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平成19年度 DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業
シンポジウム DAISYを中心としたディスレクシアへの教育的支援 報告書

パネルディスカッション:配布資料

「著作権分科会 法制問題小委員会(第10回)議事録・配付資料」より抜粋
http://211.120.54.153/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/08011801.htm

資料1:第23回 文化審議会 著作権分科会における意見の概要

3.権利制限の見直しについて

(2)障害者福祉関係

  • 総論として異論はないが、映画の製作側にとって、映画の複製が知らないところで行われることには、どうしても 神経質になる傾向がある。権利者とユーザーとの間で、権利制限の趣旨に沿った適正なルールが作られるべき。
    また、現在、映画界では聴覚障害者に対して、日本語字幕つきの映画の上映や、聴覚障害者の団体に対して著作物を 無償で提供する対応を継続的に行っている実績があるので、今後の議論の参考にしていただきたい。
  • 著作者の立場からすれば、権利制限の拡大は慎重に議論していただきたいのが前提だが、障害者の中には学習障害児童 のように緊急性の高い方がおり、慎重に議論をしている間に、障害者の方が致命的な損失をこうむることのないよう、 なるべく早く結論を出すべき。また、点字図書館等が録音図書を作っており、膨大なコンテンツがあるので、これらを 学習障害児童にも利用できるようなシステムの変更も併せて検討すべき。
  • 図書館界としては、健常者へ障害者用のコンテンツが流れるのではないかという権利者の心配については、公共図書館が それを管理することによって、法律に基づいた公的な行政事業として行うことにより、それを防ぐことができるのではないか と提案している。

7.その他の検討事項

  • 図書館関係については、平成15年の分科会報告で法制化が適当との方針が出されている、再生手段の入手困難なコンテンツに ついての図書館での複製の件について、棚上げになっていると聞いている。中古の電気製品の流通についての法律等ができて、 ますます再生そのものが困難になるコンテンツが増えてくる。具体的に何が問題になっているのか、どのようにすれば法制化が 進むのか、事務局も含めて検討を進めるべき。また、図書館においてインターネットの内容をプリントアウトすること、官公庁で 刊行されているものついての全部分の複写も要望として出しており、これも18年の分科会報告の中で妥当であるという意見を ほぼいただいている。
    諸外国の例を見ても、図書館からの情報提供によって社会の活性化、国の強化、経済的な発展を図る、医療情報や法律情報を 提供するという国レベルでの情報政策の中に、図書館の情報機関としての役割を位置づける国が多くなっている。日本でも文部 科学大臣告示や、各種の報告書の中で、はっきりこれが明示されている。これらの要望は今回も要望事項として出しているので、 政策的な面からの検討もぜひ進めるべき。
  • 図書館はこれからデジタル図書館化していくだろう。本をため込んで大きな場所をとり、そこで閲覧させるというスタイルから、 コンピューターを置いてインターネットでアクセスするという時代が現に来ている。そうなるとおそらく様々な大きな問題が出て くるので、図書館については今後ともいろいろな検討が必要となる。

資料2:法制問題小委員会中間まとめに対する意見募集の結果概要

(速報値)

1.意見募集の期間
平成19年10月16日(火曜日)~平成19年11月15日(木曜日)
2.寄せられたメール等の総数
団体 67通
個人 479通(無記名を含む)
合計 546通
3.項目ごとの意見の件数(うち、団体意見)
  1. 「デジタルコンテンツ流通促進法制」 30件(10件)
  2. 海賊版の譲渡のための告知行為の防止策 20件(8件)
  3. 親告罪の範囲の見直し 312件(9件)
  4. 薬事関係の権利制限 78件(30件)
  5. 障害者福祉関係の権利制限 45件(18件)
  6. ネットオークション等関係の権利制限 36件(16件)
  7. 検索エンジンの法制上の課題 92件(32件)
  8. ライセンシーの保護等の在り方 10件(10件)
  9. いわゆる「間接侵害」に係る課題等 33件(9件)
  10. その他の検討事項 6件(2件)
  11. 総論的事項、その他 28件(5件)

*各項目への分類は、基本的には、寄せられた意見の中で意見の対象として記載されていた項目名によった ものである。また、1通の意見が複数項目にわたることがあるため、~の合計はメール等の総数とは一致しない。

