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すべての人にアクセスとチャンスを

国連2030アジェンダに図書館はどう貢献するのか

国際図書館連盟

持続可能な開発目標:世界を変えるための17の目標

目標1:貧困をなくそう 目標2:飢餓をゼロに 目標3:すべての人に健康と福祉を 目標4:質の高い教育をみんなに 目標5:ジェンダー平等を実現しよう 目標6:安全な水とトイレを世界中に 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに 目標8:働きがいも 経済成長も 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう 目標10:人や国の不平等をなくそう 目標11:住み続けられるまちづくりを 目標12:つくる責任 つかう責任 目標13:気候変動に具体的な対策を 目標14:海の豊かさを守ろう 目標15:陸の豊かさも守ろう 目標16:平和と公正をすべての人に 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

国連2030アジェンダを背景として、国際図書館連盟(IFLA)は、情報通信技術(ICTs)の利用可能性に支えられた、社会全体における情報と知識へのアクセスの増進が、持続可能な開発を後押しし、人々の生活を向上させると信じています。

2015年9月
国連加盟国は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(国連2030アジェンダ)」を採択しました。

新たな国連2030アジェンダは、経済、環境及び社会の開発をめぐる17 の持続可能な開発目標(SDGs)の包摂的で統合的な枠組です。このアジェンダを達成することで、誰一人取り残される人はいなくなるでしょう。図書館はこれらの目標の達成を助ける重要な機関なのです。

情報への公共アクセスにより、人々は十分な情報に基づいて決定を下し、生活を向上させることができるようになります。すべての人がタイムリーな関連情報を利用できるコミュニティの方が、貧困や不平等の撲滅、農業の改善、質の高い教育の提供、人々の健康、文化、研究と革新の支援を、うまく進めていくことができます。(注1)

情報へのアクセスは、SDGsでは目標16(持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する(*訳注1))のターゲットとして認められています。

 

ターゲット16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。(*訳注1)

 

文化(ターゲット11.4)及びICT(ターゲット5b、9c、17.8)についても、SDGsに盛り込まれました。

 

世界人口の半数は、情報へのオンラインアクセスを持っていません。私たちの知識社会では、図書館がすべての人にアクセスとチャンスを提供します。

 

さらに、国連2030アジェンダのビジョンには、すべての人が読み書きできる世界が認められます。

 

我々は…すべての人が読み書きできる世界を思い描く。
国連2030アジェンダ

 

世界各地の32万の公共図書館と100万を超える議会図書館、国立図書館、大学図書館、研究図書館、学校図書館及び専門図書館では、情報とそれを利用するスキルを誰もが確実に使うことができ、図書館はデジタル時代において、すべての人にとって重要な機関となっています。図書館は情報通信技術(ICT)のインフラストラクチャーを提供し、人々が情報を効果的に利用する能力を身につけられるよう支援し、未来の世代による継続的なアクセスを保証するために情報を保存します。そして、あらゆる人に効果的に手を差し伸べることができる、地域の機関が参加する、信頼のおける確固たるネットワークを提供します。

図書館はすべての持続可能な開発目標を支持します

図書館と情報アクセスは、持続可能な開発目標(SDGs)全般の成果向上に、以下を通じて貢献します。

  • 専門のスタッフの支援の下、デジタル・メディア・情報リテラシー及びスキルを含む、すべての人のリテラシーを促進すること
  • 情報アクセスの格差を解消し、政府、市民社会及び企業が地域の情報ニーズへの理解を深められるよう支援すること
  • 政府の事業及びサービスについて配信するサイトのネットワークを提供すること
  • ICTへのアクセスの提供を通じてデジタルインクルージョンを進めること
  • 研究・学術コミュニティの中心としての役割を果たすこと
  • 世界の文化及び遺産へのアクセスを維持し、提供すること

図書館は国連2030アジェンダ全体を推進します

SDGsは世界的な目標ですが、各国はその達成に向けて国の戦略を策定し、実施する責任を負い、その進捗状況を追跡し、報告するよう求められることになります。これらの計画が策定されるにあたり、各国の図書館コミュニティは、目標を達成し地域の開発ニーズを満たすために協力するパートナーとしての役割を図書館がどのように果たせるかを、いつでも示すことができます。

