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さわる本-出版社の課題

視覚障害者向けのさわる本の製作は、出版社にとって大きな課題である。この分野における草分けであるヴァージニア・アレン・イエンセン(Virginia Allen Jensen)は、隆起印刷という仕事を引き受けられる印刷会社をどのようにして探したかを語ってくれた。彼女はクリスチャン・ソーム(Christian Sorm)という、シルクスクリーンの専門家を見つけた。彼は隆起印刷専用の機械を製作し、ついに正確な全面隆起印刷の大量生産に成功した。

これは30年近くの前のことだが、今なお、新たなさわる本の製作は、毎回出版社にとって難しい課題である。ソラム・フォーラグ社(Solum Forlag)(オスロ)は、アネッテ・ディーゼン(Anette Diesen)のさわる本を15年間出版してきた。同社は、人形、貝、真珠、オルゴール、硬貨など、触覚を刺激する実に多種多様な要素を試してきた。これが発行部数1,000の図書の編集に関わる問題であることを考えれば、一出版社としては、すばらしい取り組みである!製作には「接着剤」が必要で、しかもそれは無毒性でなければならない。本の中身を保護できる十分に頑丈な製本方法も模索しなければならず、しかも本が平らにおけるようにしなければならない。これにはスパイラルリングが使用されることが多いが、図書館司書には扱いにくい。

ディーゼンの先輩であるクリスティン・ビーレンバーグ・ソホール(Kristin Bielenberg S ø hoel)は次のように記している(論文『さわる本の出版(Publishing tactile books)』スペシャルペダゴジック(Spesialpedagogikk)10/93より)。「視覚障害者のための挿絵入りの本の出版では、製作過程全般にわたり、予期せぬ複雑な難題が生じる。ソラム・フォーラグ社がこのような本を出版するという困難な仕事を引き受けたとき、文学は「すべての人」のものだという確固たる信念に基づく目的を持っていた。しかし問題がある。この種の編集は、通常の出版事業の限界をすべて超えてしまっているのだ。」(筆者訳)

さわる本の出版費用を得るために、出版社は全面的に経済支援に依存することになる。