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平成19年度 DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業
シンポジウム DAISYを中心としたディスレクシアへの教育的支援 報告書

講演3「地域でのディスレクシア支援」
事例2:奈良県での事例

講演を行う濱田滋子氏の写真

濱田滋子(NPO法人奈良デイジーの会 代表)

こんにちは、奈良デイジーの会の代表をしています濱田滋子です。今日は、地域でのディスレ クシア支援、マルチメディアDAISY教科書の活用事例の報告をさせていただきます。

初めにちょっと謝らないといけないのですけれども、本日の資料として出したものが奈良デイ ジーの会の活動資料でして、今日の事例報告とちょっと違いますけれども、よろしくお願いしま す。

まず奈良デイジーの会の紹介をしたいと思います。

2003年の5月に日本障害者リハビリテーション協会主催のマルチメディアDAISY図書製作研修会に参加した メンバーで会を結成いたしました。会は、ディスレクシアなど読みに困難のある人にマルチメディアDAISY図 書を製作し提供して支援をするということを目的としています。 去年の8月に法人化をいたしました。初代会長が堀田さんです。堀田さんが、もともとDAISYがディスレクシア に有効だということを、ひなぎくさんに教科書をDAISY化していただいて、お使いになって、これは有効だと いうことで声をかけていただいて、この会が結成されました。2代目会長、日比花子さん。そして、私が3代目 会長をしております。

活動の中心は3つあって、まずマルチメディアDAISY図書の製作提供というのが中心になるのですけれども、 あと、ディスレクシア及びマルチメディアDAISY図書の啓発活動もしております。それから、製作指導もして おります。製作者を増やしたく、養成しております。また、製作研修会を行いますので、興味のある方はぜひ 参加してください。

メンバーは今のところ約30人で、教育関係者、これには学校の先生もいらっしゃいます。それから、読みに 困難のある人がいる家族、図書館関係者、医療関係者など、様々な方面で活躍されている方がいらっしゃいます。

活動地域は、「奈良県だけですか?」とよく言われるのですが、メンバーは京都やら大阪やら、滋賀県、兵庫県と あちこちにおりますので、特に活動地域に限定なく、可能な限り活動いたします。

教科書のDAISY化については、2006年より活動の中心として取り組んでおります。なぜ教科書のDAISY化を中心に するようになったかというと、やはりDAISY化の依頼というものの差し迫ったニーズとして、教科書が一番であると いうこと。それから、著作権の問題で、これは著作権を主張するよりも、人権の主張が先にくるだろうということで、 人権のことを考えると、マルチメディアDAISYで教科書をDAISY化するということはもう、これは著作権をクリアする という自信があったので、とりあえず教科書に取り組みました。それから、ぜひ学校と連携したいということで、 学校と連携したディスレクシアの支援を行いたいということで、教科書を取り上げることにしました。

2006年度にDAISY化した教科書ですけれども、中学2年生の国語、歴史、地理。それから小学校3年生の国語。

事例の一つ目ですけれども、先ほど中学2年生のと言いましたが、今年も引き続き使われているので、今は中学 3年生になっている子どもさんです。ディスレクシアで、普通学級に在籍しています。6年度は、4月より国語、歴史、 地理のDAISY教科書を使って、2007年度は国語、算数、公民のDAISY教科書を使いました。今、使っています。

この中学生の支援をするのに、どういう経緯をたどったかというと、これはとても重要なことなのですけれども、 連携がすごくうまくいった例なのです。巡回相談員という、特別支援教育スーパーバイザー、実は先ほどもちょっと お名前が出たのですけれども、西岡先生が巡回相談員として公立学校に巡回に行かれて、ディスレクシアの生徒さん を見つけて、彼にはマルチメディアDAISY教科書が適応するということで、コーディネーターの先生にそのことをお 話しされ、製作グループとして奈良デイジーの会を紹介していただきました。それで、校内コーディネーターの先生は、 私どものほうに依頼をされてきました。

生徒さんの様子ですけれども、普通学級に在籍していますが、漢字の読み書きが特に困難で、学校では板書やテスト に読み仮名をつける配慮をしたり、あとは定規を使った読み方をしたりしていました。WISC検査の結果では、知的能力は 平均的であるが、読み書きが困難だという結果が出ていました。