目標1 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

図書館は、情報とスキルへのアクセスを提供することにより、人々が自分自身の生活を向上させる機会を得られるよう力を貸し、あらゆる場所において貧困を減らし繁栄を促すサービスと支援を提供するための、政府やコミュニティ等による十分な情報に基づく意思決定を支援します。

スロベニア

スロベニアでは、リュブリャナ市立図書館が雇用情報サービス(EIS)を提供しており、年間およそ1,200 人の職探しを支援していますが、その多くはホームレスや社会保障給付を受けている人たちです。この図書館では、メディア・情報リテラシースキルの研修を行っており、履歴書の作成や、仕事への応募を援助しています。また、ホームレスの図書館利用者の多くが薬物乱用に苦しんでいることから、リュブリャナ大学精神病院の薬物中毒予防・治療センターと密接に連携し、リハビリテーション、社会復帰、ソーシャルインクルージョンを支援しています。(注2)

スリランカ

電子図書館ネナサラプログラム(注3)は、多くの場合、辺ぴな農村地域で暮らしている、国内で最も貧しい住民のデジタルリテラシーと技術へのアクセスを増強する、政府出資のイニシアティブです。全国300ヵ所のセンターで、基礎的なコンピュータースキルの講習、インターネットを通じた情報アクセスに関するガイダンス、地域にかかわるさまざまな知識を提供しています。これらのセンターはあらゆる人に開かれており、国内の数多くの辺ぴな地域や貧しい地域におけるインフラストラクチャーへのアクセス形態としては、最も堅牢なものです。

目標2 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

農業専門図書館を含む図書館及び農業改良普及事業者は、農作物、市場情報、回復力があり生産性の高い農業を支える農法に関する研究とデータへのアクセスを提供します。

ルーマニア

Biblionet(注4)による研修を受けた司書の助けを借りて、新たなインターネット及びコンピューターサービスを通じて、2011年から2014年までに10万人の農民が1億8700万米ドルの補助金を受け取りました。

研修に参加した1000人強の司書は、このサービスが農民にもたらす利益を理解していた市町村長らの支援の下、図書館でサービスを展開することを決定しました。このプログラムは、農民たちが補助金申請フォームにアクセスし、それを政府に送信するために、図書館で利用できる技術の使用方法を学ぶ手助けをするものでしたが、これにより農民たちは時間と金を節約できました。受給を確実にするために、地域のニーズに特に目が向けられました。

目標3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

医学図書館、病院図書館及びその他の図書館は、公衆衛生の成果向上を支える医学研究へのアクセス提供者として欠かせません。すべての図書館における、健康に関する情報への公共アクセスは、自分自身の健康について、より十分な情報を得、健康を維持することに役立ちます。

オーストラリア

2014年に発表された報告によれば、医療関連の病院、政府各省庁、各種協会及びその他の団体は、図書館に1ドル投資するたびに5ドルの利益を得るとのことです。(注5)

キルギスタン

結核(TB)の流行に直面し、キルギスタン政府は集中的な国家TB予防・管理事業を開始しました。キルギス図書館情報コンソーシアム(KLIC)の「TBにノーを!」というサービスは、プロジェクトHOPEや赤新月社などの市民社会団体と連携した、政府の目標を支援するために公共図書館を動員する活動です。図書館電子情報財団(EIFL)の公共図書館イノベーションプログラムから3つの図書館に試験的な補助金が支給されたのち、農村部の190の図書館で「TBにノーを!」イニシアティブが立ち上げられ、TBへの認識を高める方法についての800人を対象とした研修と、5,600人が参加する公開討論が行われました。(注6)

ウガンダ

ウガンダ農村部の保健医療従事者は、質の高い医療を保証するために必要な基本情報へのアクセスにおいて、今なお困難な課題に直面しています。マケレレ大学図書館が発行している『ウガンダ保健情報ダイジェスト』は、オンライン情報にアクセスできない医療従事者のために、学術情報を印刷形式でまとめ直したものです。ダイジェストには、話題になっている疾病や健康問題に関する抄録が掲載されています。そして、病院、保健センター、薬局、医療関係のNGO、地域診療所、すべての地域医療・社会サービス委員会など1,500を超える医療関係機関と、国会議員に配布されています。ダイジェストは、肝炎などの疾病の流行時に、辺ぴな地域で最新の情報を得るための数少ない情報源の1つです。(注7)

