IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言
総会は、
- 知識と情報へのアクセスを得ることは、ソーシャルインクルージョンと雇用のみならず、文化的および政治的参加にも不可欠であることを認め、
- UNESCOが掲げる知識社会の構想の達成は、新たな知識社会に積極的かつ効果的に参加するすべての人の能力の構築に依存していることを認め、
- 世界情報社会サミット(WSIS)の原則宣言と、特にジュネーブ行動計画のアクションラインC2、C3、C7およびC8を想起し、
- 障害のある人々は情報と知識にアクセスする権利を持つと明言している、国連障害者の権利に関する条約第9条、第21条および第24条を想起し、
- 全盲の人々、視覚障害のある人々、あるいはその他の印刷物を読むことに障害がある人々(プリントディスアビリティのある人々)のために、出版物へのアクセスを改善する国連条約の採択により、国際的な共有に必要不可欠な法的枠組みと、情報へのアクセスの創造における協力がもたらされることに留意し、
- 図書館、出版社および情報サービス提供者が、情報をアクセシブルにすること、特に、書籍、知識および情報をアクセシブルなフォーマットで提供することにおいて、中心的な役割を果たすことを認め、
- デジタル情報の利用可能性の向上と、電子書籍の出現を含むデジタル技術の使用の増加により、プリントディスアビリティのある人々に、社会の他の構成員と同じ時期に、同じ費用で、同じ質の、知識社会に参加する機会がもたらされることにさらに留意し、
- IFLAによる、プリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言の開発の取り組みを称え、
- プリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言の承認を加盟国に要請し、
- 加盟国に対し、今後の戦略、政策およびイニシアティブを計画する際に、IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言を考慮するよう、さらに要請する。
注釈
- 情報へのアクセスを得ることは基本的人権である。その実現は、社会へのすべての人の社会的、文化的および経済的統合に欠かせない。しかし、視覚障害のある人々と読むことができない人々は、多くの場合、情報へのアクセスが得られない。世界盲人連合は、世界には印刷物を読むことができない視覚障害のある人々が1億6千万人以上いると推定している。また、他の障害を理由に印刷物を読むことができない人々が、これよりもさらに多く存在する。しかし、すべての情報の中で、音声、点字あるいはデジタルテキストなどのアクセシブルな代替フォーマットで利用できるのは、わずか5~10%に過ぎない。インターネットが広く利用できるようになったことで、デジタルコンテンツを読むための技術の提供と活用が、今後数年間でさらに進むであろう。
- IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言は、政府、図書館および情報提供者が、その情報とサービスをすべての人にとってアクセシブルにするに当たっての使命と中核となる行動を示すものである。同宣言では、プリントディスアビリティのある人々が、教育面、社会面および文化面で排除されるリスクが高いことを認識するという、図書館と情報サービス提供者の緊急のニーズが強調されている。利用者の多くは、図書館と情報サービス提供者が提供する知識と情報にアクセスするために、代替フォーマットを必要としている。それゆえ、プリントディスアビリティのある人々のニーズを満たす蔵書、機器および設備などが統合された図書館情報サービスの提供が重要となる。
- IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言は、図書館と情報サービス提供者に対し、プリントディスアビリティのある利用者に積極的に手を差し伸べ、アクセシビリティの専門家集団と協議し、適切な資料を見つけることから情報の読み上げに至るまで、価値連鎖全体が切断されることなく、すべての人に平等なアクセスをもたらすアクセシブルなサービスの構築を始めるよう訴える。
- IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言は、正規の図書館研究事業における、図書館情報従事者に対する専門の研修プログラムの設置を要求する。そのようなプログラムは、プリントディスアビリティのある人々のニーズと、情報とウェブサイトのアクセシビリティに関する専門知識を含む、これらのニーズに対応するための最善の方法に関する認識を高める。
- IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言は、先進国および開発途上国の政府、民間企業および市民社会団体、図書館司書、教育関係者およびその他の関係者の間の、マルチステークホルダーによる連携のための行動の概要を説明することにより、プリントディスアビリティのある人々を含むすべての人が知識社会に平等に参加するスキルと手段を持つことを確保するための基盤を提供することができる。
- IFLA宣言は、世界情報社会サミット(WSIS)の原則宣言とジュネーブ行動計画に特に基づいている。IFLA宣言は、世界各地の80の図書館機関から成るIFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館分科会によって、アクセシブルな読書資料をプリントディスアビリティのある人々に提供している学校、点訳者、製作者および仲介業者など、その他多くの世界中の機関との連携の下に作成された。IFLA宣言は、2012年4月4日にIFLA運営理事会によって承認された。
