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視覚障害者図書館および情報サービス事業の資金調達
および管理システム:国際事例研究

資料提供(公共図書館)

点字

原本資料の提供:ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。一部の図書館では出版されている点字図書を購入している。
変換:図書館に登録された点訳者とボランティア、一部図書館職員
リクエスト:原則リクエストによる変換を行っている。(一部自主的な製作もある。)
所蔵:原則的には変換はリクエストに基づき行われ、きちんと製作したものは保存し蔵書としている。[点字のダウンロード-各点字図書館が製作する点字図書はほとんどがパソコン点訳であり、その点字データは“ないーぶネット”にデータアップされ、ダウンロードできるようにしている。現在185の団体が加入し、80,000件の点字データが登録され、4,500人の個人利用者がいる。また、びぶりおネットでも点字データをダウンロードできる。]
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:なるべく早い変換を心がけるが、期間についての目標はない。

音声-標準カセットおよびCD

原本資料の提供:ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。一部の図書館では出版されているカセット・CD図書を購入している。
変換:図書館に登録した音訳者、音訳ボランティア、一部図書館職員
リクエスト:原則リクエストによる変換を行っている。(一部自主的な製作もある。)
所蔵:原則的には変換はリクエストに基づき行われ、きちんと製作したものは保存し蔵書としている。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:資料の質については努力目標としてあるが、明確なものはない。期間についての目標はない。

音声DAISY

原本資料の提供:ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。一部の図書館では出版されている音声DAISY図書を購入している。ただし、発売されているDAISY資料はきわめて少ない。
変換:図書館に登録したDAISY編集者、一部図書館職員、委託業者
リクエスト:原則リクエストによる変換を行っている。(一部自主的な製作もある。)
所蔵:原則的には変換はリクエストに基づき行われ、きちんと製作したものは保存し蔵書としている。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:目標は設定していない。

音声-デジタルダウンロード

原本資料の提供;変換;リクエスト;所蔵;資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:ダウンロードは現在のところ実施していないが、大阪府立中央図書館が平成12年よりTAOの通信・放送研究成果展開事業「マルチメディア・パイロットタウン構想(マルチメディア・モデル博物館(図書館))」として、平成15年より大阪府マルチメディア・モデル図書館展開事業として「録音図書ネットワーク配信」の実証実験としてストリーミング配信を行っている。

テキストと音声によるDAISY

原本資料の提供:日本ではこの製作はほとんどないが、製作する場合は専門グループに委託する場合がほとんど。
変換:記載なし
リクエスト:記載なし
所蔵:出版されている数タイトルを購入して所蔵している図書館もある。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:記載なし

拡大写本

原本資料の提供:日本ではこのサービスの実施館はかなり少ない。ほとんど実施例がない。ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。一部の図書館では出版されている点字図書を購入している。
変換:図書館に登録された点訳者とボランティア
リクエスト:原則リクエストによる変換を行っている。(一部自主的な製作もある。)
所蔵:原則的には変換はリクエストに基づき行われ、きちんと製作したものは保存し蔵書としている。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:なるべく早い変換を心がけるが、期間についての目標はない。

資料提供(点字図書館)

点字

原本資料の提供:ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。また、点字出版されている点字図書も購入している。
変換:図書館に登録された点訳者とボランティア、一部図書館職員
リクエスト:利用者のリクエストによるものと、図書館の選定会議で蔵書とするのが望ましいものを職員が選定して製作。
所蔵:ほとんどのものがきちんと製作され、蔵書としていつでも利用者に提供できるようにしている。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:ベストセラー等は6ヶ月以内、その他は1年以内の製作完了を目安としているが、なるべく早い変換を心がける。

音声-カセットテープおよび標準CD

原本資料の提供:ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。また、わずかではあるが出版されているカセット・CD図書が篤志家から寄贈されることもある。
変換:図書館に登録された点訳者とボランティア、一部図書館職員
リクエスト:利用者のリクエストによるものと、図書館の選定会議で蔵書とするのが望ましいものを職員が選定して製作。
所蔵:ほとんどのものがきちんと製作され、蔵書としていつでも利用者に提供できるようにしている
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:なるべく早い変換を心がけるが、期間についての目標はない。

