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デンマーク国立盲人図書館(DDB)における挑戦と試み

エリザベス・タンク
デンマーク国立盲人図書館(DDB)

項目 内容
会議名 2003年 IFLA(国際図書館連盟)年次大会<ドイツ ベルリン> プレコンファレンス
発表年月 2003年7月

はじめに

国際図書館連盟におけるこのグループでは、今年で10年目になりますが、電子図書についての議論をし、展開してきました。明らかに、私たちは真新しい可能性を秘めた素晴らしい世界と向き合っています。社会における電子化の発展によって、私たちのユーザー、すなわち世界中の全盲、視覚障害、印刷物を読むことに障害のある方々へのサービスはまさに信じられないくらい改善されました。

情報への平等なアクセス保障の実現性は、以前より近づいてきました。おそらく間もなく世界中の電子情報源を確立し、アクセスすることができるようになります。アナログ技術の時代の終焉が近づき、より良いものが未来に広がっています。それはそんなに先のことではありません。

先進国のいくつかの特別な図書館では、すでにある程度デジタル技術を対象グループに紹介しており、かなりのスピードで他の図書館でも近いうちにサービスを始めることでしょう。

しかしながら、この素晴らしい将来への約束は、同時に危険とリスクをはらんでいます。

この抜本的な組織とサービスの改革は未解決の議論や新しい要求を私たちにつきつけています。まず、資金を得る必要があるでしょう。思考と作業においては今までとは違ったやり方を見つけ、間違った行動をとらないよう努力する必要があります。

発展のプロセスにおいて、次のような事実に慣れていく必要があります。汚い言葉を使うのをお許し下さい。それは、「そんな日もあるさ」(shit happens)ということです。たまには間違ったステップを踏んでしまう事もあります。それは、革新につきものなのです。しかし、改革する以外ありませんし、間違ってしまったときも耐えるのです。幸運なことに、間違った決断をしてしまうリスクを最小限にする方法はたくさんありますし、その結果、できるだけ最小限のコストで望んでいるような発展を実現させることができます。

ただいまから20分間、DBB(デンマーク国立盲人図書館)の戦略的な発展プロセスにおいて役に立ったいくつかのワーキング・メソッドに焦点をあててお話したいと思います。皆さんの組織を改善し、デジタル時代における現代的な組織を築き上げるのに、私の理解によりますところ、特に重要な点を強調してお話ししたいと思います。

その組織というのは以下のような機能をもっています。

  • よく機能した統合的なデジタルシステム
  • 創造的な働く環境
  • 知的で斬新的な人的能力
  • ロー・コスト、ハイパフォーマンス

最初に、DDBにおける過去5,6年に実行した開発プロセスを手短にお話しします。特に、人的資源や組織の適切な開発を強めるために徹底的に取り組む必要性について皆さんに強調したいと思います。

また後半では、まさに今年のことですが、DBBが取り組んでいる新しい戦略的実践に焦点をあててお話しします。

私がお話しすることのいくつかはありふれている、とお感じになるかもしれません。それは、自然なことです。実際にその通りだからです。だれにでもできる簡単で、小さなことなのです。しかしながら、何か創造的な刺激を必ずや見出していただけるのではないかと期待しております。もし、私のプレゼンテーションのどこかに特別な興味を持って下されば、この会議の間に話し合うことができれば嬉しく思います。今は詳細についてお話しする時間はありませんので、専門的な戦略の内容についてはふれません。また別の機会を待たなければなりません。

世界中の盲人図書館は全く違った状況に置かれていることは明白です。私たちの状況はほとんど全てにおいて多様です。例えば、歴史、文化、経済、政治的なシステム、宗教、技術的発達、所有者など、これらはほんの一部です。しかし、違いはいろいろありますが、共通点もたくさんあります。従って、最終的な使命の達成は、私たちが、世界的規模で協力し、壮大なことを考え、それを純粋に実現するための実行力にかかっています。

一度にたくさんの問題を解決することはできません。少しずつ前進しなくてはなりません。この場をお借りして私がやるべきことは、デンマーク国立盲人図書館(DBB)においての戦略的開発のプロセスで私たちが学んだことを皆さんにお話しすることです。