4.各項目ごとの主な意見の概要(次のページ以降を参照)

3.権利制限の見直しについて

(2)障害者福祉関係

ア 総論

  • 2007年9月28日に日本政府が署名した国連障害者権利条約に言及すべき。製作の資格や窓口の制限、貸出等の アクセス方法の限定があり、そのための資金負担も求められる。条約批准に向けて早急な改善が図られるべき。
    著作権者側からみれば権利の一部制限にはなるが、これは障害のある人の情報格差解消のための合理的配慮 (reasonable accommodation)であり、この措置で、障害のある人が健常な人と同等に文化や 情報を享受することが可能となる。こういった基本的観点から最終まとめの検討がされるべき。
    なお、重複障害もあるため、「障害者」でなく「障害」との表記にとすべき。(障害者放送協議会、財団法人全日本ろうあ連盟、他)
  • コンテンツ提供者側も、障害者福祉の重要性を認識しており、既に、字幕や解説を付した映像作品や字幕放送などの提供が 広く行われている。字幕・手話を挿入したDVD等の制作につき事前の一括許諾契約の締結により、字幕付DVD等も多数制作、提供され ており、著作権法上の権利の存在が、「障害者の権利に関する条約」で言われている「不当な又は差別的な障壁」となっているとは 言い難いというべきである。
    安易な権利制限は、障害者向けにコンテンツを提供する者のインセンティブを阻害することとなり、結果として、障害者向けの コンテンツ提供の機会を減少させるおそれがある。障害者に対する配慮は、社会福祉政策全般の観点から、権利制限がどうしても必要で あるとの共通認識が得られた場合に限り、その導入を検討すべき。その場合も権利制限の範囲を明確にし、著作権者等に対する補償措置等 についても検討すべき。(社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA))
  • いずれの権利制限要望も障害者の基本的人権を実質的に保障するものであり、情報アクセスの観点から認めるべき。 (社団法人情報科学技術協会)

イ 視覚障害者関係

1)37条3項の複製主体の範囲

  • 公共図書館、国立国会図書館を是非複製主体に含めるべき。大学図書館や学校図書館においても障害を持つ学生、生徒等のために 複製を認めることが必要。また、福祉施設についても、視覚障害者情報提供施設でなくとも、一定の条件の下で責任を持った製作と情報 提供を行える施設を含めるべき。(障害者放送協議会、個人)
  • 対象施設を利用者の確認が行える体制が整っている公共図書館等に限定するべき。(社団法人日本レコード協会) (同旨 社団法人日本書籍出版協会)
  • 複製主体については、国立国会図書館や一般図書館のみを例示し「施設」に限定するのではなく、NPO法人を含めた「法人」も 複製主体として含めるべき。(特定非営利活動法人シネマ・アクセス・パートナーズ)

2)37条3項の対象者の範囲

  • 対象者の範囲は、より多くの障害者を含めるようとするもので画期的な措置と考える。条文作成時にこの考えが実質的に後退しない ことを望む。(社団法人日本図書館協会)
  • 障害者手帳の有無を対象者の範囲として著作権法に盛り込むことは避けるべきであり、「障害等により著作物の利用が困難な者」と 定めればよい。(障害者放送協議会、個人)
  • 対象となる障害者の範囲を、視覚障害者に限定せず、その他の様々な障害を持つ人々に広げることは、公益性を有する措置であると 考えるが、対象となる障害者の範囲は、公的機関等によって認定された者に限定するなどして明確化しておくことが必要。 (社団法人日本書籍出版協会)

3)利用可能な著作物が市販されている場合の取扱い

  • コンテンツ提供者自らが録音物の形態で市販している場合については、権利制限を適用しないこととすべき。 (社団法人日本レコード協会)(同旨 社団法人日本書籍出版協会)
  • 同じ録音資料でも資料の一部抜粋であったり音声劇のような特殊なものについては、障害者が使うための資料とは 別のものと考えるべき(障害者への情報保障という観点から、資料のすべてをありのままに読んだものを必要としている。) (社団法人日本図書館協会、個人)
  • 多くのCDブックは活字書に比べて非常に高価であり、デイジー録音図書等で製作されたものが、活字と同価格で同時期に 出版される場合にのみ、権利制限を適用しないとすることが適当。(障害者放送協議会)

