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シンポジウム 図書館におけるディスレクシアの人への支援

パネル討議

河村

それでは、早速始めさせていただきたいと思います。最初に、ご質問の時間です。

会場

大学の障害学生支援室の職員です。きょうは、どうもありがとうございました。

渡辺先生にお伺いしたいことが2点あります。一つは、ブックシェアですが、診断書を提出すればということですが、例えば、日本人学生が利用する場合、当然英語の診断書ということになるかと思うのですが、フォーマットがあるのでしょうか。単純に診断書のコピーを、例えばPDF化して、そこに送ればいいのでしょうか。手続きの点が1点です。

それと、きょうのお話は、あくまでディスレクシアの学生の支援に関することですが、やはり気になるので、勉強不足でお尋ねしたいんですが、ディスレクシアは、文化差があるという話がありますよね。日本と比べて北米のディスレクシアの診断に引っかかる人の数は、非常に多い印象を受けます。

そういうことって、もちろん、先天性に脳の障害であることは分かりますが、例えば、識字率とか、階層の低い人たちがそういうふうになるのでしょうか。それとも、単純に、言語が英語以外にたくさんありますが、日本だと、日本語だけですよね。そういうことによるのでしょうか。はたまた、本当は、どういったことなのでしょうか。日本語の場合は漢字も使いますし、何が、違いを生み出すのだろうというのは、ちょっと興味がわいてしまいます。この2点。何かご意見があればお願いします。

河村

ありがとうございます。全部一巡してからお答えいたします。重なりあうこともあると思いますので。次の方。

会場

大学の教員のものです。大変勉強になりました。ありがとうございます。渡辺先生にお伺いしたいのですが、先ほどのご紹介の件で、学生が、教員があげたデータにアクセスできないということがあり、裁判を起こされたと伺いました。

これで、当大学では、2010年の著作権法の改正により図書館が紙の本のテキストデータ化に取り組んでおりまして、未校正も含めて、今、240点できています。これは日本の大学ではめずらしいと思うのですが、日本の場合、図書館では、著作権法第37条というのができましたので、やる気になれば取り組めます。ただ大学教育では、それだけではすまないのです。特に教員の協力が必要だということなんです。そこで、質問なのですが、いろいろな教員向けのサービスも行われていると思いますが、教員が作ったレジュメとか、資料とかをアクセシブルな形式にするための支援のセンターがあるのでしょうか。例えば、ワードのデータを送れば、それをアクセシブルな形式にして、掲載できるようにしてくださるというような状況になっているのでしょうか。質問は単純ですが、それについてお伺いしたいと思います。

河村

ありがとうございました。では次の方。

会場

今日はありがとうございます。私も、渡辺先生に質問なのですが、先ほどの講演の中で、モンタナ大学で、最近ムードルをかなり使われているというお話がありました。日本の大学でも、かなり教育の現場で学校の先生がムードルを使って授業の資料を作ったりとか、課題を提出させたりというようなことで利用されているという話も聞いています。このムードル自体が、どの程度アクセシブルなのかを、もしご存知でしたら、お聞かせいただければと思います。

先ほど、スクリーンリーダーみたいなものを無料で配布しているというような話もありましたが、そのスクリーンリーダーだけで十分にいけるかどうか、あるいは、どんなひと手間をかけて、アクセシブルにしないと使えないのかどうかというところです。

あとは、EDUPUDの中でも、例えば試験問題といったようなものをアクセシブルにするためのスロットの定義とか、そういうものがあると聞いておりますが、その辺も、ムードルでも、どのように干渉されているのかを、もしそのあたりご存知でしたら、お聞かせいただければと思います。

河村

はい。では次の方。

会場

埼玉県でボランティア活動をしている者です。関心があって聞きにきました。図書館というと、司書の資格を取っている人が勤めていると思いますが、司書のカリキュラムとか追加のプログラムの中には、今日のような話の内容というのはあるんでしょうか?

