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(財)日本障害者リハビリテーション協会の普及活動と今後の展望

財団法人日本障害者リハビリテーション協会情報センター長
野村 美佐子

講演要旨

日本障害者リハビリテーション協会のDAISYの普及活動は厚生省補正予算事業により1998年から2001年にかけて行った視覚障害情報提供関連施設へDAISの導入にむけた活動から始まりました。この事業をきっかけとして点字図書館でDAISY図書の貸し出しが行われるようになったわけです。そして2001年には、利用者を拡大して認知・知的障害者を対象としたマルチメディアDAISYの研究・開発と普及の活動が始まりました。本セミナーでは特にディスレクシアなどの学習障害者や知的障害者の教育支援としてのDAISYに焦点をあて、実際のデモを通してその有効性と支援活動について報告し、今後の全国的な支援環境づくりについても外国の事例を利用しながら述べたいと思います。


これから報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。先ほど片石常務からお話がありましたように、1998年ぐらいから日本障害者リハビリテーション協会としてDAISYの普及に関わってきました。今、情報センターは私を含めて7人という体制でやっています。本日は代表として私のほうから報告をさせていただきます。

まず、DAISYとは。
皆さんのお手元には、「DAISYとは?」と簡単に書かれたものがございます。 今回、「DAISYがはじめてです」と言う人はいらっしゃいますか?
  ほとんどの人は知っていらっしゃるんですね。 DAISYはデジタル・アクセスブル・インフォメーション・システム。 この頭文字をとったものです。 アクセシブルな情報システムと訳します。 「アクセシブルとは何か」と、ディスレクシアの方に聞かれまして、「誰でも利用できる」と申し上げました。 「全ての人にとってのDAISY」というように普及を頑張っています。 基本的には視覚障害者の方のための支援技術としてDAISYの開発がはじまったのですが、開発するにつれて、一般の印刷物を読むことに障害がある方々のための情報支援ツールとなっていきました。

では「印刷物を読めない」というのは、どういう人なのでしょう。こちらに書いてありますが、手が不自由でページがめくれない人もそうですし、もちろん視覚障害者、そして目で読むことはできても理解ができない人も入るのではないかということで、学習障害者や知的障害者、理解の難しいと言われる精神障害者なども入るのではないかと思われます。あるいは自閉症、パーキンソン病や高熱にともなう複合的な障害など、様々な障害の方、一般の印刷物を読めない人たちに焦点を当てて、DAISYを普及しています。

デジタル図書の国際標準規格、「ANSI Z39.86-2005」とありますが、これはアメリカの規格になりました。国の規格になっているということです。そして種類は音声と目次、テキストのみ、テキストと音声、こういったものがDAISYと呼ばれる仕様です。テキストのみというのは何なんだろうと思う方もいるでしょう。例えば合成音声を使って読むことができる。そのためのDAISYをまず作る。ストラクチャーを作るというときのテキストを意味しています。

DAISYコンソーシアムが1996年に設立されています。コンソーシアムにより開発と維持が行われています。こちら画面のURLでアクセスできます。コンソーシアムのサイトですが、英語ではちょっと思う方は、私たちのWebにアクセスしてくだされば、重要点は翻訳されております。

スライド:DAISYとは?

日本での普及はどうやって始まったか。日本障害者リハビリテーション協会のことを皆さん、「リハ協」とおっしゃいますが、リハ協の活動が最初です。河村宏さんが私の上司であったころ、1998年から2001年にかけて日本におけるDAISY導入を始めまして、厚生労働省の助成によって様々な支援事業が行われた結果、点字図書館でのDAISY図書貸し出しが始まりました。

2001年からは、認知・知的障害者対象のマルチメディアDAISYの研究・開発事業を開始いたしました。 視覚障害者のためのDAISY図書の普及が始まったところに、さらなる普及として、認知・知的障害者も対象にしたDAISYの開発が始まったのです。そのための規格委員会の設置。やはり当事者団体やDAISYを作れる人たち、専門家や教育者などさまざまな人に集まっていただきました。

