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第5分科会

社会資源の創造
「僕らのアトリエ」販売店代表 森 浩昭

 

私の本業は料亭「久里川」の支配人ですが、最近は障害者福祉の活動をしている時間の方が長くなってきました。

多くの方から、なぜこんな活動をしているのかとよく聞かれます。私の活動は「ボランティア」という言葉で括られることが多いのですが、私自身は「ボランティア」という言葉は嫌いで、自分自身はボランティアと思っていませんし、人から聞かれると「趣味です」答えています。要するに自分が好きでやっているということです。

ギブ・アンド・テイクが常識

今回、「社会資源の創造」という非常に大きなテーマをいただきました。基調講演をされた山口先生のお話にもありましたように、やはり本質は、社会と福祉の専門家がどのように連携を図っていくかだと思います。つまり、「お互いさま」をどのように構築していくかということです。福祉は「やってあげる」側と「やってもらう」側に分かれてしまいます。

しかし商売の世界では常識ですが「ギブ・アンド・テイク」でなければ成り立ちません。このあたりを中心にパネラーの皆さんにお話しいただきたいと思います。

私の活動の3つの柱

私の活動を少しご紹介させていただきます。

一言でいうと、障害者作業所の製作品販売を通じた企業や行政との連携です。私の活動には3つの大きな柱があります。

1つ目は、マスコミ、報道など、広告効果による企業の福祉への取り込み、巻き込みです。これは今まで企業が社会貢献をしても、それを評価されるシステムが世の中にありませんでした。中小企業は福祉に協力しないと言われる方がいらっしゃいますが、「しない」のではなく「できない」のです。当然ですが、企業として利益がないことはできません。それを中小企業も参画できる仕組みをつくることが非常に大事な事だと考えました。

そこで、私は福祉とマスコミが連携することで、広告効果をアピールし、企業を福祉に取り込むことを可能にしました。

2つ目は、産業廃棄物を用いた製品製作です。目的として経費節減はもちろんですが、福祉、環境、教育の連携を行っています。福祉・環境は容易に理解できますが、教育になぜ役立つのでしょうか?。企業や地域で大量に廃棄されるゴミを作業所が製品の材料として使い、それを学校教育に用いています。

現在、中国電力の社員が、ペットボトルでつくったロケットを子どもたちが飛ばす指導をボランティアで行っています。最初は社員自身が夜な夜なゴミ処理場にペットボトル集めに行っていました。それは大変なので、作業所に手伝ってもらったら、という話をもちかけました。

現在は中国電力の社内で、社員が飲んだペットボトルを材料にして作業所で加工し、それを子どもたちの作るロケットの材料にすることによって、作業所は多くの収益を上げるようになりました。

他の企業連携では、私の勤務する料理店で廃棄される「かまぼこ板」を使用し、JTサンダーズの選手の形にカッティングし人形を製作しました。その人形はファン感謝デーでファンに配布する為、JTが400体購入しました。

このように福祉が企業、環境との結びつきによって大きく成長することを実証しました。

3つ目は、福祉と企業の連携方法です。先ほど橋本さんからも何回もお話が出ましたが、コーディネーターの必要性です。これからは高齢化の時代ですから、高齢者が福祉の有力な即戦力になるのではないかと考えています。これからの福祉に一番大切なのはコーディネーターです。そのために、リタイアされた方々が戦力になっていくと思います。

企業や地域が福祉とどうつき合っていくか

現在、私たちは民間での福祉として、「福祉を語る会」を行っています。これは一言でいうと福祉の異業種交流会です。毎回80〜90名以上集まります。行政側の福祉関係者として県の職員、市の職員が参加し、一般の方も企業の方も来られます。参加条件は「福祉に興味がある」ということだけで、こんな動きがこれからの障害者福祉をつくっていくうえで重要なのではないかと思います。

私は福祉に対して素人ですが、福祉の専門家が見る「福祉」と、我々商売人が見る「福祉」とは、同じものを見ていてもずいぶん差があります。活動を始めた当時、福祉の専門家に話をすると、「あなたは福祉のことをどれだけ知っているのですか? 現場のことを知らないのにえらそうなことを言わないでください」とよく言われました。

