音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

講演会”スウェーデンとアメリカにおける「読みに障害がある人々」への情報サービス”

講演会資料:
スウェーデン国立録音点字図書館-インガー・ベックマン・ヒルシュフェルト女史資料

出典 The Swedish Library of Talking Books and Braille(2002)
(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター 訳

TPBでは、地方の図書館と協力して、印刷物を読むことに障害を持つ人々に、読書サービスを提供しています。 TPBの目的は録音図書及び点字図書を制作し、貸し出することです。更に、TPBでは録音図書及び点字に関するアドバイス、及び情報を提供しています。TPBの資金は全面的に政府から出ています。

目次
歴史的背景
法規
スウェーデン憲法
著作権
図書館法
LSS法
郵便規定
録音図書
DAISY(アクセシブルな情報システム)
様々な録音図書
読書訓練用録音図書
ナレーション
録音図書と挿絵の入ったノンフィクションのコンビネーション
点字図書
絵本
さわる絵本
点訳サービス
教育関連サービス
ハンディキャット

歴史的背景

1892年、スウェーデンの最初の盲人図書館は、点字協会の主導により設立しました。当初から、ほとんどボランティア・ベースでその活動が行なわれ、1911年、盲人協会が点字協会から引き継いだ後も、その状況は変わりませんでした。TPBは、1980年から、文化省と教育省の管轄下に置かれる国の機関となりました。

オープン・リール方式による録音図書の制作が1952年に始まりました。3年後の1955年、録音図書の貸し出しがスウェーデン盲人協会で始まり、1970年代には、カセットにコピーされるようになりました。1996年、初めてアナログテープからDAISY録音図書(CD-ROM)に移行しました。そして、2000年後半には、DAISYフォーマットのデジタル制作を始めました。

法規

印刷物を読むことに障害をもつ人々に対するスウェーデンの図書館サービスは、下のような法律によってサポートされています。
スェーデン国憲法
著作権法
図書館法
LSS法
郵便規定

スウェーデン国憲法
スウェーデン国憲法は、第2条により、すべての国民に情報の自由と言論の自由を保障しています。
これは、印刷物を読むことに障害のある市民もまた、どんな媒体にせよ、アクセス可能な媒体があるならば、書かれた情報に対する権利を等しく持つものであると示唆しています。

著作権
スウェーデン著作権法により、図書館や政府により正式に認可された団体は、印刷物を読むことに障害をもつ人々への貸与を目的に、出版されている本を録音図書にすることができます。これは著者や出版社の許可なく行えます。また、出版物の点訳コピーについては、誰もがその権利をもっています。

図書館法
スウェーデン図書館法は、すべての地方自治体が市民に図書館サービスを提供するものであることを明記している基本法です。また、第8条では、公共図書館及び学校図書館は、障害者と彼らの文学の必要性に特に注意を払うべきことを謳っています。

LSS法
何らかの機能障害をもつ人々への支援及びサービスに関するこの法律では、各地方自治体が機能障害を持つ人々に日常必要なサービスと情報を提供しなくてはならないと述べています。

郵便規定
万国郵便連合(Universal Postal Union)が制定した、点字図書及び録音図書を盲人図書館へ、または盲人図書館から郵送する際には無料で利用できるという規定に、スウェーデンは、スウェーデン郵便規定第2条によって従うことに同意しています。

録音図書

印刷字を読めない障害のある方々は録音図書を借りる権利があります。つまり、視覚障害者、身体障害者、読み書きに障害がある方、失語症、知的障害者、聴覚障害者(聴覚トレーニングのために)、慢性疾患、健康回復期の方々です。診断書は必要ありません。
スウェーデンでは、録音図書の貸し出しは、公共図書館システムの一環として行っています。録音図書は、地方自治体の図書館や学校の図書館で借りることができます。地方自治体の公共図書館は自治体の税金で運営されています。地方の公共図書館に加え、図書館相互のサービスとして州図書館やTPBから録音図書を借りることができます。

州図書館はアドバイスを与え、図書館相互の貸し出し、図書館の発展をコーディネートします。地方の図書館は政府の助成金と同様、州議会の資金提供を受けています。地方の図書館は独自で録音図書のストックを持っており、州図書館は比較的多くの録音図書コーナーを設置しています。

