平成20年度 DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業
~DAISY 教科書提供体制の確立を目指して~
マルチメディアDAISY教材の作成
たつの子プロジェクト
2008年7月
- 兵庫県LD親の会「たつの子」のメンバーを対象にDAISY勉強会を開催する。
- DAISYで製作してほしい教科書の希望を取る。
- 約30名から、小1から中2まで約40種類の教科書の製作希望があがった。
- 製作グループ(NPO法人 奈良デイジーの会、国立大学法人富山大学人間発達科学部森田研究室、NPO法人 デジタル編集協議会ひなぎく)に対し、製作希望の教科書の中で、製作済みのものがあるかどうか調査する。
- 製作希望者に対し、パソコンの再生環境や希望する製作方法の調査を行う。
- 担任の先生に許可をもらう方式とする。
2008年8月
- 製作作業および製作グループと製作希望者との連絡作業を本格的に始める。
- 8月下旬に最初の発送作業を行う。その後は、授業の進行と製作の進行に応じてできたものから順次発送していく。
2008年9月
- 教科書の下巻を購入する。
- 製作希望者からは随時、授業の進行状況、DAISYの利用状況などのフィードバックが入る。
- フィードバックを参考にしながら、作成できたものから追加発送していく。
2008年10月
- たつの子の活動場所に訪れ、フォローアップとインタビューを行う。
- アンケートを作成し、回答していただく。
2008年11月
- 製作者グループでここまで製作してみての意見を出し合う。
- 製作者グループにデイジー江戸川が加わる。
2008年12月~2009年1月
- DAISY教科書を使用した方のインタビューを行う。
2009年2月5日
- 平成21年度以降のDAISY教科書(たつの子以外の利用者も対象とするもの)の製作についてのミーティングを行う。
- 『セミナー「DAISYによる教科書づくりを考える」欧米から学ぶ』を開催する。
2009年3月
- 製作希望者にアンケート用紙を送付。
小学校の個別支援学級の先生によるDAISY教科書の試用プロジェクト(平成19年度)
使用したDAISY教科書:
- 狸の糸車(光村3年)
- わらぐつの中の神様(光村5年)
対象児童と使用方法:
- 平成19年度に、3年生・4年生のダウン症の児童の自主学習に使用した。
- 最初は教師がともに関わり、教室での言葉の練習で使用した。
- その後、教師がつかなくても高学年の子どもがいつの間にか一緒につかい、発声しながら語彙を増やしていた。
使用した先生による考察と感想:
- DAISYの利用により、集中する時間も増し、構音障害のあるお子さんにも有効であると考えられる。
- 語彙練習のソフトとしての長所
- 一人で操作でき、自主学習の習慣を定着させるのにもよい。
- 言葉が不明瞭なお子さんの練習になる。
- 語彙を増やす一助となる。また視覚的な手がかりがあるので分かりやすい。
- 語彙練習ソフトとしての今後の課題
- 更に多くの語彙を増やすための練習ソフトが段階的にあれば、それを購入することができる。
- 教育現場では、ますます多忙化しているために、教師が教材を作る余裕がない。そのため教材をダウンロードすることが出来たり、その教材を購入することが出来ると良い。
- 音読教材としての長所
- 自分で操作しながら、読み進めることができる。
- 読んでいるところが、色で区別されるので、どこを読んでいるのかが良くわかり、自力で読んでいるという満足感がある。
- 音読教材としての今後の課題
- 教材を豊富にする。出来れば教科書が教材としてあると良い。
- 一人読みの機会を増やすために、読みたいところを色で区別する際に、文節ごとにクリックすると色が変わるようになると、ゆっくりと読む子どもにとっては、より分かりやすい。
- ディスレクシアの子どもにとっても、先行して音読され、自分でも読み、クリックして次に進むといった方法も可能になると、より音読練習にも有効ではないかと考える。
- 音読教材は特に高学年に好評だった。
- もっと多くの教材の開発を期待したい。
港区個別支援室・EDGEプロジェクト
2008年8月下旬
- 「キッズ&ティーンズクラブ」に在籍している小学校2年生から5年生までに2学期より始まる箇所のDAISY教科書を貸し出した。
- 提供したタイトルは以下の4点
- 大きくなあれ(光村2年)
- キリン(光村3年)
- ぼく(光村4年)
- 未確認飛行物体(光村4年)
2008年9月初旬
- 港区個別支援室より1名のフィードバックをいただいた。
- 対象児:
- 小学2年 男子
- 使用単元:
- おおきくなあれ
- 傾向:
- 注意集中することが困難。
- 読み書きにも困難さを抱えており、学校の授業においても、音読の際はほとんど参加できない様子。
- PCは好き
- 感想:
- とても楽しかった。読みやすかった。
- 帯の色は黄色にしかできないのですか?他の色も見てみたい。(注:帯の色は本来変更できるが、変更の仕方が伝わっていなかった。)
- またやってみたい。
- 詩を全部覚えられた。
- 今後の予定
- 今回は2年生の児童が使用したのみだったが、次回も欲しいとの要望が出ている。
- DAISYを使用する場に同席し再生方法をアドバイスするなどのフォローアップが必要である。
インタビュー記録:
2009年1月26日(月)
- Aさん
- 使用教科書:光村図書(小学校2年)
- 使用期間:1ヶ月程度
●日常、読むことで困っていることは?