巡回相談員がDAISY教科書を適用と判断した理由に、まず読み書き訓練に通う場所が、近くに適当な場所がなかったと いうこと。それから、学習の遅れによる自尊心の喪失や意欲の低下をできるだけ早く防がなければいけないということ。 それから、義務教育期間中の学習の保障、教科書にアクセスできるという保障をしなければいけないということで、 DAISY教科書が適用すると判断されたそうです。

教科書をDAISY化するにあたって、まずコーディネーターの先生と事前に打ち合わせをしました。字体をどうするか、 フォントサイズはどうか。それから、読んでいる箇所で黄色く反転していくのですけれども、その反転の長さをどれ くらいにするか。それから読む速さをどうするか。漢字の対応はどうするか。縦書きがいいのか、横書きがいいのか。 神山先生は横書きとおっしゃいましたけれども、やはり好みがあります。それから、教科書の内容をどこまでDAISY化 するか。社会なんかは資料に図やグラフとか表とかが大変多く使われていて、DAISY化がかなり難しいのですけれども、 そのへんをどこまでするかというのを相談しました。

一応、作ったものを巡回相談員の先生に見ていただきました。いろいろご指導をいただいてとても助かったのです けれども、中学生の場合はやはり、内容理解を中心に考えたDAISY化をするという助言をいただきました。小学校の低 学年の場合はボトムアップということで、またちょっと作り方を変えます。読む練習に使ったりという使い方も考えら れます。あと、ルビ、これも神山先生が「ルビをつけると、本文とルビが混同しちゃう」ということで、色をつけたら 見やすくなるよと。それからレイアウトも、実はパソコンが人によって大きさがいろいろなので、画面で見え方がずい ぶん変わってしまうのですね。そういうことにも配慮した作り方にする。それから、資料はどこまでDAISY化するか。 生徒さんの希望、先生のお考えなどを聞きました。それから、重要単語にフォントを変えたり、濃さを変えたり、 色を変えたり、見やすくするという工夫をする、などの助言をいただきました。

マルチメディアDAISY化した国語の古典の教科書(平家物語)

これが、国語の古典の教科書です。これは貼り付けただけなので動きませんが、こういう状態でできあがります。

マルチメディアDAISY化した歴史の教科書

これは歴史です。左側が目次になります。

マルチメディアDAISY化した地理の教科書

これが地理です。地理の場合、ちょっと見づらい。ルビが、色をちょっと変えて、青くしてあります。1画面に納まるように、 あまり画面が動かないなどということも配慮して、左側の目次にはページ数が見えるようにしています。

この生徒さんの場合は、家庭で予習復習のために、自習学習として使うという使い方をしています。

著作権の対応としては、先生が学校の授業に使うために教材を変形するというふうに、それから個人を特定するということで 著作権をクリアしています。そして、私たちは自主的に、出版社に一応、この教科書をどこどこの学校のどの先生が、誰々のため に使うために、どの教科書をDAISY化しますというふうに、一応届け出はしています。それでいいですよというお返事を特にいた だいているわけではありません。

コーディネーターの先生から、使用状況の報告をいただいています。私たちが直接生徒さんに指導したりやりとりするというの ではなくて、DAISY教科書を提供する代わりに、先生にその報告を返していただくというふうにしています。使い始めて半年ですね。 4月から使って、9月の報告なのですけれども、まず先生に、「今まで行ったことのない図書館に行って本を借りましたよ」と。 これははっきり言うと、DAISYがこうしたという確証はないのですが、私たちはすごくびっくりしたのですね。これはきっとDAISYの せいだと、勝手な考えかもしれないのですが、でもやはり、生徒さんにすごく気持ちの上で大きな変化があったのではないかなと思 うのです。それから、本人が言っているのですが、漢字がわかってきたと。本当かどうかはちょっとわからないのですが。それで、 成績には特に変わりはありません、ということでした。

次、また1年たった去年の10月に報告をいただいたら、内容の理解がよくなりました、それから、一人で学習に取り組めるように なりました、表情が明るくなりましたよ、交遊関係が増えましたよ、忘れ物が少なくなりました。そして、中学3年生になりましたの で進路を考えなければならないのですけれども、すごく一生懸命考えて、僕は絵を描くのが好きだから、そっちの方向に行こうかな というふうに、自分でちゃんと考えるようになったということで、先生は「なにか自尊感情を感じます」とおっしゃいました。

