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平成19年度 DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業
シンポジウム DAISYを中心としたディスレクシアへの教育的支援 報告書

【講演3】事例2:配布資料

NPO法人 奈良デイジーの会

http://www.gsk.org  naradaisy@gsk.org

奈良デイジーの会は、デイジー規格で製作されたデジタル図書を使って読みに困難を抱えるディスレクシアなどを 支援する目的で、2003年5月に結成されました。

私たちは、読みに困難があるゆえに本や学習から遠ざかっている子どもたちに、本の楽しさを知ってほしい、教科書を 読めるようになってほしいという願いのもと、彼らを助ける一つの道具として、マルチメディア・デイジー図書を 提供しています。(以下デイジー図書はマルチメディア・デイジー図書を指す。)

会員は読みに困難をもつ子どもの親や、教育関係者、医療関係者、図書館関係者等です。

会を設立するにあたり、(財)日本障害者リハビリテーション協会(http://www.dinf.ne.jp)と NPOデジタル編集協議会ひなぎく(http://www.daisy.gr.jp)よりご指導とご協力をいただきました。

デイジー(DAISY)とは

デイジー(DAISY)とは デジタルDigital アクセシブルAccessi ble インフォメーションInformation システムSystemの略です。

マルチメディアデイジー図書は、パソコンで本を再生する図書です。文字を音声で読み上げるので、それを聞きながら、 文字や画像を見ることができます。カラオケの画面をイメージしてください。音声で読み上げられる部分の文字がハイライト されていきます。

マルチメディアDAISY化した『スイミー』

小学2年国語の教科書より「スイミー」レオ・レオニ作

デイジーは、もともと視覚障害者のデジタル録音図書を作るための国際標準規格です。 デイジーコンソーシアム(http://www.daisy.org)がデイジーの開発と普及を行っており、 本部はスイスにあります。 日本では(財)日本障害者リハビリテーション協会情報センター(http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/) が開発と普及活動を行っています。

デイジー図書の特徴

マルチメディアDAISY化した『スイミー』

  1. 文字・音声・画像を同時に再生するので、視覚と聴覚の両方から情報を得ることができる。
  2. 音声で読み上げる部分の文字がハイライトする。
  3. 文字の大きさや行間、色を変えることができる。
  4. 読むスピードを変えることができる。
  5. 早送り、巻き戻し、章・節へのジャンプができる。
  6. 何度も繰り返し見ることができる。
  7. 世界で共通して使えるユニバーサルデザインである。
  8. 製作、再生ソフトが無償で提供されている。
  9. 障害を持つ人自身やその家族が製作することができる。
  10. キーボードやマウスでの操作のみならず、アミ(AMIS)を使ってタッチパネル・ジョイスティック・ゲームのコントローラー・点字など、 障害に応じて様々な使い方ができる。
  11. デイジー図書のデータがあれば、録音図書・マルチメディア図書・拡大図書・点字図書に変換でき、LD・ADHD・自閉症等の 軽度発達障害者、視覚・聴覚障害者、知的障害者や精神障害者、肢体不自由者、また高齢者など、読みに困難を伴う人々を幅広く支援できる。

デイジー図書の効果

  1. 視覚と聴覚の両方から情報を得ることができるので、読みの困難を軽減することができる。
  2. 文字がハイライトすることで、文字を目で追うことが困難な人を助ける。
  3. 漢字の読みや文章の読みが正確に入る。
  4. 文字を読む労力が軽減するため、内容の意味理解に集中できる。
  5. 何度も繰り返せるので文の暗誦がしやすい。
  6. 人の手を借りずに自由に読めるため、自立心・自主性を育むことができる。
  7. 読めないことによる勉学意欲の低下を阻止できる。
  8. 読むことが楽になり、もっと読もうという積極性がでてくる。
  9. 塾と比べ、時間的・費用的に負担が少ない。

デイジー図書に期待すること

 