1. 組織の変革、改善、前進の実践

実りある発展は突然起こらない、ということを認識することは重要です。首尾よく組織を変革し、前進させるには多くの、本当にたくさんの時間を要します。(DBBにおける)最初の、戦略的プロセスにおいては、スタッフと組織の開発は最優先事項でした。必ずしも、いつもそれが正しいアプローチというわけではないかもしれませんが、DBBの場合は適切だったのです。なぜなら、

  • その頃の組織は非常に時代遅れだった。
  • 作業方法は適切ではなく、古いやり方だった。
  • リーダーとスタッフの関係は良くなかった。
  • 協力的な精神の改革が必要だった。

DBBでは、1998年に包括的な変革の第一歩を踏み出しました。それ以来、仕事はより複雑になり、試練が必要になりました。しかし同時に、より誇りを持つことができ、将来に対する希望が生まれました。そのことは全体的な組織のみならず、個々の、また全てのスタッフにとって大きな重要性を持ちます。

1999年、私たちは新しいビジョンを掲げました。ここで言う「私たち」というのは、経営チームとスタッフ、デンマークの図書館関係者と所有者である文化庁のことです。このように、多種多様な関係者が戦略的プロセスに招かれて参加しました。議論は様々な範囲に及びました。アイデアや知識を持ち寄って、可能であれば活用したいと思いました。また、意見の相違や反対意見も明らかにしました。

DBBでは、全員に明白な電子化に関わる戦略的プロセスは最優先事項でした。デジタル技術を利用することにより、視覚障害者が見える人と同じ情報源にアクセスすることを保障できると考えました。

DBBにおいてデジタル化することの意義は、全ての人に明らかであるだけではなく、むしろ電子化された場合、組織は慣れ親しんだプロセスに変わる別のプロセスをふむ必要があるということを認識していました。作業を体系化する方法が検討され、実行されました。もちろん、潜在的可能性を秘めたテクノロジーにはスタッフの新しく創意に富んだ能力が必要でした。

デジタル化というビジョンを持ち、全てのスタッフは「探検」へと旅立つことになりました。これは安楽な旅だと言う人は誰もいませんでした。それどころか、新天地に食料を求めに行くようなものだと大声で宣言されました。そのようなプロセスに求められる資質は、例えば、勇気、創造性、協調性、ユーモア、リーダーシップなどです。このような高い能力を求める代わりに、DBBは、基礎的なシステムと安全なデバイス、そしてもちろん、全般的に指導と励ましと支援を提供しました。全てのスタッフに対し、試練と闘うようエンパワーするという意図があり、実際スタッフは繰り返しそのようなエンパワーを受けています。

変化を好まない人たちがいるのも事実です。それは人間の特性だと言えます。しかし、不思議なことに、デジタル化のプロセスにおいて、抵抗というものはありませんでした。むしろ、将来への意気込み、仕事へのチャレンジには圧倒されました。それは何故でしょうか?いくつかの理由があると思います。そこで、私が重要だと思う4つの要因に的を絞ってお話したいと思います。

ひとつめの要因は、改革のプロセスに完全に参加し、徹底的に取り組むということです。最初からたくさんのスタッフが改革のプロセスに関わり、使命感と責任感を非常に感じていました。深く関わることによって理解と使命感が生まれ、それと同時に、変革する際に起こる組織内の反対と敵対心の原因となる不安とためらいを少なくします。

2つめの要因は、非常に重要ですが、プロセスにおける経営的な側面です。DBBでは、非常にオープンで直接的な経営スタイルを実践しています。経営チームは改革の必要性に賛成していました。組織内で継続的かつ直接的に、メッセージを発していました。大騒ぎをしたわけではありませんが、しかしこのように言っていました。「好むと好まざるとにかかわらず、この組織を変える必要があり、皆さん全てこの変革という旅に招待されているのです。選択の自由がありますから、参加しなくてもかまわないわけですが、数年のうちには別の仕事を探すことになるでしょう」。変革の提案を退けたのはほんの数名でした。その人たちはもうDBBにはいません。自分で選択する機会が与えられ、結局順々に公平な立場で去っていきました。しかし、より重要なことは、全てのスタッフにゆっくりと決心するように求めたことは、変革のプロセスへ平等に参加しているという意識を高め、責任感と誠実に取り組む意志を固めることができます。このようなチームスピリット、参加の意志、楽観主義の成果は実に顕著で、変革の最初から重要な資源となりました。