もう一つ、ちょっと私たちがすごくうれしかったのですが、職員室の雰囲気が、生徒を支援しようという気持ちが出てきましたよと。 DAISYをいただいて、支援するということが始まってから、少し職員室の雰囲気が変わってきましたよ、といううれしいお話もありました。
生徒さん本人の感想ですけれども、漢字の読みや意味を憶測する力がついてきた、1人で勉強するのに役立っているよと。 それから、内容がわかりやすい。自信もちょっとついてきた。続けてDAISYを使いたいです、ちょっと操作が難しいところがあります、 という感想でした。

2つ目の事例です。これは小学校3年生なのですけれども、LDのお子さんで、音韻処理、特に特殊音節がとても苦手だということです。 それから、意味理解にもちょっと問題がある。時間の把握が苦手、追視が苦手。これは、先ほど品川さんがおっしゃっていましたけれど も、やはり視機能のほうの問題で、読みにくさもある。それから、普通学級にこの生徒さんは在籍しているということで、2006年の2学期 より、国語の教科書をDAISY化しています。

この場合、これもやはり連携した支援なのですけれども、NPO法人ファームという感覚統合の教室を主催されているNPOなのです けれども、そこに来る子どもさんで、どうも読み書きの苦手な子どもさんが多いということで、奈良デイジーのほうで教科書を作ってあげ てくださいということで、これは全て、保護者のほうから学校のほうに、使わせてくださいというお願いを実際にしにいったのですけれど も、ちょっとそこはうまくいきませんでした。担任の先生、現場の先生は、これは 役に立ちそうだということだったのですが、管理職のほうの先生にご理解を得られずに、学校を通 した支援ということには至っていません。やはりDAISY化するについて、先ほどの中学生と同じよう な打ち合わせをしました。

国語の教科書を作りました。

マルチメディアDAISY化した国語の教科書

彼の場合は、学校での支援ということに至っていませんが、塾で週に1回、DAISYを使った勉強をしていただくことになりました。 家庭でもお母さんと一緒に、予習復習に使っています。

塾の先生、それから保護者からの報告です。学習面については、音読がとても上手になってきました。それから、内容理解がよく なりました。行飛ばしが少なくなりました。国語のみならず、理科の点数も上がってきましたよ、というのですが、理科の点数が上 がってきたというのは何でかなと塾の先生が考えて、多分、質問がわかるようになってきたので答えられたのだろうな、という ことです。字もきれいになりましたよということです。

生活面のほうなのですが、今までは動物図鑑しか見なかったそうなのです。それが、他の本も楽しむようになりましたよ。 それから、友だちができて、遊ぶ約束をしてくるようになりましたよ。それから、行動範囲も広がって、1回なんか、みんなで大騒ぎ して探すくらい遠くに行ってしまったそうです。それから、連絡帳をきちんと書くようになりましたよ、という報告をいただいています。

次、2007年度、昨年行った教科書のDAISY化ですけれども、その前は2人だったのに、急に13人になりまして、2008年度はどうなること やら、ちょっと心配になってくるくらいですけれども、やってみるとやはり、小学校3年生くらいから困り出しているというのがここに表れて いるかなと思います。

資料6:テキストデータ
2007年度 教科書のデイジー化

支援対象も、ディスレクシアだけでなく、ADHD、聴覚障害、広汎性発達障害、知的障害、脳性マヒと、こういう生徒さんからの依頼が きています

3つ目の事例です。中学3年生。広汎性発達障害で集中力がないということで、2007年度の4月、去年の春から国語の教科書をDAISY化して 使っています。この生徒さんは、特別支援学級に在籍しているので、先生が授業のときに個別指導でDAISY教科書を使っています。先生からの 報告です。集中が維持できるようになった。それから、耳からの情報の入力には強いので、DAISY教科書が有効です。よそ見するので集中して いないなと思ったら、耳からはちゃんと聞いているということです。繰り返し聞けるので、板書に役立って、奥の細道とか漢詩とかをだいぶ 覚えて、それがテストの点につながりましたよ、という報告をいただきました。