見た目には障害が現れにくいディスレクシア(読み書き困難)の子どもたちは、親や学校や、また本人ですら、読みに困難をもつ ことに気が付かないことがあります。気付いても、静かで目立たずおとなしい子どもが多いため、学校では対応を後回しにされがちで、 必要な支援を充分に受けられているとはいえません。また特別扱いをいやがり本人が支援を拒否する場合もあります。

彼らはどんなに努力して勉強しても、なかなか成果がだせません。そのため、勉強意欲をなくし、自分は能力がないダメ人間だと 自信を失ってしまいます。支援によっては、能力を発揮することが充分できるのに、残念でなりません。

視覚障害者が録音図書や点字図書を使うように、ディスレクシアはマルチメディアデイジー図書を使えば今まで読めなかった本を 読むことができます。さらに、できるだけ人の手を借りずに、自分のペースで自由に本を読み、勉強することができます。

デイジー図書を使った読書支援、特に教科書のデイジー化による学習支援をすることにより、自分だってやればできるという自信に 繋がり、今までのだめな自分のイメージを変えることができるのではないでしょうか。

私たちはディスレクシアの子どもたちにデイジー図書を使って勉強ができるようになってほしい、成績があがってほしい、ということを 期待しているのではありません。彼らが不要に自分に対する評価を下げることなく、そのままの自分を受け入れることができるよう、 自分にとって必要な対策を講じることができるよう、そして他の人に対しても人それぞれの違いを理解し認め合える、そんな生き方を してほしいと願っているのです。

*"ディスレクシア"とは、知能障害や感覚・運動障害、注意力や意欲の欠乏、家庭や社会的要因による障壁が存在しないにもかかわらず、 神経学的基礎の発達障害によって、読み書きの習得のみに困難を示す障害の事である。

石井加代子「読み書きのみの学習困難(ディスレクシア)への対応策」文科省 科学技術動向 月報、12 2004より

【本の紹介】

『怠けてなんかない!』
ディスレクシア 読む・書く・記憶するのが困難なLDの子どもたち

品川 裕香 著

岩崎書店 発行

『怠けてなんかない!』表紙

活用事例

 

私たちはディスレクシア(読み書き困難)を支援の対象に考えて活動を始めましたが、ディスレクシアのみならず、LD、ADHD、自閉症、 視覚・聴覚障害、言語障害、知的障害等、色々な読みに困難のある方たちにデイジー図書を試していただく機会を得ました。 ここに事例を挙げてみます。

  • ディスレクシア
    1. 中学3年:中学2年からデイジー教科書を使用。使い始めてしばらくした2年生の夏休み、初めて図書館へ行き本を借りた。 孤立しがちな学校生活も友だちが増え、積極性がでてきた。
    2. 小学4年:1年時、読みがたどたどしく、内容理解も難しかったが、3年生から塾でデイジー図書による勉強を続け、現在は 読みが上達し、内容も楽しめるようになった。 友だちが増え、行動範囲も広がった。
    3. 小学3年:国語の「モチモチの木」をデイジー図書で見た後、図書館でその絵本を見つけ、題名の「木」と「き」の違いに気付いた。
    ・聴覚障害
    中学2年:デイジー教科書を何度も繰り返し聞いたり見たりして勉強している。発音の練習にもなる。
    ・広汎性発達障害
    中学3年:デイジー教科書が大変気に入り、繰り返し見ている。国語の俳句のテストで成果をだせた。
    ・言語障害
    成人:脳出血のため言語機能にダメージを受けたが、自らデイジー図書を製作することでリハビリとし、めざましい回復をみせた。
    ・自閉症
    小学5年:本には興味を示さないが、デイジー図書なら見る。
    6歳:繰り返しデイジー絵本を楽しむ。リフレインを特に好む。

これからのデイジー

現在のところ著作権法により、デイジー図書は私用の範囲内に留まり、公表することができません。必要とする人たちの手に大変 届きにくい状態です。今後、支援を必要としている人々が法に阻まれることなく支援されるよう、学校や図書館等で自由にデイジー 図書を使うことができればと願っています。特に学習を保障するものである教科書のデイジー化については、早急に社会の理解を 得られるよう奈良デイジーの会は強く働きかけていく必要があると考えています。