4)その他

  • 複製の対象となる著作物は、その複製を行うことができる施設や障害者自身が所蔵しているものに限定することが必要。 (社団法人日本書籍出版協会、個人)
  • 営利目的で行う場合については、権利制限の対象とすべきではない。(社団法人日本書籍出版協会)(同旨 社団法人日本 レコード協会)

ウ 聴覚障害者関係

1)総論

  • 市販されているDVDビデオは通常、複製を制御する著作権保護技術が用いられているため、複製権を制限しても字幕等を付けて 複製することができない。字幕付きDVDビデオを新たに作るためには、映像著作物の著作権者から、著作権保護技術が用いられていない 素材の提供を受ける必要がある。また、貸与には補償金が必要となるため(第38条第5項)、元栓処理で行うことが想定され、複製権を 制限したとしても事実上現状と同じ不便さを強いる結果になるのではないか。聴覚障害者がビデオソフトを楽しむことができない状況の 改善は賛成だが、この権利制限は、聴覚障害者のニーズに合致したものか疑問であり、賛成しかねる。
    複製権の制限という方法ではなく、著作権者を含む関係者間の協力関係を構築するルールづくりが必要。(社団法人日本映像ソフト協会)
  • 複製の元となる適法なマザーテープを取得していることを前提とすべき。従前より、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターに よる字幕付ビデオ・DVDの作成・貸出に協力してきており、その他の公共機関・非営利団体にも、一定の措置の実施を条件にマザーテープを 貸し出す用意がある。福祉の増進は、基本的に権利者の協力により実現されるべきであり、安易に権利制限規定を拡充する方法によるべき ではない。(社団法人日本映画製作者連盟)
  • ニュースや情報番組等は時間の経過とともに内容やデータが古くなり誤解を与える可能性もあり、複製して字幕等を付与することに ついては、新たに複製の主体となる障害者情報提供施設が責任を有することを明確にすることが必要。なお、仮に字幕を挿入した放送番組 の録画物をCS放送やネットで再送信できるようにした場合、視聴者にリアルタイムの放送と混同されて誤解や混乱を招くおそれが強い。 自由に再送信できるようにすることについては、より慎重な検討が必要。(日本放送協会)
  • 放送事業者としては第三者により付加される字幕等によって放送内容の正確さが結果的に損なわれるなどの問題が生じ得ることを、 本来的に懸念している。聴力障害者情報文化センターにおける字幕・手話DVDの貸出しが希望する作品に十分対応できないということであれば、 権利者との契約によって運用されているものであり、改善策について放送事業者や権利者団体との話し合いにより解決が図れるのでは ないか。(社団法人日本民間放送連盟)
  • 放送自体には字幕付き割合が向上しているが、同じ放送でもメディア化したら字幕がつかないという現象が発生している。(個人)

2)複製主体の範囲について

  • 聴覚障害者情報提供施設、障害者福祉を目的とする非営利法人で、聴覚障害者を対象とした字幕や手話を附しており、その実績と 経験の一定期間あるところとし、情報文化センター等の特定団体との契約を条件とすべきでない。(財団法人全日本ろうあ連盟、障害者放送協議会)
  • 講義等でビデオを使用する教員も多く、大学など高等教育機関も複製主体として含めて欲しい。(個人)

3)対象者の範囲について

  • 高齢者の多くが難聴などの障害を持っているにも関わらず、我が国は障害判定が厳しく、障害者と認定されない。 聞こえや見ることが困難と申告した人を対象とすべき。(財団法人全日本ろうあ連盟、障害者放送協議会)