河村

はい。 次の方。

会場

東京都の図書館の者です。本日は貴重なお話伺えてありがとうございました。それで3点お伺いしたいんですけれども、1点目は、日本障害者リハビリテーション協会さまの方で提供されているアミというソフトがあると思いますが、実は、図書館が今月から試験的に携帯型タブレットを使って録音図書の音声データだけを入れて、そのタブレットごと貸し出しということを、試験的に始めてみました。できれば、デイジーをそのまま使えるようにしたいのですが、そのソフトが、OSがアンドロイドなのです。今回、VODのアンドロイド版ができたということで、非常にいいことなんですが、できれば、無償でダウンロードできたほうが、アンドロイドのOSを持ったタブレットをお持ちの方とかもデイジーを利用しやすくなると思いますので、ぜひともご検討いただきたいと思います。

2点目ですが、デイジー教科書のことについてお伺いしたいと思います。やはり、最近、問い合わせが多いのが、デイジー教科書を図書館から利用することができないのですかという問い合わせがあります。やはり、デイジー教科書は、非常に素晴らしいものだと思っているので、図書館側としても、ぜひとも紹介することで、マルチメディアデイジーの広報にもつながっていくと思います。できれば図書館で所蔵をして、図書館利用者の活字読書困難な方に貸し出しをしたいなと思っていますが、そういうことはできるのでしょうか。

最後3点目ですが、EPUBですが、ちょっと公共図書館としては、そもそもEPUBってどういったものなのか、利点がどのようなことにあるのかというのがわかりません。

できれば、EPUBで作った電子書籍が、実際にどのようにアクセシブルになるのというのを、今回体験したかったので、参加させていただいたのですが、そういった、聞ける環境や、ソフト等を見せていただけたらありがたかったのですが、体験できる場所がありますでしょうか。以上になります。

河村

ありがとうございました。それでは、最初の方は渡辺さんあての質問がずっと続きましたので、試験問題までのところを全て渡辺さんにお答えいただいて、渡辺さん以外の方に答えていただくのが、今の方がいわれた、アミのアンドロイド版は出ないだろうかということ、デイジー教科書が公共図書館から出せないだろうかということ、これについては、野村さんからお答えいただいて、最後にEPUBについてのところは、私がお答えします。

司書のカリキュラムの内容については、野村さんか渡辺さん、ご存知ですか。または、会場の中に司書コースの先生や大学で司書講座を担当されておられる方はいらっしゃるでしょうか。では、その司書の問題は最後に残して、渡辺さんからお願い致します。

渡辺

先ほど、ブックシェアの手続きはどんなものかという質問ありましたが、それを簡単にご説明します。ブックシェアの申込用紙は、実は、診断書っていうのは、医者がサインをしなくてもいいのです。例えば、障害学生支援センターの私のようなコーディネーターもサインができます。なぜかというと、コーディネーターが障害を持ってる学生への診断書を私たちのセンターに持ってくるから、もう証拠があるのです。それを使って、私がその証拠をちゃんと確認しましたよというサインでできます。ですから、ブックシェアの場合は、正直いうと診断書をつけなくてもいいです。でも、サインがあるから、後で例えば、争議とかにあった場合は、自分の責任になるということです。

そして、なぜディスレクシアの人がアメリカで多いのですかという質問だったと思いますが、それには、いくつか背景があると思います。私の個人的な意見になりますが、いわせてください。

アメリカは多様性をものすごく求める国です。それにプラス、ディスレクシアの認識とか理解が多分、日本よりも進んでいる。そして、その診断ができる医療関係がいろいろな所にあります。例えば、私が住んでいるミズーラ市という所は、8万人の大学の町ですが、そこでも例えばスクールサイコロジストとか、臨床心理学者、臨床心理士が、ちゃんとラーニングディスアビリティという、学習障害を診断できるトレーニングを、もう既に大学院でやっています。ですから、それプラス、診断をするトレーニングをちゃんとできる。そして、その診断も料金が比較的安いのではないかと思います。日本はどうなのか分かりませんが、例えば、モンタナのミズーラ市では、一番安い所で3万円ぐらい。高くなると、かなり格のある臨床心理士で、保険なしで16万ぐらいです。でも、保険がきくから、自分がお金を払うのは多分、2万、3万円ぐらいです。そういうのがあるからじゃないかなと私は思います。よろしいですか。

