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録音図書がモニカの家に訪れます。

Talböcker hem till Monika (2010年第4号,p.8-10)
文と写真:マリア・キムベリィ

読みたい本がすぐに家のパソコンに届くなんて、夢のよう! エステルイェートランドでプロジェクト『全ては瞬時に』に二人で参加しているモーターラの親子、モニカとクリスティーナは言った。

 モニカ・モリーンはモーターラの河辺にある、赤い木造の家に夫のオーケと共に住んでいる。この家族は80年代からここに住んでおり、この家はモニカが電動車椅子を動かすのにちょうどいい。上の階に行くためにはエレベーターがあり、庭の一部にはアスファルトが敷いてある。600鉢のテンジクアオイがある、家とつながっている温室には小さなスロープがあるので、簡単に車椅子で入ることができる。
 モニカが自分で録音図書をダウンロードするという、あるプロジェクトに参加することになったのは、ごく自然な流れだった。彼女は大変な読書家であり、家族全員が新技術や本に興味を持っていて、常に技術の発展と録音図書を見守っていたからだ。57歳のモニカは1972年から、つまり本当に長い間録音図書を読んでいる。即ち彼女はロールテープの時代に読み始め、その後カセットからCDに代わり、最近では多くの場合MP3プレイヤーで、そして時々はコンピュータで読んでいるのである。

待つ期間はなくなった。

 「70年代は一番ひどい時にはある録音図書を借りるのに、2年間待たなければなりませんでした。その頃は作成にも長い時間がかかりましたし、多くの図書に対してたくさんのテープが作られたわけではありませんでした。こうして食卓につき図書を自分でダウンロードするまでには、長い道のりがあったのです」。
 モニカは自分のノートパソコンを食卓に置き、どのようにダウンロードをするかを見せてくれた。彼女が選んだモーテンソンの探偵物をダウンロードするまでに掛かった時間は、ほんの数分だった。彼女は後でその本を、常に一本の紐で首から下げているMP3プレイヤーに移すのだ。
 「これはとても簡単で、私が始めてやってみた時にすぐにうまくいきました」とモニカは言った。
 この一ヶ月余りでモニカは15冊の録音図書をダウンロードした。彼女はコンピュータの中のエクセルリストに自分が読んだ図書を記録している。この4~5年で読んだ図書は450冊に上る。

2重の機能障害

 モニカは筋ジストロフィーという病気のせいで車椅子を使っている。それは筋肉が衰えていくことを意味し、モニカは常に車椅子の後ろに付けられた人工呼吸器につながっていなければならない。この病気のせいでモニカは長い間本を手に持っていることができない。だが実際には読書困難のせいで、彼女は70年代に録音図書を読み始めたのである。34歳の彼女の娘、クリスティーナ・スキルにも読み書き困難がある。だがモニカもクリスティーナも学校に通っていた時にはその診断を受けることができなかった。モニカは文盲と呼ばれ、クリスティーナには読書訓練のために補助教諭が付けられた。

すべての人々が読書をします

 娘のクリスティーナも夫のオーケも、24時間の見守りが必要なモニカの、個人的なアシスタントとして働いている。3人とも読書が好きなので、常に話題の中心は本のことである。クリスティーナも首からMP3プレイヤーを下げていて、時々彼女はジャガイモをむいたり、掃除機をかけながらそれを聽いている。しかしいつでもモニカに助けが必要な時には分かるように、低い音量で聴いている。「けれども私は小さい頃には録音図書が苦手でした。なんだかずうっと続く単調なつぶやきのように思えたのです。決して自分からは聴いてみようとはしませんでした。最初に聴いてみたのは、窓ガラスに絵を描いている時に母が私にテリィ・パチェットを聴かせた時でした」。
 「本当のところ、私は本を読んでみたかったのです。でもそれが私には難しすぎました。ついに聴き始めた時、それは退屈でもなんでもないと判ったのです。自分で録音図書を読むのと、母が聴いた時に内容だけ教えてもらうのとは大違いでした」。 モニカは、自分の普段の態度がクリスティーナに影響を与えたのかもしれないと考えている。「私は読んでいる本に完全にはまってしまうので、彼女が話しかけてきても、なかなか気がつかないことがありましたから」。

