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スウェーデン読みやすい図書センター

スウェーデン読みやすい図書基金

項目 内容
発表年 2001年

私たちの仕事は、読むことに障害がある人々、あるいは、スウェーデン語を使う習慣がこれまでほとんど無かった人達がニュースや文学にアクセスできるようにすることです。

私たちが考える主な対象グループとしては、知的障害者、自閉症や失語症を病む者、ディスレクシア(読み書きに困難がある)の者、子供の頃からのろう者、高齢者、移住者及び学童があげられます。

私たちのセンターは、資料・能力センターとして機能しています。読みやすい読書材料を提供し、そのことに関する様々な問い合わせに答えていく援助体制もとっています。

センター内の様子

「やさしく読める、分かりやすい」という考えのもとに「8ページ」の本及び新聞を出版しています。

利用者の要望に応じて、レポート、情報資料など、読みやすくしたものを用意します。報道向けサービスも行っているので、新聞社、メディア関係の会社などは、「8ページ」に掲載の記事や絵(写真)を購入できます。

更に、読みやすい図書に付いてもっと学びたいという希望者には、そのための学習コースを提供します。

読書指導員と共に、プログラムを通して、知的障害者の間に新聞や本に対する関心を呼び起こそうと取り組んでいます。

また、ビデオやCD-ROMなど他のメディア向けの分かりやすいソフトウェアの開発に参加します。

現在利用可能な読みやすい図書を更に増やし、利用範囲を広げていくよう努力します。私たちが自身で製作したもの以外に、他の出版社が出している読みやすい図書も一定程度マーケットに乗せ、販売します。

読みやすい図書の運用に関しては、いろいろな方法で、情報を提供します。自由に入場できる常設の展示ホールがあり、県によっては、読みやすい図書のアドヴァイザーを置いているところもあります。

国会及び政府の決定

私たちの活動は文化及び障害に関わる政治的な試みであり、行政法に基づいています。スウェーデン政府は私たちの憲章を起草し、理事会(メンバー)を任命しています。

理事会には、政治家、障害者の代表者、文化やメディアあるいはマーケッティングに専門的に関わる人々が含まれます。

運営は販売収入と国の補助金で賄われます。財務は公認の会計監査官がチェックします。

読みやすい図書について

読みやすい図書の出版目的は、シンプルに分かりやすく書かれたものをということですが、同時に、文章と絵の組合せによって、成人読者に相応しいものとなるよう様々な工夫もしています。

このことの達成のために、内容、言語、絵及びグラフィック・レイアウト、すべての面を考慮しています。

読みやすい本は、通常、簡単な筋のある具体的な内容になります。ごく少数の人や場所しか出てきません。出来事の流れは、普通、時系列で描かれ、現在から過去へと時間が飛ぶことはありません。勿論、他の本と同じ基準が読みやすい本にもあてはまります。もし読者が内容を面白いと考えれば、読みやすくもなるでしょう。

また、言葉は具体的であるべきです。二つの意味を持つ概念にしてもそうですが、長くてあまり目にしないような言葉は、避けるべきです。例えば、「大きな役者だ」と言う時、体が大きな人であるとも、役者として大きい、有名であるともとれます。こういう言葉を避けるのと同様に、長い言葉や、見慣れない言葉も使わないようにしたいということです。

動詞は能動形が好まれます。「二人の若者が雇用された」よりも「ふたりの若者を雇用した」の方がよいと言えます。また、従属節を使った長い文は、短い二つの文で書いた方がよいでしょう。読者すべてが場所や国、日付に意識的であるとは限りませんので、そういった情報は前後に説明を加えます。例えば、「1932年は祖母がまだ若かった時である」などです。

読みやすい本では絵が重要です。無関係な細かい点や変わった角度からの描写は行わず、具体的な絵によって、ものがどう見えるのかをはっきりと示します。でも、抽象的な絵は、雰囲気の感じを表現するのに使うことができます。

形式やレイアウトの扱いには慎重さが大切です。文章と絵ができるだけはっきりと余裕を持って書かれていると、読者には情報が理解しやすくなります。

私たちは、かなり大きな字を使い、書体も楽に読めるものを採用しています。長い文章部分を全部、大文字やイタリックスで書いたものは読みにくいものです。読者はピリオドに気づいたり、長い行を読んだりするのが苦手である場合が多いのです。

そういう点を考慮して、読みやすい図書の文章部分は各フレーズの終わりで行変えにしてあることがよくあります。新しい行は文の自然な切れ目で始め、ピリオドの後はいつも新しい行になるようにします。