会場

はい。実は、先ほど聞こうかなと思ったのですが、ディスレクシアの診断ができる医療機関は、日本にそもそもあるのかという、実はかなり疑問があります。大学の学生でも、少なからず困難を示す学生が少なからずいます。そういった学生の診断書を求めるときに、きちっとした検査をどうもやっていないような形で診断がついてきたり、それが、また非常にグレーな表現で書かれていたりするものですから、こちらからの対応が困ります。私たちが困るのは、教員にそれを伝えるときに、「グレーですよ」と言うと、「じゃあ支援なんかいらないんじゃないの」とか。場合によっては、それが大学院生だったりする場合もあるのです。

そうすると、今までどうやって勉強してきたのだろうという話にもなったりして、非常に困ったなというのが正直あります。もし、なにかそういった情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えてください。

河村

日本の著作権法第37条の交渉過程で、文部科学省の著作権課の公式見解としていわれてたのは、ディスレクシア等の場合は、診断書はいらないといわれています。だから、そういう救済をするときに、いわゆる医学的な診断書は、その律法の趣旨として求められていないということです。

会場

どうもありがとうございます。

渡辺

教員がレジュメなどをアクセシブルにできるサポートは大学で何があるのかという質問があったと思います。モンタナ大学の一例を話させていただきます。先ほど説明したと思いますが、インフォメーショナルテクノロジーという場所がありまして。そこが、教員、スタッフのために、パワーポイントを作るときには、どういうふうにするとアクセシブルなパワーポイントを作ることができるかというトレーニングとか、ワークショップをやっています。

それと、紙をスキャンして、古いPDFバージョンを使って、これでデジタル化しているからいいんじゃないかという教員が多いのですが、そのサポートをするために、ITで、絵だけのPDFを文字化して、それを教員に返すというのを、ITと、図書館で行われています。

先ほどムードルのことを聞かれましたが。ムードルはどれくらいアクセシビリティなのかということですが。モンタナ大学は、障害学生支援センターのスタッフ以外にも、アクセシブルって格好いいんだぞという若いスタッフが増えてきています。やはり、ウェブサイトとかコンピューターを使うアクセシビリティはクールなんだよって。クールってことは、格好いいって英語でいうのですが、そういう人たちがポコポコ増えてきました。そのメンバーが結構おたくなんですが、彼ら自身は障害はないのです。ただ、そのアクセシビリティっていいんだぞと。それも、ユニバーサルっていいんだぞと。ムードルのことを思いっきり調べて、大学にムードルだったらブラックボードよりも絶対いいんだっていうことを提案して、数年前からムードルにしました。

ブラックボードというのが、本当にアクセシブルじゃなかったんです。オンラインチャティングとか、ナビゲーションとかがひどくて。だからムードル自体は、実際にアクセシブルだということをモンタナ大学で確認をして、購入をしました。

ただ、チャティングのやり方や、ムードルにアップロードするやり方、例えば、テキスト化されてないものをアップロードしたら、ムードル自体がアクセシブルじゃなくなってしまいます。そういうのを分からない教員がいるので、大学の中にアクセシブルなことを提供している情報センターみたいなところがありますが、そこで、教員のサポートも行っています。

それと、試験についてですが、試験をムードルにアップロードするときも、ワードを使ってアップロードを始めたら、もう他のものをしてはいけませんよというような情報提供もそちらで行われています。

