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障がい児・者対象のマルチメディアDAISY英語教科書製作と英語学習支援

提案団体:広島国際大学マルチメディアDAISY研究会
代表者:心理科学部研究科コミュニケーション学専攻
氏名:大西 毅
顧問:コミュニケーション心理学科 中村 朋子
医療福祉学部 医療福祉学科 真砂 照美

《実施計画》

パートナー:特定非営利活動法人 仁和

実施期間:2012年4月1日~2013年2月28日

奨励金額:284,000円

活動目的:障がい児・者用のマルチメディアDAISY英語電子教科書を製作する。また、同電子教科書を使い仁和(呉市)と連携して英語学習支援をする。当事者からフィードバックをいただき、DAISY教科書の改善をしていく。

達成目標:全国で採択率が一番高いNew Horizon(東京書籍)の中学1年生から3年生までのDAISY版の電子教科書を作成する。出来上がったものを障がいのために英語学習につまずいている生徒さんに試していただく。この活動は、文科省、出版社と連携して電子教科書化を進めている日本障害者リハビリテーション協会の後援を得ている。

計画概要:10月末までに電子教科書を完成する。夏休みに仁和の事業所でパソコンの使い方の指導と学習支援をする。

予測効果:英語学習につまずいている学習者は、電子教科書を使うと、文字に同期されている画像や音声を手掛かりに文章の意味内容を理解することができる。パソコン操作による自立学習で、当事者のセルフエスティームを高めることができる。マルチメディアDAISYはデジタル録音図書の国際規格で、何らかの理由で印刷物が読めない障がい児・者に有効な学習支援方法と言われている。今回作成するのは、新学習指導要領に基づき平成24年度から新たに中学校で使用される改訂版である。一度作れば次回の教科書改訂まで長年にわたって全国の障がいのある生徒さんたちに活用してもらうことができる。

《活動・成果報告》

 マルチメディアDAISYによる英語テキスト作成は、中村研究室で2009年から始まり、12年度は文科省認定英語教科書の電子化に初めて取り組んだ。春休みに奈良デイジーの会から講師を招いた。2日間で10時間の講習会に、9人の学生が参加した。3月から11月末までにプログラミングと同時に英語と日本語の録音作業をした。英語は、英語母語話者2人に依頼し、日本語部分については、研究会のメンバーがナレーターを務めた。
 電子テキストの効果を見るために仁和の事業所で3人の障がい児・者を対象に学習支援を行った。最初に、かれらの得意・不得意な点を把握するために言語発達調査をした。8月の1か月間は週1回学習支援した。効果が見えにくかった一人については、9月も継続して支援することになり、大学の研究室に来てもらった。この方は、日本語の読み書きに問題はないものの英語の音韻の認知ができていないことがわかり、文字と音素のつながりの学習から始めた。その結果、単語の発音がかなり正確になった。学習支援の結果、英文を復唱する時間を文章の間に入れるように電子テキストを修正した。
 1年間の活動を通して得た成果は大きい。出来上がった電子教科書は、今後全国の障がい児・者の英語学習に使用される。活動に参加した学生メンバーの成長度も大きい。作業が困難な時は仲間との連携で克服できること、外国人と英語を使って共同作業できることを学んだ。さらに、このプロジェクトは、学外に周知する機会を得た。12年9月8日(土)に中国新聞社主催の生活支援機器展に出展した。また、大学祭と同時開催の健康フェアにも出展し、DAISY図書は、幼児からお年寄りまで全年齢対応型であることをアピールした。また、広島ホームテレビ「Dr.キャンパ」でこのプロジェクトが紹介された。研究会メンバーは、個室でパソコン相手の忍耐のいる作業が広く社会貢献できることを確認した。学習支援に参加した学生の一人が特別支援士を目指して大学院進学が決まったのも成果の一つである。引き続き仁和での活動に協力することになっている。

DAISY製作

DAISY製作

外国人ナレーターの録音

外国人ナレーターの録音

学習支援

学習支援

《成長度》構成メンバーの感想から

1.活動当初は、どのような課題に直面し、それを乗り越えるためにどんな苦労がありましたか。

<電子テキスト作成>

 プログラミングに苦戦をし、専門家の指導を受けながら試行錯誤をした。「本当にこれでいいのだろうか」という不安が常にあった。

<録音作業>

①就活や勉強、部活など時間がない中で、機材の使い方・スケジュール管理・外国語ナレーターとのコミュニケーションなどに苦労した。

②当初は英語の発音や日本語の読み方に自信がなく声があまり出なかった。言い間違いをし、何度も録音し直した。

<学習支援>

①障害児童を担当し、最初、障害の程度がわからず思っていたよりも学習に集中してもらえなかった。DAISYの使用以前に、どうすれば集中力を保って勉強する気がおきるかといったコミュニケーションのとり方、指導方法の工夫が必要になった。