「どういうDAISYであればいいのか?」ということでディスカッションしながらやっていったわけです。関連する情報の収集、Webサイトでの掲載も同時に始めました。画面にURLがありますので、さまざまなDAISYの紹介が掲載されております。そこは「デイジー」と入れて検索すれば、様々な情報が出てきます。

サンプルマルチメディアDAISY図書の製作もやっています。先ほど「3匹のこぶた」を見ていただきましたが、お子さん向けの見本もつくりました。著作権の問題があったわけです。これならもう50年経っていて、著作権は関係なかったので、DAISY化しました。また、DAISY再生と製作ツールの無料提供、研修会開催も行っています。

スライド:リハ協の活動

また、「赤いハイヒール」出版プロジェクトというのが、2005年ぐらいにありました。ひとつのハイライトです。原本は1994年に出版されて、テーマは、ちょっと難しいのですが、知的障害者の愛の物語です。また、お母さんが子どもから自立し、子どももお母さんから自立していく話です。その部分は、「赤いハイヒール」というものに象徴されて、物語の展開があります。

原本は1994年に出版されたのですが、国際児童図書評議会からBest Book for Young People with Disabilitiesということで、障害者のための推薦図書として選ばれています。読みやすい図書として注目を集めました。「読みやすい」というのは分かりやすい。なかなか知的障害者は、難しく書かれると分かりません。ということで、やさしく書かれた本を、さらにやさしくするために、DAISYがあるということで、このプロジェクトを始めました。2005年からプロジェクトは始まり、2006年6月に出版をいたしました。

スライド:赤いハイヒール出版プロジェクト

こちらに出版した本があります。「赤いハイヒール」がキレイに出ています。

赤いハイヒール表紙

DAISYの教材の試みを2006年に行いました。世界文化社からデータをいただいて、3つのバージョンのDAISYを作りました。1つめは、普通読み。2つ目は、区切り長めバージョン。3つ目は区切り短めバージョン。すべて分かち書きにしていますが、ハイライトの部分がそれぞれ違っています。

スライド:DAISY教材の試み

また、読み方も、少し変えています。こういったことで文字に興味を持ちつつある、あるいは文字に興味を持ってはいるが十分読めない知的障害の子どもを対象として編集をしたものです。その結果、好評で、これはDAISY版の教科書ができるのではないかという可能性を見出したわけです。

その結果、今回テーマとしているDAISYによる教科書提供が始まりました。基本的にはボランティア団体が取り組んでおりまして、最初は奈良DAISYの会とか、名古屋にあるひなぎくが、要望に応じて作成しておりました。その中で、今年2008年9月から奈良DAISYさん、「ひなぎく」、富山大学の森田先生などの協力をもって、また、江戸川DAISYも入って、ボランティアで始まっていますが、それらの団体の協力のもと、小学校1年から中学校2年までの読みに困難のある生徒27人にDAISY版教科書の提供を始めました。

兵庫県LD 親の会「たつの子」というのが、神戸にあります。神戸に行って、DAISYの話をしていたら、ぜひ提供を受けたいということで、試験的に始まりました。希望を募ったら、まあ、10人ぐらいかなと思っていたら、27人ということでした。あわてまして、ほかのボランティアの方に助けをいただきながら、行いました。また10月頃にアンケートを取りながら進めています。

今の時点では、お母さんがやりたいんですね。お母さんと一緒に子どもがやる。そこからいかない子もいますが、だんだんそのうちに自分でやりたい、自分で操作したい、そして自分のペースで読みたいというふうになっているところもあります。ただし、中学校2年になると、「自分」というものがあるんですね。親から言われてもなかなかやれないといった状況があります。

