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講演1 「ノルウェー・ディスレクシア協会青年部の活動―情報アクセスと学習支援―」

「ノルウェー・ディスレクシア協会青年部の活動―情報アクセスと学習支援―」

            マイリン・ホルト (ノルウェー・ディスレクシア協会・青年協議会会長)

ディスレクシアとしての体験から

資料01

今回のご招待いただきましたことをまずお礼申し上げます。ディスレクシアとしての私の体験についてお話をさせていただきます。
まず、自己紹介ですが、ノルウェーのオスロから来ましたマイリン・ホルト18歳です。今高校の最終学年に在学して、警備会社でインターンとしての実習を受けています。
9歳の時、すなわち小学3年生の時にディスレクシアという診断を受けました。低学年のころの思い出といいますと、何もかもが真っ白です。唯一覚えているのは休み時間に学校の校庭で遊んでいたことだけです。
5年生の時に2冊のDAISY教科書をもらい、6年生の時に家庭教師が読み書きを教えてくれました。でも、学校からの支援やフォローはありませんでした。9年生(日本では中学3年生)からは全部の教科でDAISY図書を利用するようになりましたが、使い方は自分で学びました。

自己紹介

資料02

そしてすぐに結果は出て、以前と比べても自立するようになったと思います。自分の宿題も自分でやるようになりましたし、自尊心が高まり、落ち着きも出てきたと思います。また、結果としてほとんどの教科で成績も上がりました。

DAISY図書が助けてくれた

資料03

学校や家で何とかやっていくために

資料04

学校とか家でなんとかやっていくためには、ディスレクシアの子どもには3つ重要なものが必要です。そのうちの一つは支援者です。支援者とはなんでしょう、またどういう人たちがいるのでしょうか。支援者とは親とか学校の先生、友達、家族などです。支援者ははいつもそばにいてくれて、大変な時でもあきらめません。ディスレクシアの人のいつも味方であり、その人の幸せをいつも願ってくれているのが支援者、サポーターです。また、宿題も手伝ってくれます。そしてほめてもくれます。

支援者とは何か

資料05

 サポーター、支援者は私にどんなことをしてくれたでしょうか。私の場合は両親が主なサポーターでした。何年もかかり、大変な苦労をしながら、私のために両親はDAISYの図書を手に入れてくれました。ほとんど毎日宿題も手伝ってくれました。学校で私の権利のために多くの時間を割いて戦ってもくれました。ありのままの私をいつもほめてくれて、私は完ぺきなんだと思わせてくれました。

私の支援者

資料06

 私のサポーターたちの写真です。私のサポーターたち、父と母と妹とそしてペットたちです。妹はいつも私のそばにいてくれて、例えばつづりを手伝ってくれたり、常に味方になってくれます。

 大切に必要なものの2つ目、支援機器です。現在、私は一連の電子機器に頼っています。これらの支援機器のおかげで私は学校の成績も良くなりました。志望校へ入学することもできました。大きな自信を持つこともできましたし、自立心や責任感、そして、幸せな気持ちと満足感を得ることができました。

2. 支援機器

資料07

 私が使ってきた支援機器をここに示しています。私のコンピューターは私にとって大きな楽しみでもあります。コンピューターでDAISYの教科書を読んだりすることができます。

私が使ってきた支援機器

資料08

3. 自分の「ウィニンググラウンド」を持つこと

資料09

 そして大切なものの3つ目、自分のウイニンググラウンドを持つことです。
 「ウイニンググラウンド」とは何か、そしてディスレクシアの人にとってそれはどんな意味を持つのでしょうか。ウイニンググラウンドとは、ディスレクシアの人が自分の障害を忘れることができる場所です。例えば、サッカーが得意ならそれはサッカー場になるわけです。ウイニンググラウンドとは自分がうまくできる、そして自信と幸せを感じられる場所です。私にとってのウイニンググラウンドと、それが私のためにどのように役立ってきたかということを次にお話します。私のウイニンググラウンドはサッカーと空手です。この2つの分野では私は得意でしたから自信を持つことができました。学校であったことを忘れることもできました。ウイニンググラウンドから家に帰ると、いつも満足な幸せな気分になりました。 ここに出しているのが私のウイニンググラウンド、ご覧のようにスポーツです。