音声DAISY

原本資料の提供:ほとんどの原本資料は図書館によって購入されている。
変換:図書館に登録された点訳者とボランティア、一部図書館職員
リクエスト:利用者のリクエストによるものと、図書館の選定会議で蔵書とするのが望ましいものを職員が選定して製作。
所蔵:ほとんどのものがきちんと製作され、蔵書としていつでも利用者に提供できるようにしている。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:なるべく早い変換を心がけるが、期間についての目標はない。

音声-デジタルダウンロード

原本資料の提供:記載なし
変換:著作権法により認めておらず、ダウンロードは実施していない。ストリーミングであれば、日本点字図書館と日本ライトハウス共同運営のびぶりおネットで実施。
リクエスト:記載なし
所蔵:記載なし
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:記載なし

テキストと音声によるDAISY

原本資料の提供:ほとんどない。

変換:記載なし
リクエスト:記載なし
所蔵:出版されている数タイトルを購入して所蔵している図書館もある。
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:記載なし

大活字本

原本資料の提供:原本は図書館が購入するか、利用者やボランティアから借用。
変換:図書館に登録したボランティアと図書館職員
リクエスト:リクエストと図書館による選定
所蔵:点字図書館の2割が大活字本のサービスを実施
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:記載なし

その他

原本資料の提供:記載なし
変換:記載なし
リクエスト:記載なし
所蔵:記載なし
資料の種類の幅と詳しさ、提供にかかるスピード:記載なし
所蔵タイトルの決定の基準 (公共図書館)
文学賞受賞作品/書評で紹介されたもの:10%
利用者によるリクエスト:60%
図書館職員 :30%

所蔵タイトルの決定の基準 (点字図書館)
文学賞受賞作品 芥川賞・直木賞は必ず製作。
書評で紹介されたものを参考にしながら図書館職員が選定60%
利用者によるリクエスト:40%

代替形式の所蔵(公共図書館)

代替形式の資料を所蔵する図書館数(点字図書館)

代替形式の所蔵(点字図書館)

望まれる状況 (公共図書館)

全般的な提供

概要説明

考えられる最良の進展としては、現在の公的資金額を大幅に増やす事である。しかし、それは現状ではほぼ不可能に近いので団体や個人から寄付を集めるシステムを構築する必要があるかもしれない。

誰が実施すべきか

障害のタイプに関わらず全ての障害者がサービスを享受することを可能にするためには、公共図書館と図書館職員がサービス実施に対して全責任を負うべきである。図書館と図書館職員はサービス実施のためにボランティアに頼るべきではない。製作者は各々の資料を図書館職員の指示に従って製作し、その正等な対価が支払われる、または受け取るべきである。資料製作のための新しい全国的な団体が設立されてもよいのではないか。

どのように団体が協働すべきか

資料製作時、全ての団体は協力しあう必要がある。例えば、製作者がオリジナル資料の準備や資料変換(メディア変換)に関わるレファレンスサービスに公共図書館を活用することが出来る。

どのようにサービスが実施されるべきか

従来の伝統的なカウンターや郵便によるサービス手法に加えインターネットを介した新しいサービスの提供が必要である。

理想的なサービス水準

なんらかの理由により情報を取得することが難しい人々は非障害者と同等のサービスを受けられるべきである。様々な方法が図書館を訪れることが出来ない利用者に直接資料を届けるために用意されなければならない。また、利用者のニーズに合った形での資料変換を行い提供するためのシステムが確立されなければならない。

望まれる状況 (点字図書館)

全般的な提供
概要説明

文芸書等一般的な資料の変換はニーズに応じて進められているが、医学書やコンピュータ関係等専門書の適切な製作者が不足しているためにニーズに応えられないケースが生じている。専門書の製作者の継続的養成が必要である。

誰が実施すべきか

全国視覚障害者情報提供施設協会において専門書製作のための全国的な養成システムを構築することが普及のために有効であろう。 どのように団体が協働すべきか
資料製作時、全ての団体は協力しあう必要がある。例えば、製作者がオリジナル資料の準備や資料変換(メディア変換)に関わるレファレンスサービスに公共図書館を活用することが出来る。