目標4 すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する

図書館は、世界中のあらゆる国において、小・中・高等学校と大学の中心です。図書館はリテラシープログラムを支援し、安全な学習スペースを提供し、研究者が新たな知識を創造するために研究とデータを再利用することをサポートします。

オランダ

Boekstart(注8)は、デイケアセンターや医療センター、公共図書館、小学校(2年生まで)と協力し、年間75,000人の0歳から4歳までの子どもたちに、書籍を提供したり識字訓練を行ったりしています。このプログラムは国及び地方政府の支援を受けており、子どもたちの識字能力向上を支援している機関の間での長期的な連携の確立を目指しています。

スウェーデン

マルメ市立図書館は、デジタルディバイドの克服と、ソーシャルインクルージョン及び持続可能性の促進に取り組んでいます。図書館の学習センターでは、「さあ、はじめよう!」というコースを設けており、デジタル未経験の利用者が、電子メールアカウントの開設方法を教わったり、インターネットについてさらに詳しく学んだり、プライバシー設定の調整を行ったりしています。この図書館には多くの移民が訪れますが、特に保護者のいない未成年者は、読み書きの力を高め、宿題に役立てられるようにと作られたツールを利用することができます。(注9)

シンガポール

シンガポール国家図書館委員会(NLB)は、全国の物理的プラットフォームとデジタルプラットフォームを通じて、地域のシンガポール人に図書館内外の事業やサービスに参加してもらっています。NLBはまた、移動性に欠け、図書館までたどり着くのが困難な人々に特に注目しています。NLBはパートナーと協力して、特別支援学校、孤児院、ケアホームで図書館の蔵書とサービスが利用できるように、特別に考案された事業を実施したり、バスによる移動図書館を提供したりしてきました。これらのサービスは、その大半が通常の図書館と同じで、優れた蔵書、貸出・返却サービス、司書による援助と読み聞かせのプログラムなどがあります。(注10)

目標5 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う

図書館は、安全な会議スペース、女性と女児のための権利と健康に関するプログラム、女性が起業のスキルを身につけられるようサポートするICTとリテラシープログラムを提供することによって、ジェンダー平等を支援します。

ウガンダ

ウガンダ国立図書館は、女性農民向けのICT研修プログラムを設けており(注11)、現地語による天気予報、農作物価格へのアクセスの提供や、オンラインマーケット開設のサポートを行っています。このプログラムは、技術的なスキルを通じて女性の経済的福祉を向上させるものです。

ネパール

農村教育と開発(READ)による「情報資源センター能力構築イニシアティブ」は、女性と女児が自分自身の人生について洞察を得、これをコントロールできるよう支援するものです。この能力強化プログラムには、女性の権利、ジェンダー平等、健康、女性に対する暴力やその他の課題に関するセミナーやワークショップが含まれます。図書館は、女性団体に登録するよう女性たちに促しており、女性団体は1ヶ月に1度、館内の区切られたスペースで、会員が自由に意見を述べる会合を開いています。実践的な講習には、読み書きと初歩的な計算能力、英語、ICT、起業スキル、商品を製作する実践クラスなどがあります。全国各地のREADセンターでも、ライフスキル(生活技能)、健康、デジタルリテラシーと技術に関する研修プログラムを実施しています。(注12)

目標6 すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7 すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する

図書館は、水、エネルギーの利用と衛生に関する情報への公共アクセスを提供します。世界各地の公共図書館及びコミュニティ図書館の多くは、人々が読んだり、学んだり、仕事に応募したりするために光や電気を安定して利用できる唯一の場所なのです。

ホンジュラス

サン・フアン・プラネス・コミュニティ図書館は、町の中央広場で実施した水処理プロジェクトを通じて、コミュニティ全体に安全な飲料水をもたらす中心的な役割を果たしています。(注13)

イギリス

クロイドン、ダービー及びその他のイギリス各地の都市の図書館では、どの家電製品が多くの電力を使用しているかを知り、電力の使用方法を変更し、使用量を減らせるように、利用者が電力モニターを借りることができます。(注14)

