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はじめに

調査の結果、ノルウェーの人口のおよそ30%が、一般のテキストの内容把握に困難を感じていることが明らかになった。これは、現代社会において仕事や日々の生活で要求される読字能力に関して、この人たちは、国際的な専門家によって不十分であると定義される能力しか持っていないことを意味している。(IALS-国際成人識字能力調査およびPISA-OECD生徒の学習到達度調査)

研究によれば、他の多くの国々でも同様な傾向が認められる。例えばスウェーデンでは、読み書きに深刻な問題を抱えている人が少なくとも50万人おり、200万人のスウェーデン人が新聞の文章を読めないと推定される(アーレン 2005年)。理由はさまざまで、障害、ディスレクシア-十分な支援の欠如、不十分な言語スキル、社会状況、あるいは単に読書の練習不足などがあげられる。

読みの問題は予想以上に広い範囲にわたっているが、これは新たに判明したことではない。1970年代および80年代には、西側諸国の人々がアクセシブルな図書および新聞への民主的な権利について語り始めていた。1980年代には、国連障害者の10年(1983年-1992年)を経験した。この10年の経験が、「障害者の機会均等化に関する基準規則(1993年)」の基盤となった。

基準規則10では、文化を扱っている。 「政府は都市部であれ農村部であれ、障害を持つ人自身のためのみならず、地域社会を豊かにするために、障害を持つ人がその創造的・芸術的・知的潜在可能性を利用する機会を持つよう保障すべきである。その活動例はダンス、音楽、文学、演劇、造形美術、絵画、彫刻である。」

2006年にはこの活動の延長として、また活動の集大成として、国連総会が障害者権利条約を採択した。同条約第30条1「締約国は、障害のある人が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、次のことを確保するためのすべての適切な措置をとる。 a) 障害のある人が、アクセシブルな様式を通じて文化的作品へのアクセスを享受すること。…」

http://www.un.org/esa/socdev/enable/documents/tccconve.pdf

障害者の権利は、2003年1月に「すべての人のための図書」財団が設立された理由の1つだった。「すべての人のための図書」財団は、白書No.40(2002年-2003年)『障害者に不利をもたらす障壁の削減(Reducing the handicapping barriers)』と、それに続く同じ名称の是正措置計画を政治的基盤としていた。

同時に、見てわかる障害がある人以外にも目を向けることが重要となってきた。障害者として定義することはできないが、多くの人が読むことに問題を抱えているからだ。これらの多数の人々には、文化的民主主義の視点から、そして有識者を求める政治的欲求から、多大な努力が求められる。これが、「すべての人のための図書」財団が、文化と教育の両方に注目している理由である。

白書No.48(2002年-2003年)『2014年に向けての文化的政治(Cultural politics towards 2014)』は、読みやすく改変された書物のための行動を求める最初の政治文書であった。「…あらゆる形態の読みの問題を抱える人々の役に立つ、読みやすく改変された書物の開発、製作および斡旋を手配しなければならない。」

つまり「すべての人のための図書」財団は広範な政治基盤を持ち、さまざまなターゲットグループのために活動しているといえる。その目的は、誰もが書物にアクセスできるようにすることである。これを達成するために、4つの分野で活動が進められている。

原稿の開発

「すべての人のための図書」財団は、さまざまな方法で読みやすく改変される、良質な原稿の開発を支援する。そして、著者およびイラストレーターに財政援助と専門的な支援を提供する。特別なテーマに関する図書が必要な場合は、プロジェクトを策定する。

図書の編集

図書の出版を手配する。読みやすく改変された書物の出版を希望する編集者に、財政援助と専門的な支援を行う。

情報提供および供給

読みやすく改変された図書のリストに関する情報を『すべての人のための図書(Books for everyone)』というカタログと、「ブックサーチ(Booksearch)」というウェブサイト(http://www.boksok.no.)を通じて提供する。さらに、書店や図書館で、これらの図書を目につきやすくし、また手に取りやすくするために、最大限の努力を払う。

図書館支援と読書支援

読みやすく改変された書物を必要としているすべての読者のために、図書館が図書を見つけられるよう、公共図書館の職員に情報提供し、図書館に対し財政支援を行う。また、図書館の読書サポーターのネットワークづくりを支援し、自力で読むことができない人のために読書サポーターによる朗読をしたり、読書会を立ち上げて利用者に読書への関心を持ってもらったりする。「すべての人のための図書」財団による支援は、老人ホーム、精神病患者のためのデイケアセンター、知的障害者ホーム、刑務所などさまざまな施設で必要とされている。

本冊子を始め、英語による情報を掲載している、「すべての人のための図書」財団のウェブサイト(http://www.lesersoekerbok.no/)をご覧ください。

「すべての人のための図書」財団のロゴ

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