- IFLAはUNESCOとの長い連携の歴史を持ち、知識社会に向けた人材育成と組織能力の構築のために、UNESCOとの協力活動を続けている。これらの能力構築の取り組みには、市民に対するメディアリテラシーおよび情報リテラシーの提供、教員およびメディアと情報の専門家を対象とした研修の実施、図書館と図書館司書の役割の強化と、国家政策のためのガイドラインの開発などが含まれる。UNESCO/IFLA公共図書館宣言、UNESCO/IFLA学校図書館宣言およびUNESCO/IFLA多文化図書館宣言という、過去に出された3件の宣言が図書館の世界に与えた影響は、注目に値する。
付録
視覚障害のある人々あるいはその他のプリントディスアビリティのある人々に対するアクセシブルな図書館情報サービスを改善し、促進するための、プリントディスアビリティのある人々のための図書館宣言
情報へのアクセスの欠如は、プリントディスアビリティのある人々が、社会のあらゆる側面に完全かつ効果的に参加することを阻む最大の障壁である。
国連障害者の権利に関する条約(特に第9条、第21条および第24条)は、プリントディスアビリティのある人々が、他のどの人とも同じ時期に、同じ費用で、同じ質の、書籍、知識および情報に平等にアクセスする権利を持つと明言している。
世界には1億6100万人を超える全盲と弱視の人々がおり、この数は増えつつある。身体障害、知覚障害、発達障害、認知障害あるいは学習障害のために印刷物を効果的に読むことができない、その他のプリントディスアビリティのある人々は、さらに多い。これらがともに、従来型の書籍、雑誌またはウェブサイトを読むことができない非常に多くの人々を構成している。このターゲットグループにとってアクセシブルな出版物は、全体の5%未満であり、アクセシブルなウェブサイトは、報告によれば20%未満である。
図書館は、地域の情報、知識および娯楽の「ポータル」であり、そのサービスは、すべての人にとってアクセシブルなものにしなければならない。コンテンツおよび技術の提供者は、これらのインクルーシブな情報と娯楽目的の読書サービスの開発に不可欠なパートナーである。彼らはデジタル出版およびデジタル配信の新たな可能性をうまく活用することによって、これを成し遂げなければならない。
宣言
国際図書館連盟(IFLA)は、プリントディスアビリティのある人々がすべての図書館情報サービスに平等にアクセスする権利を促進し、障害差別と闘う国際法および地域法を支持する。
- IFLAは、すべての図書館情報提供者に対し、その中核となるサービスの一部として、プリントディスアビリティのある個人利用者が、情報に関する特別なニーズを満たすリソースにアクセスし、これを使用することを支援するサービス、蔵書、機器および設備を整備することを勧告する。
- IFLAは、図書館情報サービス提供者に対し、サービスの計画、開発および継続的な提供に当たり、障害のある人々および彼らを代表する団体と協議することを奨励する。
- IFLAは、最善のサービスは、プリントディスアビリティのある人々のニーズと、これらの人々のためのサービスの選択肢を認識している専門家によって提供されることを認める。それゆえIFLAは、すべての図書館情報サービスにおいて、職員に十分に研修を受けさせ、プリントディスアビリティのある利用者とともに活動できるようにすることを奨励し、生涯にわたる職業開発と、プリントディスアビリティのある人々に対する平等な図書館情報サービスの強化を促進する正規の図書館情報研究事業を支援する。
- IFLAは、図書館情報サービス機関間、およびこれらの機関とその他のプリントディスアビリティの人々をターゲットとしたサービスを専門とする機関との間の、サービス契約、紹介制度およびリソースの共有を通じて、プリントディスアビリティのある人々のリソースへのアクセスを改善する取り組みを支援する。
- それゆえIFLAは、アクセシブルな資料を備えた図書館の国際的なネットワークの設立と開発を奨励する。
- IFLAは、プリントディスアビリティのある人々の、すべての図書館情報提供者からの情報への平等なアクセスを、著作権法によって可能にすることを確保する取り組みを支援する。
- 法的要件を満たすことに加えて、IFLAは、ユニバーサルデザインの原則の順守と、図書館情報サービス、蔵書、技術、機器および設備を、プリントディスアビリティのある利用者の確認されているニーズを確実に満たすものとするためのガイドラインおよび基準の順守を奨励する。
実施
本文書における宣言の実施を促進するために、IFLAは以下を奨励する。
- 国際レベル、国内レベルおよび地域レベルでの政策決定者が、継続的に、プリントディスアビリティのある人々を対象とした図書館情報サービスを開発し、行動計画を実施すること。
- 国際レベル、国内レベルおよび地域レベルでの政策決定者が、その行動計画に、実施の進捗状況を(自己)モニタリングするメカニズムを含めること。
- すべての資金提供団体が、プリントディスアビリティのある人々のための図書館情報サービスに、十分な資金を提供すること。
2012年4月4日、オランダのデンハーグにて、IFLA運営理事会により承認。
原文:International Federation of Library Associations and Institutions (IFLA)
Manifesto for libraries serving persons with print disabilities
http://unesdoc.unesco.org/images/0022/002245/224544e.pdf
掲載されているのは、ドラフトであるが、その後採択された。