目標8 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

図書館におけるICTへの公共アクセスと研修を利用して、人々は仕事に応募できます。熟練した図書館員は、オンラインでの応募や補足資料の作成、自分にふさわしい仕事を見つけることに力を貸すことができます。

欧州連合

毎年25万人が欧州連合内の公共図書館を通じて仕事を見つけています。公共図書館は、雇用に関する疑問を持つ410万のヨーロッパ人の力になり、さらに、仕事に応募する150万のヨーロッパ人の手助けをしました。(注15) 多くの仕事で応募のプロセスがオンラインに移行しましたが、ICTへの公共アクセスと研修のおかげで、人々は仕事に応募できるのです。

アメリカ合衆国

ニューヨーク市では、クィーンズ公共図書館の科学産業ビジネス図書館とブルックリンのビジネス&キャリア図書館(B&CL)が、十分なサービスを受けていないコミュニティ出身の現在及び将来の事業主を対象に、参加者にガイダンスを提供する事業計画コンテストを実施し、好評を得ています。B&CLでは、参加者の25パーセントが移民、29パーセントが失業者または不完全雇用者、そして半数以上が、世帯収入がニューヨーク市の中央値未満の人々です。(注16)

目標9 強靱(レジリエント)なインフラ構築、持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

図書館は学究生活の中心にあります。それは、高速インターネット、研究基盤、そして熟練専門家へのアクセスを提供します。多くの国で、公共図書館及び教育図書館は、接続性を高める重要な手段である低コストあるいは無料の公共インターネットアクセスの、主要な、または、唯一の提供者なのです。(注17)

ラトビア

2008年から2010年までにラトビアの公共図書館に投資された1ドルにつき、価値(直接的及び間接的)にして2ドル近くが生み出されました。公共図書館におけるコンピューターとインターネット利用への投資の利益率はさらに高く、1ドルの投資につき3ドルを超える利益がありました。(注18)

フィンランド

フィンランド国立図書館が主催するオープン・サイエンス・ラボにより、すべての人が研究出版物、研究データと、研究で使用された方法にアクセスできるようになっています。オープンアクセスは、情報へのアクセスを促進する上で中核となる原則の1つです。(注19)

目標10 各国内及び各国間の不平等を是正する

 

情報への平等なアクセス、表現の自由、結社と集会の自由及びプライバシーは、個人の自立に重要です。図書館は、世界中の都市及び農村地域で、すべての人に開かれた安全な市民のためのスペースを提供することで、不平等の軽減に協力します。

モンゴル

モンゴルの15,000人の全盲・弱視の人のほとんどは無職で、たとえ支援を受けていても、それはごくわずかです。2010年にウランバートル公共図書館(UPL)とモンゴル盲人連合は、デジタルDAISY形式で録音図書を作成するために2つの録音スタジオを開設し、アクセシブルな資料の量を大幅に増やすとともに、視覚障害のある人に新たな学びの世界を開きました。モンゴル図書館コンソーシアム(MLC)も、視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)(2013年)(*訳注2)の採択を主張し、成功を収めました。(注20)

国際機関

国境なき図書館は、Ideas Boxを使って、情報と資源へのアクセスを難民キャンプで提供しています。Ideas Boxは、衛星インターネット接続や書籍等を通じて情報にアクセスできるようにするもので、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から一部資金援助を受けています。(注21)

目標11 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する

図書館は、未来の世代のために、いかなる形式のものであれ、かけがえのない貴重な文書遺産を保護し、保存する重要な役割を担っています。文化は地域社会を強化し、包摂的で持続可能な都市開発を支えます。

マリ

2013年、武装集団がマリ北部とティンブクトゥを占領しました。ティンブクトゥは、その文化遺産と、かけがえのない貴重な文書遺産を所蔵する多数の公共図書館及び私立図書館で有名な都市です。占領中、写本を保護するために、ボランティアたちが国際支援の下、それらを密かにバマコに避難させました。写本はそれ以降、首都で保管されており、現在、修復とデジタル化の作業が進められています。図書館はマリにしかない遺産の救済と保存の最前線に立ってきたのです。(注22)

