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事例報告(先生、保護者からの報告)

牧野 綾(保護者・調布デイジー代表)

調布デイジー代表の牧野綾と申します。よろしくお願いします。先ほどの3人の先生方の話が、言いたいことがたくさんあっておもしろくて巻きが入っていたんですが、私は多分、普通の保護者なので10分で終わると思います。よろしくお願いします。

私の本職は脳内では「保護者」なんです。その後に調布デイジー代表と図書館嘱託員というのがあって、最後に「妻」みたいな感じなんですけど(会場笑い)。「保護者」のところに非常事態が入ったのが、子どもが3人いるんですけれども、真ん中の娘が小学校1年生になったときに、通常学級に入学したのですが、どうやらちょっと勉強が難しそうだと気づいたところが非常事態の第一弾なんです。

小学校低学年というのは一番初めに字を練習して、音読を毎日宿題が出るのですが、その音読がどうしてもうまくできません。例えば「ありがとう」という文字を読むのにも、「あ」という文字をまず見ます。「あ」がどの単語にあったかを娘が1年生のときはさがしていました。例えば「あ」だと、「あり」とか、「あ」がつくのは何かなと考えて、それで最終的に「あ」を認識していました。なので「ありがとう」の「う」を読むときには、もう「ありが」ぐらいまでは忘れてしまっているんです。そういう感じで音読は全くはかどらないというのが現状でした。

このまま普通の音読をしていても娘は読めないとわかったのと、個人面談のときに先生から、娘さんは字が読めません、書けません、数字も後ろから読めません、このままではダメですと言われました。それが非常にショックで、うちの娘はダメじゃないということで、先生を見返してやるみたいな感じで、やり方を変えなくてはいけないと思いました。

そこで、初めに始めたのが、私が教科書をカセットに録音して、それを聞きながら1フレーズで止めて、娘が繰り返して読んでいくという音読でした。そのやり方でも普通の音読よりかなりはかどりました。ただ、通常学級で算数の問題でも、読まなきゃ解けない問題もたくさんあって、国語だけではなくて算数とか他の教科も全部もできないということになってくるので、このままではどうしたらいいのかわからなくなって、図書館にハンディキャップサービスがあるので、ハンディキャップサービスに相談に行けば何かわかると思って相談に行きました。

そこで、マルチメディアDAISYがありますよというご紹介をいただきました。実際にその場でパソコンを借りてマルチメディアDAISYを見せていただきました。すごく使いやすそうで、娘が音読しやすいだろうなと思って、この教科書はどこかに申請すればもらえるんですかと聞いたんですけれども、そのときは「今は利用者がたくさんいて難しいんじゃないですか」と図書館の方で言われました。今はそうじゃないということは知ってるんですけど、その図書館の情報は、DAISYを紹介してもらったのはありがたかったのですが、そのときは一部間違った情報だったのです。けれど、DAISY図書を作るための製作ソフトは保護者が申請すればダウンロードして使えるようになると言われました。そこで、教科書がもらえないなら自分で作るしかないんだとそのときは思い込んで、そのハンディキャップサービスに相談に行きました。たまたま支援技術開発機構(ATDO)で作り方の講習会がもうすぐあると教えてもらって、「じゃそれを申し込みます」と申し込みをして、受講してDAISYを作れるようになりました。

DAISYを作るのはやっぱり一人ではすごく難しくて、講習会を受けても初めはちんぷんかんぷんな感じでした。DAISYを作れるようになって、早速、娘が音読しているところをDAISYにしてみたんです。娘に使わせたんですけれども、やっぱり私が思ったとおり、娘はその方が音読がしやすかったです。ワンフレーズごとに切れているので、今どこを読んでいるのかと、その文字は何と読むのかというのが理解しやすかったのです。

図書館の仕事も週に何度かしているので、その仕事が終わってから帰って宿題に3時間とかかかってやるというのは、私にとってはとても負担だったんですね。娘にももちろん負担なんですけれども、仕事から帰ってきてイライラしているお母さんが音読を教えているというのは、すごく娘にも悪かったのですけど、自分で一から十まで音読することができて、私も横で聞いているだけで話がどんどん進むので、「ママできたよ」、「よくできたね」って褒められるのがとてもうれしかったようです。

支援技術開発機構が調布にあるんですけれども、そういう情報も今まで知らなくて、図書館で教えてもらったときも教科書は自分で作るしかないと初めは聞いたんですけれども、結果的には調布デイジー代表をやっていますが、今、そういうことはないとわかっているのと、リハ協さんに申請すれば、読みが困難なお子様は教科書が申請できるということがわかったんですが、今、その情報を発信する場所が各地に少ないんじゃないかと思います。読みに困難があるお子様に対してそれを支援する大人の数が少し足りなかったから、そうなったのかなと思っています。

今日ここにいらっしゃる皆さんは、きっとDAISYに興味がおありで、何かしたいなと思っていらっしゃる人たちが、野村さんが言っていたようにいらっしゃると思うので、これから皆さんが住んでいるところで、お子さんたちが困難を抱えているときに、「こういうものがあるんだよ」ということと、「心配しなくていいよ」と、「みんないっぱいそういう子もいるし、支援をもらえればちゃんとできるんだよ」と伝えてほしいと思います。

うちの娘は、「自分はばかなんじゃないか」と泣いていたことがあったんですけれども、「そうじゃないよ、やればできるんだよ」ということを教えていく大人たちがたくさんいると、これから娘の将来もちょっと明るくなるんじゃないかと思います。

これから皆さんが今後、携帯の電波がつながっていくように、いろんなところから発信していけば、電波が届かないところがなくなるんじゃないかなと思うんです。うまいこと言おうと思っていましたが、どうでしょうかね?(拍手)

このように皆さんが各地で活動していただけたら、うちの娘がバカなんじゃないかと思うこともなくなるし、もしかしたらうちの娘がお友だちに「こういうのがあるんだよ」と教えられるようになるかもしれないので皆さん、頑張っていきましょう。ということで、これでお話を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。