4つ目の事例、中学2年生、聴覚障害の子どもさんで、5歳までは音のない世界にいて、5歳のときに人工内耳を入れたそうです。2007年度の 6月より、国語の教科書を使っています。この生徒さんも特別支援学級で、個別指導で授業で使っています。先生の報告です。視覚と聴覚の 両方から情報が入るので、とてもわかりやすい。それから、何度も繰り返して聞けるのでDAISY教科書は有効です。内容の理解もよくなりま したということです。

5つ目の事例、小学校5年生です。自閉症でコミュニケーションがうまくとれない。言葉の使い方がうまくないので、人を傷つけたりケンカ したりということが頻繁にあったようです。2007年度の2学期より、国語の教科書を使っています。彼も特別支援学級で個別指導で授業に使って います。この場合はやはり、NPOファームさんのほうからの紹介で、学校の先生、特別支援学級の担任の先生と連携をとっています。

これは、5年生の国語の教科書です。『大造じいさんとガン』です。

マルチメディアDAISY化した『大造じいさんとガン』

これはファームさんからの報告です。この生徒さんは、読めなくても読みたいという意欲があったので、DAISYが有効です。この、意欲を 維持してあげるという点でもすごくDAISY教科書は有効だと思います。それから、今まで本に関心がなかったが、本を読むようになった。 特に漫画やゲームの攻略本だそうです。DAISYを使い慣れたので、彼は音を消して、反転だけを見ながら自分で音読するようになったそうです。 こういう使い方もDAISYはできます。いろいろな使い方ができるのですが、いつも富山大学の水内先生からの報告がありますけれども、発達段階に 応じてDAISYのいろいろな使い方ができる。まずは、DAISYを見る。それから、音を消して自分で読む。それから、最終的には自分で本を読む、 そういういろいろな使い方の工夫をすればできると思います。それから、暴言が減ったということで、多分不安な気持ちがあったのが少し解消 したのではないかな、という報告でした。

6つ目の事例。小学校6年生、自閉症の子どもさんで、感覚過敏で紙が触れないということで、知的には遅れはなくて、普通学級に在籍して います。去年の2学期より、国語のDAISY教科書を使っています。

これは『やまなし』です。

マルチメディアDAISY化した宮沢賢治の『やまなし』

ファームさんからの報告ですけれども、紙が触れないので本が読めないため、学習に遅れがあったけれども、知的には優秀なのでDAISYは 大変有効です。本人からファームさんのほうにメールが入ったということで、「DAISYは僕にとって一番いい本です、ありがとう」という メールがあったそうです。

漢字にすべてふり仮名をふったマルチメディアDAISY図書

これは、個別対応でDAISYを作ったという例なのですが、すごく見づらいのですが、実は漢字に全部振り仮名を振っています。 中学1年生の読み書き困難の子どもさんなのですけれども、漢字が苦手だから、漢字に全部ルビを振ってくださいというのでそうやって 作ったのですけれども、私たちが作ってみて、これ見えるかなあ、本当にこれがいいのかなあと言って再度確認したら、これがいいという ことで、こういう形で作りました。

それから、これももう一つ個別対応の例なのですけれども、同じ本でも子どもさんによってこうやって反転の長さを変えて、個人個人の ニーズに合ったスタイルでDAISY教科書を作っています。

反転しているセンテンスが長いバージョン

反転しているセンテンスが短いバージョン

アンケートをちょっととらせていただきました。生徒、先生、保護者にDAISY教科書を使ってみた感想を聞くということと、それから先生、 保護者から見た生徒さんの様子を聞くという目的で、アンケートをとりました。対象は、半年以上DAISY教科書を使っている5名の生徒さんの 先生、保護者。それから、中学生の3名の方にアンケートをとりました。

中学生の3名の生徒さんの感想です。どこを読んでいるかわかりやすい。内容を理解しやすい。勉強に役に立つ。一人で学習できる。 もっと本を読みたくなる。それから、継続して使いたい。これは3名全員がそう言っています。それから、何回も聞ける。操作が難しい。 特に、継続して使いたいと本人が言うということ、これはもう、DAISYの存在価値を本当に表しているのではないかな、と思います。

資料12:テキストデータ
DAISYを使った感想(中学生3名)

先生4名、保護者2名からの使った感想です。読んでいる場所がわかりやすい。内容理解がよくなった。暗唱に役立つ。繰り返し聞ける。 音読が上手になった。

資料13:テキストデータ
DAISYを使った感想(先生4名・保護者2名)

