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マルチメディアDAISY図書製作の負担軽減には?

神山 博(青森公立大学 経営経済学部 教授)

スライド1
(スライド1の内容)

こんにちは。青森公立大学の神山です。先ほどの3人の方と違って、私は製作する立場からお話ししたいと思います。コーディネーターの方から、まず、最初に言いたいことを言うようにとのことなので、二つお話しします。

スライド2
(スライド2の内容)

一つ目は、私は製作する立場でこの2年間やってきたのですが、最初に教科書を開いて驚いたんですね。非常にバラエティーに富んでいる。色のついたカラー稿が多いというのはともかく、どこから読んだらいいのか分からない。それにまず驚いたんです。コラムがあり、四角囲みがある。どれを先に読んだらいいのかわからないというところで困った。困ったというのはDAISY図書化するときに困ったんです。ですから第一番目の主張としては、DAISY以前の問題で、紙の教科書のレイアウトをもっとシンプルにしてほしい。これが私の一番目の主張です。

二番目は、これからお配りした資料に書いてあることをお話しするわけですけれども、利用者のニーズがだんだん増えている。ところが製作ボランティアはなかなか増えない。一昨年は6~7回、製作者の養成講習会をやりました。去年で4~5回、今年は来週2回やる予定です。そういったことを踏まえてお話ししますと、とにかく製作ボランティアが足りない。私は青森県で製作者も増やしたいし、利用者も増やしたいと思っていますが、製作者を増やすところでなかなか思うようにいかない。何が思うようにいかないのかというと、やはり養成に時間がかかるんです。使う人はこれからどんどん増えていくでしょうけれども、その需要を満たすための製作者の不足。それから、今使われている製作のためのソフトウェアは何種類かありますけれども、完全に無料で使えるものというのは限られています。先ほどもお話がありましたけど、十数年の歴史があるソフトウェアですので、今の観点から考えると機能的に不十分だというのも否めないわけです。それを補うためには、製作者のスキルが必要になってくるわけですけれども、それを満たすような製作者養成講座を作ろうと思うとなかなか難しいところがある。ということで、養成者は増えるけれどもスキルのある養成者はなかなか増えてこない。

ではどうすればいいか。需要は増えているけれども、作る側はもっと楽になりたい。これが二番目の主張です。今日お配りした資料は、その二番目の主張にしたがって用意してあります。

結論を先に言ってしまいますと、極力、手を抜きたい。楽に作れるようにしたいんです。その一つの方法として、手作業を極力省略したり、そのための製作者の養成のカリキュラム的なものを作りました。最初の主張の中で、教科書のフォーマットがバラエティーにとんでいるとお話ししましたが、不必要な構造は無理に作らなくていいんですよね。児童、生徒さんが教科書にアクセスできて、その中身を理解するというのが目的ですから、何もそれほど重要でない構造は作る必要がない。ということで極力、書式を統一してシンプルにしたい。そのシンプルにしたものを前提にして製作の手順書を作成する。その手順書に従った半自動化ツールを作ってみたというのが、今日のお話です。

スライド3
(スライド3の内容)

今、お見せしているのが、Sigtunaというソフトウェアを中心に使ってDAISY図書を作る手順です。手順の段階は1番から12番まであります。登場するソフトの数は、メモ帳も含めて7種類あります。CDに焼くことまでを入れると7種類。7つのソフトをとっかえひっかえ使いながら、ある時はHTMLのタグの中身を見ながらやらなくちゃいけないんです。しかしパソコンの初心者は、このHTMLのタグを見た途端に一歩引きたくなるわけです。ですからこのHTMLタグの部分は極力ブラックボックス化して、極力見ないで済むような編集作業をしたいんです。この手順の中でその作業が必要になるのは、例えば「ソフト1」を使って必要なタグを挿入するとか、このヘッダー部分を差し替えるとか、そういった作業がありますが、それをブラックボックス化する。直接ソフトを起動しなくても、結局は自動で起動するんですけれども、タグを意識しなくて済みます。

スライド4
(スライド4の内容)

この図のようなインターフェイスですね。実際は必要なソフトが裏で動くわけですが、その衣としてこういったものを使う。上から順にボタンをクリックしていけば作業が終了するというような、ガイドラインを兼ねたソフトです。この中では、何も計算をしていない。他のソフトを起動するだけの非常にシンプルなものなんですけれども、これを使って、実際に講習を受けて、1ページほどのDAISY図書をを2つ3つほど作った人、製作の初心者に、ある特定のサンプルを作ってもらって、どれくらい時間がかかったのかを計ったのが次の図です。左側は特にツールを使うことなく製作してもらったもの。右側はこのツールを使って作ってもらったものです。棒グラフ1つの中に3つの要素がありますが、これは3人ということです。1回目、2回目、3回目。異なるページを1ページ目、2ページ目、3ページ目というふうに作ってもらいました。

スライド5
(スライド5の内容)

これを作ってもらって、だんだん慣れてくるんですね。慣れてきたことで時間短縮になりますけれども、従来の方法でやったものと簡単なツールを使ったもの、半分まではいかないですけどかなり製作時間が短くなります。そういう結果になりました。

講習をする際にこのツールを取り入れて、このツールを使うことを前提にした講習にすると、講習会に費やす時間も短くなる。習熟も早く、実際の製作時間も短くて済むと。そういう結果が得られたというお話です。

まとめになりますけれども、実際にその手順を使ってみると製作時間が短縮する。習熟する時間も短くなります。

スライド6
(スライド6の内容)

先ほどの河村先生のお話にもありましたけれども、新しいツール、ソフトウェアを使うとやはり我々は楽になるわけです。ですからその新しい使いやすいソフトウェアの登場を、首を長くして待っています。それまでの間は、やはりこうした方法で負担を少なくしていくしかないかなと思います。以上です。