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ストックホルム中央図書館のDAISYによる障害者支援

野村美佐子
日本障害者リハビリテーション協会

 2011年5月にフィンランド・ヘルシンキで開催されたDAISYコンソーシアムの総会と技術会議に参加した。最後の1日は予定なかったので、スウェーデン・ストックホルムまでの往復が1万円程度の飛行機のチケットを入手し、ストックホルム市立中央図書館を訪問することにした。この図書館には2008年にも訪問しているが、その後、ディスレクシアの利用者などへのサービスの進展があるかどうか興味があり、訪問することにした。
 土曜日の午前中に行くと、午後からということで空いていなく、開くまで待っている人も多かった。
いよいよ入館すると、前に訪問した時と少し改造されており、図書の検索などを利用者が使用するコンピュータがあちこちにあった。入口に近いところにDAISY図書が置かれていた。これらの図書の対象者は、プリントディスアビリティ(印刷物が読めない障害)である。
前回訪れた時には、「来年、録音図書はすべてDAISYになる」と言っていたが、すべてDAISY図書での提供を行っていた。

図書館の入口に近いところにDAISY図書がある。

 こちらの棚には、DAISY図書を国立録音点字図書館であるTPBからダウンロードができるというチラシが置かれていた。 次に児童図書のコーナーに移動して担当の図書員にお話を伺った。ここでは前回同様にリンゴの棚が置かれ、読みやすい図書、音声のみのDAISY図書が本と一緒に置かれており、手話の本など様々な障害者が利用できる本が置かれていた。

リンゴの棚
本
本を開くとDAISYが含まれている。
本にDAISYが同梱されている。

 また障害を持つ母親など読む障害について書かれた図書も置かれている。さらにディスレクシア協会のチラシも置かれている。

ディスレクシアについての資料。

 特にディスレクシアなどの障害者に対してどのようなことをしているか尋ねたところ、自閉症者に対して1年に一度彼らのみが自由に図書館を利用できる時間を設けているとのことである。

 以上のようなことが今回の訪問で得られた情報である。TPBのDAISY担当者から紹介をしていただいた中央図書館の人を介して、この図書館のコンサルタントの方とメールでのやり取りを経て以下のような情報を得ることができた。一部の情報は私の訪問の際に得た情報と重複する。

 現在、次のようなサービスを行っている。

  • ディスレクシアに関する情報について特別なコーナーがある。たとえば特別なIT支援ツールについて、連絡できる担当者の情報、本のレビューなど。
  • 中央図書館のウェブにアクセスする人に音声合成エンジンソフトを提供する。
  • TPBのウェブサイトを通してこの中央図書館のプリントディスアビリティの利用者はDAISY図書をダウンロードができる。
  • 利用者の宿題の手助けをする図書館でのサービスを提供する。
  • この図書館において特別なニーズがある人たちのためのヘルプディスクが設けられている。
  • テキストの拡大を調節、あるいはその他視聴覚のソフトが入ったコンピュータの提供。

 来年の初めまでには、図書館のホームページがリニューアルされ、次のような機能を持っつとのことだ。

  • 検索エンジンでより優しく検索できるように、自動で行われる類語の例示や誤字の修正などの機能を持てるように開発を行っている。
  • ホームページは、W3Cが策定をしたWCAGの規則に従っている。
  • ホームページからDAISY図書をダウンロードできるようにする。
  • 更にウェブインターフェイスからDAISY図書を聞くためのリーダを置くことを検討している。

 2010年におけるストックホルム市民の数は847,073人で、2010年の延べ貸し出し数は3,220,521に上る。
2010年のDAISY図書の数は35,595であり、積極的にDAISY図書の利用者は4,085人である。そして一年間のDAISY図書の延べ貸し出し数は、一年間で80,191冊であり、月6,682冊になる。

 尚、DAISY図書の登録者については、DAISY図書を必要とする理由を登録しない。またそれ以上の情報を登録するわけでもなく、診断書(written certification)を必要とするわけでないので統計はとれていない。
利用者が図書館に行ってプリントディスアビリティ(印刷物を読めない障害)として登録する以外、DAISY図書貸し出しのためのルールがあるわけではないし、定義があるわけでもない。DAISY図書を必要としていることについて利用者の誠実性に依存しているとのことだ。