中国

2015年1月、初の北京地下鉄図書館、「M地下鉄図書館」が、中国国家図書館(NLC)駅に開設されました。この地下鉄図書館は、新しいサービスを広め、自由にダウンロードできる電子書籍などNLCの質の高いリソースを配信し、伝統文化を維持、促進し、市民に読書を促すことを目指しています。この図書館では、乗客は読者で、読者は乗客です。そして、地下鉄図書館は「皆の読書ステーション」となります。(注23)

コロンビア

公共図書館はメデジン市の都市再開発戦略に欠かせない部分です。メデジン市郊外の最も恵まれないいくつかのコミュニティに戦略的に配置された公共図書館が、文化的かつ教育的なスペースを増やすという、新たに確認されたニーズに取り組む社会開発の中心となったのです。図書館公園は、地域社会に利益をもたらす教育用ツールとプログラムを提供するとともに、さらなる都市開発と緑化プロジェクトの拠点にもなる公共図書館で、次々と建設されました。(注24)

目標12 持続可能な生産消費形態を確保する
目標13 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

図書館は持続可能な施設です。それは、コミュニティと国際社会で資源を共有し、誰もが確実に情報にアクセスできるようにします。すべての図書館は、気候変動に関する十分な情報に裏付けられた研究を支えるデータ、研究及び知識へのアクセスと、情報への公共アクセスの提供に重大な役割を果たし、また、狩猟、漁業、土地利用及び水の管理など基本的な生活面に関する地域の意思決定を含む先住民族の知識の保存に重要な役割を果たします。

アメリカ合衆国

生物多様性遺産図書館は、15世紀から21世紀までに40を超える言語で出版された生物多様性に関する文献17万巻以上、4600万ページ以上から成るデジタルライブラリーへのオープンアクセスを、常時提供しています。科学者は、新種の確認、個体数と生態系の変化のマッピング、将来の気候変動モデルに関する情報提供に、このデータを利用しています。このようなデータは、保護、持続可能な開発、責任ある資源管理に関する政策に必要な情報を提供するために使用できます。この収蔵コレクションは、あらゆる人があらゆる場所で、研究や地球の種と生態系の保存に必要な情報にアクセスできるよう保障するものです。(注25)

シンガポール

シンガポール国家図書館委員会(NLB)は、出資者と協力して、環境保護と双方向型公教育事業に関する特別な蔵書を提供する、緑の子ども図書館を設立しましたが、これは特に気候変動に対する子どもたちの理解を助けることを目的としていました。建物も大半がリサイクル材で作られており、環境保護というメッセージをしっかりと伝えています。図書館ネットワークを開発し、運営するにあたり、NLBは電力と資源の消費に関するグッドプラクティスに従い、無駄を最小限に抑えることを確実に行っています。最も重要となる国立図書館の建物は、2013年にシンガポール建築建設庁からグリーンマーク・プラチナ賞を受賞しました。(注26)

目標16 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法への アクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

情報へのアクセスを完全に実現するには、情報へのアクセスと開発に関するリヨン宣言(注27)にうたわれているように、情報へのアクセスとそれを効果的に利用するスキルの両方が、すべての人に必要です。図書館は、政府、各機関及び個人が、開発のために情報を効果的に伝達し、整理し、組織し、利用することを支援するスキルと資源を備えています。

モルドバ、ジョージア、ウクライナ

オープン・ガバメント・パートナーシップ(OGP)(注28)は、加盟国政府と協力して、透明性、市民参加、汚職との闘い、オープンで説明責任のある政府といった分野への強力な取り組みを約束し、それを実行する国際機関です。OGPは目標16を、これを受けて作成される国家行動計画に組み込むことを約束しました。モルドバ、ジョージア、ウクライナなどの国は、すでに情報と図書館へのアクセスというコミットメントをOGP国家行動計画の一部としています。これらの国の司書は、国家計画の策定に協力する市民社会の会合に参加し、図書館と情報へのアクセスがOGPのコミットメントの実現に果たせる貢献に関して、認識を高めてきました。