スライド:DAISYによる教科書提供

様々な普及活動の中で、教科書提供、事業の紹介を始め、どんどんそう言う方々のリクエストが私達の協会に来るようになりました。どういう点が着目点になるのかと考えましたところ、はやり、ハイライトされたテキストに音声と画像が同時に表示されるということで、どこを読んでいるかが確認できるわけです。目次があるので、読みたいページに移動ができます。スライドに「ごんぎつね」があります。縦書きになっています。ルビがつけられます。縦書きについては、河村さんがおっしゃっているように、日本独特の仕様なので難しいところがあると。その辺の所は、今後の開発で解決されていくのではないかと思います。

見ていただけますように、左に目次、右にハイライトされた文字が見えていると思います。ルビが付けられています。ルビを付けることで読みやすくなる。そして再生ソフト追加により個々のニーズにあった読み方ができます。再生ソフトがあるのですが、それにプラスをする。例えば視覚障害者ですと点字をプラスするとか。知的障害者であればキーボードが使えないので、タッチパネルを追加するなどしていきます。そうすることにより、個々のニーズに合った読み方ができます。文字の大きさ、スピードの変更、文字ハイライト・背景色の変更ができます。スピードについては正直に申し上げますと、今ちょっと問題を起こしているんですが、その辺の部分を、個々の音訳者がなんとかクリアしようとして、ゆっくり読んでいます。

スライド:マルチメディアDAISY教科書としての着目点

簡易操作機能があります。追加機能が可能ということで、タッチパネルということです。ゲームコントローラー、ゲーム機で使う操作機能も使えます。再生ソフトプラス工夫をすることで、さらに支援機器を増やしていくと考えればいいでしょうか。DAISYを製作したものが、ユニバーサルデザインのコアのマルチと考えると、追加されるのが支援機器と考えていただければと思います。これ自体、DAISYというのは情報支援ツールですので支援機器なんですね。その中で見ますと、DAISYはコアのものになり、それにプラスして、それぞれのニーズに合ったものがあると、追加すると考えてもらえればいいです。1つのソフトがあれば全部誰にでもできるとは思わないでください。 それに、それぞれの機器があってもいいと思うのです。

スライド:再生ソフト+追加により個々のニーズにあった読み方ができる

「これは誰にでも使える」というときに、もしかしたら学習障害者だけしか使えない場合もあるし、視覚障害者のためだけに音声の小さな機器もありますが、ハードウエアもあるのですが、そう言うときにはその人のためだけに使うとか、いろいろなやり方があると思います。繰り返し読むことができるとか、自分にあったペースでできるなどがあります。繰り返し読むことで、だんだん習慣になっていき、読書力がつくのではなかと。それは多分、DAISYのせいではなく、それを繰り返し行うことで、頭がそのようにシステム化されていくのではないかなという想像です。

こちらは2008年の普及活動のハイライトの写真です。4つあり、左上がLD学会のときの写真です。このように本を展示したり、パネルを展示したり。またパソコンで再生をしました。右上もDAISYの展示で。タッチパネルが見えると思います。そしてパソコン本体。会場で参加者が来て、聞いている写真です。これもLD学会です。

一番左は、展示場所をいただいたのが畳の部屋でした。とても大変でした。座って展示をして、説明するのははじめてだったので、お互いに大変だったなと思います。これは特殊学会で展示をしたときのものです。右下が、成果と考えていただけるような写真です。この子は全盲ですが、タッチパネルが本当に簡単な操作だったので、「やってみようか!」と。 左側にいるのがお母さん。すごく楽しんでやっていただき、写真も撮っていいですかと聞いたら、こういう写真が撮れたので、お見せいたしました。

スライド:普及活動(2008)