河村

ありがとうございました。それでは、野村さんお願いします。

野村

AMIS(アミ)の話は、無償で提供という話でしたが、そちらは、やはり、国がそういうふうに支援してくれて、無償のものを提供するべきだと思います。

例えば、デイジー教科書用の無償でアクセスできるソフトの開発とかです。今の時点では、私たちがやっているのは、国から保障されているわけではなく、代わりに、ボランティア団体との連携でデイジー教科書を提供しているのです。そういう声がたくさんあるというのを皆さんが出していただければ、無償提供のタブレット用のソフトが作れるかもしれないなと思います。

ですから、デジタル教科書は、みんな無償のソフトウエアを使ってアクセスできれば本当にいいのではと思います。そこには、やはり、開発であるとか、そのための助成金であるとか、さまざまなことが関わっているところに、リハ協が全てではなく、やはり、国を動かすというのは、自分たち国民であると思いますので。そういった動きが必要じゃないかなと思っております。

そして、デイジー教科書を図書館で貸し出したいという問い合わせは結構多いです。何かしたいと思われている図書館も多いのですが、貸し出しは基本的にできません。あくまで提供です。そういう読みに困っている児童、生徒、それから高校生ですね。その学習の用に供するために、障害の特性に応じた形態で提供できるというのは、教科書バリアフリー法になっています。そのために、誰でも教科書をデイジー化することができるわけです。

例えば、図書館で一番簡単な方法は、デイジーを使ったこういった支援方法があるよと地域で普及してほしいということがあります。デイジーの使い方、デイジー教科書をどういうふうに操作する、読むのかとか、そういったICT支援ができるのではないかというのが、手っ取り早い一つの方法です。

ただし、もしも、もっとやりたいっていうことであれば、実は方法はあります。ただ、図書館がかなり工夫をしたりとか、時間を使ったりする覚悟が必要になります。

文部科学省の教科書提供課、それから著作権課と話し合いまして、図書館あるいは教育委員会、それと教育センターが私どもの代わりに配布するという提供方法が可能です。

ただし、その先に必ず提供者があるという確信が必要です。だから、例えば、図書館で研修をする場合、そのためのデータ提供はできますが、研修する方が特別支援学校の先生であったり、地域の先生であったりとか、その普及に向けた研修である必要があります。

それから、もう一つ、学校の代わりに学校図書館と連携してもいいのかもしれません。学校の代わりに申請を代行するという形ができます。先生がとても忙しくて、そういうことができないのであれば、代わりに申請を代行をして、データ提供を受けたものを、さらにそれぞれの申請者に配布するということができます。

実際に、スウェーデンでそういうことをやっている学校図書館があります。日本の場合も、教科書提供課と著作権課と話をして法律的にはできます。やはり学習の用に供することが必要になりますが、そういうことができる柔軟性があるということです。ただし、やる場合には、図書館員の覚悟がすごく必要になると思います。それさえあればご協力致しますので、ぜひおっしゃっていただければと思います。

河村

はい。ありがとうございました。それでは、私のほうから、EPUBと、先程のアミに代わるもののお話を少ししたいと思います。

アンドロイドでデイジーを再生できるものということですが、デイジーには、今、2.02規格と3規格と両方あります。デイジー3に対応してるもので、アンドロイド用の無償でダウンロードして使えるものがブラジルから出ています。オープンソースなので、例えば、いくつかの団体が連携して、それを日本語化するというのが一つのやり方です。もう一つは、いろいろなメーカーも作ってるわけですが、実はここが微妙なところですが、メーカーのほうで作ってるものを、さらに良くしていくために、例えば、サイトライセンスとか、みんなで開発するにも予算が掛かるし、メンテナンスするのも予算が掛かります。つまりソフトというのは、メンテナンスにすごいお金がかかるので、そこをメーカーと連携することで、メーカーも開発している人たちは食べていけます。同時に利用者も最終的に個人が負担するのか、それとも、行政が負担するのかという選択肢もありうるんだと思うのです。