②障害の程度に関わらず学習できるようにするためには、DAISYソフトに改良の余地があった。

2.その課題を、どのような工夫や努力で乗り越え、成果をあげることが出来ましたか。

<電子テキスト作成>

①チーム内でどうすれば効率良く課題を仕上げられるかを模索し、ネットや本、掲示板などを利用し情報を集めた結果、当初と比べて3倍近く速く課題をこなせるようになった。

②やり方を理解した後は自分の得意な部分に集中し、苦手な所は仲間に任せるなど作業を分担し、うまくできた。

<録音作業>

①何度も発声練習したり、先輩や先生に聞いたり、仲間と協力して乗り越えた。

②1つ1つに期限を設け、それに沿い行動した。ミスは指摘しあい、カバーすることで時間を有効に使うことが身についた。

③外国人ナレーターとは、分かる単語を拾い文脈を読みながら会話をした。

<学習支援>

①障がいの程度の差を乗り越えて支援するために、その子の特徴を捉えるようにした。

②自閉症の子に対してはいきなり学習に入るのではなく、先輩が作った英単語ゲームソフト「かんづめ君」を導入してパソコンに慣れさせた後、DAISYで学習させた。DAISYは自分の学習ペースで進めてもらった。「かんづめ君」が楽しいと言ってくれたので、学習の後にも使用するなどし、「この時間の学習は楽しい時間」と思えるよう、モチベーションが上がるように工夫した。

3.自分たち(チーム)が一番成長したところは、どこですか? 理由もお願いします。

<電子テキスト作成>

①DAISYを使う障がい児・者にわかりやすく学習支援しなければならないと思った。受け入れられやすく、見やすい工夫をするようになった。このことは教職課程の教育実習に役立つと思う。

②初歩的とはいえ、ものを作り出すことに関わった。学んだ知識を必ずどこかで使わなければならなかった。

③1人1人が自分の出来ることに取り組み、作業をうまく分担し、人から任されたり 任せたりする等の判断が出来るようになった。

<録音作業>

①長時間単純作業をしなければならなかったから、根気を学んだ。

②外国人ナレーターの発音やアクセントは勉強になった。かれらと話していて、以前よりも自分の英語力が落ちていることを実感させられ、英語への意欲がわいた。

③私たちが製作した教材を誰かが聞き、学習に役立つはずだという強い意識を持てた。

④どのように話せば聞きやすいのか、どこを強調すべきかなど、聞き手のことを思いながらでなければ、良いものはできないことがわかった。

<学習支援>

①これをきっかけに、将来、障がい児・者の支援を本業とする道を選択できた。

②その子のやる気を引き出す工夫など、障がい児と向き合うようになった。学習支援終了後も、障がい児や施設の方々と触れあうイベントに参加し、児童たちの個性を見つける姿勢ができた。

中国新聞社主催

生活支援機器展に出展

生活支援機器展に出展

健康フェア出展

健康フェア出展

「Dr.キャンパ」による取材

「Dr.キャンパ」による取材

4.パートナーからの企画を通しての気づきや感想

 NPO法人仁和は、障害のある子どもを持つ家族の地域の繋がりから生まれ、12年春、児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「ともだちひろば にんな」を開所しました。
 開所後間もなく、広島国際大学の学習支援システム DAISYの臨床協力依頼をいただき、マルチメディアDAISY研究会の皆さんと関わらせていただくこととなりました。
 3人の体験者の協力を得て、12年夏、実践が行われました。体験者の様子が三人三様(自閉症、アスペルガー症候群、視覚障害)でしたので、大変興味深い実践となりました。このシステムが今後広く使われ、不自由さとつきあっておられる方々の助けになっていけばと願います。
 体験者を指導された大学生さんの一人は、私達の障害のある子ども達と地域で関わりのあった方で、その後私達のボランティア活動に参加してくださるようになりました。これからも、広島国際大学や学生さん達との出会いを大切に繋いでいきたいと思っています。

《構成メンバー》

心理科学部研究科コミュニケーション学専攻 2年 大西 毅
コミュニケーション学科 4年 綿井 康介
コミュニケーション学科 4年 山森 大史
コミュニケーション学科 4年 前東 英希
コミュニケーション学科 4年 寺本 貴大
コミュニケーション学科 3年 西田 優紀
コミュニケーション学科 3年 小池 俊輔
コミュニケーション心理学科 2年 佐伯 洋輔
コミュニケーション心理学科 2年 本庄 伸年
コミュニケーション心理学科 2年 黒沢 力人
心理科学部臨床心理学科 4年 高山 友希
臨床心理学科 4年 松本 大周
臨床心理学科 2年 越智 晴菜
臨床心理学科 2年 末長 弘夢
医療福祉学部医療福祉学科 4年 小田 浩太
医療福祉学科 4年 加藤 裕子
医療福祉学科 4年 遠部 樹
医療福祉学科 4年 森本 浩夫
医療福祉学科 4年 大田 雄大
医療福祉学科 3年 松本 友香里
医療福祉学科 3年 西川 千裕
医療福祉学科 3年 坪井 沙織
医療福祉学科 3年 大前 佑果
医療福祉学科 3年 大杉 莉奈