アメリカでは、2004年より、「全ての子どもたちは学ぶ事が可能であり、教育を受ける権利がある」とし、全国の教科書と教材を デイジー化することを法律で定めました。

公開されているマルチメディアデイジー図書

『キミはキミのままでいい』表紙

奈良デイジーの会のホームページhttp://www.gsk.orgからは、ディスレクシア啓発冊子 「キミはキミのままでいい」(品川裕香 著、NPO法人EDGE 発行)のデイジー版がダウンロードできます。

日本障害者リハビリテーション協会はサンプル提供、無料公開、販売をおこなっていますので「DAISYへようこそ」 http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/にアクセスしてみてください。また、 NPOデジタル編集協議会ひなぎくhttp://www.daisy.gr.jpからも無料公開されています。 その他、冊数は少ないですが出版社より販売されているものもあります。

*これらのデイジー図書を再生するには専用の再生ソフトが必要です。
詳しくは当会naradaisy@gsk.orgにお問い合わせください。
製作希望の本がある方は奈良デイジーの会naradaisy@gsk.orgにお尋ねください。
また、デイジー図書を製作してみたいと希望される方も、当会までお問い合わせください。 マルチメディアデイジー図書製作研修会の企画、開催もいたしております。

『赤いハイヒール』表紙

【本の紹介】

LLブック よみやすい本

『赤いハイヒール』~ある愛のものがたり~

ビョーン・アーベリン 写真

ロッタ・ソールセン 文

中村 冬美 訳

(財)日本障害者リハビリテーション協会 発行

『赤いハイヒール』のDAISY

マルチメディアデイジー図書のCD付

奈良デイジーの会活動

2003年5月3日~5日デイジー製作研修会参加 主催(財)日本障害者リハビリテーション協会
 5月5日奈良デイジーの会設立
2003年11月22、23日第12回日本LD学会 自主シンポジュウム発表
2003年12月7日第2回 デイジー図書体験会開催
2004年8月28~30日デイジー製作研修会コーディネイト
主催 (財)日本障害者リハビリテーション協会
2004年10月27~29日全国図書館大会「障害者サービス 次の一歩を進めるために」にて発表
2005年1月20日軽度発達障害支援のこれから~日米交流会~開催
2005年2月6日デイジー図書スキルアップ研修会参加
主催 (財)日本障害者リハビリテーション協会
2005年2月10日奈良県教育研究所 教育セミナーにてデイジー展示
2005年6月5日第3回 デイジー図書体験会開催
2005年7月2日川西町ボランティア連絡協議会記念講演にてデイジー展示
2005年8月12~14日デイジー製作講習会開催
2006年1月29日マルチメディアDAISYキャンペーンセミナー(リハ協主催)参加
2006年2月10日奈良県教育研究所 教育セミナーにてデイジー展示
2006年2月中3教科書(国語・歴史・地理)デイジー化への取り組み開始
2006年3月19日NPOファーム感覚統合療育奈良教室にてデイジー体験会
2006年7月「第4回なら・未来創造基金」助成事業開始
2006年8月NPOファームキャンプにてデイジー体験会
2006年10月LD学会 自主シンポジウムにて発表、ポスター展示
2006年12月4日講演会「デイジーってなに?」開催
2007年2月9日奈良県教育研究所 教育セミナーにてデイジー展示
2007年3/24・25 4/1デイジー製作講習会開催
2007年4月日本財団助成金事業「教科書のデイジー化」開始
2007年6月1日奈良県立盲学校にて講演「デイジー図書の紹介」
2007年8月18・19日「絵本ギャラリーin奈良」にて展示
2007年8月21日特定非営利活動法人 奈良DAISYの会 設立
2007年10月20・21日デイジー製作講習会開催
2007年11月10日教科書点訳連絡会セミナーにてデイジー教科書展示
2007年11月23・24日LD学会 自主シンポジウムにて発表
2007年12月1日講演会『「読む」ことに困難がある子(人)の学習を考える -マルチメディアデイジー教科書のこころみ-』開催
例会毎月1回製作したデイジー図書の発表や情報交換等