- とにかく、音読をする際に緊張するのか、集中できない。
- 本を読むには、3ページぐらいが、限界。
- 読んでいるうちに、他のページをめくったり、興味が他にいく。
- 音読をさせると、読み飛ばしがあるのがわかる。
- カラオケに行ったときに、歌詞(横書きを)を逆から読んだことがある。
- 他の教科は、そんなに困っている感じはしない。
●学校でどんな支援を受けていますか?
- 特にはないが、音読をさせるときは、短いパラグラフだけにしてもらっている。
●マルチメディアDAISY教科書の使用
- 親がセットしてあげれば、後は自分で読む。
- 最初は、音だけ聞いて、次に、音を聞きながらとハイライトされたところを見ながら読む。最後は、音だけ消して、ハイライトした文字を見ながら読む。
- 読むスピードが速いと、文字を追うことに必死になってしまい、音が聞こえなくなるので、できればゆっくりのほうが読みやすい。けれども、スペースバー(一時停止/再送)をうまく使いながら、現在は読んでいる。
●DAISY教科書への希望
- ハイライトを短くしてほしい。
●その他
- 音とテキストだけあっても読むことがうまく出来ないが、ハイライトがあることにより、自分が読んでいる箇所が確認でき、読むことが出来るようになった。
- 縦書きと横書きだと横書きのほうが、読みやすい。
- 先生や友達が本読みが上手になったとほめてくれた。
- Bさん
- 使用教科書:光村図書(小学校4年)
- 使用期間:半年
●DAISY教科書を使用し始めて半年あまり経過しましたが、変化したことがありますか?
- 使用し始めて1ヶ月程度でアンケートをした際には、あまり効果がわからなったが、半年経過してみて、変化が現れてきた。
- 今まで劣等感が結構あったが、いろいろな物事に対して前向きに積極的になってきた。
- 1、2年生のころは、先生が音読してくれていたので、物語など現在でも覚えているものがあるが、それ以降、自分で読んできたものに関しては、ほとんど覚えていない。
- DAISY教科書を使うようになり、読めるということができるので、本人も授業に楽しんで取り組めるようになった。
- 今までは、親が教科書にルビをふっていたが、今では自分で教科書にルビをふって、学校にいくようになった。
- DAISY教科書がないと、読む練習をしないので、授業で始まるまでにDAISY 教科書がないと、「DAISYがないから」と言って、まったく読まない状態で学校に行ってしまう。担任の先生も理解があり、「DAISY教科書がまだ届いてないので、音読の練習ができないのね」と言ってくれる。学校の先生からも、学校での音読も元気に読むようになったとの言葉があった。
●DAISY教科書への希望
- ルビに関しては、聞き間違いをよくするので、ルビはやはり全て振って欲しい。
- やはり、できるだけ早くにDAISY教科書がほしい。
- できれば、学年があがる4月の前にあると、新学年を安心して迎えられる。
- Cさん
- 使用教科書:東京書籍(小学校2年)
- 使用期間:半年
- 普段の本読みでは、とばし読みがとても多い。
- 半年間、使用してみたが、授業の進みとDAISY教科書が届くのが平行状態で、予習としては、なかなか使用できない。
- ただ、音読の宿題があると、自宅でDAISY教科書を確認しながら、音読の宿題をする。
- やはり、耳、目、とくにハイライトがあるのが分かりやすい。
- 半年たって、だいぶ操作にも慣れてきて、自分で操作しながら楽しんでいる。
- 文字の表示をもう少し大きくてもいい。最大にしても、大きさが若干たりない。