ポジティブな影響の3つめの要因は、実りの多い職場環境を創造することと関係があります。素晴らしい建物や、洗練されたインテリアのことを言っているのではありません。それらはDBBとはかけ離れていますから。そうではなく、どのように共に働いていくのか、どのように行動するのか、それに対し、実際にどう感じるかということを言っているのです。

使命を達成するために一生懸命働く必要があります。そして、必然的に働く時間は長くなります。しかし、長い時間が必要でも楽しく喜びに満ちています。それは、どうしてなのでしょう?それは、正しい道に進んでいく責任を共有しているからです。

創造的で、直感的で、協力的で、柔軟性のある、素晴らしいパフォーマンスをスタッフに要求するということを考える時、凝り固まり、中央集権的で、規則優先的な環境は適切ではありません。少なくとも、それが私たちにとっての結論です。

従って、私たちは故意に組織と共同作業の方法に関して古いやり方を終わらせることにしました。長い間、古い方法は適していましたが、もはや今日のニーズに合わなくなっていました。従って、最新の共同の価値を見出し、私たちが強化したいと考えている組織的な特徴に対峙していく支えとなる基盤を形作ることになりました。

チームスピリットを強め、強化したいと思っている組織的文化の発展を下支えするため、スタッフのために形式的でなく、楽しく、やる気をそそるようなレジャー的イベントを企画しました。例えば、外国語のコースの費用を一部負担したり、いろいろなスポーツイベントの企画もしました。そのような投資は結果的には、スタッフの病気での欠勤を劇的に減らし、効果的で、躍進的で、責任感をもって仕事をするという姿勢という見返りを得ることができました。

事実、活力があって生き生きとした働く環境を作り出した結果、DBBは2回表彰されました。はじめは2000年にデンマーク最大の組合から表彰され、2001年には欧州連合からいわゆる「エクセレンス賞」を受賞しました。このような受賞は、DBBが働く環境として良い場所であるという証明になり、DBB内外にポジティブな雰囲気を生み出しました。

最後になりましたが重要な4つめの要因は、DBBの献身的な指導力と関係しています。1998年以来、リーダーのチームは様々な開発プログラムを試みました。経営力のレベルを高め、DBBのリーダーが現代の価値に基づいて公平な立場で指導力を発揮できるように努力しました。自己意識が強く、資質の高い現代のスタッフは、型にはまらない経営陣のサポートを要求しており、リーダーは能力があり、かなり要求の多いスタッフのニーズを満たすために絶えず努力しています。

具体的には、DBBのリーダーは現代の指導力に関する一番新しい考え方を活用するようにしています。非常に多くの講座やセミナーを通して、関連する様々な問題について学び、実践しています。たとえば、以下のようなセミナーを開きました。

  • 指導方法
  • ハイパフォーマンスの達成方法
  • 創造的刺激、討論、分析力などを用いた創造的な行動力を高める方法
  • 関連した率直なフィードバックを提供する方法、その批判的側面、そして新しいやり方
  • パフォーマンスの評価などに焦点をあてる。
  • 今年は、経営的コーポレートバリューに関する報告書を作る。この報告書は我々自身、スタッフ、関係者にリーダーシップの価値、またそれによって何が期待できるかを明確にするためです。このプロセスの次のステップは、スタッフに私たちの経営的価値をもとに、リーダーのパフォーマンスを評価するために質問をすることです。このような行動の結果により、リーダーに体系的かつ建設的で適切なフィードバックを与え、その結果、個人が向上する必要性を明らかにしていきます。

人的資源に関する結論

私たちが実行した人材と組織の開発は、明らかにオープンで信頼できる誠実なやり方が要求されます。精神的強さを持つ環境は講座やセミナーの成果であるばかりでなく、このような価値を反映した日々の献身的態度から生まれます。同時に私たちは意識的に不適切な態度を放棄しようとしています。「Appreciative inquiry」(物事の良い面を見て能力を引き出す手法)と呼ばれる心理学的方法を使ってプロセスを確立しました。この方法を利用することにより、積極的で協力的な視野に立つアプローチをすることができ、つまらない不快な感情や旧態依然とした問題などに振り回される時間や労力を避けることができます。