生徒さんの様子の報告です。本に興味を持つようになった。自主的に学習に取り組んでいる。忘れ物が少なくなった。字がきれいになった。 このことから、生徒さんの意欲みたいなものが出てきたということが感じられます。

資料14:テキストデータ
生徒の様子1(先生4名・保護者2名)

それから、交遊関係が広がった、表情が明るくなった。行動範囲が広がった。自尊感情が感じられる。こういうことから、自信や自尊心が 出てきたのではないかな、ということを感じました。読み書きに困難を持つ子どもというのは、やはり読み書きの問題だけではなく、意欲を失ったり、自信をなくしたりという、その部分がとても深刻な問題を引き起こしていると思います。今までの報告にもありましたように。 そのへんをどういうふうに支援していったらいいのか、一番そのへんで悩むところなのですが、そうした面でもこのマルチメディアDAISY図書と いうのはとても役に立つのではないかというのを実感します。

資料15:テキストデータ
生徒の様子2(先生4名・保護者2名)

今までこういう活動を通して、ちょっと見えてきた問題点がいくつかあります。

一つに、製作に時間がかかる。それから、学校の理解を得るのが難しい。著作権への対応。マルチメディアDAISY教科書の管理。 と、こういう問題点が出てきましたけれども、時間がかかるという点については日々技術が開発されていますので、これは解決するだろう。 特に、出版社からのデータの提供をいただくという、こういう部分でかなりの製作時間の効率化が図れる。それからまた、外国ではもう行われて いるのですけれども、音声を機械読みにするという、そうすると即時即応、そうした情報伝達ができるのではないかと思います。

それから、学校の対応に対してですけれども、まずディスレクシアの子どもを理解いただく。先ほどから出ていますけれども、 品川さんが書かれて、EDGEさんが出版されています『キミはキミのままでいい』というのを、奈良デイジーの会ではDAISY化して、 この冊子とDAISY化したCDとをセットにして学校の先生に配ったりしています。

それから教育委員会に働きかけもしています。ある地域の教育長さん、県教育長、また市教育長さんの中にはご理解いただいた方も いらっしゃいます。それから、国会議員や県会議員、市会議員にも働きかけています。

著作権のほうですけれども、一応教科書については、現行法の範囲内で個別対応ということで、いけるということで、このことについて はまた井上さんから後ほど報告をいただけると思います。

一応、私たちは出版社に届け出るということで、今まで、東京書籍、光村図書、大阪書籍、帝国書院にマルチメディアDAISY化教科書、 DAISY化しましたよということを届け出ています。お知らせすると同時に、出版社に「こういうニーズがありますよ」ということもお伝え する意味でこれをしています。

最後に、マルチメディアDAISY図書の管理ということですけれども、これからどんどん製作していくとなると、管理するセンターと いうものが必要になるのではないか。これはぜひ必要なのですけれども、そうすることで、各あちこちのグループで製作して、重複製作と いうものを回避するということもあります。それから、製品管理、DAISY化した教科書の質が落ちることのないように、いいものを作るという、 その管理。それから、一覧表を作って、今は公表できないのですけれども、作る側にも、使う人の側から言っても、やはり一覧表というのは いるのではないかと思っています。それでぜひ、管理センターの設置を望んでいます。

最後ですけれども、やはり私たちは、国が読み書きの困難のある児童生徒に配慮した教科書というものを準備することを望んでいます。

これで、奈良デイジーの会からの事例報告を終わります。ありがとうございました。

藤堂●

先ほど申し上げなかったのですが、「ディスレクシアってなあに?」という本が明石書店から出ておりまして、これのDAISY化をうちで しております。本は後ろのほうで買っていただけます。どこかにクーポンが付いていまして、それを送っていただきますとこちらから、 これですね。DAISY引換券というのがついておりまして、こういう形で書店とも共同してDAISY化、これは訳者が私なので、DAISY化 しない限り訳しませんと言ったのでDAISYが付いて出ることになりました。そういう形で、書く方にもいろいろ協力していただくと すごくいいのかなと思います。それから、濱田さんも紹介してくださった『キミはキミのままでいい』ですが、もう部数がなくなったので、 前は無料で配布していたのですが今回100円で、ちょっと色は2色になってしまいましたけれど、品川さんが非常に簡単にわかりやすい ディスレクシアの説明したものを100円で売っておりますので、よろしかったら。これも、DAISY化されているものです。よろしく。