TPBは図書館に対して録音図書の貸し出しを行う国のセンターでもあります。2002年時点で、70,000タイトルを越える録音図書を所蔵し、毎年2,000冊ずつ追加されています。大学生のためのサービスとして年間1000冊以上の録音図書を制作しています。TPBは外国語の図書も含め、約1000タイトルを、他団体の制作によって得ています。約50カ国語の本があります。

録音図書はスウェーデン政府の特別な認可を受けた団体のみが制作しており、TPBと州図書館がその認可を受けています。TPBは内部に制作設備がありませんが、専門のスタジオにすべての録音図書制作を委託しています。一般には、図書の選択から録音図書が完成して貸し出されるまでに6ヶ月かかります。公共図書館と学校の図書館は蔵書から最近の図書まで、TPBが制作した録音図書のコピーを買います。

DAISY(アクセシブルな情報システム)

DAISYとは英語名のDigital Accessible Information System の頭文字をとったものですが、録音、保存、転送、読み取りができる一連のハードウェア、ソフトウェアです。

DAISY録音図書はCD-ROMで最大50時間の録音ができ、貸し出しています。デジタル録音図書には利点がたくさんあります。録音された目次から録音図書の全域に即座にアクセスすることができますし、ブックマークを付したり、アンダーラインをつけたり、また、余白にノートを取ることも可能です。

DAISY図書はCD-ROMドライブと読み取りプログラムがあるパソコン、または録音図書プレイヤーがあれば読むことができます。4つのバージョンで2種類のDAISYプレイヤーがあります。

TPBは2000年後半、DAISYフォーマットでのデジタル制作を開始しました。TPBの新しい図書はすべてDAISYデジタル録音図書で制作されています。2002年3月現在、5000タイトルの録音図書があります。多くは、アナログ録音図書からDAISYに録音しなおしたものです。

TPBは他の録音図書館や団体にもDAISYのコンセプトをもとに、新しいデジタル図書を推進するために国際コンソーシアムに入るよう呼びかけています。1996年、DAISYコンソーシアムが結成され、TPBがDAISYコンソーシアムの会長を選出しています。。(www.daisy.org)

1999年、2つの州図書館とTPBはインターネットによりDAISYタイトルをダウンロードするプロジェクトを始めました。録音図書のファイルサイズは約500~600メガバイトなのでダウンロードにはブロードバンド接続が必要です。TPBにはデジタル録音図書のアーカイブがあり、ダウンロードすればCD-ROMに書き込まれ、読み込み可能になります。
また、大学生と大学の図書館への配布制度を計画しています。録音図書の制作をし、録音図書を配布していくという計画です。
また、ダウンロードしないでインターネットで直接聞くという録音図書のストリーミング配信をテスト的に行っています。

様々な録音図書

年齢、ジャンル、テーマ別に、様々な本が用意されています。50%以上がノンフィクションです。特別な方のため、また特別な目的のために制作される図書もあります。

読書訓練用録音図書

視力はあるが読むことに障害のある人達のために、TPBは読書訓練用録音図書を制作しています。これらの図書では2、3種類の速度から選んでナレーションを聞くことができます。自分に最もあったスピードで聞き、同時に印刷されたテキストを読むことができます。

ナレーション

録音図書の中には、学習障害者や知的障害者を対象にゆっくりしたナレーションが入っているものもあります。テキストに対応した効果音、たとえば音楽や日常的な音(道路の騒音、雨、鳥の鳴き声など)を入れて制作する場合もあります。会話の場合には、複数のナレーターが読むこともあります。

録音図書と挿絵の入ったノンフィクションのコンビネーション

挿絵が豊富に入ったノン・フィクションの図書の中には、印刷本の方の該当ページを常に指示してくれるタイプの録音図書もでています。このような図書は、テキストを読んでもらう必要のある方々のためです。ナレーションには挿絵の描写はありません。

