちがいると思うんですね。そういう人たちと協力していきたいと思います。例えば新しいWindowsのアクセシビリティモデルとか、そういうものを開発していってはどうでしょうか。するともっと幅広く活用できると思います。そうすることで我々の全体的な作業量も減るのではないでしょうか。これはDAISYツールがオープンソース環境をもって進化していくということだと思うんです。ですからアクセシビリティの開発に携わっている人達はできるだけ参加して欲しいなと思っています。そうすることで最良の結果を生むことができると思います。

石川:DAISYは、まさに今、全く新しい局面に到達していると思います。 世界的にはSave as DAISYというのがそれですし、国内的には、携帯型のDAISYプレーヤーが今年、既に何台かリリースされ、またこれからもリリースされるという状態になっています。また、携帯電話にもDAISYプレーヤーがのるということが既にアナウンスされています。びぶりおネットというオンラインDAISYのサービスが、携帯電話で利用できるようになるのは非常に大きいと思います。DAISYを利用したい人は潜在的には非常にたくさんいます。学習障害の人たちは言うまでもなく、高齢者、あるいはそれ以外の人々も、お金を払ってでもいいからDAISYコンテンツを携帯電話で読みたいと、そういう時代になるのではないかと思います。

例えば毎日の新聞を携帯電話でDAISYフォーマットで読むというライフスタイルというのは、何も視覚障害者に限らず、車を運転しながら通勤する人にもすごく価値があって、無償で図書館を通して提供されるものと、有償でビジネスモデルとして提供されるDAISYコンテンツ。それぞれについてユーザーは範囲が異なるかもしれませんが、どちらの枠組みにしても利用者を広げていくことがこれからの大きな目標になると思います。

河村:まとめになるかわからないんですが、できるだけ短くまとめてみたいと思います。
全体として、モンティエンさんが概括したように、DAISYの基本的な考え方は、どうやってメインストリーム、普通にあるものを誰もが同様にアクセスできてわかるようにしていくのか。そのためのスタンダード、規格として開発しているということです。つまり、石川さんが言われたように、誰もが新聞を紙で買うという選択だけでなく、朝、携帯電話にDAISYフォーマットの電子ファイルで自由に検索できる形でダウンロードして出て、一日の中の好きな時、好きなところを検索して読むというライフスタイルがあってもいいんじゃないか。そういうことが当たり前の選択肢になると、これまで紙の新聞では読めなかった人たちが、新聞を皆が同じ価格で手に入れることができるようになる。これが一つのユニバーサルデザインの実現になるわけです。

同時に、でも、盲ろうの人は点字じゃないと読めない。その場合には点字ディスプレイを携帯電話でも何かコンテンツのあるものにつないで、点字で読めるようにする。ここにはどうしても点字の機器が必要です。それが福祉機器とか支援機器と呼ばれているものです。ですから常にユニバーサルデザインと、個別の障害にきちんと対応する支援機器・支援技術とが一体になって一人一人をサポートするというのが不可欠です。でもコンテンツに関しては極力、ユニバーサルデザインを実現しようというのがDAISYの主張です。

浦河プロジェクトということが何度も言われました。これは、この前のインドネシアの津波で30万人の方が亡くなっていて、その中には、インドネシア周辺だけではなく、アフリカでも死者が出ていますし、ヨーロッパや日本、アメリカからその地域に行っていた人が大勢亡くなっているわけです。つまり津波という1つの災害を通して、私たちがいかに脆弱な環境にいるのか、いつ、生命の安全が脅かされるかわからないということを歴史的な教訓として得たのですから、そのことをモデルにして、これからは事前の備えをし、ちゃんと理解をしてきて、警報がきたらどこへ逃げたらいいか何処に行ってもわかるようになっている。そのためには、事前にみんなが学習し、訓練をしなくてはいけない。今までの防災訓練や防災の取り組みに本当に重度の障害のある人が参加できていただろうか。そういうところから、浦河プロジェクトというのが始まっています。

ここにいるほとんどの開発者が浦河に一回集まって、浦河の住民と町長さんや自治会長さんや地元の人を交えて200人ぐらいで、浦河が最も地震が多いし、そこには「浦河べてるの家」という精神障害者が地域に暮らしている。そういう人たちと一緒になって、誰一人、津波のときに浦河で死者を出さないために、ITの技術開発をするために、自分たちが何を貢献できるのかという議論をしました。

そのときに、フィリピンからラニーロさんというフィリピンの自閉症協会の方が参加され、今日もいらしています。ラニーロさんはフィリピンの自閉症協会の役員の方です。今回の会議に参加してもらいました。自閉症の方たちは、災害のときに大変な苦労をする。精神障害の人もそうだし、高齢者もみんな苦労するわけです。他に身体障害の方たちなど、いろんな障害のある人、1人も取り残さず津波のときにきちんと避難できるためには技術は何ができるのか。DAISYは何ができるのか。そういうモデルで技術開発をやるんだと。そのことがグローバルに途上国でも通用するユニバーサルデザインの核になるだろうということで浦河プロジェクトという技術開発プロジェクトを今、進めているところです。その中で建設的な批判。でもオープンソースでいくことについてはだいたいみんな一致できているようなので、これから私どもDAISYコンソーシアムは、ますますオープンソース戦略に確信をもてるような取り組みを進めていきたいと思います。

最後に、開発者、企業の方、あるいは個人、団体の方、いっぱいいらっしゃると思います。企業の方はDAISYコンソーシアムに加入する方法があります。「フレンド」という方法です。マイクロソフトもグーグルも企業としてDAISYコンソーシアムの「フレンド」になっています。日本ではシナノケンシも「フレンド」です。ぜひ、企業の方はDAISYコンソーシアムとともに技術開発を進めていくために「フレンド」になっていただきたいですし、それから、コミュニティでみんなでオープンソースを育てる。それは個人でも団体でも参加できるわけですから、今日を機会に、ぜひ今後ともDAISYコンソーシアムの活動に積極的に参加していただけるようお願いしてまとめとさせていただきます。

司会:ありがとうございました。本日、情報保障をしていただいた要約筆記の方、同時通訳の方、本当にいろいろな技術的な単語が出てきて難しかったと思いますが、ありがとうございました。皆様、拍手で感謝していただければと思います。(拍手)また、講師の方々、大変ありがとうございました。そして参加者の皆様に、心から感謝申し上げます。また、日本財団にDFAというプロジェクトを完成させて下さったこと、そしてまた、会場提供をして下さったことに感謝したいと思います。本日はありがとうございました。次の機会にお会いできればと思います。ありがとうございました。

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