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視覚障害者図書館および情報サービス事業の資金調達 および管理システム:国際事例研究

日本

基本的な国のデータ

人口 1億2705万5千人(2006年)
人口に占める65歳以上の割合:2006年 20.3%;2020年 26.0%(予測)
一人当たりの国民総所得(購買力平価を国際ドルに換算)2005年:31,410ドル
政府:中央集権制
視覚障害者手帳保持者数:288,000人(2001年)

情報源に関して

この情報は日本障害者リハビリテーション協会の野村美佐子氏のコーディネートにより、日本図書館協会障害者サービス委員会と東京都立文京盲学校より提供された。

定義とその影響

日本の身体障害者福祉法によると、医学的には「視覚障害者」は以下のように定義される。
1.両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、 屈折異常のある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)の和が0.1以下のもの
2.一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下
3.両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
4.視野欠損率が両眼で50%以上

「印刷字を読めない障害」は学習障害とみなされている。しかしながら、日本では「印刷字を読めない障害」の明確な定義はなく、そのような障害についてのコンセプトに馴染みがない。

定義は限定的で、現在の定義を用いて視覚障害者の実数を計ることは不可能である。報告されている数字は実際よりかなり少ない。(しかし、現在、実数を得る他の手段はない。)日本では、ほとんどの公共図書館は政府の狭い定義を用いてサービス提供者を決定している。その結果、軽度の視覚障害者と一時的に視覚に障害のある状態の人はサービスを利用することができないことが多い。さらに、サービスを利用できることを知らない視覚障害者も多い。身体障害者手帳を持っていない視覚障害者はサービスを利用できないというケースもある。

日本図書館協会の観点では、望ましい定義とは「少しでも不都合のある(一時的な障害も含む)視覚障害者」である。

図書館と利用者のデータ

視覚障害の発生率

全人口に対する視覚障害によって影響を受けている人の正確な割合は不明である。

視覚障害者の過半数は高齢者なので、高齢者が視覚障害者に占める割合は総人口の視覚障害者に占める割合より高くなる。結果的に、大都市より地方のほうが、視覚障害者の占める割合は高い。
基本的なデータ結果から、日本は特に深刻な高齢化社会の現象の例であると言える。

「印刷字を読めない障害」の発生率

最近まで、例えばディスレクシアは日本では英語圏の国と同じような発生率で存在するのだろうかということが議論されていた。最新の調査では、かな音節での読み書きをする日本では西洋のアルファベットより発生率が低い傾向があるが、漢字を学ぶようになると、発生率は同じように人口の5~10%になると言われている。
[http://www.dyslexia-parent.com/z118.html](英語)
日本図書館協会では、「印刷字を読めない障害」についての認識を広めようとしている。

公共図書館

約3,060の公共図書館がある。(2006年)日本の総人口は1億2705万5千人(2006年)なので、図書館1館あたり41,521人が利用していることになる。公共図書館の数は増え続けている。都市部に集中している。
62館が都道府県立、2,381館が市立、617館が町村立である。(2006年)年間貸出冊数は6億1800万冊。従って、一人あたり約4.87冊。1996年の2.5冊より増えている。しかしながら、町村の28.3%は公共図書館がない。
公共図書館は資金不足である。予算は近年、大幅に減らされている。図書館としては望ましいことではないが、政府の主導で図書館業務の民間への管理委託が推進され、いくつかの図書館で実施またはその予定である。歴史的には、図書館司書は専門家としてではなく公務員としてみなされている。予算の削減は、同時に図書館の電子的な環境への移行というニーズを伴っている。

図書館数と資料費(公共図書館)

サービスは名目上拡大しているが、サービスの質は低下している例が出てきた。職員数と資料費は減少し続けており、今後サービスの減少が懸念される。
図書館は利用している人にはよく使われているが、全体的にみて利用者数は少ない。子どもの利用者が大変多い。最近働く人や高齢者の利用が増えてきている。

権利と姿勢

米国では慈善としての寄付は一般的(寄付をする人のパーセンテージからみて)であるが、その額は比較的少ない。
日本は国家によるソーシャル・サービスの割合は先進国の中では、規模が小さい。大企業の従業員の雇用に関しても障害者は雇用されにくく明確に不利益である。
認知・知的障害に対する社会的認識も少ない。
2006年に国連総会で採択された障害者の権利条約の草案作成においては、国内の当事者団体の連携した活動が見られたが、障害者自身による積極的な行動も一般に多くなく、公的には障害者の差別を禁止する政策はあるが、他の先進国に比べ政策と実施には大きな相違がある。
高校レベルまでの教育への平等なアクセスの権利はある。1979年より、重度・重複障害があっても全ての子どもの教育は義務化された。しかしながら、統合教育の動きは他の先進国に比べ立ち遅れている。
障害者にとって建物、製品、サービスへの平等なアクセスの一般的な権利がない。
文化的な政策は文化的生活に障害者が参加できる権利は認めている。
図書館サービスへの具体的な権利はない。
図書館サービスに関して視覚障害者は晴眼者と同じような期待を持つことが制限されている。多くの人々は、視覚障害者は多様な方法で読むことができるということを認識していない。視力を失った年齢、その人の現在の社会的立場などにより図書館に対する期待も異なる。日本の視覚障害者は家族を中心に支えられている。一部の人にボランティアを利用している例があるが、ボランティア自身も量・質ともに不足しているのが現状である。

