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テキストのリライトと要約

オリジナルテキストの要約版という形でのテキストの簡約化は早くから存在するが、語彙と文法の系統的な平易化は非常に新しい。

「すべての人のための図書」という目標を達成するためには、多様な形態の改変が必要である。シンプルなテキストとシンプルな内容が必要な人に加えて、ブリス(BLISS)やピクトグラム(絵文字)、オーディオブック、手話などが必要な人もいる。これらの特別な形態については後ほど改めて述べる。本章では、(二重の意味で)「重い本」を読み始める気になれない人が読めるように、本をリライトすることについて論じる。

テキストの平易化は、常に議論の的となってきた。言葉の平易化について語るとき、それは言語基準から外れていくことになるので、言語能力の低下を招くといわれてきた。言葉と内容の両方を変える場合、多くの人は、著者のオリジナルテキストにそのようなことをするのは不正であるという。スウェーデンの読みやすい図書センター(the Centre for Easy-to-Read)は、スウェーデンの古典をリライトしたことで批判されてきた。それでもなお、これを行うことは、できる限り多くの人が文化遺産に触れ、会話についていけるようにするので、よいことである。それはインクルージョンなのだ。

現代の作家の場合、話は別だ。彼らは自分自身の利益を図るべく存在し、自分の本をリライトしてほしいか否かを選択できる。自分自身でリライトしたい者もいれば、他の作家に任せる者もいる。このような要約版は、スウェーデンの読みやすい図書の出版社(LL-Forlaget)が出している本の中で、もっとも人気が高い。

リライトにはさまざまなターゲットグループが想定されるが、少なくとも古典に関しては、誰もが皆、よりシンプルな言葉づかいを必要としている。内容については、よりシンプルな内容を必要とする読者と、単にテキストの量が少ない本を必要としている読者とがいる。後者に対しては、本を2,3冊の薄い本に分けることが有効な場合もある。

テキストを短くするにはいくつか方法がある。ページごとにテキストを要約することもできるし、本筋だけを残して枝葉末節を削除することもできる。あるいはその中間も可能である。また、本のエッセンスは残しながら、自分自身の簡単な言葉で物語を語ったバージョンを作ることもできる。全く異なる方法として、絵を使ったり、漫画にしたりして物語を作り直すこともできる。ただし、語り直しと作り直しの違いを理解することが不可欠である。どの方法を選ぶかは、どのようにして、その本の文学性を維持しながら、なおかつ「ターゲットグループ」に提供するかによる。しかし、誰かが著作権を所有していることは覚えておかなければならない。

別のタイプの平易化

ヨハンネ・エミリー・アンダーセン(Johanne Emilie Andersen)は、知的障害のある若者のために、『恋するジュリー(Julie is in love)』という小さな本を書いた。左側のページには、挿絵ととてもシンプルなテキストがあり、ジュリーの日々の生活が語られる。右側には、ジュリーが夢見ていることが、テキストなしで挿絵だけで描かれている。夢と現実の対比である。

恋するジュリーの挿絵

ヨハンネ・エミリー・アンダーセン
『恋するジュリー(Julie er forelsket/Julie is in love)』
オスロ ソラム(Solum)2004年

恋するジュリーの挿絵

(そしてテレビを見ているとき)