読みやすい図書の出版社(LL-forlaget)

読みやすい本はやさしく読めて、分かりやすいものですが、難しさの度合いは本によって様々です。読みやすい本は分かりやすさに質が伴うようにしています。

これらの本は私たち独自の出版社、LL-forlaget で製本されるか、他の出版社との協力になります。

ほとんどの読みやすい本がイラスト付きです。絵によって、文章とその内容がわかりやすいものになります。

毎年、約30冊の本が出版されていますが、直接読みやすいスタイルにしたものと古典の翻案ものの二通りあります。小説、短編、探偵もの、詩集、写真集、技術関連の本などです。これまでに500冊を越える本が出版されています。大部分の読みやすい図書はテープでも聞くことができます。

読みやすい本はカタログにして紹介していますが、年2回発行の私たちの雑誌、「エレン」にも載っています。これらの本は、郵便で注文を受ける私たちの店か、普通の書店で買うことができます。

読みやすい本は図書館で借りることも可能です。

LL-forlagetに関する情報はウェブサイト、 http://www.llstiftelsen.se/でも見ることができます。

私たちの読みやすい本すべてには、LLマークがつけてあります。マークの上と下にそれぞれ「読みやすい」「わかりやすい」と書かれています。

8ページ構成の読みやすい新聞(8sidor)

「8ページ」は一週間に一度発行の新聞です。スウェーデンやその他の国のニュース、スポーツ、文化などの記事が掲載され、普通の新聞と全く同じです。といっても「8ページ」では、何が起きているのかが分かりやすい形で説明されています。この新聞では、文章が短く、いつも絵(写真)が豊富に使われます。字は他の新聞よりも大きくなります。年間を通じて、テーマ別の増補版が何回か発行され、背景の説明や重要な事件の解説がなされます。増補版、「More Pages」(Flera Sidor), は月に一度出ていますが、知的障害者をその直接の対象者と考えています。

「8ページ」はまたテープで聞くこともできます。非政治的な新聞で、どんな団体とも繋がりはありません。「8ページ」は予約購読制になります。

「8ページ」についての詳細は、ウェブサイト、 http://www.llstiftelsen.se/で読むことができます。

読みやすい新聞の報道機関

私たちはニュースを読みやすく分かりやすい形で提供することでは経験があります。他の新聞にもこの経験によるノウ・ハウを提供することができます。また、「8ページ」に掲載の記事や報道写真も提供が可能です。委託されれば、ジャーナリスティックな材料を用意することもしています。

団体や公共機関のために調査及び発行物などを読みやすいバージョンに仕立てることや、その他、何らかの形で翻案を望む人のためのバージョン作りも請け負っています。製作、配布だけでなく編集の仕事も扱うことができます。

活動

読みやすい図書センターでは読みやすい書き方の短期コースを提供しています。毎年、2度、専門家グループのためのコースもアレンジしています。もし是非にというのなら、別に機会を設けて、異なるコースを提供することもできます。各コースに関する案内は読みやすい図書センターに注文することになります。

読書指導員

知的障害者や主に読むことに障害のある人達向けの新聞や本を市場に乗せることは、時間のかかる仕事です。障害者自身は、情報を自ら求めたりすることは少ないですし、新聞や本を自分たちも利用できるという考え方自体にも慣れていません。近親者やスタッフも、自分ではほとんど読むことのできない人達にとってニュースや文学が必要だとは、必ずしも認めていません。先ずはこの姿勢を変えていく必要があります。読書への興味を呼び覚ましていくことです。そこで、今、読書指導員というシステムを立ち上げているところです。これら指導員は、主として、集団生活グループやデイ・センターのスタッフの中から採用されます。読書指導員の仕事は読書への関心を刺激し、朗読や図書館訪問などを織り込んで読書時間をアレンジすることです。

読書指導員の活動はスウェーデン全国知的障害者協会(Swedish National Society for Persons with Mental Handicap (FUB)) との協力で行われます。活動は県ごとに広めてゆき、2、3年のうちに全国で取り組むようにします。

情報とマーケティング

情報とマーケティングは私たちの課題の重要な部分です。様々な方法で対象グループにコンタクトしていこうと試みていますが、仲介者を通すことも多くなります。仲介者として重要なのは、教師、司書、近親者、機能障害のある人たちと一緒に働いているスタッフです。

私たちが製作したものは、ストックホルムのオフィスの常設展示として、展示されています。

関心のある方はどうぞ訪問時間をご予約ください。