何が課題になっているかについて話したいと思います。DAISYの製作者が圧倒的に不足しています。どうしてかというと、やはり製作に時間がかかります。マルチメディアDAISYは更に時間がかかります。まず最初に、テキストをつくります。Webの言語なのですが、HTML化をします。そして次に録音をします。録音のために最初に準備をして、録音し、音声の編集をします。例えば絵を入れたいとき。 最初にウェブと同じでHTML化するときに入れるのですが、そういう準備がありますし、音訳ということで朗読に近いのですが、それなりの準備が要ります。そしてシンクロしていくのですが、最後にビルドと言って、本を作っています。このようにすごく時間がかかります。1人でやるのはとても難しいと思います。

教科書会社からのデータ提供が今のところありません。データ提供はないのですが、来年度には法律が変わり、提供されるようになります。現在は、DAISY版教科書製作のガイドラインがないのです。縦書きがいいのか、横書きがいいのか、その子に合わせていきますが、だいたいどれぐらいのハイライトにしたらいいかなど、ガイドラインがないので、ボランティア団体でそれぞれでやっているところがあります。

マルチメディアDAISYの利用法の説明が必要です。さっき言ったように、ハイライト化する場合に、「ハイライトの色が変わる」とか、フォントが大きくなるとか、簡易操作で目次をはずすことができるとか、最低の知識を持っていただいて、初めてDAISYを使っていただく必要があります。 そういう説明なく提供すると、なかなか理解されないこともございます。

多様なニーズの把握と、それに対してソフトウェアのさらなる開発が必要です。そして著作権が一番大きな問題になっています。ですが、教科書に関しては少し明るい展望が見えております。これらの活動については、いろいろな団体の構成でなる放送協議会というものがあり、そちらで活動してもらっています。そして、その結果と言いますか、だんだんそういう兆候になってきた、世の中の流れになってきた中で、画面にありますが、2007年度の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の中間まとめでは、知的障害、発達障害にとって著作物を享受するためには、一般に流通する著作物の携帯では困難な場合も多く、DAISY図書が有効である」というように、DAISY図書という言葉が見え始めています。そういう言及がされており、それによって少し解決できるようになるかと思い始めました。

スライド:課題と解決に向けて

そして、2008年6月には、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書などの普及・促進などに関する法律の採択が、この6月に行われました。施行が今年の9月です。著作権は、まだまだ整備しなければいけませんが、教科書も、著作者の許可なく作れるようになりました。ただし教科書だけです。 それについては、プログラムの後ろのほうに書いてある、「教科書のバリアフリー化が前進しました」という部分をご参照下さい。LDなど発達障害や視覚障害者、その他の障害のある児童のために、DAISY版教科書が出版社に通知することで誰でも作成できるようになりました。ただし営利目的の場合には、補償金の支払い、それは当然だと思います。それによって、これからというところです。実際の施行は来年度4月以降です。それに向かって文部科学省で整備のための討議がなされていると思います。 その意味でDAISY版教科書を授業前に、読みに障害のある生徒に届けるための環境が整いつつあると思っています。

「授業前」と書きましたのは、先ほどの27名のDAISY版教科書提供についてアンケートを採ったところ、「どう使うか?」という質問がありました。多くの方が、学習の前、つまり授業の前に予習として使いたいと言いました。最初にこういったDAISY版教科書があって、それを読むことで、授業に臨む。 それによって自分に自信がついて、「あ、これ、やった!」という感じで読めるのではないかと思います。

スライド:著作権問題の解決の兆し

これからの支援環境づくりへの展望です。まず、欧米のような、権利としてのアプローチ。アメリカやヨーロッパは、合理的配慮としての保障として、今、DAISYの教科書が製作されています。ただし、それはほとんど「音声」なんです。つまり、教科書があって、それを見ながら耳で聞きます。ですので、音だけでも有効だということがありまが、やはりテキストがあれば、どこを読んでいるかわかって、さらに有効です。テキストをつけたDAISYの製作が、アメリカでもヨーロッパでも始まっています。ただし、アメリカでは、DAISYには3つぐらいあるのですが、その中で、DAISYのテキストだけのものです。

