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シンポジウム「デイジー教科書の現状、課題、そして将来に向けて」

講師のコメントおよびまとめ

田中 和美(京都教育大学付属特別支援教育臨床実践センター 研究員)

マルチメディアデイジー教科書の現状・課題・将来に向けてグループでいろんな可能性について話し合いました。デイジー普及のために、教育委員会に働きかけようとか、先生方に情報を持っていこう、そのための廃棄PCの再利用とか、大学で教えていらっしゃる先生方には将来教師や図書館司書になる大学生にマルチメディアデイジーを伝えて欲しい、また情報教育の専門家との連携、行政の連携などいろんな提案が出ました。その話し合いの過程で、デイジーサポーターズを作ったらいいのではないか、という意見が出ました。デイジーサポーターズとかデイジー一座をつくるのはとてもいい発想だと思います。誰がどういうことができて、何をやっていくか、当時者・保護者・作り手・教師などが、どう効果を伝え、必要な子どもが使えるよう広報していくかのプランを構築して、普及に繋ぐことは大切です。

また、今日、参加された現場の先生に「どうしてマルチメディアデイジーをご存じになったのですか」と伺ったところ、教師のFacebookを見て辿り着いたということでした。アンケートによると、マルチメディアデイジー教科書は支援学級の先生や通級担当の先生が申請されている例が多いようです。

デイジー教科書を渡して「はい、どうぞ」と言って、読みが苦手の子ども達が上手く使うのは難しいと思います。読みの困り感はいろいろですから、やはり、特性の工夫が必要となります。支援学級や通級の先生が、この児童はこんな使い方をして使えるようになったという情報は、とても大事なことで、うまくいった例を読まれやすいところにあげていくという地道なことも必要なのではないかと思います。とはいえ、平成22年、330名だったのが、今年25年、1322名です。地道な努力が、ここへ結んでいるということですし、情報機器は、どんどん進歩しています。マルチメディアデイジーが使える環境が整ってきているという希望的なところに目をむけて広めたいものです。

次に、マルチメディアデイジーと評価について考えてみたいと思います。これもアンケートを見ましたら、読める漢字が増えた、文章の理解がよくなったというところでは、「大いにそう思う」「そう思う」のプラス評価がとても高いです。ではテストの点が上がっているか聞くと「そう思わない」「全くそう思わない」というのが多いです。テストで点数が上がらないと、自尊感情は難しいかなと思います。アンケートで「デイジーでテストを作ってほしい。」「テストをデイジー化してほしい。」と記述されているのは、デイジーだと点数がとれる希望を持っているということで、デイジーが良いと感じている証拠だと、思われます。

紙のテストとデイジー化したテストを比較すると、通常は、テストの点数は変わらないというデータがあります。でも、中には、デイジーだと力を大きく発揮できる子どもがいます。読み困難の子どもの中にも、その困難さのために今の紙形式では、自分の持っている力が成果として出ない子がいます。読みに時間がかかるため数学や理科の問題が解けなかったが、デイジーだとテストができたという例では、紙テスト環境なので成果が上がらなかったと考えられます。デイジーで読んで成果が発揮できる子は、デイジーを使っていくというのは、権利条約の批准や合理的配慮の観点からも認められるべきとも言えます。データに基づき、何の力をそのテストが図っているかについても見極め、テストデイジーについても声をあげ、こどもの自尊をあげていくことは必要だと思います。

最後に、グループで、「マルチメディアデイジー図書」と大きな単独タイトルになっている本が出ていないという意見がでました。「マルチメディアデイジー図書」と書いてある大きな書籍を出して、デイジーをもっともっとアピールする。マルチメディアデイジーが標準化されどんどん目にするようになると更に広まると思われます。