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3. どのようにしてわかりやすくするのか?

以下に、RNIB およびCNIBのガイダンスから引用したわかりやすい印刷物のデザインに関する要素をいくつか検討していく。ここではスペースが限られており、すべてを紹介することはできないが、セクション5にあげた参考文献で、さらに総合的な情報を提供している。

3.1 コントラストと色

テキストとそれが印刷されている地とのコントラストは非常に重要である。インク、紙の色、そして印刷された活字のサイズとウェイト(太さ)などのさまざまな要素がコントラストに影響を与える。

色同士の関係
これは実際に使用されている色よりも重要である。非常に濃い色と非常に薄い色が一緒に使用された場合、最大のコントラストが生まれる。

活字の白抜き
色付きの地に白抜きの活字を使用する場合、必要十分なコントラストが得られるように、地の色を十分濃くすることも重要である。このような色の組み合わせを好む人がいる一方で、現在の印刷技術では、より色の濃い地に良質の白抜きのテキストを作成することを広範囲にわたって行うのは大変難しい。

白抜きのテキストは、色付きの地を背景にすると実際より小さく見えるので、使用する文字のサイズとウェイト(太さ)に気を付ける(3.2および3.5参照)。

色盲への配慮
色盲の人にも、優れた色のコントラストは役に立つ。しかし、黄色と青、緑と赤の組合わせは、見分けるのが難しいので避けなければならない。

3.2 文字サイズ

読みの流暢さに影響
RNIBに委託された研究(ゲーリー・ルービン他、『サイズの問題…』ニュー・ビーコン誌2006年1月)(Gary Rubin et al. “Size matters…" New Beacon, January 2006)から、視覚の問題を抱える人々の読みの速度と流暢さが、テキストによって向上することが判明した。それぞれの人に最適のフォントサイズがあり、それよりサイズを大きくしても、それ以上の効果を得ることはできないのだが、フォントサイズの拡大によって、読みの速度を最高にまで上げられる人々の割合を増やすことができる。

一般の書籍では8から10ポイント
一般の書籍や新聞は、通常8から10ポイントの活字で出版されるが、わかりやすい印刷文書では、最小でも12ポイント、理想としては14ポイントのサイズを使用するべきである。活字のサイズを測るもう一つの方法はエックスハイトで、これはxの小文字の高さを測るものである。わかりやすい印刷物のガイドラインでは、理想的なエックスハイトを2から2.3mmと具体的に記している。

3.3 行間

行間は、テキストのある行と次の行との間隔である。この間隔が狭すぎると、テキストが読みにくくなる。

テキストの行間を広げる
視覚の問題を抱える人々は、行間が狭いと行がくっついて見える場合があり、単語の形を認識するのが難しくなる。

行間は語間の1.5から2倍にするとよい。つまり、もし一行の中で語間が2mmならば、テキストの行間として望ましいのは3から4mmということになる。行間の測定は、そのページを試し印刷してみなければ難しいことがある。MicrosoftのWordでは、行間は「書式」メニューの中の「段落」オプションから調整できる。

3.4 フォント

印刷されたテキストで使用されているすべての記号(文字、数字および句読点など)の外観は、タイプフェイスと称されることが多いが、ワープロのプログラムではフォントと呼ばれている。

わかりやすいサンセリフ体
アリアル(Arial)などのわかりやすいサンセリフ体の使用は、視覚の問題を抱えている人々のための資料制作時に推奨されることが多いが、実際には、優良なセリフ体よりもいくらかわかりやすいことを示す事例証拠があるにすぎない。

既存の資料から得るヒント
適切なアプローチとしては、制作中の文書と同種の既存の資料で使用されているフォントを見て、それと同様なフォントを選ぶ方法があげられる。たとえば、書籍はセミボールドのセリフ体で印刷されることが多いが、戸外の大きな看板では、サンセリフ体が採用される。

3.5 活字のウェイト(太さ)

