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『超簡単』プロジェクト:カトリーネホルムの協力体制

Busenkelt samarbete i Katrineholm (2010年第1号,p.12-13)
文と写真:マリア・キムベリィ

カトリーネホルムでは協力体制と『超簡単』プロジェクトが勝利の秘訣である。ここでは録音図書がまさに世に出ていったのだ。昨年度、児童と若者のためのダウンロード数が約3倍に増加した。

 カトリーネホルムは灰色の霧に包まれ、往来や広場に軽い粉雪が舞っていた。ドロットニング通りとユーレ-通りが交差する角では、幾つかの雪の山の間でカロリーナ、アニカ、ペッラが一緒に雪かきをしていた。ペッラは通りの片側にある学校のコンピュータ・プレイセンターで、アニカとカロリーナはその斜め向かいにある図書館で働いている。
 「昨日あなた方の所に紹介した男の子はどうなった? 彼が読みたいと思える本を何か見つけられた?」とペッラは聞いた。
 カトリーネホルムではこのように、職員同士が大変近しい関係にある。物理的にも業務上の連絡の上でも。ここでは学校の生徒達に録音図書とDAISYプレイヤーを提供する目的を持つ、大変機能的な組織が築きあげられている。
 すべての土台となっているのは児童保健管理センター(Elevhälsa)、学校コンピュータ・プレイセンター、カトリーネホルムの各図書館にまたがる協力関係である。

このプロジェクトは知識を与えます

 現在児童と若者に対する録音図書の貸し出しは、セルムランド県立図書館及び録音点字図書館が推進する『超簡単』プロジェクトによってさらに勢いにのっている。2009年、ダウンロード数を増やすために県全体がこのプロジェクトに取り掛かった。特に中心となった自治体、カトリーネホルムとエスキルステューナでは成功を収め、若者のための録音図書のダウンロード数がそれぞれ3倍、4倍に増加した。ここで功を奏したのは、特に研修やディスカッションによって、また各図書館間及び学校とのネットワークを築くことによって職員の知識が深められたことだった。大学レベルのディスレクシア専門家、ディスレクシア当事者及び作家等による一連のセミナーもこの成果に一役かっている。

各々が受け持つプレイヤーに関する責任

 カトリーネホルムのDAISYプレイヤーを必要とする全生徒は、学校コンピュータ・プレイセンターから無償でプレイヤーの提供を受ける権利を持っている。学校の在籍期間は常に各生徒がプレイヤーを保持できると許可する、このような中央サービスはめずらしい。
 現在自治体に5000人の生徒がいる中で、約300台のプレイヤーが貸し出し中である。必要に応じて、今後さらに多くのプレイヤーを購入していく。この必要性は増加しており、2年前の調査では34人の生徒に読み書き困難があることが判明し、昨年度は検査を受けた生徒が300人に達した。自分の子どもに検査を受けさせたいと望む親達は増加の一途を辿っている。学校コンピュータ・プレイセンターは、この数年の間に約500人、つまり10%の生徒達にDAISYプレイヤーが必要になると見積もっている。ディスレクシア検査を担当するのは児童保健管理センター(Elevh?lsa)である。その後生徒は、適切な支援器具が生徒に渡るように責任を負っている学校コンピュータ・プレイセンターに紹介される。さらなる支援が必要な生徒は、国民図書館に紹介される。

リラックスをするための訪問

 「私達は生徒及び親達と時間を予約します。彼らが後に来る時には私達は既に生徒が興味を持つものについてある程度知っており、適切な図書や録音図書を用意してあるというわけです。数週間前にある少年と面会しました。彼は猟に大変興味を持っていたので、幾つか猟に関する図書を検索してあげました。」とアニカ・エルムハーグは言った。
 「時々、図書館に入ること自体に大変な抵抗を示す子どもがいます。その抵抗を和らげるために、ただお茶をしに子どもを連れてきた親もいました。」
 「司書達はセミナーを受けるだけではなく、そこから戻った後には効率よく仕事ができるようになっていなければなりません。一冊の本を手に入れるのに3日もかかってはなりません。私達は即座に図書をダウンロードし、組織内の配送によって各学校に送るようにしているのですから。」

