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ノルドスタンでDAISYを

Med DAISY i Nordstan(2010年第2号,p.4-6)
文:マリア・キムベリィ

「私達は全ての録音図書を必要とする人々と連絡を取るために、このショッピングセンターノルドスタンの中におります。読み書き困難を持つ多くの人々は図書館を避けます-ですから代わりに私達がここに来たのです」と地方図書館『西の文化』の職員、ハイディ・カールソン-アスプルンドは語る。

 ごく普通の5月の午前中、イェーテボリィにあるノルドスタンショッピングセンターの人混みの中。オレーンスデパートとフェスカルブレーデナ店の間、酒類販売所、クラース・オールソン店から程近い場所に、図書館と録音図書が位置を占めていた。小さなステージでは、読み書き困難を持つ美容師のアネッテ・ブルイェルトが、本を避けるためにいかに彼女があらゆる手を尽くしてきたかを語っている。
 「私は何かの紙をコピーするために図書館に入りました。でもたくさんの本が並んでいるのを見て、お腹が痛くなりました。他の人々は誰もが本を読むのに、私だけは読んでいない、そんな気持ちでした。けれども後になって、すでに吹きこまれている録音図書がどの位あるのかを知った時、私の前に新たな世界が開けました。今では私も他の人々に混じって、自分が何を読んだかを話し、他の人に何か図書を薦めることだってできます。」

4つの自治体で行なわれた大規模な取り組み

 舞台の下には『読むことは難しいですか? 他の方法もあります!』と印刷された看板が立てられている。イェーテボリィ、ファルシェーピング、シェーブデ及びボロースの図書館の職員が、読書困難がある人の読書を助ける録音図書、拡大図書、簡単に読める本等を紹介するために配置に付いている。全員が同じような黒いT-シャツを着ている。そのシャツには『80,000タイトル』と書かれている。それは録音点字図書館のデジタル図書館にある録音図書の冊数を示している。
 ノルドスタンの一日の背景にあるのは、読み書き困難がある人々のうち図書館に来ているのはほんのわずかであることを示した調査結果であった。2009年及び2010年、ヴェストライェータランドの図書館は録音点字図書館と共に、より多くの人々と接するために努力を重ねた。プロジェクト『借りて、ダウンロードをして、聴きましょう』に対して、文化評議会から助成金が下りた。
 「この日は4つの自治体が、各自治体の図書館の外で大規模な普及活動を行う前のキックオフです。昨年は、各貸し出しサービス利用者が家で録音図書をダウンロードする、または図書館のDAISYキヨスクに来てメモリーカードにダウンロードするというプロジェクトが始まりました。」とヘイディ・カールソン-アスプルンドは語った。

将来の録音図書の読者

 ショッピングセンターの通行人と接する事が、一番簡単な方法であるわけではない。それでも職員達は、距離を保ってためらいがちにそうっとやってくる人々に近づくことにより、かなり多くの(対象者の)人々と会うことができた。
 展示ブースを訪れた人々の一部は、それまで録音図書について耳にしたことが一度もなかったという。特に読み書き困難を持つ多くの年配の人々はそうだった。彼らのうちの何人かは、折よく仮の貸出カードを発行してもらえた。後に図書館で本物と交換してもらえるカードである。この日、約10枚のカードが訪問者に発行された。
 ヘッルセーに住むブー・ベルンハルドは視野に問題があるため、録音図書に慣れ親しんでいる。また録音図書の価値をよくわかっている。
 「私はどこででも読書をしています。バスでもトレーニングサイクルの上でも、足を向ける所ならばどこででもです。最近では、昔のボーヒュース県を題材にしたエヴァート・ルンドベリィの小説のシリーズを読んでいます。私はエッケルエーの図書館で図書を借りていますが、サービスには大変満足しています。」

作家と吹き込み手が舞台に

 舞台では熱気に満ちた構成プログラムが続いている。作家のヨハン・ヴェルクメステルはセルマ・ラーゲルラーフに関する簡単に読める本を執筆する仕事について語った。彼は特に、ギロウやマンケルの著作を、簡単に読めるスウェーデン語へと書きなおす仕事をもしてきた。
 「他人の著作の書き直しなんて、本当にやっていいのだろうかと最初は考えました。でも結果的には著名な作家のほぼ全員が、(自分の著作の)簡単に読める文章への書き直しに賛同してくれました。彼らは皆が自分の本を読めることが、大変重要だと考えているのです。」とヨハン・ヴェルクメステルは語った。

読書訓練を行う

 イェーテボリィにあるディスレクシア協会(FMLS)で働くシェル・エリクソンもこのプロジェクトに関わり、彼自身も録音図書のダウンロードを行った。彼も自分の体験を舞台で語った。
 「私が録音図書を聴き始めたのは、自分の機能障害を理解するためにディスレクシアに関するある本を読みたいと思ったからでした。しかし私の目標は、印刷版の純文学の図書をコツコツと読み進めることなのです。そのために常に読書の訓練をしています。」
 ノルドスタンでの一日が終わると、図書館ではプロジェクト『借りて、ダウンロードして、聴きましょう』の次の段階へと移り、自分達の本拠地でも図書館の建物の外でメッセージを発する業務が始まる。特に職員の方から出かけていって、企業の図書館、研修センター及び刑務所で人々と会うようになるのである。

コラム:将来-ダウンロードを望む誰もが自分でできるようになる

 ヴェストライェータランドで行なわれたプロジェクト『借りて、ダウンロードして、聴きましょう』は録音点字図書館にとっては、個々の貸し出しサービス利用者が家で録音図書をダウンロードするようになったらどうなるかをテストする、1つの方法であった。このプロジェクトの参加者はインターネットを通して自分の録音図書を入手できることに対して大変満足し、70人余りの参加者達の99%がこのサービスを継続してほしいと願っていた。録音図書を録音点字図書館から自分でダウンロードできるこの試験的なサービスは、大学生達に対しては通常のサービスとして昨年の秋から始まっており、約1700人の学生が利用している。
 現在録音点字図書館は各個人のダウンロードに関する、より大規模なプロジェクトの計画を立てている最中である。このサービスを全ての人々が利用できるようになる前に、システムの開発、管理、作業手順の問題が残っている。最終目標は 録音図書の利用者全員が希望をすれば自分で録音図書をダウンロードできるようになることである。

掲載者注:
イェーテボリ(Göteborg)の位置は、ウィキペディアを参照してください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Gothenburg

スウェーデン最大のショッピングセンターであるノルドスタンのウェブサイト
http://www.nordstan.se/


原本書誌情報

Bibliotek för alla
http://www.tpb.se/om_tpb/trycksaker/tidskrifter/#bfa

Bibliotek för alla. 2010, No.2, 16p.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa22010.pdf

原本(スウェーデン語)は、TPBのサイトに掲載されています。