あるいは、開発費をどこかの財団からもらって、できるだけ安いサイトライセンスにするとか、いろいろな工夫がありえます。そこで、メーカーともよく話し合って、どういうふうにするのが一番いいのかという行動を起こすことが、いろいろな場面で求められているのではないかなと思います。

何でもかんでも、ただで作るのが一番いいと私はあまり思えないのは、どうしてもソフトというのは、OSが変わったり、バージョンアップがあったりすると、メンテナンスが必要になります。よくあるのが、一回ただで作ったものは、メンテナンスができないで、そのまま立ち消えになることが多いのです。長く利用している人が困らないようにすることが肝心かと思います。

それから、日本では、ちゃんと使われていないように思っているのは、皆さん電話代から、毎月1電話番号について3円のユニバーサルアクセスファンドがとられていると思います。これがユニバーサルアクセスファンドといいながら、何に使われているのか、どうもあんまよく分かりません。私も調べてもよく分からないのです。かつては、7円とられていて、それが電話会社のケーブルの延長に使われていたというのは確かです。でも、それが3円になってから、どういうふうになっているのかがあまりよく分かりません。

そこで、ヒントを申し上げますと、タイではそのお金を使って、障害のある人たちがデイジーにオンラインでアクセスするときに、携帯電話から無料でアクセスできる120回線ぐらいを、その費用に使ってます。したがいまして、これは視覚障害者が中心ですが、携帯電話でデイジー図書を選べるのです。まるで、遠隔操作で操作するのと同じです。その電話代がただになるという使われ方をしていますので、そういったみんなで、ちょっと知恵を出しあって工夫をするということも重要かと思います。

最後にEPUBですが、EPUBの最大の利点は、これまで縦書き、ルビというのが、デイジーの規格ではできませんでしたが、デイジーだけではなくて、ウェブでもできなかったんです。それが、EPUBの規格を開発するときに、国際化という活動を日本が中心になってやり、標準規格でもって縦書きとルビができるようになりました。これは、いくつかあるメリットの中でも大きなものです。教科書にも縦書きとルビが絶対必要なので、それを規格を守りながらできるようになったというのが、地味ですが、EPUBの最大のメリットです。プレーヤーは、先ほどのリーディアムをダウンロードすると、自分でもインストールして見ることができます。

あと、サンプルもデイジーコンソーシアムのウェブサイトにいっていただくと、いくつかあります。詳しいことは今、申し上げる時間がありませんが、ちょっと工夫が必要ですが、今でも、自分の手元で見ることができる方法はあります。いずれ、日本障害者リハビリテーション協会にもお願いをして、EPUBのいいところが体験できるという機会もぜひ、設けていただいたらいいのではないのかなと思います。

野村

今、日本デイジーコンソーシアムのほうにEPUBのサンプルがおいてありますので、それをダウンロードして、Readium(リーディアム)で読むことはできると思います。そうすれば、どういうものかよく分かるのではないでしょうか。

河村

以上で、ご質問には一応お答えできたかなと思います。あと2分ぐらいあります。どうしても発言したい方がおられましたら、お一人だけどうでしょうか。

会場

河村先生にお伺いしたいですが。図書館の障害者サービス担当してる者です。先ほどのデイジー4、イコールEPUB3という話ですが。今、どの公共図書館でも、障害者サービスで音訳とか点訳で莫大な投資を各館でしています。日本で作っている電子書籍で、EPUB3に準拠していて、もう作り始めてる電子書籍会社が、図書館流通センターであるようです。また、アメリカの図書館向けのものがEPUB2で既に準拠しています。そういったものが今後、障害サービスで開始する方向で、民間が図書館でやっているようなものを作り出したときに、将来的に図書館システムの中に、そういう受け口も作らければいけないので。公共施設自体が無駄のない投資をしたいので、電子書籍の今後準拠しなきゃいけない、デイジー4、EPUB3に関して、障害者サービスのほうではどのような方向にいくのか、将来的な展望をお伺いしたいと思います。