自ら望んだ参加者

 現在クリスティーナは頻繁に録音図書を聴いている。庭にいる時、眠りに付く時、それに息子と一緒にいる時など。
 「自分でダウンロードできることはとても便利です。あるシリーズのうちの一巻を金曜日の夜には読み終えるとします。そうしたらすぐに次の巻をダウンロードして土日にそれを読めるのです。私は田舎に住んでいるので、ダウンロードのおかげで借りに行く手間も省くことができます」。
 モニカによると、以前は家族で月に2回、予約する録音図書の長いリストを持って図書館に行っていたという。
 「ええ、このプロジェクトを、図書館が私達に提案してくれた理由はよく分ります。30冊の図書を揃えるのは一仕事ですから」。クリスティーナは軽く笑いながら言った。

長いシリーズ

 モニカもクリスティーナも探偵物を読むのが好きである。しかしモニカの最も好きなジャンルはファンタジーとサイエンス・フィクションだ。中でも彼女の最大のお気に入りの本はタッド・ウィリアムス著作の『竜骨の王座』と、『銀の短剣』で始まるキャスリーン・ケルスのシリーズだ。
 「私の好きな本は大抵長いシリーズのうちの一冊で、それが以前のように図書を予約していた時には問題になりました。各巻が順番通りにはこないので、最初の巻が来るまでに長い間待たされるのです。今はもうその悩みも解決しました。」
 モニカが新しい本を選ぶ時、手掛かりを得るのに、最も利用しているのは録音点字図書館のカタログだ。彼女は定期的にSFとファンタジーのジャンルの中で、製作中の新しい本を検索している。クリスティーナとオーケは書店で新しい本を見て、面白そうな本があると携帯電話でその表紙を撮影している。

温室で読書

 モニカが頁をめくる印刷版の図書といえば、テンジクアオイの本だ。多くの場合これらの図書は英語で書かれているので、モニカはほとんど写真を見ているだけである。彼女はスウェーデンテンジクアオイ協会のエステルイェートランド代表であり、今度の休日はイェーテボリィで会議があるので彼女はそれに出席することになっている。
 台所とつながっている温室の中にモニカは、テンジクアオイのすばらしいコレクションを持っている。400種類ものテンジクアオイが667本あるのだ。今のような11月の初頭であっても、一部は温室の中でピンクや赤の花をつけている。
 「春の太陽が輝き始めると、ここは私のお気に入りの場所になります。私はここに座り、テンジクアオイを摘みながら本を読むのです」モニカは言う。

コラム:ディスレクシアプロジェクト『なんでもすぐに』

 10月に入ってからは、録音図書を読む権利を持つ全てのイェートランド住民が、TPBのデジタル図書館の録音図書を家でダウンロードすることが可能になった。その目的はディスレクシアを持つより多くの人々が録音図書に触れることである。ヴェストライェートランドでは同じようなプロジェクトがもっと前から始まっている。
 貸出利用者は地域の図書館で登録をすると、職員が著作権の権利に関する契約書を丁寧に説明する。その後職員が、実際にはどのようにダウンロードをするのかを説明するのである。その後パスワードが利用者のE-mailアドレスに届く。
 最初の月にはエステルイェートランドに住む50人の利用者による300件近くのダウンロードがあった。このプロジェクトはエステルイェートランド県立図書館、エステルイェートランド内の各図書館、エステルイェートランドのディスレクシア協会FMLSと録音点字図書館によって進められている。 次の年には全国の録音図書利用者に、録音図書を家でダウンロードすることが許可されるようになる。

コラム:インゲル・ホルストレーム-フリス、モーターラ図書館の司書

 最も難しいのは当然、まだ録音図書の利用者ではないディスレクシアの人々と連絡を取ることです。私達はモーターラの大規模な家屋貸し出し業者達と連絡を取っています。彼らの人脈を利用して、情報を得ようとしているのです。
 最初の月には13人の成人と10人の児童及び若者達にプロジェクトに参加してもらうことができました。今やもっと多くの人々が参加しようとしています。 録音図書のダウンロードだけに集中しなくて済むようになった今、私達は対象者を探す業務に時間を捧げています。自動でCDへ短時間で焼き付けてくれる機器を購入したので、その作業が簡単になり、時間も節約できるようになったのです。

掲載者注:
エステルイェートランド(Östergötland)、モーターラ(Motala)の位置は、ウィキペディアを参照してください。
http://en.wikipedia.org/wiki/%C3%96sterg%C3%B6tland
http://en.wikipedia.org/wiki/Motala


原本書誌情報

Bibliotek för alla
http://www.tpb.se/om_tpb/trycksaker/tidskrifter/#bfa

Bibliotek för alla. 2010, No.4, 16p.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa42010.pdf

原本(スウェーデン語)は、TPBのサイトに掲載されています。写真はDINFには掲載しておりませんので、原本をご覧ください。