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図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン

8. 関係者(ステークホルダー)と図書館の連携

わかりやすい資料を、必要とする人に着実に届けるためには、図書館と以下のようなステークホルダーとの連携が欠かせない。ここでは、地域の情報提供の拠点である公共図書館を軸としてステークホルダーとの連携について述べていく。

なお、公共図書館の中でも、わかりやすい資料の認知度、実際の作成や選択・収集と提供には差が大きい。差を埋めるための研修など、日本図書館協会などの図書館関係団体や図書館を所管する行政部局などによる積極的な取り組みが重要である。

8.1 国立国会図書館

日本で唯一の国立図書館である国立国会図書館は、すべての人をサービス対象としており、自館での「障害者サービス」とともに、国内の公共図書館などにおける「障害者サービス」を支える役割も担っている。しかしながら、わかりやすい資料の作成や収集、提供に関しての取り組みは十分とはいえない。すでに取り組まれている「視覚障害者等用データの収集および送信サービス」や「サピエ」との連携の中に、わかりやすい資料の収集と提供を明確に位置づけていくことなどの対応が望まれる。

8.2 学校・大学とその図書館

幼稚園、小学校、中学校、高等学校と、これらに準ずる教育を行う特別支援学校、さらには大学(高等専門学校、短期大学を含む)には、さまざまな障害のある幼児、児童、生徒、学生が学んでいる。また、外国出身者や帰国子女などベースとなる言語や文化が異なる環境で育ってきた幼児、児童、生徒、学生もいる。したがって、すべての学校・大学において、わかりやすい資料のニーズが存在していると考えることができる。

学校・大学において情報・資料提供の拠点となるのは、学校図書館・大学図書館である。学校図書館・大学図書館においても著作権法の規定にもとづいて原資料のリライトなどを行うことができる。しかし、一部の特別支援学校の学校図書館を除くと、まだ取り組みは進んでいない。したがって、わかりやすい資料を必要とする幼児、児童、生徒、学生に届けるためには、国内の先進事例を積極的に紹介したり、公共図書館からの働きかけや連携が大切である。

8.3 施設(福祉施設や病院等)・当事者団体等

わかりやすい資料を必要としている人は、日々の暮らしの中で、8.2で述べた学校・大学のほかにも、さまざまな施設(福祉施設や病院等)や当事者団体等とかかわりをもっていることが多い。公共図書館は、これらの施設や当事者団体等と連携することで、わかりやすい資料を必要としている人に着実に提供することができる。加えて、気づかなかったニーズを把握し、新たな資料の作成や選択・収集と提供につなげることもできる。

8.4 出版社

「LLブック」などのわかりやすい資料の出版は、日本ではまだこれからという現状にある。日本では市場流通する出版物の大半は民間出版社によるものなので、ニーズのない(あるいは低い)ジャンルやテーマの出版は広がりにくい。“売れないものは作れない”ということである。したがって、わかりやすい資料の出版の意義やニーズを公共図書館から書店や取次会社を通して、あるいは出版社に直接に伝えるようにして、出版社にニーズがあることを知ってもらう必要がある。同時に、わかりやすい資料が出版された際には、公共図書館として積極的にそれらを選択・収集することが大切である。そうすることで、出版のさらなる拡大・普及へとつながっていくだろう。