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複数のグループを対象とした図書の製作は可能か?

1970年代初めに、ノルウェーの知的障害者のための図書の製作を始めたとき、出版社は少数民族出身者を教える教師から頻繁にアプローチされ、「これらの図書は、私たちの生徒にも非常に適したものとなるだろう。ただ…」と告げられた。「ただ」とは、どのテキストや絵本にも、ターゲットグループが誰かを表示しないでほしい、ということであった。当時このような図書に取り組んでいた私たちは、知的な遅れのある人が、最終的には本の中に自分自身を見出す経験ができるようになることが重要であると考えていた。

現在、社会はさらにインクルーシブになった。それは、さまざまなグループに適した本を書くのが容易になったという意味ではない。知的障害者と少数民族の場合、とてもシンプルなテキストを用いてノルウェー語の学習を始める必要がある。両方のグループが関心を示すトピックを扱ったノンフィクションの本がある。アルファベットを学んでいる間は、どちらのグループも、語彙を増やすために成人向けの絵本を必要とする場合がある。このような本が、どのターゲットグループを対象として製作されているかといえば、決してどちらともいえない。読みやすく改変された図書を製作する際には、特別な面が普通の面を隠してしまわないようにすることが重要である。

電子図書は、視覚障害者のためのピンディスプレイや合成音声、テキストの複雑性のさまざまなレベルの選択など、改変と多様化の可能性を数多く秘めている。このようなタイプの図書は、特に教科書とノンフィクションの場合、複数のターゲットグループに提供できる。

『ノルウェーの社会(Samfunnet Norge/The Norwegian Society)』はその一例である。これはシンプルなテキストとより複雑なテキスト、そして難しい言葉の「用語集」から構成されている。「ワード」にコピーして、さらに読みやすく改変することもできれば、ピンディスプレイを使用することもでき、また合成音声も備わっている。そしてノルウェー語、新ノルウェー語および英語の3つの言語で利用できる。ターゲットグループは少数民族と知的障害者で、これまでのところ、どちらのグループにも有効である。(http://skolenettet.no/moduler/templates/Module_Article.aspx?id=34107&epslanguage=No)

視覚障害児向けのさわる本のほとんどは、すべての子供たちに人気である。同じことが布の本にもいえる。青年と成人向けの読みやすく改変されたノンフィクション、伝記、園芸、旅行、電車に関する本の多くには、「一般の」読者がいる。そして当然、非常に多くの「一般の」図書はディスレクシアの人に適しているが、これは、単に「読みやすく書く」才能がある作家もいるからなのである!最後に、読むことに障害があるか否かを問わず、多くの読者に読まれているコミックストリップと絵本があることも忘れてはならない。

したがって、「複数のグループを対象とした図書の製作は可能か?」という質問に対する回答は次のようになる。さまざまなタイプの読者に適した本を書くことは可能である。しかし多くの作家は、執筆する際に一種類の読者しか想定しておらず、おそらくはそれが一番よい方法なのだろう。だがそうして執筆された本が、あらゆるタイプの読者にうまく届けられれば、さらに喜びが増すであろう!