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Googleブック検索へのアクセシビリティ追加

第一段階に不足はなかったか?

ジョージ・カーシャー
DAISYコンソーシアム 事務局長

項目 内容
発表年月日 2007年7月13日
転載元 DAISYコンソーシアムニュース(http://www.daisy.org/)

2007年7月3日、GoogleはGoogleブック検索にわずかな変更と考えられる修正を密かに加えた。しかし、視覚障害者もしくは印刷物を読むことに障害のある人々は、これについて非常に胸を躍らせると同時に、失望することにもなるであろう。このような人々にとって、それは「わずかな」変更ではない。Googleブック検索の「全文表示」にきわめて特殊な隠しリンクが追加され、それが視覚障害者が使用するスクリーンリーダーなどの支援機器(AT)を通じて自由に利用できるようになったのである。

Googleブック検索には、発表当時から、印刷物を読むことに障害がある人々のコミュニティが大きな関心を寄せてきた。印刷物として出版されている書籍の中で、これまでアクセシブルなフォーマットで製作されてきたのは5%に満たないと推定されている。このスキャンを利用したプロジェクトは、前代未聞の書庫となる可能性を秘めており、これによって、視覚障害者あるいは印刷物を読むことに障害がある人々が一般の書籍の中から利用できるものが、劇的に増加するであろう。DAISY(www.daisy.org)標準規格は、構造化された、マルチメディアによる書籍へのアクセスを可能にし、今なお、究極のアクセシビリティを提供している。他の障害者団体や教育コミュニティは、現在、DAISYおよびDAISYコンソーシアムの資金援助によって実施されているさまざまなプロジェクトのメリットについて学んでいる。Googleの技術は今までのところ、DAISY図書のアクセシブルな機能に匹敵するところまでは至ってはいないが、しかし、世界中の図書館の何百万冊もの書籍をスキャンすることは、世界の印刷された遺産のデジタル化が本格的に始まったということを意味している。今や、Googleブック検索を通じて、インターネット界の巨大企業によってインデックスをつけられたウェブサイトだけでなく、われわれの図書館に保管されている大量の知識を検索し、それにアクセスすることもできるのである。Googleブック検索の検索機能を使えば、検索語句と一致する内容が書籍のテキスト中にあればそのタイトルが表示される。一致する語句は、もとの書籍から画面に表示されたページの画像上でハイライトされる。著作権が切れていない場合は、「スニペット表示」を見ることができるが、著作権が消滅している場合は、ページの「全文表示」が見られる。

現在、コンピュータ用の支援機器を使用している人たちは、全文表示からの非常に特殊な隠しリンクを使って、テキストを読むことができる。このような変更がなされる前は、これは不可能であった。表示は画像であり、テキストではなかったからである。7月5日に開催された全米視覚障害者連盟の年次総会において、自身も視覚障害者であり、Googleに勤務しているT.V.ラマン博士は、次のように語った。「これは、世界中の視覚障害者および印刷物を読むことに障害のある人々に利益をもたらす数多くのステップのうちの、ステップゼロであると考えてください。」まさに、これは重大な一歩である。数十万、ことによると数百万冊の書籍を、情報に飢えているにもかかわらず、従来の読みのメカニズムを使うことを阻まれている人々が利用できるようにすることは、前例がなく、きわめて重要である。

アクセシブルバージョンは、どのように稼動するのであろうか?Google はテキストのOCR表示に「隠し」リンクを加えており、正しく設定された支援機器を使用した場合、これが全文表示中に第一項目として目に付くように表示される。読者はこのリンクから、書籍を読むための完全にアクセシブルなインターフェースが利用できる。スクリーンリーダーで一般に使用されている、典型的なキーボードのコマンドは、すべてこのインターフェースに入っている。支援機器を使用している障害者は、OCRテキストを読み、前後のページや他のページに移動したり、目次を利用したりすることができる。

目が見えるユーザーが画像のダウンロードをオフにした場合、リンクが現れるが、これを見つけるのは非常に難しい。目が見えるユーザーは、スキャンされたテキストの画像表示に代わる、これよりもよいオプションとして、「テキスト表示」が利用できる。新たな隠しリンクから開くことができるページでは、提供する機能は同じだが、さらにいっそうスクリーンリーダーが使いやすいようになっている。

