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「ゆっくりだけど、すこしづつ ~ひろがりを求めて~」

デジタル編集協議会”ひなぎく” 中村 芬

 昨年2月「全国LD実践研究集会」に積極的に出て行ったのはディスレクシア・学習障害児(者)をもっと知ろうということからでした。
分科会にそれぞれ出席し、最後の全体会で発言の機会を得、マルチメディアデイジ図書ーを紹介し、サンプルを配布しました。普及のためだと割り切って多くの方の手に渡れば良いと思ったことです。
会場を去るときに幾人かの方がサンプルを手にしながら「連絡していいですか」とおっしゃったり、「あちらこちらに持っていきたいので、もう少し下さい」と申し出てくださったり、結局用意したサンプルは1枚も残りませんでした。

3月にはいると以前から希望していた方から6タイトル届きました。4月までに全タイトルを挙げるのはとても無理なので、1学期分をとりあえず届け、夏休みに後半をということで製作にかかりました。ところが4月に入ってからあちらこちらから変換の依頼がメールや電話で届きだしました。
当初の予定を崩さないように、前半はすぐに、後半は夏休み以降にということで依頼のあったものへの対応をしました。

そんな中、学校や教育委員会は「特別支援教育」のあおりで何か使えるものはないかと、藁をもつかむかのように「デイジーってなんだ?」とサンプルを求めてきました。現場の混乱が伺えるような感じでした。
「ていねいでわかりやすい」「手間のかかることですね」という反響がありましたが、実際に生徒に紹介したいと依頼された先生もありました。

また、『怠けてなんかいない』という本に紹介されていて、読者がサンプルを求め、変換の依頼をしてきたことです。おかげさまでユーザーは全国区です。

このような日々を送るうち、名古屋ディスレクシアの会のメンバーが「デイジーを広める会」を発足させ、デイジー体験会を開催し中部地方に風穴を開けました。
その後いろいろな会合で「マルチメディアデイジー図書」を精力的に紹介していただいています。
また、2月以来「かたつむりの会」との交歓があり、12月に愛知教育大学LD研究会でデイジー図書の有用性を発表する機会を得ました。
発表の場を下さった都築教授や、参加した先生・学生たちから「テキストだけでなく音があるのがいい。やってみたい」との声を聞きました。当然のことながら、しっかりサンプルを配布してきましたよ。

利用者からは「よくわかるのでうれしい」「家庭教師がデイジーを使うと教えやすいと言っている」「ふだんは見向きもしないのに試験前にちゃっかり見ている」「親子、きょうだいで見ている」「学年を下げて学習しても抵抗がないし、わりあい早く次のステップに進んでいる」などの声が寄せられています。
また、サンプルをお送りした方の中には「学生の頃にこんなのがあったらもっと勉強できたのに。でも日本にこんないいものがあることが嬉しい。」と返事をいただいています。

「種まきばかりで芽が出ない」と普及の遅々たる状態を憂えていたのですが、この1年40タイトルのマルチメディアへの変換は殺人的なものがありました。収益に結びつかないのがつらいところですが……。
もう来年度の予約が入ってきています。
利用者の声を励みに、いい図書を提供できるように、メンバーを増やし、全員のレベルアップのための研修会と「楽しいサンプル作り」の予定をたてているところです。