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「盲人図書館」分科会報告

野村美佐子
(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター次長

項目 内容
転載元 日本図書館協会発行「図書館雑誌」2006年12月号
「特集/IFLAソウル大会レポート」

「盲人図書館」分科会(LBS- Library for the Blind Section)

視覚障害者だけではなく、印刷字を読めない障害 (print disability) を持つ人々への図書館サービスについて考える分科会である。このLBS常任委員会は、活動を通して国際的な連携を図り、上述の対象者が自由に情報へアクセスできるように様々な観点から研究・開発に取り組んでいる。

筆者は1999~2003年まで「図書館の利用に障害のある人々へのサービス」分科会(LSDP-Library Serving Disadvantaged Persons Section)の常任委員であったが2005年より「盲人図書館」分科会の委員として活動している。(財)日本障害者リハビリテーション協会のウェブサイト(http://ifla.jsrpd.jp/)では、LBSに代わって世界における視覚障害者向け図書館要覧(International Directory for the Blind)の更新・維持を行っている。

分科会プログラム

8月22日に行われたLBSのプログラムのテーマは、「アクセシブルなウェブサイトにする上での課題と実践」であった。情報技術の発展により、図書館においてもインターネットを通してサービスを提供する時代となった。しかし、障害者など情報のアクセスに困難な人々に対して配慮したウェブ作りが必要とされており、多くの図書館員にウェブ・アクセシビリティに関心を持ってもらうためにこのプログラムが企画された。フィンランド、日本、韓国 そしてスウェーデンからの発表者は、それぞれの国での実践に基づいてウェブ・アクセシビリティの重要性について語ってくれた。

日本からの発表者である静岡県立大学社会学の石川准教授(社会学)は、社会学者、支援技術開発者、そして利用者として、読み上げソフトなどの支援技術を利用してもウェブコンテンツがアクセシブルでなければ情報にアクセスができないとユニバーサルデザインの必要性を述べた。そのためにはというと、多くの発表者がウェブ技術の国際標準化を進めるWWWコンソーシアム (http://w3c.org)のウェブ・アクセシビリティ・イニシャチブ(WAI)グループが策定したガイドラインに準拠するべきであると訴えた。今後、多くの図書館のウェブによる情報提供の改善が望まれる。

LBS常任委員会

IFLAソウル大会中に常任委員会は3回開催された。昨年度より委員長になった南アフリカのJohan Roos氏の辞任により、前任者であるスウェーデンのBeatrice Skold氏が急遽、委員長に決定した。来年はIFLA大会が南アフリカ共和国のダーバンで開催されるのでLBSとしてのプログラム企画について活発に討議されたのでここで報告する。

具体的なプログラムの中身についてはこれから検討していくが、大会前に行うサテライト会議のテーマは、「印刷字を読めない人々への図書館サービス:識字への手段」となった。南アフリカ及び他のアフリカの地域でアクセシブルな本を製作する図書館や団体の関係者、教育関係者を対象として100名を予定している。この会議のなかででアフリカにおけるさまざまな課題、実際のデータ、問題など地域の現況を把握し、図書館のさまざまなユーザーのニーズに合った資料 (点字、さまざまなタイプのDAISY,子供向けの触る絵本、大活字、アクセシブルなオンラインサービス)を紹介する。またIFLAとして何ができるかのプログラムを考えている。またこの会議と連動して、DAISYコンソーシアムの協力で現地の言葉によるエイズ防止とエイズ感染者支援の文書作成も視野においたDAISY製作研修会も開催する予定である。この研修をきっかけとしてアフリカでのDAISYの普及が期待される。2007年の2月にドイツのハンブルクで開催される次の常任委員会で会議の詳細が決定される。