音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

2001年GLADNET年次総会

引き続きITアジェンダ-民間部門、助成財団、消費者の視点

講演 Monthian Buntan氏
(タイ盲人協会代表代理)

Monthian氏

 こんにちは、日本に毎回来るたびにますます良い思いを感じさせていただいています。最初にお断りしますが日本語では身体障害の中に動きの障害に加えて視覚聴覚が入っていますが私は身体障害者というのは動きの障害のみと定義します。プレゼンテーションを皆さんの元に視覚的な形であるパワーポイントでお届け出来ない事をお詫びします。そのためのデバイスを第二の故郷の名古屋で入手するつもりでしたが上手くいきませんでした。テキストのコピーは配布出来ます。ここ数年ICTという言葉は我々にとって重要になってきました。全てとは言えませんがほとんどの生活の側面に関わりがあります。我々自身がハイテクであれローテクであれ、あるいはノーテクな人間であれ一つの明確な事実はICTの問題から逃れて生きていけないという事です。障害者の持つ様々な特質、問題やニーズや能力のレベルを持ったグループも好む好まずに関わらずICTと共に生きなければなりません。障害者が何が出来るかまたは生産的、競争的な雇用を維持し求めていくというゴールをいかに達成してくかを決定する過程でICTは無視出来ません。この話の中で直接的、間接的に障害者雇用に関わっている人々が何か新しい切り口やヒントをみつけていただければと思います。それが受け入れられる最適の形のものかどうかは障害者の方皆さん自身で判断してください。

 今日はICTが本当に障害者の雇用創出を促進しているのかという問題をとりあげたいと思います。様々な障害者コミュニティのリーダー達の中でもICTのアクセスについて知らないことが多すぎます。例えばタイ国内外ではICTの雇用創出は二つのアプローチが考えられます。

 一つ目には身体障害者の身体的な能力を現行のICTに何の変更もかけずに合わせていくサクセスストーリを普及するという方法です。10年前にリデンプニストというタイの職業訓練校が良い例として出ました。午前中に高嶺さんが紹介したタイのパタヤにあるものです。別にこれを非難するつもりはありませんがここでは身体障害を持つ人たちが一切補助道具を使うことなく上肢の腕や手を使ってコンピュータを操作出来る人たちが入っています。コンピュータのハード、ソフト、プログラミング、オフィスワーク等の様々なレベルの学習をしています。成果はかなり満足のいくレベルです。何百名という卒業生が民間や政府に雇用されています。これは一つのサクセスストーリですがここで欠けているのは将来のために、より革新的な方向へと向かっていくための手がかりです。現行のテクノロジーに対応出来る人たちには大きな機会を提供をしましたが身体障害者の中でも腕や手を使えない人達にとっては功を奏したものではありません。障害者のリーダ達やタイの政府高官は、ビジネス界や国民はこのサクセスストーリに対して良い反応を得たと喜んでいる人たちもいます。でもこれを使ってICTのアクセシビリティーを高め、研究開発、財政援助を行い、法制度を整え立案をしていこうという関心のある人たちはほとんどいません。これを是非タイ政府の交渉の場に持っていきたいと思います。昨年度もこのアクセシビリティーの問題をICT 関連の法案に入れるように動きましたが否決されました。障害者のためのアクセシビリティに関する条例は既にあるのでICTに特化することはないというのが当面の理由でした。将来はこの法案を動かしていきたいと思います。これが一つのアプローチでした。

 もう一つのアプローチは脱奇跡化という形のノーマライゼーションです。非常に厳しいチャレンジを奇跡でなくしてしまうという事です。アクセシブル可能なICTを通じ障害者に雇用機会を創出し促進するという事です。この運動はタイでは視覚、聴覚障害、重度身体障害を持っている人たちの様々な活動から生まれてきました。この動きにはTAB(タイ盲人協会)といった自助組織やラチャスダ大学といった各種機関も加わっています。こういった動きは個人レベルあるいは、視覚障害者向けの学校で80年代というかなり早い時期から始まっていますが緩慢で遅すぎる動きでした。ですから、国民全体に知られるまでには至りませんでした。アクセシブルなICTの技能訓練にはコストという限界があります。まず機器などを購入することとの困難、それに加えてよりアクセシビリティを高める必要があります。そしてタイ語というローカル言語に変えなければならないコストがかかります。そして政府にこういった障害者のためのICTのアクセシビリティの確保が十分投資に値し全国民に寄与するものだとということを説得する事の難しさがあります。しかし、これは障害者だけではなく一般の人にとっても恩恵があると説得していく必要があると思います。私自身もICT を上手く使うことで自分を雇用主に売り込み仕事を得ることが出来ました。私にとっても長期的には障害者全体にとっても良いことですがそこに至るまではまだまだ道程は長いです。私は93年から勤めているマヒドン大学ラチャスタカレッジにおいて大学の方針としても実務レベルにおいてもすべての文書を障害者にとってアクセス出来る物にすべきだと言ってきました。例えば会議用、セミナー用の文書、教科書、通常の連絡事項に関するもの全を点字や点字を紙から電子化、読み上げる、手話つき電子メールにしてきましたが、組織内外からコストがかかりすぎるという声が出ました。しかし、やがて参加が広がるにつれて障害のある無いに関わらず労働環境の改善が得られました。その結果これを採用する組織が増えてきました。最初はコストがかかるように見えるやり方ですが後になると費用対効果が高くなる事が証明されています。さまざまな視覚障害と聴覚障害の間といった異なる障害を持つ人たちのギャップを埋めることも出来ます。私自身も今までこの方法でタイ国内外の聴覚障害の方とうまくコミュニケーションをとってきました。(会場の中の)彼とも手話通訳なしに電子メールでコミュニケーションを図っています。このようにICTの使用と開発を大きく推進する事が大切なことがわかりました。同時に完全な同期を行えるマルチメディアを通じて情報を交換出来る良い例がありそれは、DAISYです。