4)健常者への流出防止等の条件について

  • 「主体対象」を定めること以外に更なる条件を附すことは、バリアフリー作業を困難にさせるだけであり、本件趣旨に反する。 結局著作権法の適用と変わらない作業、費用負担を発生させる「技術的保護手段」などを求めないこととし、無断の複製を禁止する クレジットを明記するなど、「主体」の適切な処置、判断に任せるべき。(財団法人全日本ろうあ連盟、障害者放送協議会、個人)
  • 障害者の著作物に接する機会を拡大しようとする本中間まとめに基本的に賛成するが、聴覚障害者の用に供するための字幕等を 付した映像資料については、健常者向けに無償貸出がなされないようにすること、市販されているDVD等と同様の保護技術手段を施す こと、当該資料を公衆送信するときは、健常者が視聴できないよう、アクセス用のID管理を行うなど利用者の限定の手段が確保される ようにすることの3点について充分に配慮されるべき。(社団法人日本音楽著作権協会)
  • プロテクト等の使用については、技術の進歩により変化していくものであり、ガイドライン等で示すのが適当。 (社団法人日本図書館協会、個人)
  • 字幕のないDVD等は聴覚障害者向けに収益を得ることを想定していないものであり、複製が行われたとしても権利者の利益を 害することはないから、技術的な保護手段をかけることは求めないべき。(個人)

5)利用可能な著作物が市販されている場合の取扱い

  • 聴覚障害者が本当に使い易いものでなければならず、単なるキャプションの挿入されたもの等は含まれない。(社団法人日本図書館協会)

6)その他

  • 市場で一般に売られているDVD等をバリアフリー化する技術があり(「web-shake字幕をつけ隊!」等。市場コンテンツをPCで 再生する際に音声ガイドが出るソフトウェア)、著作物に手を加えず、複製もせず、内容を改ざんしない形でのバリアフリー化ができる。 むしろ今回の複製を行うことについての権利制限では、複製物の流出の懸念、市場から字幕付きタイトルが減る、メディアの多様化に 追いつかない等の問題点があり、コンテンツと字幕データを分けて、著作物に手を加えない形のバリアフリー化も権利者の許諾を不要と すべき。(株式会社キュー・テック)
  • 障害者を対象としたCS放送は、通信相手が障害者手帳を有する者が地方自治体に申請した場合しか機器を入手できず、スクラン ブルもかけられている。自動公衆送信よりも厳格に限定されており、これ以上の条件を付すべきでない。(財団法人全日本ろうあ連盟)
  • 字幕を追加する作業は専用の機材等が必要であり、施設も少ない。字幕付加について障害者どうしで補完するためにも、 「ニコニコ動画」や「字幕.in」のような機能を活用できないか。(個人)

エ 知的障害者・発達障害者等関係

  • 「全国LD親の会」から2007年2月8日付けで文部科学大臣宛に提出された要望書の第11項にある、「LD児・LD者の情報保障を促進する ために著作権法を改正すること。現在文化審議会著作権分科会で見直しが検討されている、著作権法第37条第3項、同第33条第2項を改正し LD児・LD者を含む発達障害者も適用対象とすること。」という提言を尊重すること。視覚障害、聴覚障害に準ずる形ではなく、発達障害を 著作権法上で正式に位置づけるべき。(全国LD親の会)
  • 複製の方法にデイジー化を含むことは、様々な状況・程度の障害を持つ人々に対応していかなければならない状況の下では、必要な 措置であるが、権利者の利益を不当に害することがないように、利用のための条件を限定し、明確化する必要がある。 (社団法人日本書籍出版協会)
  • 対象となる「障害者」として、視覚障害・聴覚障害に準ずる形での位置づけにと留まることなく、発達障害や知的障害および精神障害 についても正式に位置づけられるべき。発達障害については、学校教育、就労支援等の場面で具体的な支援ニーズに即したものとすべきであ り、実際に当該者の指導・支援に携わっている専門家からの所見をもとにして、対象者とすることもできるようにすべき。(障害者放送協議会)
  • デイジーのほか、技術の進歩により障害者のための著作物へのアクセス手段は様々なものが生まれている。複製方法や提供方法は、 特定の手段を限定せず「障害者が必要とする形態」で複製できるようにすべき。(障害者放送協議会)
  • マルチメディアデイジーの制作だけでなく、教員や公務員の管理の下に、一定期間保存が可能となる方策を検討すべき。 (社団法人日本図書館協会)
  • 知的障害者や発達障害者への情報提供について、公表された著作物を平易な表現に改めること、文字情報をイラストやピクトグラム などへ置き換えることについて権利制限を検討すべき。(個人)