- 製作箇所として、詳しく書かれている「てびき」は、できれば製作をお願いしたい。
- Dさん
- 使用教科書:教育出版(小学校5年)
- 使用期間:半年
- DAISYとその他の療育教材と合わせて使用している。
- DAISY教科書は、ハイライトがあるのが、本読みにすごく助けになる。ハイライトがないと逆に読めない。
- 今までは、自分で読むと全く理解できなかったので、テスト等のときに、読んでも分からないからと読むことさえせずシャットアウト状態だったのが、調子がいいと、文から絵に表してみたりして、理解しようとしているのが見える。
- テストの点が10点程度が多かったのに、本当に調子のいい日だと80点ぐらいを5回に1回、10回に1回ととれるようになった。やはり、読めるということがすごい自信になったのだと思う。
- 最初1ヶ月程度では、本当に効果というものが全く見えないというか、何で判断していいのか分からなかったけれど、半年たってみて、目にみえて意欲的に本読みに取り組む姿がみえる。本当にDAISY教科書は、本人にとてもマッチしているのだと思う。
- DAISY教科書の導入時期としては、反抗期に差し掛かっているので、難しいかと思っていたが、最初は、なんとなく聞いているだけだったが、今は、読むということをしている。
- また、よく、新しい単語やフレーズのイントネーションを間違えて覚えていたので、DAISY教科書で最初に確認ができるのがいい。
- 現在5年生で、中学も近くなり、英語に不安があるので、ぜひ英語も製作をお願いしたい。
- Eさん
- 使用教科書:光村図書(小学校1年)
- 使用期間:1ヶ月
- 予習、音読の宿題に使用していて授業に望んでいる。またDAISYによって字の拾い読みが改善され、読むことの意欲が感じられるようになった。
- すらすらと読めるようになった。
- 内容理解がスムーズになった。
- 先生からそれぞれの単元の課題を前もって教えてもらうのでDAISYで読んだ後、そこについてお母さんが聞くが、内容がわかっているようになった。
- 自分で操作して読んでいる。
- 映像から入れることも理解をとても助けている。
- ハイライトがとても有効であり、読み飛ばしがなくなった。
- 先生から参加意欲が高まったとの話がある。
- 毎日10分ぐらいをDAISY教科書にあてている。
- 読み方としては次の3通りある。
- 聞くそばから、影のように後から追いかけて口に出す。
- 同時に読む。
- 音を消して読む。
- スピードはもっと速くても良い。
- Fさん
- 使用教科書:光村図書(小学校5年)
- 使用期間:半年
- 半年使用してみて、教科書を読むことに抵抗がなくなった。
- ただし、まだ積極的に使用するといった程度ではない。
- もともと音読には抵抗がないが、自分が読んでしまうと文の意味が理解できない。
- 一度に、「読む」「理解」ということが難しい。
- DAISY教科書は、基本的に「聞いて理解をする」ということと「言葉のイントネーション」を確認するという形で使用している。
- ここにきて、国語での読み取りの力がついてきたような気がする。
- ハイライトがあるので、自分がどこを読んでいるのか、目で追えるところがわかりやすい。
- 字の大きさが変更できるところがいい。
- 教科書の改ページの箇所と、DAISY教科書での改ページの箇所が違うことは、最初は気にしていたが、慣れてくると、そういうものだと思ったのか、全く気にしなくなった。
- 要望としては、ハイライトの場所が、真ん中あたりで固定できるといい。
- 慣れてくると、スピードを早くして読みたい。