タイプフェイスは一般に、ライト、セミボールド、ボールドの3種類の「ウェイト(太さ)」で利用できる。

ライトウェイト体を避ける
ライトウェイト体では、インクの使用量が少ないので、地とのコントラストが減少し、読みにくくなる。

ボールド体で強調する
ただし、強調のためのボールド体の使用は、特定の読者がこれを好む場合を除き、大雑把にせず、控え目にしなければならない。

3.6 活字体

一般に人は、個々の文字ではなく、眼で認識した単語の形状を記憶することによって読む傾向がある。

イタリック体と大文字は読みにくい
イタリック体と大文字の過度の使用は、眼を惑わせ、単語の形状を特定しにくくする可能性がある。イタリック体による長い段落は、弱視者にとって特に読みにくいといえる。

下線の使用を避ける
同様な問題が、下線を付けることによって生じる可能性がある。下線は文字の下の部分を横切るので、単語の形状の特定がさらに難しくなる場合がある。

3.7 配置とコラム

左揃えの推奨
テキストの配置にはさまざまな方法がある。均等割り付けでは、左右両方のマージンに揃えて配置するが、文字間隔が一定に保てれば読みやすくなる。しかし、ワープロパッケージでこれを行うことは非常に難しい。

右揃えでは、各行が左側の異なる位置から始まることになるので、始まりを見つけることが難しくなる。中央揃えでは、各行がさまざまな位置から始まり、終わるので、さらに読みにくくなる可能性がある。

このため、最大限の読みやすさを確保するためには、テキストを左揃えにすることが望ましい。

コラムの間隔をはっきりとあける
2つのコラムの間には、それらを区別するための十分なスペース(ガターとして知られる)を確保することが重要である。さもなければ、弱視者がページの反対側へとそのまま読み進めてしまう可能性がある。

コラム本文内での図や写真の使用を避ける
コラム本文内に図や写真を挿入すると、読者がそのコラムは終わったと考えてしまったり、その下に続く本文の場所を見つけるために図や写真を越えて移動する際、どこを読んでいるのかわからなくなってしまったりする可能性がある。

3.8 紙の種類

艶のない、絹目の、コーティングされていない紙を使用する 紙を選ぶ際に考慮しなければならない2点のうち、1点目は、その紙がどれだけ光を反射するか、ということである。艶のない紙、あるいはそれと同様な紙の使用により、光の反射を最小限に保ち、印刷が不明瞭にならないようにすることができる。

90gsm以上の重さ
考慮すべき2点目は、裏側のテキストがどのくらい透けて見えるか、そしてテキストの読んでいる部分と混じりあってしまうかである。より重い紙を使用すれば、これは問題にはならない。

印刷見本を請求する
印刷会社が見本の紙を提供している場合、すでに印刷されている見本紙を請求し、その紙が上記の基準を満たしているかどうかを確認する。

透かしや模様が入った紙の使用を避ける
このような特徴のある紙も、印刷されたテキストを見分けにくくするため、視覚の問題を抱える人々にとって読みにくい。

3.9 使いやすいデザイン

わかりやすい印刷物を制作する際に、最終的に考慮すべき要素は、以下の通りである。

ナビゲーション手段の使用
弱視者は文書内をナビゲートするのに時間がかかるので、文書中で繰り返されるページ番号や見出しなどの機能を、全体を通じて同じ位置に表示することができれば役に立つ。これは読んでいる場所の確認を助けることにもなる。

テキストは水平に配置する
曲線またはその他の形に配置されたテキストは、たどるのが非常に難しい。読者が一度に2,3文字以上を見ることができない場合、テキストがどの方向へ流れているのかを判断するのはきわめて難しいので、従来の左から右への水平の配置を使用するのが望ましい。

画像に注意する
テキストを画像に重ねて配置することも同様に、文字の形をわかりにくくし、問題となる可能性がある。

さらに、読者が一度に画像全体を見ることができず、狭い部分しか見えない場合がある。画像だけを通じて情報を伝達せず、画像はテキストの補足として使用することが重要である。各画像のキャプションを常に同じ位置に提示することも、非常に有効な手段である。

簡潔性
最後に、全盲・弱視の読者にとっては、余計なものが付いていないシンプルなデザインが、きわめて複雑あるいは装飾的なデザインに比べて、常にアクセシブルである場合が多いことを知っておく。

資料の表紙に、特徴のある色、形とサイズを使用しても、読者が識別しやすくなる。