DBBは絶えずデンマーク政府から有り余るほどの助成金を得ているのでそのようなことができるのだ、とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。確かにある程度は正しいかもしれませんが、先に述べたような活動の大半を実行するためには資金を工面することを余儀なくされました。我慢強くコストを削減することを優先させ、とても良いとわかっていても長期的に見ると将来の成功のためにはやむを得ないと思われる活動は断念しました。

実際、2002年のDBBの財政上10人のスタッフの解雇と全体で16%のスタッフ削減を強いられました。私が明確にしたいことは、資金があろうとなかろうと、この開発プロジェクトは非常に重要な戦略だったのです。従って、何があろうともこのプロジェクトを遂行するという決意がありました。DBBがデジタル図書館サービスの次世代として歩み出せるレベルにまで発展するには、このプロジェクト以外には不可能でした。

では、このプロセスから得ることができた重要な結果は何だと思われますか?

非常に短く列挙します。

  • 戦略を体系的に考案し、実施する能力を得ることができた。
  • 私たちの起こす行動に内外からの支援と理解を得ることができた。
  • 将来のニーズに反映する戦略的プランと能力を組織内で協調性を持って開発することができた。
  • 団結心が生まれ、ハイパフォーマンスの仕事、適切なガイドラインと倫理観を得ることができ、それにより、新旧の文化間で統合性を強めることができた。
  • 創造的に独立したチームで仕事をし、またネットワークをより機能させ、外部のパートナーと同様、内部の協調性を高めることに責任を持つように啓発することができた。
  • このことに関する重要な効果は、新しい洞察力、知識、最新の技能を通して全体的に働く意欲が高められたことである。さらにそれは、今まで慣れ親しんだ境界線を越えて、最終的にデジタルサービスを提供するために必要な実験的開発を続けていく勇気を与えてくれた。
  • 私たち図書館のオーナーである文化庁にこの結果を売り込みました。複雑な仕事を取り扱い、迅速さが求められる変化に対処する能力が証明された結果、DDBはよく管理された、将来にむけて信頼できる組織であると認識されるようになりました。私たちのパフォーマンスに対する行政による認識は決定的です。文化庁は私たちにとって最大の助成金申請先であり、デンマークでは公共機関から助成を受けている団体は、現在事業の助成金を得るために激しい競争があります。財政的支援の減少は深刻で、大幅な予算のカットを避けるために最大限努力する必要があります。そのような状況の中、省庁は明確で有望なビジョンや使命感がなく、またそのビジョンを実現できる経験を証明できない団体よりは、信頼できる団体に必然的に助成をすることになります。

このような結果により、有利な出発点に立ったうえで、現在私たちが直面している次の戦略的段階に入ることができます。それは、このプレゼンテーションの2番目の焦点になります。

2.進行中の新しい戦略

DBBでは、2004年から2007年にかけてITと包括的な方針に関し明確な戦略を立てました。デンマーク政府機関である文化庁との交渉のため2つの戦略が重要なポイントです。2004年から2007年までの業績に基づく契約の合意をねらっています。この4年間で完全なデジタル化を実行することができ、同時にアナログ技術を徐々に廃止することができるだけの助成金を得るのが優先事項です。その過程における重要な問題は、メンバーがプレイバック装置を購入する費用をどのように保障するかという事です。

では私たちは、オーナーと交渉する前にどのような準備をしたのでしょうか?