私の「ウィニンググラウンド」

資料10

ノルウェー・ディスレクシア協会

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メッセージを広めるために活動

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 次にノルウェーディスレクシア協会のことをお話します。1967年に設立されました。6,500人の会員を抱えるNPO団体です。ノルウェーの人口は480万人ですから、6,500人ということになると、これは千人あたり1.3人という比率です。ノルウェーディスレクシア協会では45の地域、地方支部があり、これらは会員が運用しています。

 私はオスロの組織で活発に会員活動を行っています。年に2回会議が開かれ、その場で理事が選出されます。この協会には事務局があり、職員が7名います。会員は、家族だったり学校だったり、また教師、図書館などが会員になります。ノルウェーディスレクシア協会は、ディスレクシアについて、また、ディスレクシアが抱える問題についての理解を深めるために活動をしています。また、ノルウェーディスレクシア協会では、学校、教育関係者、学校そのもの、そして学校の教師、そのほかさまざまな人々に対して、専門家としてのディスレクシアの知識を普及する活動も行っています。また、ノルウェーディスレクシア協会では、政府当局に働きかけ、ディスレクシアに関する早期の勧誘、研修、そしてより専門化された教育、それからすべての学校におけるディスレクシアに対するテストの仕方、試験の運営の仕方、こういったものについての働きかけも行っています。

 また、ディスレクシア協会では、ディスレクシアに関する研究を促進してもらう働きかけも行っています。また、当協会におきましては、若いディスレクシアの人たちを支援するためのさまざまな教育、そして技術的役割を強化することにも力を入れています。また、協会におきましては、教育制度に関するディスレクシアへの対応、さらには社会保障制度への改革などにも力を入れています。

 ディレクシアの人たちは、社会的にも平等な活動、あるいは権利が得られるように、職場での特別な措置を講じる、そうしたことに対する知識の普及も当協会は行っています。またノルウェーディスレクシア協会においては、大きな問題を抱えて困っている会員を助けるための支援なども差し伸べています。ノルウェーディスレクシア協会青年協議会では、メッセージを広めるための活動をしています。2010年9月、当協会青年協議会の会長に就任しました。

 私たちの活動は、学校、それから社会全体に対してディスレクシアの理解を高めるための情報普及を行っています。また、ディスレクシアの若者たちが法的な権利を受けられるような支援を提供しています。さらにディスレクシアの生徒に与えられる資格や権利の向上にも力を入れています。

青年協議会 – 次の段階は: スカンジナビア内での連携

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 青年協議会の次のステップというのは、スカンジナビアの中での連携です。私たちはスカンジナビア全体で、ディスレクシアを持つ青年たちによる協力体制を確立したいと思い、私はここでこうした活動の中心的な役割を担っています。そして、今年の夏はスカンジナビア青年会議を企画しています。そして、これから申し上げるようなテーマについて議論したり情報交換をしたいと思っています。例えばテーマとしては、支援機器を利用した学習について、オーディオブック、フルテキストブックの利用とデータサポートについて情報交換したりしています。

見えない障害 ディスレクシア

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 ディスレクシアの生徒の権利について、また、スカンジナビアでのディスレクシア青年の生活はどういうものかがテーマです。ディスレクシアというのは目に見えない障害です。つまり、私と同年代のほかの人には関係のないことのために戦わなければならないのです。例えば、ほとんどのノルウェーの若者であれば、今回の私が行ったこの発表を英語で行うでしょう。ただ、私もいつの日か英語で発表したいと皆さんにお約束をします。それまでは決してあきらめません。ありがとうございました。

ディスレクシア– 個人の問題か?それとも 社会の問題か?

資料15