 4番目の問題提議ですがどうやったらICTを使って障害者の雇用を守っていくことができるのでしょうか。タイの場合もいくつかの障害者が仕事を失わないため、権利をまもるための対策がありあます。通常の競争のある自由市場の中に対策が無い場合はこういった政策や対策がかならず必要です。

 タイでは盲人や身体障害者は道路で宝くじのようなものを売っています。好意的であるにせよないにせよこのような雇用機会を政府が排除するという事は許されないことです。タイ盲人協会は公民権運動の組織としては非常に古い歴史を持っていますがタイの政府に対して99年の9月にくじの自動販売機を設置するという取り決めに対してキャンペーンを展開しました。こういった事がもし実施されると多くの身体障害者と盲人は仕事を失いその何百という家族と親戚が全く食べる物が無いという状況に追い込まれます。タイ政府のケアーセンタの支援がなければ生きていけないという状況です。今いる身体障害者10万人の収入が無いわけで政府としてはUS1億ドルという金額をつぎ込まなければならないという結果になるわけです。TABは今回のキャンペーンは今までのような、やじうま手法のような戦いはやめました。私と何人かの盲人のリーダーが非暴力のハンガーストライクを7日間公邸の前で行い、座り込みをしました。そしてインターネットと通信機器による戦いを始めました。ストライキを始める前にタイの盲人協会はプレスリリースを発信しました。多くの新聞社やインターネット、メーリングリスト、人権組織団体、世界中の盲人の組織に向け発信をしました。7日間は何も口にしませんでしたが、これは歴史的な物になりますがこの手元の機材からメッセージを発信し続けました。それを携帯電話につなげてメッセージを盲人協会の本部に送りそれを受けた人が世界中に転送をしたのです。タイの盲人がインターネットのサーバを使えたのは日本財団のお陰なので拍手をお願いします。私たちのメッセージは印刷されてバンコック市内の多くの大使館に送られました。私の周りには常時10人ほどの警察官が待機していたのですがストライキ中に中継や携帯電話を使ってのインタビューを受けました。結果としては電子メールや手紙などの期待以上の支援や励ましを受けAP、BBC、ロイター等の大きなメディアにも取り上げられ結果としてタイの人からの大きなサポートを受けることも出来ました。通常は車の渋滞を生んだりするのでこういった手法は嫌われるのですがそういった事もありませんでした。これは秘密にすべき事ではないのですが多くのメッセージをハッカーの人たちが世界中の政府のウェブサイトに載せました。これはデータを壊すことではなく一時的に麻痺させるという事です。こういった7日間のハーモニーのとれたキャンペーン活動の結果、政府はくじの自販機の設置を辞め、私たちは盲人と身体障害者の友人のために勝利を得ることが出来ました。仕事を守るためにICTを上手に活用した素晴らしい例だと思います。タイという国にとっても長い目で見れば素晴らしい結果だったと思います。

 障害者にとってICTにアクセス出来るという事は同時に社会全般にとっても素晴らしい貢献となります。皆さんの中にもそのような事があるのかと不思議に思う方もいらっしゃるとかもしれません。初めてタイプライターが作られたのも視覚障害者のために目が見える人たちと十分にコミュニケーションが取れるようにと作られました。その後タイプライターは元々の意図から大きな発展を遂げてタッチタイピングのない世界はもはや想像をすることは出来ません。もう一つの良い例は読みとりの機械です。初めて読みとりの機械が発明されたのは1975年のレイモンド・カーツワイル氏によるものでした。これがその後のスキャナーとOCR(optical character recognition)に進化しました。盲人のための読みとり機がなければスキャナーもOCRもなかったという事を皆さんは信じられますか。ここで一つ新しい技術について予期していることがあります。それはこちらでも展示されているプロダクトの一つでこれから大きくICTのサクセスストーリーとして貢献してくれるDAISY(Digital Audio based Information System)です。これは元々デジタルの再生機が完全な同期性をもったマルチメディア情報システムへと進化したものです。心から言えるのはこれこそ社会にとって大きなメリットをもった技術であるという事です。結論に移る前に河村宏先生や同僚の皆さんに暖かいおもてなしを受けたことを感謝申し上げます。DAISYの発展に大きな貢献をしていただいた事にも感謝申し上げます。タイでもDAISYのプロジェクトをやっていく上で盲人もその製品への関わりがもてます。盲人のためのスクリーンリーダーのJAWSも新しい3.0バージョンがもうすぐに出るので使うことが出来ます。

 ICTが好きであれ嫌いであれもうすでにICTは始まっています。障害者であってもなくてもICTを人間の社会を手助けするようにデザインをして使っていくことは私たちにかかっています。障害者にとってICTへのアクセスが補償されているということは全ての人にとっても共通の利益で十分に払う価値のあるものです。私たちの生活全ての側面で、雇用を守っていく、創出していく上でICTを上手に利用していく必要があります。そうすることが初めて障害者が完全参加と平等を実現する手だてなのです。皆さんに申し上げたいのは私の話の中で満足した、不快感を覚えた、無関心であるという所にとどまらないでほしいという事です。引き続きICTをどんどん活用して検索をしたり情報収集をしてICTを上手く使っていくよい例を増やしていって下さい。挑戦を続ければ世界は全ての人にとってよりよいものとなると信じています。手を取り合って希望を持って偏見やバリアを乗り越えましょう。最後に正義は勝って社会は全ての人のためになると信じています。