1) 利害関係者の分析

体系的に利害関係者、パートナー、競争相手、同業者などに焦点を当て、DBBとの関係における利点を分析しました。そうすることにより、私たちのアイデアを支援してくれるのが誰であるのか、かなりはっきりとした印象を得ることができました。しかし、どこから抵抗を受けそうなのかを明確にしておくのも同じくらい重要でした。どこと協力すればプラスになるのかを判断し、私たちの望む方向へと前進するのを促進させるためにはどこと提携すればよいのかをつきとめました。

この過程の中で私たちが判断した重要な団体は以下です。

  • 利用者の委員会
  • デンマーク視覚障害者協会
  • デンマーク出版協会
  • デンマーク文化庁
  • 公共図書館協会
  • 研究図書館協会
  • IT開発業者、企業
  • デンマーク地方自治体協会
  • DAISYコンソーシアム

2) 社会における関連問題について綿密に調べる

ひとつは社会におけるトレンドを徹底的に調べることです。それにより私たちの状況に何かしら影響を与え、従って考慮に入れなければならない特性を見出したかったのです。複雑さ自体がトレンドで、この作業を果てしないものとします。そして、もちろんそこから発生したいくつかの特性は重要です。従ってこのようなプロセスにおいては、何が重要かを迅速に決定し、あまり重要でないことを深く調べることは避けるべきです。

私たちが焦点をあてたことは以下です。

以下は私たちが注目したトレンドです。

  • 全体的なITの進化―主流のITソリューションからどのように私たちの利益を得られるのか、また、多くの高価なソリューションをどのように避けるのかを明らかにする。
  • 公共図書館のコミュニティの発展 ― 一般の人々と同じように研究者に対して図書館が提供する新しい施設に関し、平等にアクセスを保障する方策を見出す。
  • 出版技術の発展―デジタル化と商業用出版を最大限に利用するためにデジタル化された生産ラインと配給方法を開発、実施、体系化するための最善策を模索する。
  • 総体的な政治的状況―デンマークの主な政治的な問題をつきとめ、最大限に政治的状況を利用する方法を見出す。
  • ワーキングライフの発展―組織の実りある発展を継続させるために、現在の能力あるスタッフの雇用を維持するとともに、将来的に有能な人材を確保する。

3) 統計の分析

  ご存知のように、統計を用いることによって論点を立証することができます。複雑な作業をしたり、時間をかける必要はありません。実際問題として、国際的な協力と相互の利益のために他の図書館と協力して作業をすれば、関連する、的を絞った統計を入手することができます。 

スウェーデンのTPBとオランダのFNBのご好意により、私は簡単な比較をして、DBBの迅速な前進に必要な資金を得るべく交渉先である文化庁に提出しました。デンマーク政府が、非常に良く機能しているヨーロッパの同じような団体の水準にまで引き上げたいと考えているなら非常に有効な手段です。

4) 資金を得る方法

この発表の中で私が申し上げたい最後の点は、困難ですが重要なことです。予算と関係があります。必要な資金をどのように得るのでしょうか?

私たちが“このようなことに使いたい”と希望する全ての資金を得ることは不可能であるということは当然だと思います。私たちは、“それよりも少ない資金”で満足しなくてはならないのです。しかしながら、世界的にもそうですが、“それよりも少ない資金”はDBBにとって、決して充分ではないと言わなければなりません。財源不足は増大していますし、この先何年かはこの状態が続くと思われます。それでは、このような状況にどのように対処すればよいのでしょうか。

少なくとも主に2つの答えがあると思います。縮小して活動を減らし、資金とコストのバランスを保つか、代わりの資金源を見つけるかのどちらかです。どちらを選ぶかは気質の問題です。一般的には“リスクを負うことをよしとする”あるいは、”総じて政治的に理解する“かのどちらかです。

資金を得るために、DBBは様々な手段を講じました。いくつかは一般的なものですが、試験的な試みもあります。

1. 資金を得る基本であり、伝統的なやり方は大げさに語る必要はありません、なぜなら第一のスポンサーですから。所有者からの資金については先に述べました。DBBの場合は、政府の助成金です。適切な額の資金を首尾よく得られるかは、政府がどれくらい私たちを信頼しているかによります。所有者の信頼と信用を得ることは非常に重要です。従って、信頼と信用は重要なキーワードです。

2. 2番目のキーワードは、マーケティングです。何年か前、私たちはDBBの開発、主にソフトウェアとノウハウを提供することにより、他のパートナーが利益を得られるようにしました。ヨーロッパとアメリカの顧客に私どものサービスを販売してきました。時折、この会議にも出席しているある団体は、そのようなビジネスは問題であり、不誠実でさえあると考えていることに私たちは当惑しており、失望しています。

  それに関連して、DBBは様々な方法でボランティアで貢献してきましたし、それは今後の共同活動においても続けていきます。しかしながら、私が理解できないのは、先進国の仲間がお互いの質を高めるのを妨げ、民間企業にお金を払うほうが妥当だと考えていることです。

  実際、盲人図書館の世界ではお互い売買することは実質的に利益を得ることができると考えています。中でも、特定のリソースを利用する活動においては、お互いにそれをシェアする効果的な方法を発展させていくことができます。ある分野においてはそれを得意とする団体に任せて、他の団体はそのような活動を減らして単にそれを買って利用するというのはいかがですか?

