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視覚障害者図書館および情報サービス事業の資金調達および管理システム:国際事例研究

第一部:概略報告書

好ましい状況

回答者は、自国にとって「理想的な」サービス事業について、誰が資金を提供するか、どのように組織するか、資料はどうやってエンドユーザーに配布されるかなど、説明することが求められた。回答者は「理想的」という言葉をさまざまな意味に解釈していたが、これはある意味では、現在の状況が回答者にどれだけ満足がいくものと思われているかを反映していたといえる。このため、比較的漸進的な変化でも非常に大きな進歩のように考える者もいれば、一方で、ユーザーが望むときに、望んだものを、ユーザーが好む方法で提供することこそ、まさに、理想的な状況であると考える者もいた。おそらく、質問の仕方が間違っていたのであろう。しかしその意図は、モデルをどのように変えられるか、また各組織がどのように協力しあうかについて、何らかのアイディアを引き出すことにあった。

資金調達先

回答者の圧倒的多数が、サービス事業について、政府からの資金提供を受けたいと希望していた。オランダは、政府から資金提供を受けながら、引き続き民間財団とEUからの資金および寄付によってこれを補っていくことを望んでいる。

スウェーデンは、理想的な状況とは、納税者ではなく出版社から資金を得ることであると考えていた。またデンマークの回答者と、オーストラリアの教育部門にかかわっている回答者の一部が、政府とともに出版社も貢献すべきであると回答した。これはおそらく、デンマーク(およびその他の北欧諸国)の状況を考えれば、最も理解しやすいであろう。デンマークの障害者政策では、「部門責任」という概念が重要なのである。つまり、障害者差別禁止法の下、各機関が製品とサービスをすべてのユーザーにとってアクセシブルにすることが義務付けられているのである。しかし、ほとんどの国の、障害に基づく差別に関する法律では、製品の製造者には義務を課しておらず、代わりに、小売業者やその他の公共に開かれた施設、輸送サービス事業や公共サービス事業にこれを義務付けている。電気通信機器の製造業者などいくつかの事例では例外が認められる。

どのようにサービスが提供されるか

ほとんどの回答者は、サービスはできる限り、一般の公共図書館や普通の学校および大学、つまり目が見える読者と同じ手段を通じて提供されるべきであると考えていた。特別な手段でサービスを提供することは、動くことができない人々のために行われる。図書館を媒介とすることと関連して、直接的なデジタルダウンロードの役割については、一切が詳しく説明されたわけではなかったが、一般に並行して行われているものと考えられる。配布媒体として書店やインターネットショップの名前を挙げた回答者もいた。

明らかに、公共図書館や学校図書館も、多数の製品を提供するためには十分な資金を調達する必要があり、またこれを効果的に実施するため、研修を受けた職員を必要としている。一般図書館をサービス提供の第一線に置くモデルはすべて、国民の十分な支持が、視覚障害者および印刷字を読めない障害がある人々に質の高いサービスを提供する前提条件であることを暗に示している。各国の事例研究から、実際は必ずしもすべての国でそうではないことがわかる。

各機関はどのように協力していくのか

ここではほとんどの回答者が、代替フォーマットによる製品がボランティアによって提供されるか、公共機関によって提供されるかは関係なく、製作にかかわるスキルを、エンドユーザーへの配布にかかわるスキルや、システムの各部分が他の部分を補う形でその役割を全うする能力から切り離し、仕事を明確に区別することを想定していた。スウェーデンとオランダの回答者は、基本的に、現在の組織構造は完全に機能的であるが、新たな配布媒体や、製作の自動化をさらに進めることによってさらに補完できると考えていた。カナダとイギリスの回答者は、全国的な調整機関や戦略について言及した。すべての人が、国際協力の拡大を望んでいた。