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ウプサラでダウンロード

文と写真:レーナ・ブークヴィスト
ウプサラ市のルンデルスカ高等学校は早期にデジタル録音図書ダウンロードの許可を得た高校の一つである。

 2005年11月、ルンデルスカ高等学校は政府に申請を出し、それから半年後、彼らは許可を手にしていた。
 「そこにはトーマス・ブードストレーム(当時の法務大臣。編集部注)の署名がありました。ですから、なんだか特別なことに思えました。」
ルンデルスカ高等学校のアニカ・パルクは述べた。

病院から学校へ

 フィリス川の近くにある丘の上に建つ黄色いレンガの学校。この高等学校には自然科学課程、社会科学課程、保健学課程があり850人の学生が通っている。 この学校図書館は一階にある。一方が全面ガラス窓になっており、光があふれるほど差し込む。アニカ・パルクが1992年にここで働き始めた時、そこには録音資料は何もなかった。アニカは病院図書館から移動してきた為、録音図書に慣れていた。そこで多くの生徒が読み書き困難を持っていることに気がついた時、即座に行動を起こした。 「私達はウプサラ県立図書館のビルギッタ・アレーンと共に小規模のプロジェクトを立ち上げました。その目的は保健学課程の学生達に録音図書の知識を広めることでした。またもう一つの目的はスウェーデン語の教師達に、もっと資料について知ってもらうことでした。」 アニカ・パルクは述べた。

ダウンロードが3倍に

 2006年夏、学校図書館はデジタル録音図書を国立録音点字図書館から直接ダウンロードする許可を得た。
「生徒達は一冊の本を借りるのに長い間待たずに済むので、これまでよりもずっとスムーズにいきます。また私達もDAISY録音図書をそんなにたくさん購入せずに済みます。」 アニカは述べた。

 2006年にダウンロードされた図書は3タイトルだった。2007年には30タイトルになり、2008年には3倍の90タイトルに上った。これは他の高等学校と比較するとかなり高い数字である。それ以外にも生徒達は録音図書と音声図書を合わせて200冊、借り出している。
 書棚には録音された図書としては、わずかなDAISY録音図書がある。音声図書の方が多く置いてある。今日ではカセットは取り去られている。

 

一般的なCDバーナー

「私達が国立録音点字図書館からダウンロードするのは、ほとんど純文学のみです。そこには私達が必要な教科書は余りないからです。録音された教科書の購入や新たな録音は録音サービス社に頼んでいます。また私達は、誰でも利用できるように一般的なCDに吹き込まれた純文学も購入しています。」
 この図書館では、学校の雑務を担当するアシスタントのサービスを利用することができる。特にデジタル録音図書のダウンロードとCDへの焼き付けに責任を負っているのは、このアシスタントである。
 一台のコンピューターの中に、一般的なCDバーナーが入っている。彼らはCDを焼いた後CD上に、タイトル、作者、それに『ルンデルスカ高等学校図書館』という文字をマーカーペンで記入する。教師達が毎年使ういくつかのデジタル録音図書は図書館が保存して、繰り返し使用するようにしている。その他はある図書が必要になる度に新しいCDを作っている。

特殊教育学者が支援

 購入したDAISY形式の教材は、学校の二人の特殊教育学者の部屋にある。二人は約60人の生徒を支援している。
「毎年、秋になって新入生が入学してくると、私と同僚は全生徒にスクリーニングテストを行い、読解力、単語理解力、言葉を正しく綴る能力を検査します。私達は読み書き困難な生徒達を早期段階で見つけ出す努力をしているのです。」
特殊教育学者として働くアン・ストールベリィは述べた。
 図書館と教育者達は、彼らが大変価値のある存在だという信念に従って緊密な協力関係を築いている。
 この学校にはアスペルガー症候群*の生徒対象の社会科学課程がある。この生徒達の為には専門の特殊教育学者がおり、またそれ以外の方面からも支援を受けている。
 図書館司書のアニカはこれらのクラスを週に一度づつ訪問して、いわゆる『本がやってきた』活動を行っている。 「彼らのうちの多くが録音図書を借りていきます。」 アニカは述べた。

ミイにとっての録音図書と印刷版図書

 ミィ・ウェストベリィは生物の生息環境に重点を置く自然科学課程の2年次に通っている。彼女はディスレクシアであり、彼女は勉強する時、科目によっては、録音図書と印刷版図書の両方を用いている。
「私達はスウェーデン語と英語の時間には、ほとんど常に何冊かの純文学を持っていなければなりません。そういう時には私は、デジタル録音図書を読むようにしています。このような図書は文字が多すぎますから。」
 ミイは言った。ミイは6年生の時にディスレクシアであることが判明した。それからは録音されている図書を読むように勧められるようになった。
「でもその時に手渡されたのがカセットテープでした。早送りしたり巻き戻ししたりするのがものすごく大変でした。ですから、それは使わないでおきました。ここではあの時よりもずっと良いサービスが受けられます。それにCDだと、幾つかの章だけを聴くこともできますし、速度も選べるのでずっと利用しやすいと思います。」
ミイは述べた。

さらに技術が進歩することを望む

 音声図書やデジタル録音図書を読む他の多くの生徒と同様にミイもコンピューターを使う。彼女はさらに図書を自分のポータブルmp3プレイヤーに移している。この学校の一年次に通う生徒達は皆、自分のノートコンピューターを持っている。そのうちにはこの学校の全ての生徒が自分のコンピューターを持つようになるだろう。ここには図書館が購入した約10台のDAISYプレイヤーがあり、養護教諭を通して貸し出している。しかしアニカはさらに技術が進歩することを願っている。
「私は生徒達が自分で図書を各自のスティック(USBメモリー:編集部注)やmp3 プレイヤーにダウンロードしてくれる日を待ち望んでいます。ダウンロードがもっと簡単になって、CDを使わなくてもよくなったら便利でしょうね。」
アニカは述べた。

*アスペルガー症候群は、物事を推察する能力に欠けている、興味の範囲が限られている、集中することが困難である等の特徴を持つ障害である。子どものうちは、自分の行動を調整することが困難な場合もある。アスペルガー症候群は多くの場合、遺伝性である。(ケアガイドより)

●デジタル録音図書の中には、テキスト、音声、画像がついたDAISY録音図書と、音声のみのデジタル録音図書が含まれる。


原本書誌情報

Boqvist, Lena. “Nedladdning i Uppsala”. Bibliotek för alla. 2009, No.1, p.12-13.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa12009.pdf (accessed 2010-05-18).

写真は原本を参照のこと

P12 左写真

 特殊教育学者と学校図書館司書は緊密な協力関係を築いている。そのことをアン・ストールベリィもアニカ・パルクも評価している。

P13 中央写真

デジタル録音図書も印刷版図書もミイ・ウェストベリィにとっては重要である。