寺島●

先ほどの活用事例のところで聴覚障害の方に対してというお話があったのですが、人工内耳装着後の聴覚障害の方だと思うのですけれども、 もう少し、どんな効果があったのかを教えていただければというのと、それから音声の機械読みというのがよくわからなかったのですが、 その内容について教えてください。

濱田●

生徒さんに直接私たちは接していないので、詳しい情報はないのですけれども、何度も繰り返して聞いている。それがとてもいいと いうことです。発音の練習にも役立っているということで、音と視覚と両方から情報を入れるのが役に立っているという報告をいただい ています。

聾学校の先生からも問い合わせをいただいていて、3学期から教科書をDAISY化してちょっと使ってみるということなので、またそちらの 報告がいただけると思いますので、また報告します。

音声読みということですけれども、今は人間が録音しています、読んで。でもアメリカとかの場合は、機械で文字を読んでしまう。 シンセサイザーの音で、人間の録音ではなくて合成音声です。もしそれができると、とてもまた製作時間が短縮、テキストがあれば機械で読んでしまうという。

司会●

聴覚障害者に関しましてはスウェーデンのほうでそういった研究がございまして、難聴者の場合、そういった言葉の訓練とかに なるという報告が出ています。アメリカの場合ですと、合成音声を使ったDAISYがたくさん出ています。

会場●

濱田さんに質問なのですが、教科書の管理センターを目指しているということで、重複製作のお話がありましたけれど、教科書を 作っていらっしゃる中で、個別対応で作っていらっしゃる、ニーズに合わせてというのがありましたけれど、それを重複製作の回避の管理と いう部分での個別対応の部分の製作、要するに標準化という部分を求めるのかどうするのかという部分と、たとえば標準的なスタイルで 作ったとしても、それを後で今度は個別対応に変換、修正することも可能なのかという部分をお聞きしたいと思いました。

それと、今の寺島先生からの質問に関連していることでは、私も実際に日本の聾学校の図書管理の司書をやっていた方から、難聴の お子さんに、これは録音図書を利用して言葉の訓練をやりました、有効でしたという話をうかがったことが。それから、合成音声に関しては、 最近はいろいろな日本語の合成音声もできてきていて、10万円から20万円くらいのもので、全部テキストデータがあればそれに総ルビを付けて、 なおかつ合成音声で出力させるときにルビを修正すれば、たとえば「にっぽん」と読みたいけれども「にほん」とルビが振ってあればそれを 「にっぽん」と置き換えれば「にっぽん」と読んでくれるようなソフトがもうできているという。

濱田●

一つ目の質問の、管理センターでのどう管理するかということなのですが、それは今年の課題です。どういう状態で管理、保存して それをどういうふうに変形していくか。一つ作ったものを、いろいろな形に変形することは可能です。ですから、一つ作ったものを私たちは いく通りにもその子どもに応じて、スタイルシートというものがあって、それを使って文字の大きさや行間や色や、いろいろなものを変形す ることができます。だから、もともとのものが一つあれば、それをいろいろに作り替えていく状態なので、もともとのものをどういう形で保 存するかというのは、これからの課題です。

二つ目のお話ですけれども、合成音声は、いいものがあればぜひ使いたいと思います。日本語はとても複雑で難しいので、特に固有名詞 とかをきちんと読んでくれないので、教科書に使うのにはまだちょっと至っていないのかなと思います。でも、日常の情報についてはそうい うもので処理できつつあるのではないかと思っていますので、またいいものがあったらぜひ教えてください。

河村●

せっかく合成音声の話が出たのでちょっと補足させていただきます。合成音声は、結局、今入力の辞書はいろいろ、分野別というのが あって、仮名漢字変換のときにいろいろな辞書を専門の人は使えるようになっているのですが、残念ながら今のところ、読みの辞書を使い 分けられるようになっていないのですね。だからこれを、構造的に読みの辞書を使い分けられるようにするという、一歩進んだ技術開発が 必要で、これについてはそろそろもう、いろいろな方が考えておられるようですし、ぜひその開発に期待したいところですね。これはもう 時間の問題で、良くなるというふうに考えていいと思いますので、それを活用した、できるだけ速やかな、必要なときにすぐ提供できると いう体制づくりが重要だと思います。