音声合成の開発が欧米ではよくできているので、まずはテキストでDAISYテキストを作ります。そして音声合成をつけた再生プレイヤーがあれば、そのまま読めます。そういう意味では、製作が速いです。しかも最近はマイクロソフトが、「セイブ・アズ・デイジー」という機能を追加してくれました。その方法がうまくいけば、テキストをまずWordで作り、音声合成のついた再生プレイヤーで読むことができるんです。外国では、かなり行われるようになってきましたが、日本語の場合は少し時間がかかっています。なぜか。やっぱりダブルバイト・コードと言って、漢字を使う国はかなり問題が出てきます。 ヨーロッパやアメリカはアルファベットを使っていますが、日本や韓国や中国などはダブルバイトになり、そういった問題が出てきます。でも、これからやっていこうと頑張っておりますので、来年度には、そういうものをお見せできればいいなと思います。今、河村さんにプッシュしています。

国連権利条約が採択され、国際法になったというのが今年、2008年5月です。初めて国際的な効力が効くようになってきましたが、日本はまだ署名だけで、これから批准をするところで、また関係団体が文科省や内閣府なりに、合理的配慮とは何かと、交渉をしています。国の法律、提供システム、研究開発の促進、それらが支援環境づくりには必要になってくると思います。そうなると、ボランティアだけではなかなかできる範囲ではないと思います。

そして、出版会社や企業との連携。データをもらえることはとても幸せです。いくらスキャンしても間違いがあります。そしていくら校正しても間違いがあります。テキストができて、「やったー!」と思ったところ、録音に移って、すると音訳者に「これ、違っています」と言われるんです。それだけの時間を使っているのは、無駄ではないかもしれませんが、効率がよくないんじゃないか。出版会社や、関係会社との連携ができればいいと思っています。

また、様々な団体とのネットワークにより、全国的な広がりができるのではないかと思っています。多様なニーズに合った開発、それはDAISYコンソーシアムに期待するということで。昨年度の12月から河村さんがDAISYコンソーシアムの会長になりましたので、アジアのニーズ、そういう部分が強く出てくるのではないかと、ルビや縦書きの部分など、もう少し改善されていくのではないかと期待しています。

たくさんの保護者の方からDAISY版教科書の要求がかなりありまして、それに対応できるのか、今私は不安です。LD学会でお見せしたところ、沢山の先生や学校の方から、「DAISY版教科書をください」と言われたんです。とても嬉しくて、いい悲鳴なんですが、実際リソースがあるかというと、ないんです、限られているんです。ただ福祉医療機構から助成をいただいて、普及事業はしているのですが教科書のためのお金は少ないんです。ですからリソースは限られていますし、サステナビリティというところでは補償がありません。でもせっかく広がりが出たところをなくしてしまうのは、とても惜しいと思います。またお金をとるというのは、私たち日本障害者リハビリテーション協会は財団法人なので、そういうところに走らないですよね、片石常務。そうしますと、中からできることは何かというと、このセミナー開催前にずっと考えていまして、インドに行っても、私はどうするのかと考えました。

ということで、では「自分たちに何ができる」と提示するだけでなく、例えば、DAISY版教科書を受ける人が、「私なら何ができる」ということですね。例えば私共では製作ツールというものを非営利団体には無償で提供しているのです。では提供した人は何ができるんでしょうか。「あなた方の参加です」というのが私の結論なんですね。ですから、参加していただいた方は、「あなたはこの普及に対して何ができますか」という問いかけをしてみたいんです。可能な範囲は何なんでしょう、無理しなくてもいいんですが、ちょっと無理は必要かもしれないし、努力も必要かもしれません。