視覚障害者へのサービスに関連した「印刷字を読めない障害」の人々へのサービス

現在、「印刷字を読めない障害」を持つ人々へのサービスはほとんどない。ほんの一部の先進施設で視覚障害者へのサービスの延長として「印刷字を読めない障害」を持つ人々へのサービスも行っている。視覚障害者へのサービスが「印刷字を読めない障害」の人々にも拡大されることが期待されている。しかしながら、日本では著作権の問題があり、許諾なく実施することはできない。ディスレクシアに特化したサービスはない。そのようなサービスは視覚障害者へのサービスの延長として行われている。

モデルと責任

日本では公的及びボランティアによりサービスの供給が提供される。
基本的には各図書館はその図書館の蔵書を使い、サービスを提供しているが、資料を製作する際は、多くの図書館は外部のボランティアグループと協力する。また、資料の製作を有料の音訳者に依頼している館もある。また、相互貸し出しの全国的なネットワークがあり、点字図書館と協力してサービスを提供している。

サービス提供-一般

視覚障害者への図書館サービスを実施している団体
公共図書館:都道府県立図書館、市町村立図書館
視覚障害者に特化した図書館
公共図書館や点字図書館にサポートを提供する慈善団体、ボランティア団体
国立国会図書館(国立国会図書館-米国議会図書館に相当する)もDAISY(学術文献に限定)を製作

サービス提供-教育

盲学校図書館
主流の学校図書館のサービス
障害児の多くは特別な学校で教育を受けるが、主流の学校と交流活動がある。「特別教育」から「特別支援教育」への移行における統合教育という傾向がある。例えば、学校にはリソースルームがあるが、これらは主に身体障害より学習障害児の利用を目的とされている。政府は統合教育への支援を明確に宣言していない。71の盲学校がある。

政府の責任

公共図書館は文部科学省の管轄である。
点字図書館は厚生労働省の管轄である。
文部科学省と厚生労働省との間には調整システムはない。

役割と責任の重なり-問題があり?

日本ではサービスの重なりはあまり問題になっていない。それはそれぞれのサービスが貧弱であるからだと思われる。
教育的図書館と公共図書館の間にはほとんど協力関係がない。
慈善団体、ボランティア団体、NGOは資料製作で公共図書館に支援を提供している。これらの団体には明確な役割と責任がある。
公共図書館による視覚障害者へのサービスと点字図書館による視覚障害者へのサービスは理論的には異なる。ただし、両者は総合目録、相互貸借などで協力してサービスを実施している。ボランティアグループは自主的な活動であり、全国的な協調体制はない。盲学校図書館はそれぞれが貧弱であり、全国的な協力体制はあまりない。

政策と実際のギャップ

政策的には、障害者の完全な社会参加を実現するべきであるとされているが、その目標を実現するべく満足な社会システムやサービスがない。障害者の真の声は、政策の策定やサービス計画立案にあまり反映されていない。日本では、政策において障害者の声を反映させるきちんとしたシステムがない。一般市民は障害者に対する正しい理解が不足しており、障害者自身も自立のための意識や行動がまだまだ不十分である。一般的に障害者に差別的な言動をとることはあまりないが、真に障害者を理解しているところには至っていない。

構造は変わったか?

それぞれの役割には変化が乏しい。しかし、国の政策としてボランティアへの依存を深めようという傾向がある。年々、全ての団体はますます財政的困難に陥っている。それにもかかわらず、利用者のターゲットと提供する資料は多様化し、サービスは拡大傾向にある。

何が変化に駆り立てるのか?

需要の増加(高齢者の増加)と予算の減少がますますボランティアの活用と経費を少なくするための民間委託などを促している。
テクノロジー-日本はDAISY開発における最前線である。1996年、全国視覚障害者情報提供施設協議会(the Japanese Association of Libraries for the Blind)はDAISYコンソーシアムの最初のメンバーの一つだった。日本政府は DAISYスタンダードを製作するために、「印刷字を読めない障害」を持つ人々にとって必要な機能を確認するための世界的な試みに助成を行った。

成功の評価方法

サービスの評価を測っている図書館はほとんどない。最近、少数の公共図書館がサービスを評価する指標を作成したが、これらの評価方法は具体的というより一般的なものである。それでも、各図書館は一般的な年間目標を立てている。いくつかの図書館は利用者に質問用紙を送っているが、ほとんどの図書館は利用者の満足度を測っていない。
目標は毎年立てられる。時には、長期的目標(約5年間)が立てられる。
日本では、ほとんどの目標は達成すべき明確な数字を明らかにしておらず、一般的なコンセプトに留まっている。しかしながら、資料費と職員の大幅な減少によるサービスの低下が懸念される。

視覚障害者自身の参加

いくつかの点字図書館では、視覚障害者が責任ある立場についている。先進的な公共図書館では、視覚障害のある職員がサービス担当のリーダーになっている。実際、視覚障害者のスタッフがいる図書館では、サービスは量と質において非常に満足できるものとなっている。

財源と妥当性

ほとんど全ての財源は地方自治体の自主財源である。
残念ながら、全財源の総数に関する統計はない。財源は大幅に減少している。日本図書館協会は理想の予算を相当下回っていると述べている。
その背景となる要因のひとつは、日本経済の長期的な低迷である。また日本では、そもそも図書館の存在意義への認識が低いという問題が根本にある。

代替フォーマットによる資料の入手状況の全体

入手可能代替フォーマットは伝統的な音声カセットが主流であったが、最近では急速にDAISYに置き換えられている。その他の大活字といった代替フォーマットはほとんどない。