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シンポジウム「デイジー教科書の現状、課題、そして将来に向けて」

講師のコメントおよびまとめ

澤村 潤一郎(社会福祉法人 日本点字図書館)

グループFにいらっしゃった「かかわり教室」の代表の方と、少しお話をしました。これまで普及するための環境の議論をいろいろしていましたが、実は、デイジー教科書という、ほかの生徒とは違うものを使う、1人だけ違うものを使う、というかなり心理的な抵抗というか、根深い問題があるのではないか、という会話をしました。親御さん自身あるいは本人自身も、皆とは違うということは、認めたがらないというケースもあるとお聞きしました。

小学生は子どもですけれど、残酷ですので、1人違うものを、例えば、みんなが紙の本を読む中でiPadやパソコンを使っていると、たぶん、私は田舎者ですが、田舎の小学校だったら、かなりボコボコにされるケースもあるのではないかと思います。

そういった課題を解決していくためには、今、1300人ということで、かなりここ数年で増えてきていると思うのですが、本当はもっと、桁が違うくらい、必要な子はいると思います。ここのブレイクスルーをどうやってするのかについては心理的な抵抗を取り払う必要があると思いました。

他の生徒さんや一般の親御さんに対しても、こういった教科書があって、こういった使い方があって、こういう学び方があるということも理解してもらう。いじめなど起きないような環境づくりも必要なのではないかと、先ほど、かかわりの教室の方と会話して感じました。

今回のシンポジウムは、義務教育課程の教科書問題がメインになっていると思います。今後、高校や大学に進学する子ども達も出てきます。そういった生徒さん達へのフォローをどうするか、継続的にしていくにはどうするか、これも大きな問題だと思います。

実際、当館でも中学校までは、デイジー教科書で受けていた、その後、志望する高校に受かったけれども、継続して、マルチメディアデイジーの教科書を受けたいという要望を受けます。そうすると個別に対応するしかないのですが、高校になると教科書の種類は、義務教育の比ではなく膨大な数になります。この体制をどうするか。これも非常に大きな問題だと思います。

大学でも、昨年、当館で施設公開イベントをしたとき、そこでマルチメディアデイジーのデモもしたのですが、そこに来た、ある弱視の大学生が、うちの大学でもそういうサポートをしてほしいけれど全然理解がないのだという訴えをしていました。高等教育でのサポートも、これから差別禁止法が施行されますと大きな問題になると思います。

あと、どこかのグループの発表の中で、点字図書館のデイジーの資産も有効活用していくべきでは、という指摘がありました。確かに、デイジーの電子図書館でありますサピエ図書館というのがあるのですが、視覚障害者以外の利用はまだ少ない状況です。音声のデイジーがメインなのですが、その利用も拡大していく必要性があります。これは点字図書館等の既存のデイジーの製作団体の課題でもあると感じています。ただ点字図書館は零細なところが多いので、なかなか新しい利用者に対応というのも難しい面もありますが、そこは、比較的規模の大きな当館のようなところから、徐々に利用拡大してもらえるように取り組んでいきたいと感じています。以上です。