ただ、たまたまこちらに来ていただいて、DAISYの普及事業というセミナーに参加しているのかもしれません。でも、そのための時間はとても貴重なんだと思います。その貴重な時間をつかって、「今後、あなたは何をしていきますか」という問いかけをしていきたいと思いますし、DAISY版教科書を受けたい先生、お母さん、教育委員会でも。そう言う方は、かわりにあなたは何ができるんでしょうか? 例えば、普及に参加する、そしてもしかしたら自分はテキストは作れるかもしれないと、参加をする。あるいはDAISYの再生プレイヤーの使い方を覚えて、皆さんに、さらに教える…など、そういった活動ができるのではないかと、これが私の願いなんです。

スライド:支援環境づくりへの展望

さらに詳しくは、DAISYのWebサイトをご覧ください。 そこでは「Enjoy DAISY」というページがあります。「再生プレイヤーをダウンロードするには、どうするか?」製作ツールをいただきたい場合にはどうするかが書いてございますし、今まで作ったDAISY図書も500円ほどで販売しておりますので、その500円というのが、私たちにとって貴重な財源なんです。それによって活動を進めているといったところです。

ここから皆さんと意見交換会をしたいと思っております。ぜひ参加していただければと。河村さんは残念ながら参加できませんので、河村さんに質問がある方は、こちらでお受けいたします。あとでお返事を書くことにさせていただきます。神山先生への質問、そして私共への質問を受けたいと思います。何か質問などございますか? 

会場:本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございます。私も身内に同様の悩みを抱えていて、これからどうやって育てていったらいいかと、大変参考になりました。ありがとうございました。
神山先生に、本日の趣旨とは違うのかもしれませんが、こういう子どもを見ていますと、今は小中学校と、どうやって育てていくか、大変難しい問題ですが、やはり親としては、将来どうしていったらいいのか、そこが大変不安なんです。先生は障害を持っていても教職に就かれたわけですが、職を持つまでのいろんなステップがありますよね。それをどうやって乗り越えたのか、アドバイスいただければと思います。

神山:苦手な部分で勝負してはいけないんですね。苦手なところを真っ正面から改善プログラムじゃないけど、取り組まされると、非常につらいんです。自分自身もそこは避けるようにしてきました。どうやって今に至っているかというと、やはり自分の強みを自分自身で感じる、自分だったらフローチャートがわかる、パソコンのことならちょっとできるなとか、ちょっとした、人よりできなかったけど、自分として他の事柄よりもこれならできるというところをどんどん伸ばしていったら、人よりも秀でるようなところになり、「ここなら勝負できる」というところで自信をもっていけたかなと。

自分自身、小さい頃、小学校4年生から新聞配達をしていたんですが、勉強はできないのですが、道順とか地図とかはすごく覚えて、この家に入れて、この家に入れてというのはスッと覚えて、新聞配達のお店の人から、「すごいな!1日で覚えて」と言われ、自分はこういう能力があると。学校の勉強以外の所でいいところを自分の中で見つけ得たところが、今に至るちょっとした積み重ねだったかなと思っています。 学校の勉強を毎日の生活で、どれだけ使っているかというと本当にちょっとですよね。 その子の良いところを見つけて、自尊感情、自分で、自分は生きてていいんだな、自分も意味のある人間なんだと感じられるような関わりをして、褒めて、伸ばすことが将来につながるかと思っています。

会場/ありがとうございます。

野村/ほかにはございますか。

会場:最後のDAISYの話で、縦書きに対応することに苦労しているそうですが、最初の神山先生の話では、縦書きは見づらいということだったと思います。 どれぐらいのディスレクシアの人が縦書きが苦手か分かりませんが、無理して縦書きに対応することが本当に必要なのかどうかをお聞かせいただきたいです。