どのようにサービスが実施されるべきか

従来の伝統的なカウンターや郵便によるサービス手法に加えインターネットを介した新しいサービスの提供が必要である。

理想的なサービス水準

職業や学習に必要な資料が遅滞無く点字や音声等求める媒体で提供されるようになること。

教育

概要説明/資金

政府の資金によりサービスが実施されている。

だれが、どのようにサービスを実施していますか。

専任の司書教諭を中心とした図書委員会
学校にとって相互貸借、データの共有、研究を含めた人的交流はメリットがある。

理想的なサービスのレベル

「いつでも、どこでも情報が入手可能」
利用者の立場に立った視点

最近の文学作品

ベストセラー等は活字が書店に並んで2ヶ月ほどで点字図書館あるいは公共図書館に電話して資料を郵送で借りることが可能になっている。(すべて無料)これらの図書館への登録は電話で行うことができる。各図書館は全国総合目録などで求められている資料を検索し、相互貸借によりお資料を共有している。またインターネットを使い、音声データをストリーミングしたり、点字データをダウンロードし、点字ディスプレイや合成音声で読んだりできる。

文学作品

図書館利用の方法は上と同じ。製作されていないものは点字図書館・公共図書館にリクエストすれば数ヶ月待つことにはなるが資料を特別に、製作し提供している。また、多くの図書館で対面朗読を実施している。

レファレンス

多くの公共図書館、点字図書館ではレファレンスサービスを実施している。クイックなものは電話でも対応しているが、最近ではメールによるものも行われている。また、図書館で資料を用意し、対面朗読で利用する方法もある。(対面朗読は全公共図書館の2割程度、点字図書館の8割で実施)

新聞と雑誌

点字図書館と公共図書館では新聞記事の一部を読んだ録音雑誌カセットテープ版を定期的に製作し郵送で提供している。明らかなタイムラグがある。当日の新聞が読みたい場合は対面朗読を利用することになる。インターネットの使える視覚障害者は自宅でアクセシブルな新聞を閲覧することが可能である。
点字図書館や公共図書館ではいろいろな録音雑誌カセットテープ版を製作し全国ネットワークを通じて貸し出しを行っている。利用者は各図書館から定期的に送ってもらう。ただ、雑誌は抜粋版が多く、発行までのタイムラグがある。新しいものは対面朗読で利用できる。以前はテープ版がほとんどであったが、徐々に検索性の高いDAISY版録音雑誌が増えてきた。
当日の新聞記事の一部分と福祉関係情報を点訳した「点字JBニュース」を月曜日から金曜日の毎日、点字、音声、データで提供するサービスもある。視覚障害者個人にはメールとインターネットで点字データを配信、また電話ナビゲーションシステムの合成音声で読み上げ。各地域の点字図書館では点字データをダウンロードし、印刷して利用者に提供している。
http://www.normanet.ne.jp/~nichimo/joho/tenjinews.html

学校教科書

一部の教科書については国が拡大文字教科書や点字教科書を製作している。DAISY化については遅れている。普通学校などにおいても個人に適合させた教科書の提供が遅れている。個人的にボランティアにお願いして製作してもらっているケースが多い。

児童図書

日本では児童図書の録音版点字版ともかなり少ない。点字図書館や公共図書館ではリクエストがあれば製作提供することは可能になっている。一部の公共図書館では、ボランティアグループなどと連携して、さわる絵本、布の絵本、点字付絵本などの製作と貸し出しを積極的に行っている。

学術定期刊行物

一部の公共図書館では科学雑誌を録音雑誌として製作している。(テープ版)ただその種類は大変少ない。対面朗読で利用することもできる。

学術文献

国立国会図書館で学術文献の音声DAISY版を製作提供している。一部の公共図書館でもその製作能力があり、リクエストがあれば製作提供している。最寄りの公共図書館を通じて利用することができる。