点字図書

TPBは、1万冊以上の点字図書を所有しており、毎年約400タイトルずつ制作しています。蔵書の多さは読者のニーズが非常に高いことを表しています。年間約40%の点字図書は利用者のリクエストによって制作されています。点字図書を借りる方のほとんどはTPBに直接連絡します。
多くは購入することもできます。現在、すべて原本はデジタル化されており、簡単にコピーできます。通常、制作には12週間かかります。これらは契約しているいくつかの点字印刷所へ発注されます。

ほとんどの点字本は大版フォーマットで両面印刷されます。初心者にとって点字が分かりやすいように、ダブルスペースで(行間を倍に広くとって)印刷されることもあります。

TPBはスウェーデン内外の図書館同士での貸し借りを管理しています。海外に住む人でTPBから点字図書を借りる人の割合は国内に住んでいる人の割合と同じです。

絵本

絵本は次の3種類の方法で制作されています。インターリーブ点字本、付録として印刷本のある点字本、さわる絵本です。
インターリーブ点字本(オリジナルの印刷本に点字のプラスチックシートが挟み込んである印刷点字本)とオリジナルの印刷本が同じパッケージに入っているものが1970年代に普及しました。当初は、視覚に障害がある大人が、目の見える子供に読み聞かせるために制作されました。

さわる絵本

近年、TPBは視覚障害者の子供のためにさわる絵本を制作しています。TPBはスウェーデン政府から子供用のさわる絵本のニーズに特に留意するよう依頼を受けています。

さわる絵本はオリジナルの印刷本をもとに制作されています。はっきりした色彩、形、素材を用いてオリジナルのイラストを表現します。
原本のテキストも拡大文字と点字両方で読めるようにしてあります。

さわる絵本で、視覚障害のある子供たちも目の見える子供たち同様、テキストと挿絵の両方を幼い頃から親しむことができます。さらに、点字の学習にも役に立ちます。点字図書としてさわる絵本を用いることも増えてきました。

視覚障害者が絵本を利用しやすくするためには、ある程度の基準が必要です。たとえば、文と挿絵が突起しており、不必要に細かすぎず、また小さすぎず、シンプルではっきりとした挿絵にする必要があります。

大人向けの点字図書にはあまりさわって楽しむイラスト本がありません。1998年、TPBは“ふれあいストックホルム”と題した視覚障害者向けのシティガイドを発行しました。彫刻や建物の部分など、視覚障害の人に触って楽しんでもらうことに主眼を置いています。

点訳サービス

TPBは個人向けに点訳サービスを設けています。マニュアル、歌詞、料理のレシピ、新聞や雑誌の記事など個人的な文書を点訳しています。

また、利用者は一般の定期刊行物の記事を点訳してもらうこともできます。

点訳のほかに、ディスクや電子メールで送ることもできます。縮約点字やダブルスペースも選択できます。

点訳は無料です。盲ろう者は点訳サービスに制限はありませんが、視覚障害者に関しては年間1000ページです。

スウェーデン点字委員会(The Swedish Braille Authority)
スウェーデン点字委員会はTPBが援助する評議会です。
この団体は点字の標準を定め、その推奨を行い、点字使用の促進を図っています。

教育関連サービス

TPBでは印刷物を読むことに障害をもつ大学生レベルの学生に対して特別なサービスを提供しています。学生は録音図書、電子テキスト本、点字、拡大文字による専門文献を利用することができます。貸し出しは無料です。

また、仕事上その利用を望む大学の教授も借りることができます。

TPBは外国語の授業コースのサービスも受け付けており、数カ国の録音図書館と協力して、録音図書と点字図書の貸し借りをしています。

ハンディキャット(Handikat)

ハンディキャット(Handikat)は、TPBの蔵書の情報を得られるインターネットによるカタログサービスです。電子録音図書、CD-ROM、カセットの録音図書、点字図書、さわる絵本、電子図書などを検索できます。

TPBのウェブサイト       : http://www.tpb.se
貸し出しについてのお問い合わせ : lib@tpb.se
その他のお問い合わせ      : info@tpb.se

住所:TPB、スウェーデン国立録音点字図書館
SE-122 88 Enskede
電話 +46 8 39 93 50
FAX +46 8 659 94 67