しかし、早急に取り組まなければならない不平等な点もある。Googleブック検索はオフラインで読むことをサポートしており、書籍の全文表示のPDF版をダウンロードするオプションがあるのだが、これはページの画像だけなので、支援機器を使用して視覚障害者に情報を提示することはできない。このため、この機能は目が見える人々のコミュニティしか利用できない。現在、視覚障害やその他の印刷物を読むことに障害がある読者が、オフラインで読むために一冊の本全部をzipファイルとしてダウンロードするオプションはまったくないのである。印刷された書籍の代用品を使用している人のほとんどは、何らかのタイプの携帯用読み取り機器を利用している。オンラインで読む人はほとんどいないので、ダウンロードの機能がなければ、読みのオプションに関して、目が見えるユーザーと視覚障害あるいは印刷物を読むことに障害がある人々との間で、このような誰の目にも明らかな不平等が生じてしまう。私はこれが、ラマン氏が言及している数多くの改善すべき点の一つであると思う。

さらに、画面を見ることができない人々は、「限定」(スニペット)表示にアクセスすることができず、また、アメリカのRecording For the Blind and Dyslexic (RFB&D) や、DAISYコンソーシアムのメンバーで世界中の視覚障害者と印刷物を読むことに障害がある人々を支援しているその他の数多くの図書館のような障害者を対象とした図書館から、図表表示その他の重要な機能を備えたアクセシブルな市販の書籍あるいは高品質な書籍を、視覚障害者や印刷物を読むことに障害がある人々が入手できるサイトへのリンクは何もない。

ラマン氏は、Googleブック検索は、検索を目的とした場合、非常にすばらしいが、しかし、それは従来の図書館や書店に取って代わろうとするものではないと考えている。とはいえ、目が見える人々は、本の内容すべてを無料でダウンロードすることができる。ラマン氏は、「視覚障害者として、私はほかの人と同じ様にアクセスできるようになりたいと思います。最終的には、視覚障害者が、自分が望むフォーマットの、図表表示などすべてを備えたアクセシブルなバージョンを入手できる、RFB&Dのような場とリンクできるようになることを願っています。」と語った。確かに、支援機器によって市販のデジタル出版物がアクセシブルになった時点で、Googleブック検索は、目が見える読者を対象とした場合と同じ様に、書籍が購入できるサイトや、高品質のDAISYフォーマットや点字、あるいは拡大印刷による書籍を提供する図書館のサイトに、支援機器を使用している読者を案内するべきである。とはいっても、Googleは、世界中の視覚障害者向け図書館すべての蔵書をあわせた数よりも、多くの書籍を所有しているのも事実である。そして、これらの書籍の多くについては、Googleのコンテンツが唯一の利用源であることは認めなければならない。だが、Google ブック検索は完全ではない。OCRエラーはきわめて明白である。目が見える読者は、テキスト表示ではなくページの画像を見ているので、通常OCRエラーには気づかない。Googleブック検索はスキャンされた資料に最適化されているので、エラーはあってもなお、検索者はすばらしい成果を上げることができる。ラマン氏は「OCRエラーはありますが、これは時間がたてば改善されるでしょう。」と述べた。この言葉から、ラマン氏は、GoogleによってOCR認識によるアプローチが改善され、自動的なプロセスを通じてエラーが修正されるようになると考えているようである。私は、図表表示や触れてわかる図、およびその他の重要な強化機能を備えた、視覚障害者向けの図書館が提供する代替書籍へのニーズが、引き続き存在するという点に同意する。

Googleは視覚障害者および障害のあるユーザーからのアドバイスを求めている。ラマン氏は、障害者がGoogleのアカウントに申し込み(視覚障害者はGoogleが開発したアクセシブルな音声キャプチャを利用できる)、そして「アクセシビリティ」フォーラムに申し込むことを提案している。このフォーラムでは、accessible@google.comにメッセージを送り、Googleブック検索を含むGoogleが導入している数多くのアクセシビリティ機能について意見を共有することができる。

私はGoogleが踏み出した第一歩を称賛する。これはまさにGoogleブック検索における情報への完全なアクセスに向けた、Googleの最初の一歩であると私は信じている。また、私はGoogleがソフトウェアの反復的開発を信条としているものと理解している。だとすれば、これはGoogleブック検索におけるアクセシビリティ開発の第一反復なのである。私は個人的には、われわれの情報時代において、情報へのアクセスは基本的人権であると信じている。新規に開発される情報技術はすべて、視覚障害のある読者および印刷物を読むことに障害がある読者のニーズを最初から考慮しなければならない。不十分な対応は断じて間違っており、人権の侵害である。視覚障害のある読者あるいは印刷物を読むことに障害のある読者ほど、Googleの第一歩から利益を受ける者はいない。さあ、目が見える読者ができるように、一冊の本すべてをダウンロードすることからはじめて、平等に向けてさらに歩みを進めよう。

参考リンク