野村:その部分で効率的に行うというところでいつもひっかかってくるのですが、多分、人とは違うことをやりたくないという生徒がいます。もしも(みんなが)縦書きならば、僕も縦書きがやりたいと言ったら、やはりそのニーズに行ってしまうと思います。その人が、もし横書きのほうが速く読めるとか、理解しやすいならば、横書きにしていけばいいのかなと思います。今のところは、縦書きでDAISY版教科書を提供しています。そういう意味で、今回、「ごんぎつね」は縦書きなんです。それを横書きにしたものを皆さんにお渡ししました。なので、どちらがいいか、あなただったらどうでしょう、ということで見ていただければと思います。

もし横書きでよければ、アルファベットは横書きで、製作ツールも横書きには対応するんです。そういう意味では、速く製作ができます。が、もう一方では、印字が読めない子どもたちが、他の子は隣で見ていると縦書きなのに、なぜ自分は横書きなんだろうと思った場合、どうするかということです。私が支援しているところではないですが、他の団体の方で、iPodなら聞きたいと。わざわざパソコンでDAISYという人と違うものを聞くのはとても嫌だと。iPodなら格好いいんじゃないかって、それで聴いている子もいます。ただ、iPodはナビゲーション、目次がありません。ただひたすら読み進むだけですが、最初の試みとしては、何でもいい、まずは聴いてほしいということで、i-Podで提供しています。

人と同じにやりたいというところがあるのかなというところと、それから、DAISY図書を教室で、みんなで見た、という実験をやったところがあるんです。それは、障害のある子もない子も、一緒に読んで、みんなで「読む」という授業を行ったところがありました。その場合、プロジェクターを通して大きなスクリーンで読みます。拡大字のほうが読みやすい子にも有効ではないかと思います。 ただ、縦書き・横書きというのは本当に、私たちの間で、製作上でも、ホットなイッシューではあります。よろしいですか?

神山:付け足しです。私の息子も同じような特性があります。富山大の森田先生に縦書きも横書きも作っていただいて、データをいただき、幸せのお裾分けで。まずは息子には横書きで読ませ、それで慣れて縦書きを見たら、縦書きも勉強になって、目で追えるようになりました。どっちもあっていい。 その子のニーズに合わせて使えるということで。ディスレクシアの子は横書きのほうが得意なんだけど、でも、縦書きも。横書きから入って縦書き、というようなそのステップで改善につながることもあるのかなと思います。

会場:圧倒的に新聞や雑誌でも、日本では縦書きが多いと思うので、そういうツールを使うことで、そういう人も縦書きが読めるようになれば有効なので、あったほうがいいのかなとは思います。

野村:縦書き、横書きというのは、CSSで簡単に変えることができるので、両方作ることは可能です。 ただ、横書きのほうが安定性があります。皆さんの配付資料にCD-ROM、横書きの「ごんぎつね」が入っています。今回、DAISY図書を読むのが初めての方?中身をお見せしたいと思います。 インストーラーが入っていますので、どうインストールするかまでをプレゼンします。

この画面が、自動的に出てきます。マルチメディアのごんぎつねを誰が作ったか、朗読は誰かが入っています。

次に、マルチメディアDAISY録音図書再生ソフトAMISについて、というのが入っています。この中にソフトウェアの「AMIS(アミ)」を収録しています。そして、AMISのページにいきます。すると、AMISについて。インストールについて。基本的な再生方法について解説しています。AMISファーストステップガイドに入ります。すると、インストールの方法が書いてあります。 ここに、EXEというインストーラがありますので、まずは英語のインストーラーをダウンロードします。次に日本語化しなきゃいけません。そこまで行くと、2つAMISがありますので、行っていただいて。英語のほうが出ますので、次に日本語です。日本語のAMISもインストールします。 ただし、これだけではダメです。英語のAMISからちょっとしなければいけないことがあります。 英語のAMISのプレファランス(設定)という所にいきます。languageがありますので、そこから日本語をセレクトします。出てくるものをOKしてしまいます。1回、AMISを閉じてください。 そしてもう1回開けますと、日本語化されます。こうやって使ってください。このCD-ROMを前に配布して、1年後、やっとできたと来た方がいました。