国際機関

2030年までに極度の貧困を撲滅するという世界銀行グループの戦略を踏まえて、世界銀行グループ図書館は、知識の移転、グッドガバナンス及び経済開発を促進するために、スタッフと国際社会の両方に対して、関連情報とサービスへのアクセスを提供しています。高度な研修を受けた情報専門家が、開発関連の質問に回答し、内外の複数の情報源から情報を見つけ出し、世界銀行の開発優先順位に従って、図書館の収蔵コレクションや資源、サービスについて、スタッフに周知徹底させています。また、この図書館は、世界各地のスタッフ以外のメンバーを対象とした、情報への公共アクセスに関する能力構築を通じて、透明性と説明責任もさらに幅広く促進しています。 この図書館の仕事は、情報への公共アクセスを通じた国際開発に欠かせません。(注29)

スイス

Globethics.netの倫理学デジタルライブラリーは、倫理学と関連分野に関する何十万ものフルテキストドキュメントへの無料アクセスを提供するオンライン図書館です。南半球の倫理学関連のリソースへのアクセス改善に貢献することにより、この国際的なイニシアティブは、責任あるリーダーシップ、グッドガバナンス、価値ベースの意思決定とプロセスの促進を通じた南北間及び南南間の知識共有の強化と、開発への貢献を特に目指しています。(注30)

目標17 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

図書館は、地域及び全国で国家開発計画を支援する準備が常にできている、地域に根ざした組織の世界的なネットワークと、意思決定改善のための資源を提供します。

カナダ

国立研究機構の国立科学図書館は、連邦科学図書館(連邦政府の科学関係省庁の図書館7つを1つにまとめ、単一の検索・アクセス用共有プラットフォームを作るプロジェクト)の共同スポンサーです。これは、連邦政府の研究者と職員に対しては、より持続可能な図書館・情報サービスを保証し、カナダの人々に対しては、連邦科学図書館の収蔵コレクションとリポジトリの可視性とアクセスを強化することを目指しています。このプロジェクトは、カナダのオープン・ガバメント・パートナーシップ国家行動計画のオープン・インフォメーション・コア・コミットメントに記載されているコミットメントです。(注31)


世界各地の図書館が、国連持続可能な開発目標の達成に向けて取り組んでいます。

この冊子では、さまざまな図書館の取り組みの事例を紹介しています。

  • カナダ
  • アメリカ合衆国
  • ホンジュラス
  • コロンビア
  • マリ
  • ヨーロッパ
  • ウガンダ
  • キルギスタン
  • ネパール
  • スリランカ
  • モンゴル
  • 中国
  • シンガポール
  • オーストラリア
  • イギリス
  • スウェーデン
  • フィンランド
  • ラトビア
  • オランダ
  • スイス
  • ウクライナ
  • モルドバ
  • ルーマニア
  • スロベニア
  • ジョージア

政策立案者への提言

1.国家開発計画に図書館を含める

国家開発計画によって、政府の支出と事業において優先すべきことの多くが決まるでしょう。これらの計画には、単一の国家開発計画もあれば、特にブロードバンド、デジタルインクルージョン、社会開発などに関する個別の計画もあります。人々が必要としているのが最新の農作物価格であれ、医療についての問合わせ先であれ、持続可能な開発目標(SDGs)の進捗状況は情報の共有に左右されます。図書館は、社会から取り残された人々に対する、また、危機発生時や過渡期における、情報アクセスの拡大に特に有効です。

2.図書館と連携する

図書館は、誰一人決して取り残さないための国家戦略及び事業の実施に向けて、政府等と連携することができます。図書館が提供できる情報へのアクセスは、国連2030アジェンダ全体を支え、貧困撲滅、持続可能かつ生産的な農業、質の高い教育、健康及びその他の目標すべてを後押しします。図書館には、貧困削減、経済開発、すべての人のための学びに向けて、政府がともに闘う、確固たる、費用対効果の高い、強力なパートナーがいるのです。

3.SDGsと、地域におけるSDGsの意味について、図書館と協力して認識の向上を図る

国連2030アジェンダの一環として、各国は関係各機関から一般大衆にいたるまであらゆる人に、SDGsについて、また、それがなぜすべての人にかかわってくるのかを確実に知らしめるよう求められています。司書は情報とSDGsの最新版を提供することで、政策決定者と地域社会の人々の両方を支援することができます。