バリア

主要な制約事項は著作権、資料製作の低資金、専門家の欠如である。

著作権

視覚障害者の著作権の除外は著作権法2003年[http://www.cric.or.jp/cric_e/clj/clj.html](英語)
第33条、第37条によりカバーされている。
この法律は、誰もが資料を点字により複製することを許可している。録音による複製は視覚障害者に特化し図書館と盲学校にのみ許されており、これは著作権を保護するためである。印刷字を読めない障害を含め例外は認められていない。公共図書館に点字以外の製作がいっさい認められていないのが最大の問題である。もちろん、公衆送信も認められていない。(注:2007年7月に施行になった改正著作権法により、視覚障害者向け録音図書の公衆送信権が権利制限に含まれることとなった。)

(教科用拡大図書等の作成のための複製)
第三十三条の二
(1) 教科用図書に掲載された著作物は、弱視の児童又は生徒の学習の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等を拡大して複製することができる。
(2) 前項の規定により文字、図形等を拡大して複製する教科用の図書(当該教科用図書に掲載された著作物の全部又は相当部分を複製するものに限る。以下この項において「教科用拡大図書」という。)を作成しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに、営利を目的として当該教科用拡大図書を頒布する場合にあつては、前条第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官が毎年定める額の補償金を当該著作物の著作権者に支払わなければならない。
(3) 文化庁長官は、前項の定めをしたときは、これを官報で告示する。
(点字による複製等)
第三十七条
(1)公表された著作物は、点字により複製することができる。
(2) 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては 送信可能化を含む。)を行うことができる。
(3) 点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、専ら視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。
(注:上記は、調査当時の著作権法第37条の条文。現在の第37条第3項は、「点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、公表された著作物について、専ら視覚障害者向けの貸出しの用若しくは自動公衆送信(送信可能化を含む。以下この項において同じ。)の用に供するために録音し、又は専ら視覚障害者の用に供するために、その録音物を用いて自動公衆送信を行うことができる。」となっている。)

特記すべきプロジェクト

日本においては、DAISYの推進活動はDAISYコンソーシアムの創設者の一人である河村宏氏と(財)日本障害者リハビリテーション協会により実施、1998-2000年に日本政府の資金により2580タイトルが製作された。

日本点字図書館-「びぶりおネット」と「びぶりお工房」

日本点字図書館は、大阪の日本ライトハウスと協力して2004年に点字図書・録音図書配信システム「びぶりおネット」を、そして2005年には録音図書製作システム「びぶりお工房」を開始した。その目的は、録音図書の製作期間の短縮、利用者の求める録音図書(資料)をスピーディに提供することである。
録音図書の製作には、これまでアナログ録音機器を用い、カセットテープとCDを利用者へ郵送するという方法をとってきた。従来は、日本点字図書館のスタジオで10時間程度の録音図書1タイトルの製作に、20週から25週の期間を要していた。現在は、製作はボランティアにより自宅のパソコンで行われ、文章、製作指示、編集、関連資料は図書館のサーバ上に保存され、全ての製作に携わる者(図書館員、音訳ボランティア、校正者)がグループウェアを同時に使用し共有することが実現されている。
録音図書の音声データの容量は、(約10時間の本で一冊あたり150メガバイト)と大きなデータであるために、システムの利用および製作にはブロードバンドネットワーク環境が必須である。利用者はCATV回線やADSL、光ケーブル回線で接続をする。システムは、ストリーミングサービスの他に検索機能を実現している。登録した個人ユーザーは、インターネットライブラリーとして、いつでも自由に利用することができる。

マルチメディアDAISYの開発と配布

日本障害者リハビリテーション協会では2001年より認知・知的障害者を対象としたマルチメディアDAISYの開発と普及を行なっている。今までにサンプル図書製作は10冊を越え、
スウェーデンのLL本(EASY-TO-READ)の日本語版をマルチメディアCD-ROM付きで出版した。まだ少数の図書館ではあるが、認知・知的障害者をターゲットとした貸し出しを始めている。

出版社の協力

出版社は資料の提供やデータの提供などのサービスをほとんど行っていない。わずかに一部の点字図書館に録音・点訳の元となる原本資料の提供を行ったり製作費の一部を寄付している出版社もある。