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平成20年度 DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業
~DAISY教科書提供体制の確立を目指して~

セッション2 「マルチメディアDAISY教科書の製作・提供」

講演を行う濱田麻邑氏の写真

濱田滋子(NPO法人 奈良DAISYの会 代表)

(代読:濱田麻邑(NPO法人 奈良DAISYの会))

奈良DAISYの会の濱田麻邑(まゆ)です。今日は奈良DAISYの会の教科書のマルチメディアDAISY化の取り組みに関する報告をさせていただきます。

教科書マルチメディアDAISY化の活動報告

(資料1 説明)

奈良DAISYの会は2004年度より活動を始めましたが、2006年度より特に教科書を中心とした活動をしてきました。なぜ教科書を中心にしたかと申しますと、まず差し迫ったニーズがあったということがあります。ディスレクシアの子どもたちは、学年が進むにつれて、どんどん授業についていけなくなってしまう。何とかついていきたい、みんなと一緒に勉強がしたいという、とても切実な思いがあります。そのニーズに対応するために、まず教科書をDAISY化したいという思いがありました。

教科書のDAISY化

(資料2 説明)

2つ目に著作権法に対応するということがありました。個人を特定して教科書を提供するということで、学校の先生が、授業のために使う教材をDAISY化するというふうな位置づけで、著作権法に沿う対応としてきました。またそれと同時に、読みに困難をもつ子どもの学習に関する権利を主 張しました。

そして3つ目に、学校の先生と連携を図ることで学校の先生方にディスレクシアについて情報を提供して、DAISYによる支援方法の普及に努めました。

教科書を学校の先生に提供する経緯ですが、初めて提供したときの経緯は、特別支援教育士スーパーバイザーの西岡有香先生が、ある中学校の巡回相談員をしたとき、ディスレクシアの中学校2年生の男の子を学校で見つけました。校内コーディネーターのT先生にDAISYを紹介するとともに、製作グループの、NPO法人奈良DAISYの会を紹介しました。T先生は、国語と地理の教科書のマルチメディアDAISY化を依頼してきました。製作にあたっては、T先生より生徒のニーズを伺い、作り方を先生と相談しながら製作を進めました。それをスーパーバイザーの西岡先生に見ていただいて修正を加えました。このような連携はユーザーのニーズに対応したものであり、専門的な知識を取り入れた理想的な支援の形と言えると思っています。

提供の経緯

(資料3 説明)

DAISY教科書の提供にあたっては、学校の先生の名前、児童・生徒の名前、学校名、住所を聞いて個人の特定をして、教科書をマルチメディアDAISY化する届け出を任意で出版社に出していました。出版社からの反応は少なかったのですが、著作権法への対応と、こういうニーズがあるということを出版社に知っていただきたいという思いで、届け出を出していました。

提供の手続き

(資料4 説明)

提供対象者数ですが、2006年は2名であったのですが、2007年には13名、2008年度には38名になっています。

提供対象者数

(資料5 説明)

DAISY化した教科書のページ数も年々増えており、利用している先生同士での紹介、講演会やデモンストレーション、製作講習会などにより利用者が増えています。また兵庫県LD親の会たつの子からの要望も、利用者数の伸びに大きく影響しています。

提供教科書冊数

(資料6 説明)

製作にあたっては、まず担当の先生・当事者・親御さんからニーズを聞いています。文字の大きさや字体、漢字の振り仮名、ハイライトの長さ、読みの長さなどが主な項目です。初めはユーザーのニーズに沿うようにと聞き取りを行っていましたが、ニーズが多岐に渡り、次第に対応できる範囲を超えるものとなってきました。そこでこのニーズの聞き取りをもとに製作のガイドラインを制作しました。

製作のプロセス

(資料7 説明)

製作のガイドラインですが、グループ内、奈良DAISYの会の中で製作方針を統一したいという思いで制作をしました。また製作されたものを保存して基本となるデータとして考えるためのものです。基本となる形が保存されることにより、そのデータをもとに再利用、ユーザーに応じたカスタマイズをすることができます。また、他のグループとのやりとりをする上でも、共有できるデータとして保存することができます。

製作協力体制をとっているNPO法人 ATDOと共同で、ガイドライン案を作成しました。また、たつの子プロジェクトにおいても、製作グループの共通認識としてのガイドラインがリハ協から制作されています。

製作ガイドライン

(資料8 説明)

2008年9月に、先ほどのお話にもありましたが「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」が施行されました。それにともなって著作権法も改正されました。

新法施行

(資料9 説明)

マルチメディアDAISY版教科書が教科用特定図書として認められ、教科書のマルチメディアDAISY化が拡大教科書などとともに教科書として文科省及び出版社から認められたと考えています。さらに現在文科省より教科書のデータ提供の調査が行われています。奈良DAISYの会としては、これまで先生からの依頼による提供を方針としてきましたが、その方針を撤廃し、これからは、個人使用として公にすることができなかった成果物を公表し、また交換することができるようになりました。

新法施行と法改正による変化

(資料10 説明)

改善されている面も多くありますが、まだまだ課題は多く残っています。ユーザーが増加し、それにともなうDAISY化を希望する教科書の増加により、製作が追いついていません。またニーズも多様化し、1人1人に対応した読みの速さを変えた録音をしなおしたり、また振り仮名に関する要望も様々なものがあがっています。このようなニーズに対応するには編集に大変な手間がかかります。またDAISY化の要望が教科書だけではなくて一般の図書についてもあがってきています。

課題

(資料11 説明)

要望が増加して製作が追いつかないという点については、2008年度には製作講習会を4回開き、製作者の養成に努めました。また、Microsoft OfficeでのDAISY化の日本語対応や、音声合成を活用したツールの開発による製作の効率化が図られることを期待しています。

マルチメディアDAISY化要望の増加

(資料12 説明)

ニーズの多様化については新しい再生ソフトも開発されています。これは製作時に多様化するのではなくて、再生をする人個人個人が自分でカスタマイズをできるという点に配慮された再生ソフトの開発が行われています。

ニーズの多様

(資料13 説明)

ユーザーの増加に対しての対応としては、公的機関による統一された製品管理・配布のシステムが望まれています。センターによる配信システムを確立するとともに、各製作グループによる重複製作を避け、製品の一括した管理を行い、どの教科書がマルチメディアDAISY化されているのかが分かる一覧の制作が必要と考えています。

ユーザーの増加

(資料14 説明)

今後の課題ですが、教科書に限らず、一般の図書を視野に入れたマルチメディアDAISY製作を行っていきたいと考えています。私たち奈良DAISYの会は、私たちの使命は、1人でも多くの読みに困難のある児童・生徒に、マルチメディアDAISY教科書をつなげていくことと認識していますが、教科書に限らず、すべての印刷物にアクセスができるような環境が整うように、法が整備され、公的機関によるシステムが確立されて社会の理解が得られるように活動をしていきたいと考えています。ありがとうございました。

教科書以外の図書やその他印刷物のマルチメディアDAISY化

(資料15 説明)

文字が読みにくい子どもにマルチメディアDAISY図書を

(資料16 説明)

注:NPO法人奈良DAISYの会代表の濱田滋子さんよりお話をいただく予定でしたが、体調がよくな いということで欠席となりました。代理として娘さんの濱田麻邑さんにご登壇いただきました。