河村

ありがとうございます。非常に重要な点ですね。まず、出版社が、どういうふうにアクセシブルに作るかということを、ちゃんと理解して出版してくれないと、EPUB3であっても、アクセシブルでないものが出てきてしまいます。それから、EPUB3でせっかく音声の読み上げもついてるメディアオーバーレイというのがついてるアイブックスを見ても、固定レイアウトという、文字の拡大をしたときに、レイアウトが自動的に調整できる機能を持たないもので、ピンチアウトすると、画面がすごいガアッと出てくるものです。それだけでもって作っているということがありまして。これはもう2年ぐらい前からAppleに何とかしてくれと言っているのですが、いまだに改善されていません。

つまり、EPUBの出版が、本当にアクセシブルになるまでに、いろいろなハードルが、まだいくつかあります。それを解決していくことを前提に考えると、これからはデイジー化をしなくても、そのまま公共図書館が購入し、それを、そのまま提供したときに、点字でも見られる、読み上げもできる、そういうふうなEPUBが出てくるはずです。そこに向けて、特に出版界と連携をしてアクセシブルなEPUBを出版してもらう。アクセシブルでないときは、どうなるかというと、結局、デイジーで作らなきゃならないのです。私たちとしてもそれは避けたいのです。

既に出版された本が山ほどあって、それをアクセシブルにするだけで手一杯だから、もう技術は確立してるし、規格もあるんだから、それを生かして、せめて新しく出る本はアクセシブルなものにしてくださいと。そして、これまでの過去の遺産の紙の出版物をみんなで手分けして、必要なものからデイジー化、あるいはEPUB化していけば、最終的には、あらゆる出版物がアクセシブルになっていくというゴールが見えてくるんだというのが、今、国際的にみんなでそうしようよと向かっている方向です。

そこで、一番問題なのは、どうすればアクセシブルなEPUBが簡単にできるのかということです。そこを図書館も一緒になって、アクセシブルなEPUBの出版を出版社に働きかける。それが、ユーザーのニーズなんだということが非常に重要なポイントではないかと思います。

特に教科書は、国が400億も出して毎年購入してるわけですから、これはもうアクセシビリティを必須要点として調達をするというのが当然ではないかと思います。それから公的な出版物も、先ほど申し上げましたように2016年の4月からアクセシビリティを確保していくことが義務になりますので、自治体、国、共にアクセシブルなEPUBでの出版というものが必要になってきます。図書館にも入ってくるわけですから、そこからもう一回手を加えるまでもなく、アクセシブルなものが図書館に来るようにということを利用者と一緒にそういう公的な出版を担当している所に働きかけていくということで、これから全国の図書館に大いに期待をしたいと思っているところです。

会場

ありがとうございました。

河村

渡辺さんは、学位もとられて、研究もされていますが、その研究成果をキャンパスの学生さんにどういうふうに、よりよいアクセスを提供するかという形で、日々研鑽されて活動されています。そういう非常に具体的で、豊かな内容のレポートをいただけて、とても良かったと思います。

野村さんには、これまでずっと継続して北欧を中心として各地のアクセシブルな出版の動きを見守ってきた観点からの最近のアップデートされた動きを提供していただけたかと思います。

まだ、ディスレクシアの方を中心にした、読みに困難がある方たちの図書館の利用というのは、本人たちが、そもそも読むということにあんまり関心を示さないか、むしろ拒否反応をしてしまうような状況がまだまだ一般的なわけです。ですから、図書館に行けば、何か良い体験ができるよとか、大学の図書館、学校の図書館でも、あちこちで具体的に手を差し伸べられる手段もあるし、方法も見えてきたと思いますので、ぜひ、これからみんなで、これまで潜在的な利用者にすぎなかった多くの利用者の方に出版物を存分に使っていただけるように、そういう取り組みをこれからも一緒に進めていきたいなと思いながら、まとめとさせていただきたいと思います。