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人材育成において、さらに効果的な支援をするには何が必要か

国際協力機構 人間開発部 社会保障チーム Jr.専門員 池田直人

近年は障害当事者リーダーの育成による支援が行われてきている、つまり、ひとつの点(障害当事者)に対して集中的に支援を行っており、この点が持続的に拡大・発展していくというアプローチをとっている。しかしながら、障害者の完全参加と平等を目指すためには、専門職の技術の向上、行政官の育成等の視点において、このアプローチには限界がある。さらに効果的な支援をするためには、点を増やし、拡大させていくことに加え、点をつなげ(線を作り)、最終的には面を作っていくことが重要となる。これらを実現する具体的な方策として以下があげられる。

点を増やす
より多くの人材育成(障害当事者・専門職・行政官)の実施
点を拡大させる
より適切な人材育成対象者の人選/研修の改善/帰国後のフォローアップ
点をつなげる(線を作る)
人・組織(国/州/県政府、NGO等)間のネットワーク構築
面を作る
事業間及び援助機関の連携、支援実績の活用、分野を超えた連携等

また、効果的な支援を行う際の留意事項を以下にまとめる。

1)個人・組織/コミュニティー・社会への働きかけの必要性
JICAでは、技術協力プロジェクト、研修、ボランティア派遣等の実施によって、社会、組織/コミュニティー、個人のキャパシティー・ディベロップメントを行っている。人材育成における支援をより効果的に行っていくには、これらの事業がより深く連携していくことが必要とされる。連携促進のために、JICAではプログラム化が進められているが、実際の現場ではこれら全ての事業が同時に行われていることは稀である。よって、同分野で活動する組織リソース(他ドナー・ローカルNGO等)との連携が必要となる。

2)支援実績の活用
JICAの支援実績だけでも、障害者支援分野では630人のAPCD帰国研修員(障害当事者)、2,500名の帰国研修員(専門職、行政官、障害当事者等)、毎年数十名派遣される協力隊という人的リソースが存在している。JICAの実績に加え、他の援助機関の実績の活用が効果的に行われる必要がある。

3)メインストリーム(分野を超えた障害者支援)の観点の重要性
障害者支援分野に留まらず、医療・教育・職業訓練に加え、貧困削減等の協力分野への障害問題のメインストリーミングにより、より効果的支援が可能になる。以下に例をあげる;
例)教育分野:通常学校の教員訓練への、障害児教育、インクルーシブ教育の導入
医療分野:母子保健・公衆衛生分野の人材育成への、障害の予防・早期発見・介入等の導入
生計分野:職業訓練・雇用斡旋分野における、障害者が参加できるような環境・制度の整備