  • 図書館は、SDGsと国家開発の優先事項に関する情報を、図書館コミュニティ内で、また、国境を越えて共有し、目標に関するさらに詳しい情報をオンラインで提供することができます。
  • 世界各地の国連寄託図書館に指定された図書館や国連広報センターは、国連に関する情報や研究を伝え、地域及び国の政策決定者によるSDGsの達成に役立つフィードバックを得るという重要な役割を果たします。(注32)

「データセットと知識源を利用できるようにし、持続可能な開発を実現するために必要なICTへのアクセスを提供してくれる施設を、ぜひとも利用しましょう。
図書館は、データ革命のパートナーとなり、良い形で2030年を迎えるために協力することを楽しみにしています。」(注33)
                IFLA会長 ドナ・シーダー


出典

IFLAについて

IFLA:世界から寄せられる図書館情報専門家の信頼できる声

国際図書館連盟(IFLA)は、図書館・情報サービスとその利用者の利益を代表する主導的な国際機関です。

写真/画像提供者

(*訳注3:本和訳では写真/画像は不掲載)

  • 表紙:オランダ アムステルダム公共図書館(Jorge Royan)
  • 表紙裏:国連持続可能な開発目標:世界を変えるための17の目標(国際連合)
  • 図書館は国連2030アジェンダ全体を推進します:シュトゥットガルト公共図書館(jwltr Freiburg, Flickr)
  • 目標1 スリランカ:スリランカ電子図書館ネナサラプログラム(2014年 学習へのアクセス賞)
  • 目標2 ルーマニア:Biblionet(IREX)
  • 目標3 キルギスタン:境界なき知識(EIFL)
  • 目標4 オランダ:BoekStart.nl  スウェーデン:図書館内で自由に利用できる教材(Läranderum)
  • 目標5 ウガンダ:ウガンダでのBeyond Accessの会合 (Beyond Access)
  • 目標6-7 ホンジュラス:サン・フアン・プラネス・コミュニティ図書館(Beyond Access)
  • 目標8 欧州連合:スロベニアの公共図書館サービス(Public Libraries 2020)
  • 目標9 フィンランド:Open Science Lab
  • 目標10 モンゴル:境界なき知識(EIFL)  国際機関:ブルンジのIdeas Box(Bibliothèques Sans Frontières)
  • 目標11 マリ:ティンブクトゥの文化25(マリにおける国連使節団 Flickr)
  • 目標12-15 アメリカ合衆国:生物多様性遺産図書館(BioDivLibrary & Les Veilleux, Flickr)  シンガポール:国家図書館委員会による世界初の緑の子ども図書館(Choo Yut Shing, Flickr)
  • 政策立案者への提言:ブルンジ アトリエ・カーン・アカデミー(Bibliothèques Sans Frontières)

連絡先

本冊子の提言に関するさらに詳しい情報は下記まで:
IFLA Headquarters
P.O. Box 95312
2509 CH The Hague
Netherlands
TEL +31-70-3140884
FAX +31-70-3834827
EMAIL ifla@ifla.org
www.ifla.org

<訳注>

訳注1:外務省のウェブサイトより和訳引用 
"(仮訳)我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ". 外務省  
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf (cited 2016-11-14)

訳注2:文化庁ウェブサイトの参考和訳より引用 
"視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)". 文化庁
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h26_02/pdf/sanko_2.pdf (cited 2016-11-14)

訳注3:本和訳では写真/画像は不掲載


日本障害者リハビリテーション協会 仮訳

原典(小冊子):"Access and Opportunity for All: How Libraries contribute to the United Nations 2030 Agenda". IFLA
http://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/libraries-development/documents/access-and-opportunity-for-all.pdf (cited 2016-11-14)

関連 IFLA ウェブサイト(英語):"Access and Opportunity for All: How Libraries contribute to the United Nations 2030 Agenda"
http://www.ifla.org/publications/node/10546 (cited 2016-11-14)

原典の小冊子(日本語版):"Access and Opportunity for All: How Libraries contribute to the United Nations 2030 Agenda"(Japanese)
http://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/libraries-development/documents/a
ccess-and-opportunity-for-all-ja.pdf
(cited 2017-2-13)

DINF内関連サイト(日本語):国連および関連国際機関の障害者に関する活動
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/un.html