でも今の時代、世の中が経済的に厳しくなり、福祉は専門的技術だけではなく経営感覚をもたなければ破綻してしまう時代になってきました。特に社会の影響力のある企業や地域が福祉とどうつき合っていくかが、これからの鍵になってくるのではないかと思います。

パネラーと分科会の論点の紹介

今回、分科会でお話ししていただくパネラーの方の簡単なご紹介と、お話しいただくポイントをお話したいと思います。

まず城貴志さんは滋賀県社会就労事業振興センターに所属されています。滋賀県は福祉先進県です。知的障害者の就労事業や職場実習などを積極的に行ったりしていて、琵琶湖の水辺に生える背の高い植物「葦」の栽培農家と提携して葦を使って名刺やカバンをつくったり、琵琶湖に生息する魚の94%を占めるともいわれている、ブラックバスなどの外来魚を肥料にして、農家と連携をとるなど、非常におもしろい活動をされています。

こういう動きは広島と比べてかなり大規模で、住民と社会連携をされているので、そういった話をぜひお聞きしたいと思います。

宮本立史さんは山陰合同銀行北支店次長です。日本でも非常に珍しい、銀行が経営する障害者就労事業所「ごうぎんチャレンジドまつえ」初代所長としてご活躍されていました。宮本さんは事業所を運営されるなかで、企業の経営資源は社会資源となると主張されています。銀行というのは信用第一で、企業のブランドを利用することも一つの方法であるということです。

福祉施設が企業などを訪問しても通常は門前払いですが、それが銀行の名前を出すと会っていただけます。このようなことはどこの企業でも可能で、特に地域貢献やCSRを標榜している企業ほど可能性が高いと思います。宮本さんにはご自身の経験の中で、障害者が企業とどのようにおつき合いしていくのかをお話しいただければと思っています。

寺尾文尚さんは、ひとは作業所の理事長で、地域を基盤としての作業所の活動に携わっています。

私はこの作業所の評議員をしていますが、いつも感心するのは、経営感覚をもたれていることです。この作業所の看板商品が「縄文アイス」というアイスクリームで、非常においしいのです。このあたりは縄文米というお米がとれ、それをアイスに混ぜるともちもちとして、私も大好きです。

また、昨年完成した「縄文の池」があります。これも地域住民の方と力を合わせてつくりました。寺尾さんからは地域福祉が大切であることを教えていただきました。私の福祉の師匠でもありますので、じっくりお話しいただければと思います。

松浦真英さんは実は本職はお坊さんですが、瀬戸内海の大崎上島という島で障害者だけでなく高齢者の支援もされています。大崎上島には、島ならではの人のつながりがあります。

島の生活の中心にあるスーパーに、東京から来られた若い女性のパン職人がいます。この方を中心に、障害者がつくった製品という視点ではなく、製品の質で勝負できる完成度の高いパンを販売しています。経営をしっかり見据えたものが販売されています。ちなみに、お店には障害者についての説明は一切ありません。お客さんが並んで買うほど非常においしいのです。

さらに島ならではの農作物もいろいろつくられていて、ジャムなどオリジナル商品も開発され、商売の点からも非常に勉強になっています。松浦さんには障害者の生活を支える原動力についてお話いただければと思います。

各パネラーにお話をいただいたうえで、城さんと宮本さんを中心に障害者の一般就労について、企業での障害者雇用するという意義や問題点について議論していきたいと思います。

その後に、寺尾さんと松浦さんに、地域の中の福祉施設のあり方や行政・地域・企業との連携について議論していただければと思っています。福祉施設の職員の方は、福祉の知識はあっても、商品の製作や販売については経験がないのです。それで企業からノウハウを教えてもらったり、障害者を理解していただいて企業で雇用していただくことは、寄付していただくよりも大切なことだと思います。

このような視点から企業と福祉が地域を巻き込みながら、どのように連携していくのかを検証していこうと思います。

明日はよろしくお願いします。ありがとうございました。