皆がその技術を使えます。

 ペッラ・ヤンソンは学校コンピュータ・プレイセンターで教育者として2年間働いてきた。DAISYプレイヤーを予約するのは彼であり、生徒達、そして教師達にその使い方を指導している。
 「私の目標はカトリーネホルムの1200人の教師達が皆、DAISYプレイヤーもその他の支援器具をも安心して使えるようになることです。生徒達自身が使えるだけではなく、生徒達がその仕組みを覚え、生徒達の学習を手助けできるように教師達がこの技術を学ばなくてはならないのです。」
 ペッラは教師達全員がこの技術を学ぶ機会が持てるように、あるタイプのDAISYプレイヤーを選んで、取り組むことにした。それはCD-ROMを用いる、使い方の簡単なDAISYプレイヤーだった。

生徒と教師に対する支援

 ペッラ自身も元々は教師である。彼は新たな支援器具を生徒に手渡す時には、学校に出向いて使い方を指導する。
 「私はできるだけこの仕事に関わる人々全員に会い、このプレイヤーについて詳しく説明したいと考えています。私はいつも教師やクラスの子ども達と共に授業に参加し、上手く使えるかどうかをテストしています。時には学校コンピュータ・プレイセンターにやってくる親達に使い方を見せることもあります。」
 学校コンピュータ・プレイセンターでのペッラの業務は、開始時はあるプロジェクトの中で行なわれており、特殊教育に関する教育行政機関が資金を出していた。学校長達がこの支援が継続することを望んだため、正規雇用になった。各学校は独自の予算からその費用を支出し、新たな出資先を見つけることはできない。

目標を定めた業務

 カトリーネホルムでは学校、図書館、児童保健管理センター(Elevh?lsa)は『超簡単』プロジェクトが始まる前から協力関係を築いていた。
 「しかし私達はそれによってさらに追い風を受けたのです。私達はさらに協力関係を発展させ、根本から見直すことにしました。それは私達自身が進行を担う、より目標を定めた業務なのです。」と司書のカロリーナ・ロシュリングは言います。
 「また私達は、プロジェクトを通してここに来た講師の皆さんによって、本当にすばらしい技能研修を受けることができました。」とアニカ・エルムハーグがそれに賛成した。
 「私達が採択したこの業務の実施計画は、大きな助けでした。私達の上司も録音図書は大変重要であり、全職員がそれに精通し、使えなければならないと考えています。」

注:『超簡単』プロジェクト

 『超簡単』プロジェクト-児童と若者のための録音図書は2009年に実施された。その目的は特にダウンロードによって録音図書の利用を増加させることであった。このプロジェクトは国家の文化評議会が出資をして、セルムランド県立図書館が録音点字図書館と協力して行った。
 特別な中心的自治体としてエスキルステューナ及びカトリーネホルムでは、新たな協力相手を得ることと、ネットワークを築くことに特に照準が据えられた。 セルムランド内の他の図書館も手配された各セミナーに参加した。読書支援の業務を行う全ての高校、小中学校及び児童図書館の司書、教師、特殊教育専門家達も招待された。参加者達は、このプロジェクトに対する評価において、特にセミナーの部分に高い得点を付けた。より詳細な情報については、セルムランドの県立図書館のウェブサイトを参照。

掲載者注:
カトリーネホルム(Katrineholm)の位置は、ウィキペディアを参照してください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Katrineholm


原本書誌情報

Bibliotek för alla
http://www.tpb.se/om_tpb/trycksaker/tidskrifter/#bfa

Bibliotek för alla. 2010, No.1, 16p.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa12010.pdf

原本(スウェーデン語)は、TPBのサイトに掲載されています。写真はDINFには掲載しておりませんので、原本をご覧ください。