 様々な特異性の有る分野を全てひとつの組織が維持することはコストがかかり、質も落ちます。利用者もより良いサービスを受けるべきです。例えば、点字音楽、さわれる作品、様々なデータベース、特定の外国語グループなどです。発展途上国の場合は、また別の解決策を見出す必要性があります。

とにかく、収入を増やしたいと考えるなら、マーケティングし、広報するべきです。マーケティングの一例として、本日“フェースシート”をお見せします。私たちがどのようなものを販売しているかおわかりになりますし、アマチュア同士が楽しく意見を交わしているのをご覧になることができます。

3. パートナーシップは、収入を得られる道を模索する3つめのキーワードです。パートナーシップにより収入を得られるだけではなく、将来的には協力することにより複雑な作業をより適切な方法で行ない、活動に選択肢が得られます。

DBBにとってIFLAのLBSは DCと同様とても有益なパートナーシップの代表で、お互いになくてはならない存在です。DBBにポジティブな経済的影響を与えているパートナーシップの例を短くご紹介します。私にとってパートナーシップとは、プロセスの結果を最大限に利用できるようお互い献身的に協力していくということです。パートナーシップの必要条件は、自分たちの持つ様々な資質や知識を用いて貢献し、パートナーシップでなければ得られないような成果を得ることができ、コスト的にも有利であるということです。

さらに、重要なことなので心に留めておいていただきたいのは、外部からの資金を惹きつけやすいということがあります。

DBBは様々な戦略的パートナーシップを展開しており、今後も広げるつもりです。ここでは、3つのパートナーシップについてお話します。

・デンマークの障害者団体協会とパートナーシップ
現在、デンマークの公共図書館、最大の組織であるデンマークの障害者団体協会とパートナーシップを組んでいます。このプロジェクトは外部からの資金援助を受け、来年はさらにパートナーを広げ、より多い資金を得る見通しです。このプロジェクトはひとつの厳粛な団体で行なっているのではなく、その性質上共同で行なうことが、必要条件です。ところで、そのプロジェクトはデンマークの印刷字を読めない人々のための最高の国立図書館の開発を目指し、まさしく最高水準の技術的、芸術的なソルーションとなることです。
・民間の出版社とのパートナーシップ
また、民間の出版社とのパートナーシップで、代表的なのは辞書を出版しているある出版社とのパートナーシップです。このプロジェクトにおけるDBBの利益は出版社から電子ファイルを入手して、合成音声をつけたマークアップ形式にすることです。出版社の利益は、この業界の可能性とバリアを調査して電子出版に備えることです。
・IBMとの協定
最後は、IBMとの協定でDBBにかなり低コストでデジタルアーカイブ施設を供給するというものです。この場合IBMはDBBをフロントライン、またはベンダーウィンドウとして利用することができ、一方DBBは買うことのできなかったアーカイブを利用することができました。

私たちは、フルに頭脳を回転させ、パートナーシップ、マーケティング、財源を開拓しました。その結果2003年は私たちの活動の10%が外部からの収入によるものでした。努力してみる価値があると思いませんか?

私が価値があると思うのには、2つの理由があります。将来の財源のニーズを期待できるということです。従って、私たちのやっていることは有益な経験を積み、将来のチャレンジに対処できるよう組織を強化することです。さらに、このような外部からの収入、ネットワーク活動は将来も成長し、パートナーシップを活用できるだけでなく、DBBと私たちのビジョンを広める機会を持つことができます。情報への無料で平等なアクセスという初期のメッセージは、緊急不可欠であると認識され、最終的にはこのような一連の活動により使命を達成することができると信じています。それは無駄なことではありません。